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呪いの箱を見つけました
悪王子の悪な計画
しおりを挟むまあ、特に好かれたいわけでもないから、格好つけなくていいからかな、
と思う葉名の前で、准は真剣に棚に並ぶカップ麺を眺めている。
その整いすぎているせいか、なにか含みがあるように見える横顔を見ながら、
悪代官はないなー。
やっぱ、悪王子だなー、
と思ったとき、准が振り向いた。
「なに人の顔見て笑ってんだ?」
さては、見惚れていたか、と言われ、慌てて、
「ちっ、違いますよっ。
やっぱ、悪王子かなと思っただけですっ」
とうっかり言ってしまい、ああっ、すみせんっ、と謝った。
だが、准は、
「いや、別にいいぞ」
と笑って言ってくる。
「とりあえず、俺のことを王子だとは思ってるわけだろ?」
いやいや、そこだけ強調しないでください、照れるではないですか、と葉名がうつむくと、
「なにやってんの」
という声が背後でした。
「何処のバカなカップルの会話だよ」
買い物袋を手に誠二が立っていた。
「またね、准。
葉名さん、こいつと縁が切れるように、男運が良くなる植物、仕入れとくから、今度、おいで。」
そう淡々と語る誠二を、どんなお花屋さんですか……と思いながら、見ていたのだが。
誠二は出口で、たくさんのビニール袋を抱えて出て行こうとしているおばあちゃんに、
「大丈夫ですか?」
とあの穏やかな笑顔で話しかけていた。
「誠二さんって、おばあちゃんにやさしいですよね」
「あいつ、ばあちゃんっ子だからな。
俺もだが」
とコーンの缶詰を手に言ったあとで、准はこちらを見、
「嫌か、そういうの」
と言ってきた。
「いえ、別に。
マザコンだと、ちょっと気になりますが」
と答える。
なんでだろうな。
おばあちゃんが好きとか言われたら、やさしい感じがするのに、母親が好きとか言われると、ちょっと引く。
おばあちゃん好きでも母親好きでも身内にやさしいことには違いないのに。
そして、結婚したら、自分もその身内になるのに。
うーむ。
何故、母親好きだと抵抗があるのかな?
おばあちゃんがいろいろ言ってくるとか聞かないけど、姑はいろいろ口を出してくると聞く。
そんなとき、嫁ではなく、母親の意見に従ってしまいそうだからか? と何故か、結婚後のことに思いを馳せてしまった葉名の前で、
「よし、葉名。
今夜は、このコーンをツマミに飲もう」
と准はそのコーンの缶詰を手に言い出した。
ええっ? と言うと、
「いや、朝食にでもいいが。
俺はこれを大きなスプーンにザクーッとすくって食べるのが子どもの頃からの夢だったんだ」
なにかの付け合わせで出てるのとかじゃなくて、缶の中のコーンを山盛り食べてみたかった、と准は言う。
「まあ、なんとなくわかりますけど……」
と葉名が笑うと、よし、早速買って帰ろう、と言ったあとで、准は、
「いいな、お前んち。
なんか秘密の隠れ家的で。
子どもの頃、できなかった悪さがいろいろ出来そうだ」
と言って笑う。
おいおい。
うちを悪の巣窟にしないでくださいよ、とは思ったが。
この悪王子、缶詰から、コーンをザクーッとやるのが悪らしい。
ささやかすぎるな……。
やはり、おぼっちゃまだからか、と思いながら、葉名は、
「行くぞ、葉名」
意気揚々とレジに向かう准に、はいはい、とついて行った。
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