御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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学院編

109 人違い

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 九九を習ってからというもの、ジェイミーはメキメキと計算能力が上がったようで、次の小テストでは僕とアーサーと並んで満点を取っていた。

 しかも三人のうち、最初に名前が呼ばれたものだから物凄く上機嫌である。

 そんな事で鼻を高くするなんて随分と単細胞な奴だな。

 そのせいか。はたまたオーウェンが記憶の改ざんをしたせいかはわからないが、あれ以来僕とアーサーを敵対視してくる事は無くなった。

 上昇志向があるのは良い事なんだけど、だからといって他人を蹴落とそうと考えるのは止めて欲しい。

 この先もなるべく目立たないように学院生活を送れるといいな。




 学院に入学してから半年が過ぎた。

 今のところ、エドワード王子と接触するような事はなく、学院生活も快適だ。

 マーリン先生とヴィクター先生にしても必要以上に僕に絡んで来ない。

 それはそれでちょっと寂しいと思うなんて僕は『かまってちゃん』なんだろうか?

 それはさておき。

 その日は図書室で面白そうな本を見つけて教室に戻っている時だった。

 廊下を歩いていると後ろから誰かの声が聞こえたが、聞き慣れない声だったので無視して歩いていた。

 すると、後ろからグイと肩を掴まれた。

「エド! こんな所で何をやっているんですか!? いくら学院内だからって一人で…。…あれ?」

 まくし立てていた声は僕が振り返ると、困惑したような声に変わっていった。

 振り返った僕もすぐにはそれが誰だかわからなかった。

 僕に似たような金髪だけれど、瞳は薄い緑色だった。

 その瞳が困惑したように僕を見つめている。

 誰だっけ?

 すぐには思い出せなかったが、どことなく似た顔立ちに見覚えがあった。

 アルドリッジ公爵家のブライアンだ!

 そう思い至り、僕の心臓はドキドキと早鐘を打つ。

 確か、今のアルドリッジ公爵の妹が僕とエドワード王子の母親である王妃だと聞いている。

 つまり、ブライアンは僕にとっても従兄弟に当たる存在だ。

 そんな彼がどうして僕を呼び止めたんだろうか?

 内心の動揺を悟られないように黙って立っていると、困惑していたブライアンはバツが悪そうな顔を見せた。

「すまない。後ろ姿が知っている人に似ていたので勘違いをしてしまったようだ」

 ペコリと頭を下げたまま動かないブライアンに「バレた」わけではないと知ってホッとする。

「いえ、大丈夫です。気にしていませんから」

 そう答えた途端、ブライアンは頭を上げて不思議そうに僕を見る。

「声までそっくりだな。後ろ姿が似ていると声まで似てくるんだろうか?」

「…さ、さぁ?」 

 そんな事を聞かれても答えようがない。

 ブライアンの言う『知っている人』とはおそらくエドワード王子の事だろう。

 そりゃ双子なんだから後ろ姿が似ていてもおかしくはないよね。

 そんな事は当然口に出来ないので僕は「それじゃ」と言ってきびすを返す。

「ああ、すまなかった」

 背中を向けて歩き出した僕にブライアンの謝罪が届く。

 僕は角を曲がると足を速めた。

 まさか、あそこでブライアンに出くわすとは思っていなかった。

 つくづく眼鏡をかけていて良かったと心の底から安堵した。

 今度から図書室に行く時はアーサーと一緒に行く事にしようと固く心に誓った。




 遠ざかるエドアルドの後ろ姿を見送りながら、ブライアンは首を捻った。

「どうして間違えたんだろう?」

 後ろ姿を見た時は間違いなくエドワード王子だと確信して声をかけた。

 それなのに振り返ったその顔には見慣れない大きな四角い黒縁眼鏡があった。

 それにどことなくエドワード王子とは佇まいが違っていた。

 慌てて謝罪したものの返ってきた声もエドワード王子にそっくりだった。

「…まあ、『他人の空似』っていうのは良くある事だしな」

 ブライアンは教室に戻りながらこの事をエドワード王子に報告すべきかと迷った。

『僕と間違えて他の生徒に声をかけただと? ハハッ! 随分と間抜けな話だな』

 そんなふうにエドワード王子に笑われるのが癪なのでこの件に関しての報告はしないとブライアンは決めた。
 

 
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