七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ

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ぬらりひょんの宝

寒いですね、この部屋っ

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『沢木ひよりを見つけた?』

 なにか定時連絡のようになっている夜の電話を七月は槻田としていた。

「普通にコンビニに居たの。
 英嗣さんの家の近くのコンビニだったから、いつもは行かないとこなんだけどね」
と言うと、

『なんで、英嗣の家に行ったんだ』
と言われる。

 いやー、毒を持って毒を制すというか、と思いながら、はは、と笑うと、槻田は溜息をつき、
『晩飯買いに寄って、会ったのか?
 手抜き料理の二人がうまく出会ったわけだな』
ととりあえず、悪態をつく。

 だが、ほっとしているようでもあった。

「ひよりさんが消えたことと、七竃は関係なかったのかしら」

 そう呟きながら、だが、それでは、あの日、ラジオ番組中起こった怪現象はなんだったのだ、と思ってしまう。

 そのとき、ピンポーン、とチャイムが鳴るのが聞こえた。

 槻田にも聞こえたらしく、
『誰が来たんじゃないか?』
と言ってくる。

「……間違いじゃない?」

 ピンポーン。

『鳴ってるだろ』

 危ないから、出なくていいから覗いてみろ、と槻田は言う。

 そうですね。
 こんな時間に危ないですよね。

 普通、人は来ない時間帯だし。

 危ない人、しか来ませんよね、と思いながら、七月がそっと魚眼レンズで覗くと、なんと、仙石が居た。

「仙石のおじ様っ」

 そう槻田に向かって言いながら、慌ててドアを開ける。

「すみません。
 おじ様、てっきり……」
と七月が言いかけたとき、

「てっきり?」
と三人の声が聞こえてきた。

 仙石、槻田、そして、

 仙石の後ろに居た――

「やあ、此処が姪御さんのお住まいですか。
 いいマンションですね」
とにっこり微笑む高岡が……。

 貴方、昨日来たばっかりですよね~っ、と七月は睨んだが、高岡は素知らぬ顔をしていた。
 



 急な出張のついでに寄ったという仙石は、妻に持たされたらしい食料品を山と持ってきてくれていた。

 それを高岡が台所に運んでくれる。

「なにしに来たんですかっ」
と七月が高岡に小声で言うと、

「いやいや。
 仙石さんがちょうど姪のところに行くというから。

 俺が仙石さんと来たという証拠を残しておかねばな、と思って」
と高岡は言ってくる。

 此処でいいか、とキッチンのテーブルの上に紙袋を二つ置いたあとで、高岡は、
「いやあ、可愛い姪御さんですよね。
 先日も槻田と一緒に市長校舎に来てくださったんですよ」
と笑いながら、仙石の居るコタツの部屋へと行く。

 こらーっ。
 槻田先生まで売ったなっ。

 貴方が私を呼んだから、先生が来る羽目になったんでしょうがっ。

 まるで、槻田先生が向こうへ戻ってからも、頻繁にこちらに来ては、私を連れ歩いているみたいじゃないですかっ、と七月は高岡を睨む。

 急いで淹れたお茶を手に、七月も負けじと、仙石の許に行き、
「高岡市長が、槻田先生と橋本さんと集まられるというので、私も連れていっていただいたんです」
と笑顔で言った。

「ご存知でしたか? おじ様。
 市長校舎には、ぬら……」

 あっ、こらっと目だけで睨んで、高岡は振り返り、

「寒いですねっ、仙石さん、この部屋っ。
 霊でも出るんじゃないですかねっ?」
と今度は英嗣を売りにかかる。

 槻田兄弟の大安売りだな……と思いながら、七月は淡々とした口調で言った。

「……ストーブでもつけられたらどうですか、市長」

 貴様が自分で灯油を入れたストーブをなっ、と目で訴えながら、七月は高岡の前に紅茶を置いた。

 相変わらず、なにを考えているのかわからない仙石には、本当はなにもかもわかっているのかもしれないが。

 ただ笑って、そんなやりとりを眺めている。




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