オークの子を身籠りました。

もみじ

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本編

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 兄の名はデュナス、デュナス・フォン=アマルティア。王国の第一王子である。強くて、優しくて、頼りになって、その上超イケメン、私が家族で唯一気を許せる人だ。
 兄はロイヤル騎士団の団長を務め、よく親の七光りだとか言われるけどその実力は本物だ。それはこの私が一番よく知っている。なんたって私に剣の手解きをしてくれたのは兄なのだ。昔、木刀を持って兄に何度も打ち込んだのは良い思い出・・・て、今は過去に浸ってる場合じゃない。

「お兄様、何でこんな所にいるんですか?」

 ラルクがビックリして仰け反る。

「お、お、お・・・お兄様!!!?お兄様ってレフィ、こいつ黒髪じゃねぇか?」

「うちで金髪なのはお母様と私くらいだよ、妹のロギーニャも黒髪だしお父様も本当は黒、今は白髪のカツラ被って分かんないだろうけど」

 皆の視線がノブの頭部に集まる。

「なぜ俺を見る?」

「いやだってさ・・・」

 そりゃカツラって聞いたらノブの頭に反応しちゃうよね?

「そんなことよりお兄様、どうしてここにいるの?」

 すると兄は私の右手首を掴んでラルクから強引に引き離した。

「それはこっちの台詞だスティアーナ、話は全部ノブリスから聞かせてもらったぞ。全くお前って奴は」

 私は首をかしげる。

「ノブ、どういうこと!?」

「あぁ、俺がデュナスを呼んだんだ。お前達には話してなかったがデュナスとは昔パーティーを組んでたことがあってな。その頃の連絡先がまだ生きてて良かった」

「マジか!!!?そんなの聞いてねぇよ。一国の王子とパーティーって、ノブ、一体どんな人生歩んできたんだよ?」

 兄は素っ頓狂な顔でノブを見た。

「何だノブリス、仲間に話してなかったのか?実はこいつ、昔は騎士だったんだぞ」

 ノブが騎士!?兄の言葉に私はつい彼の鎧姿を想像してしまう。あの禿げ頭に甲冑って・・・物凄く似合わない。だけどあのガタイだし元騎士と言われても不思議ではない。
 因みに騎士から僧侶へのジョブチェンジは可能だ、ただ滅茶苦茶面倒くさい、系譜図は以下の通り

格闘家→モンク→気功士
     |
 賢者→僧侶→大神官
 |   |
呪術師→祈祷師
 |
魔導士→大魔導士
 |
魔剣士→魔導騎士
 |
 剣士→騎士→聖騎士
    |
    暗黒騎士
       |
 盗賊→怪盗→暗殺者
       |
狩人→弓兵→狙撃手→砲兵
       |
      ガンナー

と言うような感じ、何を思って出家したのか分からないけれど騎士が僧侶になるためには一旦剣士にランクを下げて魔剣士、魔導士、呪術師、賢者、僧侶と順を踏まなければならない。ノブの壮絶な人生が窺い知れる。

「レフィ、お前には悪いが今回の件はもう俺達の手には負えない。あとのことはデュナスに任せてあるから今日のところは大人しく帰れ」

「ノブ、てめぇふざけんな!仲間が一大事って時に人任せかよ!?」

「ラルク、もしもの時お前は責任を取れるのか?生憎と俺は産医じゃないんだ、いつまでも面倒見切れない」

「フィールはそれで良いのかよ?」

「俺だってラルクと同じ気持ちさ、だけど今は・・・いや、こんな時だからこそ家族の下に返してやった方が良いだろ?」

 ばつが悪くなってラルクの言葉が詰まる。
 そりゃそうだよ、一冒険者がどうこうできる話じゃない。姫がさらわれて王国中が騒いでいる中、私を匿いながら出産の面倒まで見るなんていくら何でも無理過ぎる。
 フィールのことも、オークのことも洗いざらい吐いて今後どうするか家族で決める必要がある。もうこの身は私一人の物ではないのだから・・・

「ラルク、私行くよ。今までありがとう」

 ラルクは心配そうに私を見つめた。すると兄はそんなラルクに迫って子供を慰めるように言う。

「妹のことを気遣ってくれてありがとう、でもここは私に任せてくれないか?悪いようにはしない。何なら君も連れ・・・」

「おい!」

 ノブの野太い声がデュナスの言葉を切る。

「あぁ~、はいはい、分かってるよ。行くぞスティアーナ」

 そして私は兄と手を繋いで外に泊めてあった馬車へ乗り込んだ。
 パカパカと馬の蹄鉄が一定のリズムを刻む中、私は向かい合う兄の顔を窺った。腕を組んで目を瞑る兄、私には優しい兄だがちまたでは専らのスケコマシと有名だ。ラルクは美人だし、兄が友達に手を出さないかとても心配になってくる。


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