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3学年 後期
第219話
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「……何を言ってるの? 奈津希……」
「杉山……」
了との決勝戦を控え、選手の入場口から試合会場を見つめていた綾愛は、奈津希の突然の宣言に戸惑いの声を上げる。
それは隣にいる伸も同じだ。
そもそも、校内の選抜に選ばれていない時点で、伸は対抗戦参加資格がない状況だ。
それなのに、3位とはいえせっかく出場権を手に入れた奈津希が、それを棒に振るような選択をしたのだから、2人が戸惑うのも無理はない。
“ザワザワ……!!”
奈津希の宣言を聞いた会場の観客たちも同じだ。
それと、なんでここで伸の名前が出てきているのか分からず、騒然としている。
「ちょっと待て! 杉山、本気で言っているのか?」
いきなりの奈津希の発言に、教師の三門も戸惑っている。
校内の選抜から洩れ、出場権を手に入れた者へ決闘を申し込み、勝利して出場権を奪い取ろうと考える者はこれまでもいた。
その場合、出場権を持っている者が引き受けるメリットがないため、門前払いをするのが通例だ。
しかし、今回の場合はそれとは違う。
出場権を持っている奈津希の方が指名しての決闘だからだ。
この状況では止めるわけにもいかないが、三門は本気度を確かめるために奈津希へ問いかける。
「はい! 本気です!」
「……分かっ
少しでも言い淀んだり、表情に陰りでも見えようものなら、すぐにでも止めるつもりでいた三門だったが、全くためらわずに真剣な表情で返事をした奈津希に、それ以上言うことはできなくなった。
「新田!!」
「は、はい!」
奈津希の気持ちを確かめた三門は、選手入場口にいる伸に向かって大きな声で声をかける。
戸惑いから抜け出せていない伸は、その大声に詰まりながらも返事をした。
「杉山が対抗戦の出場権を懸けて決闘を申し込んでいるが、お前はどうする?」
「俺は……」
三門の問いに、伸はどう返事をするべきか悩む。
頭では現状を理解できている。
しかし、どうして奈津希がこんなことを言い出したのか分からない。
そう思って奈津希の方を見ると、真剣な目で自分を見ていることに気付いた。
「受けます!」
「……分かった!」
奈津希の真剣な表情を見て、断るという選択はできないと思った伸は、強い口調で返事をする。
伸のやる気も感じ取った三門は、頷きと共に試合会場の中心に立ち、観客席に向かって状況説明を始める。
「双方の合意が出たため、対抗戦出場権をかけて杉山と新田の決闘をおこなう! 尚、杉山は体力・魔力の回復を必要とするため、決闘は決勝戦後とする!」
奈津希は3位決定戦を終えたばかり、それを考慮し、三門は奈津希に体力・魔力を回復をするための時間を作ることにした。
そうして、いきなり決まった奈津希と伸の決闘が、決勝戦後に行われることが決定した。
「ハッ!」
「くっ!」
ひと騒動あったが、余栄通り校内選抜の決勝戦が行われることになった。
綾愛と了の試合だ。
両者とも対抗戦の出場権を手に入れているため、順位をつける必要性はない。
しかし、八郷学園の代表として恥ずかしくないよう、両者とも優勝を目指しての戦いが繰り広げられた。
「やっぱりか……」
最初のうちは互角だったのだが、次第に差が出始めた。
綾愛が押し始めたのだ。
予想通りの展開になり、了としては複雑な思いでいた。
1年の夏休み以降、苦手だった遠距離攻撃もできるようになり、了は自分でもかなり強くなれたと思っていた。
しかし、綾愛も成長しており、自分が彼女以上の実力が付いたとは思えないでいた。
それが現実として突き付けられたため、軽いショックを受けていた。
「……フッ!」
「……?」
不利な状況だろうと、負けを認めるわけにはいかない。
そのため、覚悟を決めた了は、薄く笑みを浮かべた。
了の笑みの意味が分からず、綾愛は訝しむ。
「ふぅ~……」
笑みを消した了は、すぐに表情を真剣なものに変え、木刀を居合の形で構えると、大きく息を吐いて集中し始めた。
「それは……」
その構えを見て、綾愛は了の考えを読み解く。
得意の高速接近からの居合斬り。
了がそれをおこなうつもりなのだと。
「……受けて立つわ」
次の行動が分かっている状況なら、攻撃を防ぐことは難しくないことは了も分かっているはず。
それなのにこの構えを取ったということは、何か策があるのか、分かっていても防げないレベルにまでこの技を昇華させてきたということなのか。
どちらかは分からないが、分からないからこそ防いでみせたい。
その考えから綾愛は正眼の構えを取り、了の攻撃を待ち構えることにした。
「………………」「………………」
両者とも無言で集中し、少しの間その時間が過ぎる。
「っ!!」
「っ!?」
居合の構えを取った了の姿が消える。
魔力を集めて身体強化した脚力による高速移動のため、消えたように見えるのだ。
これまでよりも更に上昇した速度に驚くが、目に魔力を集中することで、綾愛は了の姿をとらえている。
『ここっ!!』
とんでもなく速いが、見えている上に一直線に迫ってくるのなら対応できる。
了の接近に合わせるように、綾愛は木刀を振り始めた。
「ギッ!!」
“ビキビキッ!!”
「っっっ!?」
このまま接近すれば、自分よりも速く綾愛の攻撃が当たる。
最初からこうなることは分かっていた。
だからこそ、了は歯を食いしばる。
綾愛の攻撃が当たることによる痛みに備えるため、ではなく、違う痛みに備えるためだ。
全力の超高速移動からの方向転換。
それを無傷でおこなうには、自分の魔力操作技術は達していない。
ならばどうなるか。
筋肉の断裂により、足が悲鳴を上げたのだ。
「~~~っ!!」
方向転換した瞬間、了に強力な痛みが襲い掛かる。
しかし、その痛みを予想していた了は、悲鳴を上げるのを必死に抑え、綾愛に向かって木刀を振った。
“ガンッ!!”
「っっっ!?」
木刀を振り、無防備の綾愛に攻撃が当たる。
そう思っていた了の手には、人を打ったのとは違う感触が音と共に伝わってきた。
「どうして?」と思う了の目には、自分の攻撃を木刀で受け止めた綾愛の姿が映っていた。
「危なかった……」
身体強化による速度上昇する技術だけなら、自分より了の方が上だろう。
しかし、魔力操作技術なら自分の方が上、振っている途中の木刀を身体強化した腕力で無理やり方向転換する。
それによって、綾愛は了の攻撃を防いだのだ。
何とか防ぐことができたが、ギリギリの所だったため、綾愛は安堵の声を上げる。
「……ハハッ! 参った……」
片足犠牲にした攻撃を防がれてしまい、残った足だけでこれ以上綾愛と闘うことなどできない。
そう判断した了は、乾いた笑いと共に降参を宣言した。
「……悪いな」
「……何が?」
試合後の握手を交わすと、了が綾愛に謝罪の言葉をかける。
その意味が分からない綾愛は首を傾げた。
「本当は俺が伸に決闘を申し込むつもりだったんだ。それなのに、杉山に先を越されちまった……」
学園に入ってからの付き合いだが、何度も打ち合いをおこなっていたため、ずっと違和感があった。
伸は実力を隠しているのではないか、ということをだ。
打ち合いはいつも引き分け。
そんなことが続けば、そう感じるのが普通だろう。
きっと何か理由があると分かっていたが、3年最後の対抗戦に出て実力を示してほしい。
そう思って、校内戦が終了したら決闘を申し込もうと思っていたのだが、奈津希に先を越されてしまった。
2年連続で出場している自分よりも、奈津希の方が対抗戦に出場したいはずだというのにだ。
自分が準決勝で大橋に勝った時に宣言していれば、奈津希が損な役割をしなくて済んだというのにという思いから、了は奈津希の友人の綾愛にも謝りたかったのかもしれない。
「……金井君が謝ることはないよ。あれは奈津希が決めたことだし……」
奈津希だけでなく、了まで伸の実力をみんなに知らせたいと思っていたなんて気づかなかった。
決闘を申し込んだ奈津希も、同じことを考えていた了にも驚いたが、綾愛は2人を攻める気になれない。
「……それに、私も同じことを考えていたから……」
「……ハハッ、そうか……」
どうやら、綾愛までも最後の大会くらいは伸を出場させたいと考えていたらしい。
その言葉を聞いた了は、3人とも同じ考えをしていたことに思わず笑うしかなかった。
「杉山……」
了との決勝戦を控え、選手の入場口から試合会場を見つめていた綾愛は、奈津希の突然の宣言に戸惑いの声を上げる。
それは隣にいる伸も同じだ。
そもそも、校内の選抜に選ばれていない時点で、伸は対抗戦参加資格がない状況だ。
それなのに、3位とはいえせっかく出場権を手に入れた奈津希が、それを棒に振るような選択をしたのだから、2人が戸惑うのも無理はない。
“ザワザワ……!!”
奈津希の宣言を聞いた会場の観客たちも同じだ。
それと、なんでここで伸の名前が出てきているのか分からず、騒然としている。
「ちょっと待て! 杉山、本気で言っているのか?」
いきなりの奈津希の発言に、教師の三門も戸惑っている。
校内の選抜から洩れ、出場権を手に入れた者へ決闘を申し込み、勝利して出場権を奪い取ろうと考える者はこれまでもいた。
その場合、出場権を持っている者が引き受けるメリットがないため、門前払いをするのが通例だ。
しかし、今回の場合はそれとは違う。
出場権を持っている奈津希の方が指名しての決闘だからだ。
この状況では止めるわけにもいかないが、三門は本気度を確かめるために奈津希へ問いかける。
「はい! 本気です!」
「……分かっ
少しでも言い淀んだり、表情に陰りでも見えようものなら、すぐにでも止めるつもりでいた三門だったが、全くためらわずに真剣な表情で返事をした奈津希に、それ以上言うことはできなくなった。
「新田!!」
「は、はい!」
奈津希の気持ちを確かめた三門は、選手入場口にいる伸に向かって大きな声で声をかける。
戸惑いから抜け出せていない伸は、その大声に詰まりながらも返事をした。
「杉山が対抗戦の出場権を懸けて決闘を申し込んでいるが、お前はどうする?」
「俺は……」
三門の問いに、伸はどう返事をするべきか悩む。
頭では現状を理解できている。
しかし、どうして奈津希がこんなことを言い出したのか分からない。
そう思って奈津希の方を見ると、真剣な目で自分を見ていることに気付いた。
「受けます!」
「……分かった!」
奈津希の真剣な表情を見て、断るという選択はできないと思った伸は、強い口調で返事をする。
伸のやる気も感じ取った三門は、頷きと共に試合会場の中心に立ち、観客席に向かって状況説明を始める。
「双方の合意が出たため、対抗戦出場権をかけて杉山と新田の決闘をおこなう! 尚、杉山は体力・魔力の回復を必要とするため、決闘は決勝戦後とする!」
奈津希は3位決定戦を終えたばかり、それを考慮し、三門は奈津希に体力・魔力を回復をするための時間を作ることにした。
そうして、いきなり決まった奈津希と伸の決闘が、決勝戦後に行われることが決定した。
「ハッ!」
「くっ!」
ひと騒動あったが、余栄通り校内選抜の決勝戦が行われることになった。
綾愛と了の試合だ。
両者とも対抗戦の出場権を手に入れているため、順位をつける必要性はない。
しかし、八郷学園の代表として恥ずかしくないよう、両者とも優勝を目指しての戦いが繰り広げられた。
「やっぱりか……」
最初のうちは互角だったのだが、次第に差が出始めた。
綾愛が押し始めたのだ。
予想通りの展開になり、了としては複雑な思いでいた。
1年の夏休み以降、苦手だった遠距離攻撃もできるようになり、了は自分でもかなり強くなれたと思っていた。
しかし、綾愛も成長しており、自分が彼女以上の実力が付いたとは思えないでいた。
それが現実として突き付けられたため、軽いショックを受けていた。
「……フッ!」
「……?」
不利な状況だろうと、負けを認めるわけにはいかない。
そのため、覚悟を決めた了は、薄く笑みを浮かべた。
了の笑みの意味が分からず、綾愛は訝しむ。
「ふぅ~……」
笑みを消した了は、すぐに表情を真剣なものに変え、木刀を居合の形で構えると、大きく息を吐いて集中し始めた。
「それは……」
その構えを見て、綾愛は了の考えを読み解く。
得意の高速接近からの居合斬り。
了がそれをおこなうつもりなのだと。
「……受けて立つわ」
次の行動が分かっている状況なら、攻撃を防ぐことは難しくないことは了も分かっているはず。
それなのにこの構えを取ったということは、何か策があるのか、分かっていても防げないレベルにまでこの技を昇華させてきたということなのか。
どちらかは分からないが、分からないからこそ防いでみせたい。
その考えから綾愛は正眼の構えを取り、了の攻撃を待ち構えることにした。
「………………」「………………」
両者とも無言で集中し、少しの間その時間が過ぎる。
「っ!!」
「っ!?」
居合の構えを取った了の姿が消える。
魔力を集めて身体強化した脚力による高速移動のため、消えたように見えるのだ。
これまでよりも更に上昇した速度に驚くが、目に魔力を集中することで、綾愛は了の姿をとらえている。
『ここっ!!』
とんでもなく速いが、見えている上に一直線に迫ってくるのなら対応できる。
了の接近に合わせるように、綾愛は木刀を振り始めた。
「ギッ!!」
“ビキビキッ!!”
「っっっ!?」
このまま接近すれば、自分よりも速く綾愛の攻撃が当たる。
最初からこうなることは分かっていた。
だからこそ、了は歯を食いしばる。
綾愛の攻撃が当たることによる痛みに備えるため、ではなく、違う痛みに備えるためだ。
全力の超高速移動からの方向転換。
それを無傷でおこなうには、自分の魔力操作技術は達していない。
ならばどうなるか。
筋肉の断裂により、足が悲鳴を上げたのだ。
「~~~っ!!」
方向転換した瞬間、了に強力な痛みが襲い掛かる。
しかし、その痛みを予想していた了は、悲鳴を上げるのを必死に抑え、綾愛に向かって木刀を振った。
“ガンッ!!”
「っっっ!?」
木刀を振り、無防備の綾愛に攻撃が当たる。
そう思っていた了の手には、人を打ったのとは違う感触が音と共に伝わってきた。
「どうして?」と思う了の目には、自分の攻撃を木刀で受け止めた綾愛の姿が映っていた。
「危なかった……」
身体強化による速度上昇する技術だけなら、自分より了の方が上だろう。
しかし、魔力操作技術なら自分の方が上、振っている途中の木刀を身体強化した腕力で無理やり方向転換する。
それによって、綾愛は了の攻撃を防いだのだ。
何とか防ぐことができたが、ギリギリの所だったため、綾愛は安堵の声を上げる。
「……ハハッ! 参った……」
片足犠牲にした攻撃を防がれてしまい、残った足だけでこれ以上綾愛と闘うことなどできない。
そう判断した了は、乾いた笑いと共に降参を宣言した。
「……悪いな」
「……何が?」
試合後の握手を交わすと、了が綾愛に謝罪の言葉をかける。
その意味が分からない綾愛は首を傾げた。
「本当は俺が伸に決闘を申し込むつもりだったんだ。それなのに、杉山に先を越されちまった……」
学園に入ってからの付き合いだが、何度も打ち合いをおこなっていたため、ずっと違和感があった。
伸は実力を隠しているのではないか、ということをだ。
打ち合いはいつも引き分け。
そんなことが続けば、そう感じるのが普通だろう。
きっと何か理由があると分かっていたが、3年最後の対抗戦に出て実力を示してほしい。
そう思って、校内戦が終了したら決闘を申し込もうと思っていたのだが、奈津希に先を越されてしまった。
2年連続で出場している自分よりも、奈津希の方が対抗戦に出場したいはずだというのにだ。
自分が準決勝で大橋に勝った時に宣言していれば、奈津希が損な役割をしなくて済んだというのにという思いから、了は奈津希の友人の綾愛にも謝りたかったのかもしれない。
「……金井君が謝ることはないよ。あれは奈津希が決めたことだし……」
奈津希だけでなく、了まで伸の実力をみんなに知らせたいと思っていたなんて気づかなかった。
決闘を申し込んだ奈津希も、同じことを考えていた了にも驚いたが、綾愛は2人を攻める気になれない。
「……それに、私も同じことを考えていたから……」
「……ハハッ、そうか……」
どうやら、綾愛までも最後の大会くらいは伸を出場させたいと考えていたらしい。
その言葉を聞いた了は、3人とも同じ考えをしていたことに思わず笑うしかなかった。
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僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
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そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
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この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
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