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39 エイブラムの困惑
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エイブラムは混乱の中にいた。
目を覚ますとそこには両親はおろか、国王陛下、アンドリュー王子、それにアリス王女が心配そうに自分の顔を覗き込んでいた。
何があったのかを問うと、国王陛下にそれよりも先に覚えている事を告げろと言われた。
そこでエイブラムは自分の記憶を探ると朧気ながら覚えている事があった。
騎士団長室にいると突然、グレンダが部屋を訪ねて来た。
自分に会いに来てくれた事が嬉しく、歓迎しようとしたが、グレンダはいつもと雰囲気が違った。
そもそも今日は魔術師団との合同演習はなかったはずだ。
それなのに何故、グレンダがここにやって来たのか訝しく思っていると、グレンダは何も言わずにエイブラムに近寄って来た。
その異様な雰囲気に思わず後ずさりしようとしたが、それよりも早くグレンダはエイブラムの首に腕を回すとキスをしてきた。
振りほどくよりも先に、エイブラムは自分の意識が無くなっていくのを感じていた。
そして気がつけばこうしてベッドに横たわっていたのだ。
それを告げると、国王陛下からは恐ろしい事実が伝えられた。
「我々が発見した時はエイブラムの剣は鞘から抜かれていた。そしてその先にはアリスが倒れていた」
国王陛下ははっきりとは口にしなかったが、エイブラムは自分の剣がアリス王女を害しようとしたのだと察した。
たとえ、グレンダに操られていたとしても、王族に剣を向けたという事実に変わりはない。
だが、それよりも衝撃の情報が国王陛下達が出て行った後で母親から告げられた。
「エイブラム。あなたはもう三日も意識が無かったの。それを先程、アリス王女があなたにキスをして目覚めさせたのよ」
……アリス王女のキスで目覚めた!?
まさか、と一笑に付すには重々しい両親の表情に、真実だと実感した。
「…アリス様が私にキスを…」
身内しかいなかったとはいえ、そのような行動をさせてしまった事を非常に申し訳なく思った。
それに、あれほどグレンダに傾倒していた気持ちが、まるで嘘のように消えている。
そもそも、どうしてあれほどまでにグレンダに固執していたのかがわからない。
グレンダは魔術師だ。
恐らくエイブラムの気付かない所でグレンダに夢中になるような術をかけていたのかもしれない。
だとすれば、アリス王女からのキスはそれすらも解除してしまったと言う事だろう。
「父上、母上。私はこの度の責任を取ってアリス王女を娶ろうと思います」
まだ動くには少し辛い身体に鞭打ってアリス王女の部屋を訪ねた。
だが、責任を取ると申し出たにも関わらず、アリス王女からは拒否をされてしまった。
その時のアリス王女の酷く悲しそうな顔が頭から離れない。
「…私は何か間違えてしまったのだろうか…」
ポツリと呟くも、母親は何も言わず苦り切った顔をしている。
アリス王女の部屋を出て、今度は国王陛下の執務室を訪れた。
「エイブラム、無理をせずに寝ていてもいいんだぞ」
そこにいたアンドリュー王子に気遣われたが、二人が揃っているならば、と先程アリス王女に告げた言葉を再度口にした。
「国王陛下、アンドリュー王子。どうか私に責任を取らせてください。アリス王女を娶ろうと思います」
だが、ここでも国王陛下とアンドリュー王子の賛同を得る事は出来なかった。
「いや、それには及ばん。あれしきの事で責任を取れとは言わんよ」
「そんなに気負わなくていいよ。アリスだって責任を取らなくていいって言ったんだろ? 本人がいいって言うんだから大丈夫だよ」
国王陛下もアンドリュー王子もアリスを手放したくないようだ。
確かにアリス王女がこの世界に戻って来てから日が浅いのは十分理解している。
だからといってエイブラムが責任を取らなくていいとはならないはずだ。
「目覚めたばかりで体調も万全ではないだろう。今日は自宅に戻ってゆっくり休め」
国王陛下に追い払われるように執務室を出たエイブラムは一旦自宅へと戻る事にした。
だが、このままでいいわけはないだろう。
エイブラムはどうやったらアリス王女に対して責任を取れるのか考え込むのだった。
目を覚ますとそこには両親はおろか、国王陛下、アンドリュー王子、それにアリス王女が心配そうに自分の顔を覗き込んでいた。
何があったのかを問うと、国王陛下にそれよりも先に覚えている事を告げろと言われた。
そこでエイブラムは自分の記憶を探ると朧気ながら覚えている事があった。
騎士団長室にいると突然、グレンダが部屋を訪ねて来た。
自分に会いに来てくれた事が嬉しく、歓迎しようとしたが、グレンダはいつもと雰囲気が違った。
そもそも今日は魔術師団との合同演習はなかったはずだ。
それなのに何故、グレンダがここにやって来たのか訝しく思っていると、グレンダは何も言わずにエイブラムに近寄って来た。
その異様な雰囲気に思わず後ずさりしようとしたが、それよりも早くグレンダはエイブラムの首に腕を回すとキスをしてきた。
振りほどくよりも先に、エイブラムは自分の意識が無くなっていくのを感じていた。
そして気がつけばこうしてベッドに横たわっていたのだ。
それを告げると、国王陛下からは恐ろしい事実が伝えられた。
「我々が発見した時はエイブラムの剣は鞘から抜かれていた。そしてその先にはアリスが倒れていた」
国王陛下ははっきりとは口にしなかったが、エイブラムは自分の剣がアリス王女を害しようとしたのだと察した。
たとえ、グレンダに操られていたとしても、王族に剣を向けたという事実に変わりはない。
だが、それよりも衝撃の情報が国王陛下達が出て行った後で母親から告げられた。
「エイブラム。あなたはもう三日も意識が無かったの。それを先程、アリス王女があなたにキスをして目覚めさせたのよ」
……アリス王女のキスで目覚めた!?
まさか、と一笑に付すには重々しい両親の表情に、真実だと実感した。
「…アリス様が私にキスを…」
身内しかいなかったとはいえ、そのような行動をさせてしまった事を非常に申し訳なく思った。
それに、あれほどグレンダに傾倒していた気持ちが、まるで嘘のように消えている。
そもそも、どうしてあれほどまでにグレンダに固執していたのかがわからない。
グレンダは魔術師だ。
恐らくエイブラムの気付かない所でグレンダに夢中になるような術をかけていたのかもしれない。
だとすれば、アリス王女からのキスはそれすらも解除してしまったと言う事だろう。
「父上、母上。私はこの度の責任を取ってアリス王女を娶ろうと思います」
まだ動くには少し辛い身体に鞭打ってアリス王女の部屋を訪ねた。
だが、責任を取ると申し出たにも関わらず、アリス王女からは拒否をされてしまった。
その時のアリス王女の酷く悲しそうな顔が頭から離れない。
「…私は何か間違えてしまったのだろうか…」
ポツリと呟くも、母親は何も言わず苦り切った顔をしている。
アリス王女の部屋を出て、今度は国王陛下の執務室を訪れた。
「エイブラム、無理をせずに寝ていてもいいんだぞ」
そこにいたアンドリュー王子に気遣われたが、二人が揃っているならば、と先程アリス王女に告げた言葉を再度口にした。
「国王陛下、アンドリュー王子。どうか私に責任を取らせてください。アリス王女を娶ろうと思います」
だが、ここでも国王陛下とアンドリュー王子の賛同を得る事は出来なかった。
「いや、それには及ばん。あれしきの事で責任を取れとは言わんよ」
「そんなに気負わなくていいよ。アリスだって責任を取らなくていいって言ったんだろ? 本人がいいって言うんだから大丈夫だよ」
国王陛下もアンドリュー王子もアリスを手放したくないようだ。
確かにアリス王女がこの世界に戻って来てから日が浅いのは十分理解している。
だからといってエイブラムが責任を取らなくていいとはならないはずだ。
「目覚めたばかりで体調も万全ではないだろう。今日は自宅に戻ってゆっくり休め」
国王陛下に追い払われるように執務室を出たエイブラムは一旦自宅へと戻る事にした。
だが、このままでいいわけはないだろう。
エイブラムはどうやったらアリス王女に対して責任を取れるのか考え込むのだった。
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