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ロミオとジュリエットは離婚しました ~シマトネリコ~
意外と頑固なんですよ
しおりを挟む「では、葉名の父親は二階堂社長なんですね?」
と練人に確認したあとで、准は、こちらを向いて、なんだ、と言う。
「お前と結婚するのなら、どんなろくでなしの父親でも引き受けようと思っていたのに、全然ろくでなしじゃないじゃないか。
立派な方だぞ、二階堂社長は」
いや、経営者としてはですよ、と思いながら、葉名はそっぽを向く。
視界に先にあるリースの観葉植物が、シマトネリコに変わっているのに気がついた。
南国風のシマトネリコを見ていると、心が癒される。
街路樹として植えられているトネリコは落葉樹なので、観葉植物として、よく用いられているのは、この半常緑樹のシマトネリコの方だ。
うむ。
トネリコだったらバットの木だから、兄が余計なことを言いやがったら、これで撲殺するんだが、と思いながら、葉名はシマトネリコを見つめていた。
「まあ、葉名たちからすれば、我々は、ろくでなしなんでしょう。
狭いながらも楽しい我が家を捨てて出ていった人間なので」
敬語に戻り、練人はそう語り出す。
「桐島家と二階堂家は戦国時代の合戦のなんとやらが因縁の怨念で仲が悪いんですよ。
父と母はあるパーティで知り合い、恋に落ちました。
二人とも家を捨てて、一緒になったのですが。
私が大学生、葉名が高校生の頃、二階堂の祖父が倒れ、父は二階堂の家に帰る決心をしました。
実家とは縁を切る。
お前を選ぶと言ったはずの父のその行動に、母がキレて、別居から離婚に――」
「でもそれは、二階堂社長が親や会社を見捨てられなかったというだけで、悪人というわけではないのでは?」
と同じような立場にある准が父をかばう。
「そうなんですが。
母からすれば、あれだけ誓い合ったのに。
自分と親を天秤にかけて、結局、親を取ったように思えて、裏切られたと感じたんじゃないですかね?
母は、ああ見えて、頑固な人なんで」
と練人は苦笑いしていた。
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