【完結】世界で一番不幸な令嬢の行く末は…?

伽羅

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69 独房

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 レオナルドがそっとその扉のノブを回すと、ゆっくりと扉は内側に開いた。

「ここは…? 独房か?」 

 レオナルドに続いてアベラルド王太子とビアンカが中に入ると、通路を挟んで両側に独房が三つずつ並んでいた。

 通路に面している方はすべて鉄格子で出来ていて中が丸見えだ。

 最初の独房には左右どちらも空っぽだった。

 二番目には左側の方の独房に奥に置いてあるベッドに横たわっている人影が見えた。

 その人物は足音に気付いたらしく、こちらに向かって手を伸ばしている。

「…だ、誰か…。助け…て…」

 消え入りそうな声にレオナルドが独房の入り口を開けようと試みるが鍵がかかっていた。

「鍵が…。何処かに鍵はないか?」

 レオナルドが辺りを見回すと入って来た扉の横の壁に鍵束がぶら下がっていた。

 アベラルド王太子が鍵束をレオナルドに渡すと、レオナルドは鍵をガチャガチャ言わせながら鍵を開けた。

 レオナルドに続いてアベラルド王太子とビアンカは独房の中に足を踏み入れる。

 横たわっているのは中年男性で、やせ細り目は落ち窪んでいた。

「アベラルド様。少しだけ回復を。話が出来る程度でお願いします」

 何かの罠かもしれない事を考慮したのか、レオナルドがそうアベラルド王太子に願う。

 アベラルド王太子はその男性に向かって手をかざすと「ヒール」と呟く。

 明るい光が男性の身体を包むと、しばらくして消えた。

 それだけで男性の顔には生気が戻り、はっきりとした眼差しでビアンカ達を見る。

「お、お前はクリスティナ? いや、クリスティナの娘のビアンカか?」

 アベラルド王太子の後ろから男性を見ていたビアンカは名前を呼ばれてコクリと頷く。

「ビアンカ嬢を知っているという事は、あなたがニコラス殿ですか?」

 ビアンカをその背に庇うようにアベラルド王太子が前に出ると、ニコラスは驚いたように目を見開いた。

「こ、これは、アベラルド様? 何故、このような場所に?」

 ニコラスは慌てて起き上がろうとしたが思うように力が入らず、またベッドへと倒れ込む。

「仕方ない。もう少し回復させよう」

 再びアベラルド王太子がニコラスにヒールをかける。

 途端に身体が軽くなったニコラスは起き上がるとベッドから降りてアベラルド王太子の前に跪いた。

「アベラルド様。私を回復させていただきありがとうございます。どうしてこちらにいらしたのかお聞きするよりも私の妻と息子の安否を確認させてください」

 ニコラスの話を聞いたレオナルドは独房から飛び出すと、他の独房を確認しに行った。

「アベラルド様! こちらにも別々に閉じ込められている人がいます」

 レオナルドの叫び声に真っ先にニコラスが独房を飛び出した。

「アウロラ!」

 ニコラスがの隣の独房には一人の女性がベッドに横たわっていた。

 ニコラスが抱き起こして呼びかけるが反応がない。

 ビアンカと一緒に隣の独房に入ったアベラルド王太子がその女性にヒールをかけると、ようやくうっすらと目を開けた。

「…ニコラス…?」

 目を開けたアウロラが自分を抱き起こしているニコラスを目にしてポツリと呟いた。

「…エミリオは?」

「わからない。まず最初に君を見つけたんだ」 

 ニコラスがアウロラを助け起こしている間にアベラルド王太子とビアンカはその隣の独房へと向かった。

 そこにはビアンカよりも年下らしい青年がベッドに横たわっていた。

「アベラルド様。彼にもヒールをかけてやってください」

 レオナルドが後から入って来たアベラルド王太子を振り返る。

「わかった」

 アベラルド王太子はベッドの横に立つと青白い顔をしているエミリオにヒールをかけた。

 みるみるうちにエミリオの顔色が良くなり、それと同時に意識を取り戻したようだ。

「エミリオ!」

 ニコラスがアウロラを伴って独房に入ってくると、呼びかけに反応してエミリオが目を開けた。

「ああ、エミリオ! 良かった! アベラルド様、ありがとうございます」

「いや。それよりも早くここから脱出しよう。色々と聞きたい事もある」

 ニコラスはコクリと頷くとアウロラとエミリオを伴って歩き出した。 
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