【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅

文字の大きさ
34 / 52

34 目覚め

しおりを挟む
 目を開けると、そこには見慣れた天蓋付きベッドの天井が見えた。

 どうやらいつもの私の部屋みたい。

 さっきまでの事は夢だったのかしら?

 そう思っていると部屋の扉が開いてドヤドヤと人が入って来る足音が聞こえた。

「アリス、大丈夫か?」

 真っ先に私の顔を覗き込んで来たのはお父様で、そのお父様を半ば押しのけるようにお兄様も顔を見せる。

「アリス、気分が悪いと言う事はないか?」

 二人共青褪めた顔で私を覗き込んでいるが、心配されている私よりお父様達の方がよほど病人のように見える。

「…気分が悪くはありませんが、お二人共どうされたのですか?」

 不思議に思って尋ねるとお父様達は揃って大きなため息をついた。

「アリス、覚えていないのか? お前はもう三日も眠ったままだったんだよ」

 …三日も?

 それじゃ、私がグレンダさんに攫われたのは夢でも何でもなかったの?

「医者の見立てだと魔力枯渇に陥っていたらしい。一体あそこで何があったんだ? エイブラムは未だに目が覚めないし…」

 お兄様の言葉に私はカバっと体を起こしたが、途端にクラリと目眩を起こしてそのまま前のめりに突っ伏した。

「アリス様、まだ無理をされてはいけません」

 すぐ脇に控えていたセアラが私の体を横たえて布団をかけ直してくれた。

 いつもと変わらないセアラの姿を見れて何故かホッとした。

「ありがとう、セアラ」 

 私がお礼を言うとセアラは何故かぎこちない笑みを返した。

 セアラの態度に釈然としない思いを抱きつつ、私はお父様達に目を移す。

「あの日、グレンダさんに貸して頂いた本を読んでいるとページが引っ付いた箇所があったんです。そのページを剥がして開いた途端、眩い光が放たれて気が付いたらあの部屋にいました」

 グレンダさんの名前を出しても驚いていないところを見ると、二人共グレンダさんが関わっている事は知っているのね。

「出口が開かなくて座り込んでいると、グレンダさんがエイブラム様を伴って部屋に入って来ました。エイブラム様は様子がおかしかったので、グレンダさんに何か術をかけられていたのかもしれません。グレンダさんは何故か私を敵対視していてエイブラム様に私を殺すように命じていました。エイブラム様が剣を振りかぶったところで叫んだら爆発音が起きて…。後の事は覚えていません」

 そこまで話すとお父様はそっと私の頭に手をやった。

「アリス、済まない。私があの女を処刑した時、もっと慎重になるべきだったのだ」

 どうしてお父様が謝るのかわからずに目を瞬いていると、お父様は過去の話をしてくれた。

 亡くなったお母様にライバル心を燃やしていた女性をいた事。

 お母様が亡くなった後でお父様に婚姻を迫り媚薬を盛ろうとして処刑された事。

 その際に不可解な事を口走っていたのに、碌な調査もせずその女性を処刑した事。

 その後のお父様の言葉は更に私を衝撃の渦の中に叩き落とした。

「あの女、コーデリアはグレンダと魂を入れ替えていたのだ」

 え?

 魂を入れ換える?

 そんな事出来るの?

 あまりにも話が荒唐無稽過ぎてにわかには信じられない。

 だけど、グレンダさんがそのコーデリアと言う女性だとすれば、あの時の彼女の言葉にも納得がいく。

「グレンダは既に拘束してある。まだ取り調べの最中だが、いずれは処刑されるだろう」

 魂を入れ替えてまでお父様に固執していたなんて…

 それだけ思いを寄せていたのに受け入れて貰えなかったなんて、コーデリアさんが少し可哀想になってくる。

「…それで、エイブラム様は?」

「あいつもどうやらグレンダに操られていたみたいだな。まだ目覚めないところを見るとかけられた魔術が解けていないのだろう」

 私に刃を向けたという事で何かしらの処罰は下るだろう。

 だけど、未だに目覚めないのは心配だ。

「お父様、お兄様。私をエイブラム様の所へ連れて行ってください」

 お父様とお兄様は少し渋っていたが、自分達が同席することを条件に面会を許してくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副隊長が過保護です~

百門一新
恋愛
幼い頃に両親を失ったラビィは、男装の獣師だ。実は、動物と話せる能力を持っている。この能力と、他の人間には見えない『黒大狼のノエル』という友達がいることは秘密だ。 放っておかないしむしろ意識してもらいたいのに幼馴染枠、の彼女を守りたいし溺愛したい副団長のセドリックに頼まれて、彼の想いに気付かないまま、ラビは渋々「少年」として獣師の仕事で騎士団に協力することに。そうしたところ『依頼』は予想外な存在に結び付き――えっ、ノエルは妖獣と呼ばれるモノだった!? 大切にしたすぎてどう手を出していいか分からない幼馴染の副団長とチビ獣師のラブ。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ」「カクヨム」にも掲載しています。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

乙女ゲームの世界に転移したら、推しではない王子に溺愛されています

砂月美乃
恋愛
繭(まゆ)、26歳。気がついたら、乙女ゲームのヒロイン、フェリシア(17歳)になっていた。そして横には、超絶イケメン王子のリュシアンが……。推しでもないリュシアンに、ひょんなことからベタベタにに溺愛されまくることになるお話です。 「ヒミツの恋愛遊戯」シリーズその①、リュシアン編です。 ムーンライトノベルズさんにも投稿しています。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

処理中です...