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しおりを挟む「はい。先生と一緒に帰るのは久しぶりですね」
「そうだね……最近は忙しくてね、薬が完成したら一段落するんだけどもう少しなんだ」
先生はそう言って赤内傷の病気について詳しく教えてくれた 。
赤内傷は免疫力の低下によって身体の細胞が細かく傷つけられる病気。
主な原因は老化だ。
普通の人はポーションによって傷が回復するが、老化で内臓の働きが弱くなり、ポーションや栄養がしっかり身体に吸収しないとポーションの効果はない。
老化ではないが、何らかの原因で一時的にポーションが効かなくなってしまった若者にもかかる病気なので比較的メジャーな病気でもある。
ポーション効果がない者が赤内傷にかかった場合には抗生剤と身体に吸収されやすい栄養を毎日注射する事になる。そうすれば死ぬことのない病気だ。
しかし毎日の通院は本人や家族の負担が多い為大変な病気とされている。
最近では医師の方がお宅に訪問してくれる場合もあるみたいだが、全ての患者に行き届くかといえばそうではないだろう。
でも先生の内服薬が完成したら口から薬が飲めるし、医師が薬を処方してくれれば自宅で服用できる事になるなんて正に画期的だと思った。
「それでもニコル先生は1人しかいないんですから……その目の隈は酷いと思いますよ。トーイや俺が言える立場じゃないのは重々承知してますが、少し休んで欲しいと思います」
俺なんかがニコル先生の身体を心配するなんておこがましいけれど……こんな俺の話でも聞いて休んでくれたらいいのにな。
「エネ……ふふっ前は私がエネの事を心配していた というのに逆になってしまったねぇ。私の事は心配しなくて良いんだよ。さて、話している内にエネの家に来てしまった。じゃあね」
「はい。先生送って下さってありがとう御座いました!先生も気をつけて帰って下さいね!!」
「うん。エネ……あれっ??」
先生は自分でもおかしいと思ったのだろう、俺と別れる際にフラフラして倒れそうになった。
「ニコル先生?」
先生はフラついた身体を立て直そうと脚をだすが、先生の方向感覚がおかしくなっているのか上手く自分の身体を支える事ができなかった。
「あっ……」
「先生っ!!危ないっ!!」
先生がフラついた事にびっくりして咄嗟にニコル先生の脇を支えてから抱き締めた。
先生が倒れそうだ!!
「先生大丈夫ですか!!このまま1人で帰らせる訳にはいきません。俺の家に来て横になりましょう!!」
先生を道端で寝かせる訳にはいかない!!俺の部屋は狭いけど道よりはマシだし俺のベッドで横になって貰おう。
「先生?先生?俺の家に行きますからね」
「う……」
先生はやはり方向感覚がおかしくなっているのか自分で歩くのは無理そうだった。俺にもたれ掛かる先生をおんぶしてフラフラしながらも何とか自分のベッドまで運ぶ事ができた。
俺に力があったらヨタヨタしないでもう少し先生に負担をかけずに先生を運べたけど……。
俺のベッドで横になっているニコル先生はスヤスヤ眠っていた……これって多分寝不足だよな……。
念の為、魔法で簡単なバイタルチェックをしてみた。体温と呼吸と血圧、脈拍を確認してみると正常範囲内だったので今の所は騒がずに先生の様子を見た方がいいかな。
やはり寝不足の可能性が高いと思うし。
「先生には今睡眠が必要ですよ……ポーションで色んな怪我や病気も治してきた先生だけど、寝不足は治せないんですからね。俺の狭いベッドですけど……ゆっくり寝て下さいね」
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