125 / 242
学院編
125 願望
しおりを挟む
僕は深く頭を下げているエドワード王子の肩を掴んでグイと引き上げる。
少し戸惑ったような表情をしたエドワード王子が僕を見つめる。
「エドワード王子が謝る必要はありません。捨てられた事はちょっと残念だけど、あのまま王宮にいて王子として生活しなくて良かったと思っているんです。何しろ前世では普通に庶民として生活していましたからね」
『庶民』とは言っても親がそこそこ大きな会社を経営していたから、割と裕福な方だったと思う。
もっともその立場も双子の弟に奪われたわけではあるが、それは今のエドワード王子には関係のない話だ。
それでもなお、エドワード王子は納得のいかないような顔をしている。
「それでもやはり実の父上から捨てられてショックを受けたのではないか? …そう言えば、母上はどうして父上に何も言わないんだ? 自分が産んだ子供が捨てられたというのに!」
あちゃー!
やっぱり今度は王妃の方に矛先が向かったか。
母親ですら僕を見捨てたと知ったらエドワード王子はどうするんだろうか?
僕がどう答えようかとチラリとオーウェンに助け舟を求めたが、優雅な笑みでバッサリと切り捨てられた。
「エドアルド君。この際ハッキリと言っておしまいなさい。王妃とどんな会話を交わしたのかを」
そう言ってくる所をみると、オーウェンは僕と王妃がどんな会話を交わしたのかを知っているんだろう。
まあ、自分が産んだ子を捨てられて放置している時点で母親として失格なんだろうから、これ以上エドワード王子からの評価が下がる事はないだろう。
僕は軽く息を吐くと三年前に王妃に会った時の事を話した。
「王妃様はご自分が双子を産んだ事をご存じありませんでした。偶然街で僕を見かけて、それでご自分が双子を産んだのではないかと思い、僕に接触してきたんです、その際『この国の王子はエドワード一人だ』と言われました。『双子だったと公表するつもりもない』とも」
途端にエドワード王子の顔が苦いものを噛んだような表情になる。
「母上は、どちらかと言えば父上を嫌っている。だから君を王宮に引き取りたいとは思わないのだろう…」
「嫌いならどうして結婚を…」
と、言いかけて思い留まった。
貴族社会なんて大体は政略結婚が主流なんだろう。
そんな中、好きでもない男の子供を産まされるなんて苦痛以外の何物でもないだろう。
母親だからって無条件で自分が産んだ子に愛情を注げるなんて単なる綺麗事でしかない。
「父上も母上も君に相当の無体を働いている。やはり両親に代わって謝罪させてくれ」
そう言ってエドワード王子は再び深々と僕に頭を下げる。
「だから。そういうのはいりませんってば! 顔を上げてください!」
僕は再びエドワード王子の顔を上げさせた。
「僕は今の生活に満足しているんです。それに謝ってほしいのは当人達でエドワード王子ではありません。もっとも今更あの二人とは顔を合わせたくはありませんけどね」
「…エドアルド」
ここに来てようやくエドワード王子は僕の名前を呼んでくれた。
その事に気付き僕が目を見張るとエドワード王子は少し照れたような尾をした。
「そう言えば『エドアルド』という名前は誰が付けたんだ? もしや今の養父母殿が付けたのか?」
「いえ、この名前は国王陛下が付けてくれました」
「そうか。それで二人の名前が似ているのか…」
エドワード王子はしみじみと呟くと真っ直ぐに僕の目を見据えてきた。
「本当に王宮に来るつもりはないのか?」
「ありません。僕はこのままエルガー家にいて将来は冒険者になりたいんです。だから『双子』だと公表もしてほしくありません」
「そうか。では、私と交流するのも駄目だろうか?」
突然、エドワード王子にすがるような目をされて僕は「うっ!」と言葉に詰まる。
自分と同じ顔でそんな表情をされては断るのが難しい。
だが。学院内でエドワード王子と交流すれば悪目立ちするに決まっている。
だからと言ってここでバッサリ切り捨てるのも可哀想だ。
「…時々であれば…」
圧に負けてポツリと呟くとエドワード王子の表情がパアッと明るくなった。
「ありがとう。クリフトンにはエドアルドの事は黙っておくように伝えるよ」
あー、まだクリフトンがいたな。
どうせならここに呼んだ方が一気に片付いて楽なのにな。
僕とエドワード王子の話が終わったタイミングでオーウェンが声を上げた。
「それではここで特別ゲストにこ登場いただきましょうか」
特別ゲストって誰だ?
少し戸惑ったような表情をしたエドワード王子が僕を見つめる。
「エドワード王子が謝る必要はありません。捨てられた事はちょっと残念だけど、あのまま王宮にいて王子として生活しなくて良かったと思っているんです。何しろ前世では普通に庶民として生活していましたからね」
『庶民』とは言っても親がそこそこ大きな会社を経営していたから、割と裕福な方だったと思う。
もっともその立場も双子の弟に奪われたわけではあるが、それは今のエドワード王子には関係のない話だ。
それでもなお、エドワード王子は納得のいかないような顔をしている。
「それでもやはり実の父上から捨てられてショックを受けたのではないか? …そう言えば、母上はどうして父上に何も言わないんだ? 自分が産んだ子供が捨てられたというのに!」
あちゃー!
やっぱり今度は王妃の方に矛先が向かったか。
母親ですら僕を見捨てたと知ったらエドワード王子はどうするんだろうか?
僕がどう答えようかとチラリとオーウェンに助け舟を求めたが、優雅な笑みでバッサリと切り捨てられた。
「エドアルド君。この際ハッキリと言っておしまいなさい。王妃とどんな会話を交わしたのかを」
そう言ってくる所をみると、オーウェンは僕と王妃がどんな会話を交わしたのかを知っているんだろう。
まあ、自分が産んだ子を捨てられて放置している時点で母親として失格なんだろうから、これ以上エドワード王子からの評価が下がる事はないだろう。
僕は軽く息を吐くと三年前に王妃に会った時の事を話した。
「王妃様はご自分が双子を産んだ事をご存じありませんでした。偶然街で僕を見かけて、それでご自分が双子を産んだのではないかと思い、僕に接触してきたんです、その際『この国の王子はエドワード一人だ』と言われました。『双子だったと公表するつもりもない』とも」
途端にエドワード王子の顔が苦いものを噛んだような表情になる。
「母上は、どちらかと言えば父上を嫌っている。だから君を王宮に引き取りたいとは思わないのだろう…」
「嫌いならどうして結婚を…」
と、言いかけて思い留まった。
貴族社会なんて大体は政略結婚が主流なんだろう。
そんな中、好きでもない男の子供を産まされるなんて苦痛以外の何物でもないだろう。
母親だからって無条件で自分が産んだ子に愛情を注げるなんて単なる綺麗事でしかない。
「父上も母上も君に相当の無体を働いている。やはり両親に代わって謝罪させてくれ」
そう言ってエドワード王子は再び深々と僕に頭を下げる。
「だから。そういうのはいりませんってば! 顔を上げてください!」
僕は再びエドワード王子の顔を上げさせた。
「僕は今の生活に満足しているんです。それに謝ってほしいのは当人達でエドワード王子ではありません。もっとも今更あの二人とは顔を合わせたくはありませんけどね」
「…エドアルド」
ここに来てようやくエドワード王子は僕の名前を呼んでくれた。
その事に気付き僕が目を見張るとエドワード王子は少し照れたような尾をした。
「そう言えば『エドアルド』という名前は誰が付けたんだ? もしや今の養父母殿が付けたのか?」
「いえ、この名前は国王陛下が付けてくれました」
「そうか。それで二人の名前が似ているのか…」
エドワード王子はしみじみと呟くと真っ直ぐに僕の目を見据えてきた。
「本当に王宮に来るつもりはないのか?」
「ありません。僕はこのままエルガー家にいて将来は冒険者になりたいんです。だから『双子』だと公表もしてほしくありません」
「そうか。では、私と交流するのも駄目だろうか?」
突然、エドワード王子にすがるような目をされて僕は「うっ!」と言葉に詰まる。
自分と同じ顔でそんな表情をされては断るのが難しい。
だが。学院内でエドワード王子と交流すれば悪目立ちするに決まっている。
だからと言ってここでバッサリ切り捨てるのも可哀想だ。
「…時々であれば…」
圧に負けてポツリと呟くとエドワード王子の表情がパアッと明るくなった。
「ありがとう。クリフトンにはエドアルドの事は黙っておくように伝えるよ」
あー、まだクリフトンがいたな。
どうせならここに呼んだ方が一気に片付いて楽なのにな。
僕とエドワード王子の話が終わったタイミングでオーウェンが声を上げた。
「それではここで特別ゲストにこ登場いただきましょうか」
特別ゲストって誰だ?
280
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる