35 / 57
35 来客
しおりを挟む
お祖父様は表情には表さないものの、かなり憤慨していることがわかる。何しろ周りの空気がひんやりしてきたからね。
お祖母様は今にも卒倒しそうな程に顔を青ざめさせて僕の側に駆け寄ると、その場に跪いて僕の顔を両手で包んだ。
柔らかくて暖かな手で頬を包まれると、それだけで幸せな気持ちになってくる。
「お祖母様、僕は大丈夫ですよ。あの火事で魔力が覚醒して、アーサーが僕を助けてくれたんです。あの火事がなかったら僕は今も孤児院にいて、お祖母様達に会えなかったかもしれません」
そう告げるとお祖母様は何も言わずにただ僕をギュッと抱きしめてくれた。
もう小さな子供ではないけれど、こうして抱きしめて貰えるのはとても安心する。
他人の心臓の音を聞くだけで、僕自身も生きているんだと実感出来るからだ。
お祖母様はしばらく僕を抱きしめていたが、やがて僕から体を離すと自分の席へと戻って行った。
チラリとお祖父様に目をやると表情は変わらないものの何故か羨ましそうな目をしているように見えた。
お祖母様に抱きしめられる僕が羨ましいのか、僕を抱きしめるお祖母様が羨ましいのか、どっちだろう?
「それで、魔力が覚醒したから帰って来たと言うわけか。どうやって王都まで帰って来たんだ」
お祖母様が座り直したのを確認して、お祖父様が更にアーサーに質問した。
「流石に私とジェレミーだけでは王都は目指せないから、旧友に助っ人を頼んだんだ」
アーサーが言うとシヴァが僕の影から飛び出して来ると、僕の側に立った。
突然現れたシヴァにお祖母様は「キャッ」と声をあげ、お祖父様は目を見開いた。
「…まさか、神獣様?」
シヴァの登場にはお祖父様も驚いたようだが、相変わらず表情には表れずにリアクションが薄い。
シヴァはソファーに飛び乗ると僕の隣に寝そべると、お祖父様に話しかけた。
「今はジェレミーの従魔だ。不用意に漏らすなよ」
お祖父様の言葉には僕の方が驚いた。シヴァってやっぱり神獣だったんだ。
普通の魔獣じゃないとは思ってたけれど、本当に神獣だとは思わなかったよ。
そこで扉がノックされた。
「入れ」とお祖父様が告げると同時にシヴァとアーサーは姿を消した。
扉が開いて家令がお祖父様の所に歩み寄ってきた。
「侯爵家の方がお見えです」
母上の実家の侯爵家の名前が告げられると、お祖父様は頷いて「こちらに通せ」と言った。
家令が応接室を出てしばらくすると、再び扉がノックされて一組の男女が部屋の中に入ってきた。
扉が閉まると同時にその人たちはお祖父様の側に寄ると、床に座り込み頭を擦りつけんばかりの土下座をした。
「公爵様! この度は私どもの娘が大変なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!」
まさか、この世界でも土下座があるなんて思わなかったな。
お祖父様は相変わらずの醒めた目で二人を見ていたが、ふうっと一つため息をついた。
「もう謝罪はいらん。こうしてジェレミーも戻って来たからな。それにジュリアは催眠剤を飲まされていたと聞く。ジュリアの意志で家を出たわけではないようだ」
そう言われても侯爵夫妻、つまり母方の祖父母は床に頭を擦り付けたままで動こうとしない。
見かねたお祖母様が、僕にこう告げた。
「ジェレミー。こちらもあなたのお祖父様とお祖母様よ。お席に案内して差し上げてちょうだい」
僕は頷いて立ち上がると、土下座をしたままの二人に近付いた。
二人の前にしゃがんでそれぞれの手を取ると、お祖父様とお祖母様がハッとして顔をあげた。
お祖父様もそれなりにイケメンだし、お祖母様は母上に似て美人だった。
貴族の人達ってイケメンと美人しかいないのかな。
そんな事が頭をよぎったがここで言うことではないと、頭から追い払って二人にニコリと笑いかけた。
「お祖父様、お祖母様。お会いできて嬉しいです。こちらにお座りください」
僕は公爵家のお祖父様達の前に二人を案内して座らせると、その間にある一人がけのソファーに腰を下ろした。
あれ?
この配置だと僕が一番上座に座ってない?
公爵家のお祖父様達も一人がけのソファーだから関係ないのかな?
侯爵家のお祖父様達にもお茶が用意されて、使用人が退出すると、ようやく落ち着いたようだ。
それにしてもどちらの祖父母も僕が公爵家に戻ってすぐに会いに来なかったのは何故だろう。
公爵家の方は先程、忙しかったからだと言われたが、侯爵家の祖父母は自分の娘に会いに来ても良さそうなものなんだけど…。
すると僕の顔を見ていた公爵家のお祖母様がふふっと笑った。
「ジェレミー。何か言いたい事があるんでしょう?」
そんなに僕はバレバレな顔をしていたんだろうか?
お祖父様や父上みたいなポーカーフェイスなんて僕にはできそうもないな。
「いえ、どうして母上の方のお祖父様達は、僕や母上に会いに来なかったのかな、と…」
僕がちょっと寂しそうな顔をしてみせると侯爵家のお祖父様達は焦ったように僕に話しかけてきた。
「ジェレミー。決してお前に会いたくないわけじゃなかったんだよ。公爵家のお二人がお前に会っていないのにそれを差し置いて私達が会いに行くわけにはいかなかったからだよ」
「そうよ。それにジュリアとはお茶会で何度か顔を合わせていたから、そのときにあなたの様子を聞いていたの。だから今日こうして会えるのをとても楽しみにしていたのよ」
つまり公爵家に義理立てをしていたってことか。
「わかりました。僕も今日、お会いできてとても嬉しいです。」
ニコリと笑って四人を見回すと、公爵家のお祖父様以外は感激したような顔で僕を見つめてきた。
こうしてお祖父様達との顔合わせは何事もなく無事に終わった。
お祖母様は今にも卒倒しそうな程に顔を青ざめさせて僕の側に駆け寄ると、その場に跪いて僕の顔を両手で包んだ。
柔らかくて暖かな手で頬を包まれると、それだけで幸せな気持ちになってくる。
「お祖母様、僕は大丈夫ですよ。あの火事で魔力が覚醒して、アーサーが僕を助けてくれたんです。あの火事がなかったら僕は今も孤児院にいて、お祖母様達に会えなかったかもしれません」
そう告げるとお祖母様は何も言わずにただ僕をギュッと抱きしめてくれた。
もう小さな子供ではないけれど、こうして抱きしめて貰えるのはとても安心する。
他人の心臓の音を聞くだけで、僕自身も生きているんだと実感出来るからだ。
お祖母様はしばらく僕を抱きしめていたが、やがて僕から体を離すと自分の席へと戻って行った。
チラリとお祖父様に目をやると表情は変わらないものの何故か羨ましそうな目をしているように見えた。
お祖母様に抱きしめられる僕が羨ましいのか、僕を抱きしめるお祖母様が羨ましいのか、どっちだろう?
「それで、魔力が覚醒したから帰って来たと言うわけか。どうやって王都まで帰って来たんだ」
お祖母様が座り直したのを確認して、お祖父様が更にアーサーに質問した。
「流石に私とジェレミーだけでは王都は目指せないから、旧友に助っ人を頼んだんだ」
アーサーが言うとシヴァが僕の影から飛び出して来ると、僕の側に立った。
突然現れたシヴァにお祖母様は「キャッ」と声をあげ、お祖父様は目を見開いた。
「…まさか、神獣様?」
シヴァの登場にはお祖父様も驚いたようだが、相変わらず表情には表れずにリアクションが薄い。
シヴァはソファーに飛び乗ると僕の隣に寝そべると、お祖父様に話しかけた。
「今はジェレミーの従魔だ。不用意に漏らすなよ」
お祖父様の言葉には僕の方が驚いた。シヴァってやっぱり神獣だったんだ。
普通の魔獣じゃないとは思ってたけれど、本当に神獣だとは思わなかったよ。
そこで扉がノックされた。
「入れ」とお祖父様が告げると同時にシヴァとアーサーは姿を消した。
扉が開いて家令がお祖父様の所に歩み寄ってきた。
「侯爵家の方がお見えです」
母上の実家の侯爵家の名前が告げられると、お祖父様は頷いて「こちらに通せ」と言った。
家令が応接室を出てしばらくすると、再び扉がノックされて一組の男女が部屋の中に入ってきた。
扉が閉まると同時にその人たちはお祖父様の側に寄ると、床に座り込み頭を擦りつけんばかりの土下座をした。
「公爵様! この度は私どもの娘が大変なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!」
まさか、この世界でも土下座があるなんて思わなかったな。
お祖父様は相変わらずの醒めた目で二人を見ていたが、ふうっと一つため息をついた。
「もう謝罪はいらん。こうしてジェレミーも戻って来たからな。それにジュリアは催眠剤を飲まされていたと聞く。ジュリアの意志で家を出たわけではないようだ」
そう言われても侯爵夫妻、つまり母方の祖父母は床に頭を擦り付けたままで動こうとしない。
見かねたお祖母様が、僕にこう告げた。
「ジェレミー。こちらもあなたのお祖父様とお祖母様よ。お席に案内して差し上げてちょうだい」
僕は頷いて立ち上がると、土下座をしたままの二人に近付いた。
二人の前にしゃがんでそれぞれの手を取ると、お祖父様とお祖母様がハッとして顔をあげた。
お祖父様もそれなりにイケメンだし、お祖母様は母上に似て美人だった。
貴族の人達ってイケメンと美人しかいないのかな。
そんな事が頭をよぎったがここで言うことではないと、頭から追い払って二人にニコリと笑いかけた。
「お祖父様、お祖母様。お会いできて嬉しいです。こちらにお座りください」
僕は公爵家のお祖父様達の前に二人を案内して座らせると、その間にある一人がけのソファーに腰を下ろした。
あれ?
この配置だと僕が一番上座に座ってない?
公爵家のお祖父様達も一人がけのソファーだから関係ないのかな?
侯爵家のお祖父様達にもお茶が用意されて、使用人が退出すると、ようやく落ち着いたようだ。
それにしてもどちらの祖父母も僕が公爵家に戻ってすぐに会いに来なかったのは何故だろう。
公爵家の方は先程、忙しかったからだと言われたが、侯爵家の祖父母は自分の娘に会いに来ても良さそうなものなんだけど…。
すると僕の顔を見ていた公爵家のお祖母様がふふっと笑った。
「ジェレミー。何か言いたい事があるんでしょう?」
そんなに僕はバレバレな顔をしていたんだろうか?
お祖父様や父上みたいなポーカーフェイスなんて僕にはできそうもないな。
「いえ、どうして母上の方のお祖父様達は、僕や母上に会いに来なかったのかな、と…」
僕がちょっと寂しそうな顔をしてみせると侯爵家のお祖父様達は焦ったように僕に話しかけてきた。
「ジェレミー。決してお前に会いたくないわけじゃなかったんだよ。公爵家のお二人がお前に会っていないのにそれを差し置いて私達が会いに行くわけにはいかなかったからだよ」
「そうよ。それにジュリアとはお茶会で何度か顔を合わせていたから、そのときにあなたの様子を聞いていたの。だから今日こうして会えるのをとても楽しみにしていたのよ」
つまり公爵家に義理立てをしていたってことか。
「わかりました。僕も今日、お会いできてとても嬉しいです。」
ニコリと笑って四人を見回すと、公爵家のお祖父様以外は感激したような顔で僕を見つめてきた。
こうしてお祖父様達との顔合わせは何事もなく無事に終わった。
36
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる