クローバーをあげたくて

たみやえる

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キス 3

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 そんな洸夜を面白そうに眺めた環奈が、
「じゃあ、おやすみなさい。洸夜君」
と、わざわざ下の名前を呼んで手を振って行ってしまっても、洸夜はしばらくタオルを顔に押し当てたまま立ち尽くしていた。
 しばらくして。
「……こうや君」
 聞き覚えのある声に顔を上げれば、目の前に、風呂がえり脱いだ服が入っているであろうビニール袋を下げた冬木が立っていた。
「だ、大丈夫?」
と聞かれて、
「お前、なんてカオしてんの」
反対に洸夜の方から聞き返す。
「え。顔、変?」
眉を寄せた冬木が自分の顔にペタリと手のひらを押し当てる。
 問いかける目で見上げてくるから、洸夜は縦に首を振って、
「不機嫌そうな、怒ってるような、困ってる……みたいな顔してる」
と答えた。
「それは……きっと、こうや君のが感染うつったんだよ」
「オレが? 怒ってる?」
まさかと呟くと、
「だって、こうや君キスされても全然嬉しそうじゃない」
と言ってくる。
 それがあまりに真剣そうなので、
「心配してくれてんの?」
と聞くと、冬木はもう一度こくりと首を垂れた。
「バカじゃないの」
と、洸夜が言い放つ。
(キスなんて、どうでもいい)
……のだ。今の洸夜には、環奈とのそれは単なる接触事故でしかない。
 そして、俯いたまま体をこわばらせて立ち尽くしている冬木に背を向ける。
「消灯時間、すぐだからお前も早く戻れよ」
 他人に囲まれている自分とそうじゃない冬木。
 胸の奥のざらつきに歪む自分の顔を見られなかっただろうか。
「こうや君!」
と、もう一度呼ばれ踏み出していた足を一旦止める。
「……それから、ソレ。仮にもオレは上級生なんだから、呼び方、考えろっつぅの」
 洸夜はそのまま振り返らず、割り当てられた自分達の部屋に戻っていった。



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