御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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幼少期 

52 試作

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 しばらく待っていると執事は籠に入ったとうもろこしを抱えて戻って来た。

「こちらが畑で採れたとうもろこしです」

 テーブルの上に置かれたとうもろこしを手に取って僕はしげしげと眺めた。

 普段食べるとうもろこしよりもオレンジがかった実で皮が固い。

 やっぱり爆裂種のとうもろこしのようだ。

「このとうもろこしはこのままでは食べられません。ちょっと試してみたい事があるので厨房をお借り出来ますか?」

「試してみたい事ですか?」

 チャールズと執事は怪訝そうな顔をしていたけれど、藁にも縋る思いなのか、すぐに僕を厨房へと案内してくれた。

 厨房では、数人の料理人がいたが、突然現れた僕達に戸惑いを隠せない様だった。

「だ、旦那様? 一体どのようなご用件でしょうか?」

 料理長らしき人が代表してチャールズに問いかけてくる。

「ああ、少し厨房を借りるだけだ。気にせずに作業を続けてくれ」

「はい、かしこまりました」 

 料理長と料理人達は僕達に場所を開けてくれたけれど、こちらが気になるのか、チラチラと視線を向けてくる。

 僕は籠に入ったとうもろこしの実を外してみたが、まだ完全には乾燥していないみたいだった。

「どなたか風魔法が使える人がいますか?」

 チャールズに尋ねると、彼はコクンと頷いた。

「私が使えますが、風魔法をどうするのですか?」

「このとうもろこしの実を乾かしてください」

「風魔法で実を乾かす? 今までそんな事に風魔法を使った事はありませんがやってみましょう」

 チャールズはザルに入ったとうもろこしの実に風魔法を当てる。

 しばらく経つととうもろこしの実がカラカラに乾燥してきた。

「もう良いですよ。それではフライパンを火にかけて油を引いてください」

 チャールズはそこで料理長を呼んで、フライパンを火にかけさせた。

 まあ、貴族が調理器具を扱うなんてそうそうしないよね。

 料理長はフライパンを火にかけると、温まったところで油を入れた。

「このとうもろこしの実を入れて蓋をしてください。決して蓋を開けてはいけませんよ」

 料理長は怪訝な顔をしながら、とうもろこしの実をフライパンに入れると蓋をした。

 しばらく待っていると、やがて「ポンッ」と小さな破裂音がフライパンの中から聞こえてきた。

「な、何ですか!? 今の音は!?」

 チャールズだけでなく、料理長も驚いている。

 そして厨房にいた人が皆、僕達の周りに押し寄せてきた。

 やがて破裂音がひっきりなしに鳴り響き出す。

「だ、旦那様! 何が起こっているのでしょうか!?」

 料理長がフライパンの柄を握ったまま、オロオロしている。

「エドアルド様、これは一体!?」

 やがて、破裂音が聞こえなくなったので、火を消してもらってフライパンの蓋を取って貰った。

「こ、これは!?」 

 チャールズ達は驚いているが、僕は懐かしいポップコーンを見て顔をほころばせた。

「こうすると、僕達にも食べられる物になるんですよ。少し塩を振ってください」

「は、はい」

 料理長がポップコーンの上にパラパラと塩を振りかけた。

 僕はフライパンに手を伸ばしてポップコーンを一つ取り口に運ぶ。

 …うん。

 なかなか良く出来てるな。

「どうぞ、食べて見てください」

 僕が勧めるとチャールズは恐る恐る手に取ったが、すぐには口に入れなかった。

 不思議そうな顔でポップコーンを凝視している。

「これが、さっきのとうもろこしなんですか? どうしてこんなになるんでしょう?」

「このとうもろこしは熱を加えると膨らんでこんな形になるんです。まずは食べてみてください」 

 僕が口に入れたのを見ていたので、チャールズはようやく決心してポップコーンを口に入れた。

 もぐもぐと咀嚼したと思うと、驚いたように目を見開いている。

「あれほど固かった実がこんなに柔らかくなるなんて…」

「旦那様、私も食べてみてよろしいでしょうか?」

 料理長がチャールズに許可を求めてくると、他の料理人達もこぞって試食を求めてきた。

「ああ、食べてみなさい」

 チャールズが許可すると、皆が一斉にフライパンに手を伸ばしている。

 この後はチャールズとの話し合いだな。

 その前にもう少しポップコーンを堪能することにしよう。


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