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しおりを挟む「あははっトーイに心配されるとはね。もう少しで完成するからワクワクして検証を続けてしまってね、気づいたら睡眠時間が無くなっている事が多いんだよねー」
ニコル先生は笑いながら話しているけど、笑うと隈がもっと目立ってしまっている……
それにしても赤内傷の内服薬が完成したら凄い事だ。
今までならポーションか効かない人に対して抗生剤を毎日病院で注射するしか無かったのが、経口摂取できるならわざわざ療養中の患者を無理させて病院に連れて行かなくても良くなるんだもんな。
患者や家族の負担が随分軽減されるだろう……ニコル先生は本当に凄い!!
「トーイとエネの仕事が慣れて来ただろうから、そろそろ様子を見に来たんだよ。でも2人の様子を見ると上手くやっているみたいだね。後から奥にいるランド店長にも会っていくね」
「はい!!やっと俺も見習いじゃなくなりまして、お店の対応も最初に比べたら慣れてきました」
「先生、僕はこの支店と、今は経営の勉強を少しやってます」
「そうか!!エネもトーイも頑張っているね!!じゃあ……ランド店長は調合室でしょう?奥に行かせてもらうね」
そう言ってニコル先生は店の奥に入って行った。
ワンスター薬局の監修をしているニコル先生は中級薬剤師を目指しているランド店長の勉強の進行状況の確認とアドバイスをかけてあげる予定だという。
「トーイ……ニコル先生が凄いのは知っているけどさ、一体いつ寝てるんだろうか?だって学園の教授で薬剤の開発していて薬局の監修だろう?」
「そうだね。赤内傷は元々教授としての研究の延長で開発して貰っているけど、最近は身体を壊すんじゃないかっていう位研究を続けていて心配なんだ……。
周りは先生の身体を心配しているけど、薬や病気のエキスパートである先生に直接言える人がいなくてね……俺やエネみたいな学生からの方が先生に言いやすいと思うからエネからも休んで欲しいと先生に言ってくれないかな?」
「分かった。先生がまた店頭に戻ったら俺からも言ってみるよ」
「エネ、ありがとう」
そう思って店頭で接客をしていたのだか、結局閉店するまでニコル先生が店の奥から出てくる事は無かった。
お店も閉店してお金の計算や在庫の確認も終わり、トーイと2人で調合室にランド店長とニコル先生を呼びに行くと、ランド店長は何十種類の調合をしていて、その背後でニコル先生が間違っていないか確認しているようだった。
「ごめんね。もうこんな時間だ!ランド店長。実技試験ならほぼ完璧だ。やっぱり問題があるとすれば筆記の方だと思う。勉強は毎日の積み重ねだからしっかりとね!!」
「はい!!ニコル先生に直接アドバイスを頂く事ができて感無量です。今日は本当にありがとうございました!!」
「うん」
ランド店長が顔を真っ赤にさせて凄く恐縮しながらニコル先生にお礼を言っていた。
ニコル先生は一生懸命頑張る人にとことん優しいからランド店長の事も大好きなんだろうな。
「じゃあ店を閉めますから帰りましょう。ランド店長、僕と一緒に帰りましょうか。家の方向も近いし。エネはニコル先生と帰る方向は一緒だったよね?ニコル先生はエネを家まで送って貰っても良いですか?」
トーイが先生と俺が帰る事をさりげなく提案してくれた。先生の体調が心配で、俺からも休んで欲しいと伝えて欲しいって言っていたからだろう。
「ああ分かった。じゃあ……エネ帰ろうか」
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