御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
108 / 242
学院編

108 『九九』の授業

しおりを挟む
 次の計算の授業の時間。

 チャイムと同時にバタバタとディクソン先生が教室に入って来た。

 いつもゆったりとした動きのディクソン先生にしては珍しく息を切らしている。

「皆さん、大変な発見がありました! なんと、画期的な計算方法が見つかったのです!」

 ゼイゼイと息を切らしながらも大興奮のディクソン先生に皆は困惑気味だった。

 そんな生徒達をよそにディクソン先生はプリントを配り始めた。

 プリントを受け取った生徒達はそこに書かれている内容に更に怪訝な表情を浮かべる。

 そこに書かれていたのは『九九表』だった。

「『ににんがし』?『にさんがろく』?」

「先生! これは一体何の呪文ですか?」

 プリントに目を通した生徒が口々に質問する中、アーサーは驚いたように僕を振り返る。

 しまった。

 アーサーに説明するのを忘れていたな。

 さて、何と言って誤魔化そうか?

 いや、ここはちゃんと正直に伝えるべきだな。

 とりあえず僕は「後で」と口の動きだけでアーサーに伝えた。

 困惑する生徒達に向かってディクソン先生は得意気に説明を始める。

「それでは順を追って説明しましょう。これは『九九表』と言って、掛け算の式と答えが載っています。その下にある呪文のような言葉はその式の読み方です。これを覚える事によって掛け算の答えがすぐに出てくるようになります。では、皆さん。声を揃えて復唱しましょう」

 教室内に九九を復唱する生徒達の声が響く。

 勿論、僕も一緒に声を出すけれど、こんなふうに声を揃えて九九を言うのは小学生以来だな。

 ちょっと気恥ずかしいけれど、声を出さないと怪しまれちゃうからね。

 授業が終わるとすぐにアーサーが僕の所にやって来たが、ここで出来るような話ではない。

 そこでアーサーが口を開くよりも早く、僕の方から話しかけた。

「アーサー、今日帰りに僕の家に寄って行かないか? 一緒に九九の暗記をしようよ」

 それを聞いてアーサーは僕の意図を察してくれた。

「ああ、良いよ。僕も今、そう言おうと思っていたんだ」

 


 そして、放課後。

 僕の部屋でアーサーと二人きりになってからようやく僕は今回の騒動について話した。

「先日、僕が剣術の授業で滅茶苦茶痛がったのを覚えているかな?」

「ん? ああ、そういえばそんな事もあったような気がするな」 

 オーウェンが何処まで記憶を改ざんしたのかわからなかったけれど、どうやらそこの部分は残っていたようだ。

「その犯人はやっぱりジェイミーだったんだ。それでアーサーもその標的にされたんだ。そこへマーリン先生が現れたんだ」

「マーリン先生が?」

 流石にヴィクター先生が初代王のヴィンセントで僕の先祖だとは言えないので、マーリン先生だけにしておこう。

「そうなんだ。ジェイミーが何らかの術を使っているのを察知して助けに来てくれたんだ」

「ジェイミーの奴! 明日、学院で会ったらぶん殴ってやろうか」

「止めてくれよ、アーサー。マーリン先生が記憶を改ざんしてくれたんだから、向こうはもう何も覚えていないよ」

 拳を握りしめて立ち上がるアーサーを僕は慌てて押し留める。

「はぁ、しょうがないな。それと『九九』とどういう関係があるんだ?」

「ジェイミーは僕とアーサーが自分よりも成績が良いのが気に入らなかったみたいだから、マーリン先生にお願いして、ディクソン先生から『九九』を広めてもらう事にしたんだ。そうすれば僕達だって堂々と『九九』を使えるだろ」 

 そう言うとアーサーは「うんうん」と頷いた。

「確かにね。計算の授業の時、うっかり『九九』が口から出そうで困っていたんだよ。まだ完璧に覚えていない所もあるからさ。順番に言わないとパッと出てこないんだよね」

 あー、わかる。

 確かに覚えたての頃はそんな感じだったな。

 とりあえず、アーサーにはマーリン先生の事は話さないように口止めしておこう。



 
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

処理中です...