ハイスぺ男子は私のおもちゃ ~聖人君子な彼の秘めた執着愛~

幸村真桜

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ハイスぺ男子の秘密とは

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「今からあるものをお見せします。引かないでほしいんですが⋯⋯」

 福永も同じことを言っていたなと思いながら、璃湖はベッドの横に置いてあるサイドチェストの引き出しを開ける。

 福永がビクリと身体を震わせたことには気づかず、中からビニール袋を取り出してテーブルの上に置いた。

「こ、これは……」

「いわゆる大人のおもちゃ……というものですね」

 しばらく目を見開いたままテーブルの上に置かれた物を見つめていた福永が、それと璃湖の顔を何度も見比べる。

「ええと、細井さんが使ってるんだよね」

 福永が驚くのも無理はないと思いながら頷く。璃湖は処女だが、気持ちのよいことが大好きだ。

 璃湖は四人兄妹の末っ子で、兄が三人いる。家族仲は非常に良好で、一般的な家庭よりすべてにおいてオープンな家庭で育った。

 性的なことに対しても同じで、両親にしっかりとした性教育をある程度の年齢から受けてきた。璃湖より数段華のある美形に生まれた兄たちは、十八歳になると即座に彼女と童貞を卒業していた。

 その年齢になるまでは、というのも両親の教育である。

 兄たちから『天国にいけるくらい気持ちがいい』と聞かされる行為に、彼女は持ち前の好奇心が刺激されて興味津々だった。

 だが、璃湖には恋人はおろか好いている相手もいない。セックスは愛する相手と、責任を持って挑まなければいけないと教育されてきた彼女は、好きでもない男と致すことなど考えられなかった。

 夜な夜なネットに落ちているエッチな体験談を読みふけりながら、見様見真似で性器を触っても兄たちが言う『天国にいける』ほどの快楽は得られない。

 男より性的快感が得られやすいはずなのに、なぜなのか。自分の身体には、なにか欠陥があるのではないか。

 そんな不安と悶々とした気持ちを抱えながら過ごしていたある日、彼女は“大人のおもちゃ”の存在を知った。

 高校生の璃湖でも手が出せる価格帯のものもあったが、根が真面目な璃湖は親が必死で稼いだお金を己の快楽のために使うことに抵抗を覚えた。

 いつか自分で稼いだお金で手にすると誓い、それまでは己の指でひたすらに快楽を追求してきた。

 そして大学生になり、バイトを始めて手にした初めての給料で、璃湖は念願だったピンク色のローターを手に入れた。

 ショーツの上から恐る恐る秘部に当ててみると、自分でしていたときとは比べ物にならないくらい強い快感が身体を突き抜けた。初めておもちゃを使ったその日に、璃湖は兄たちの言う『天国』を知ってしまったのだ。

 あの日の感動は、きっと一生忘れない。ストレスも疲れも一瞬で吹き飛ぶほどの強烈な体験だった。初めて買ったあのローターは愛用しすぎて壊れてしまったが、今も捨てずに棚の奥にしまってある。

 そして今では少しずつコレクションを増やし、夜な夜なひとり楽しむのが日々の活力になっている。もはや趣味のひとつと言って差し支えないだろう。

「福永さんの男性器が反応したというあの日はですね、初めて購入したバイブが届く日だったんです。なので仕事中に不謹慎ではありますが⋯⋯その、性的興奮をしてしまっていました」

 そう、あの日は帰ってからバイブを使うのが楽しみすぎて、あそこが濡れて濡れて大変だった。信じがたいが、それが原因としか思えないのだ。

「これ、直接触ってみてもいい?」

「え!?」

 まさかの言葉に、璃湖は返事もできずに固まった。そうしている間に、福永は袋からおもちゃたちを手に取り、しげしげと眺め始める。

「へえ、こういうのがあるんだ。うん、あのときの匂い⋯⋯やばい、クラクラする。俺、お気に入り当てられるかも」

 どこかうっとりとした顔をした福永が、あろうことか手に持ったおもちゃの匂いをくんくんと嗅ぎ始めた。

「え、ちょ、ちょっと、福永さん!?」

「一番よく使ってるのは、この舌の形のやつだね。次がこっちのローター。その次はこれかな。⋯⋯へえ、これは吸いつくのか。よくできてるね」

 合っている。なぜ、分かるのだ、怖すぎる。どん引きしている璃湖に気づかず、福永はすっと目を細めて男性器を模したおもちゃを手に取った。

「これが例のバイブだよね。使ってないみたいだけど⋯⋯気に入らなかったの?」

「それは⋯⋯試してみたんですけど。さすがに処女には大きすぎたみたいで、入らなかったんです」

 正直に告白すると、福永の動きがピタリと止まった。ごとりと音を立ててバイブが床に落ちる。

「⋯⋯処女? まさか⋯⋯これで処女喪失しようとしてたの?」

「え、ええ、そうです。この先、私みたいな地味でデブな女に恋人ができるとは思いませんし。なんとしてもこの“ビッグボーイくん3”で処女を卒業し、更なる快楽を追求していきたいと思っています」

 エロにおいて好奇心旺盛なくせに保守的な璃湖は、まだ中におもちゃを挿入したことがない。自分の指を入れてみたことはあるが、疲れるだけでなんの快感も得られなかった。

「恋人ができないなんてことないでしょ。手っ取り早く、誰か相手を見つけようとは思わなかったの?」

「誰でもいい訳ではないですから。セックスは子孫繁栄のための行為でもあります。女性は妊娠のリスクもありますし、やはり好意がない男性に身を任せる気にはなれません」

 エッチなことは大好きだが、倫理観はとてもしっかりしている。両親の教育の賜物である。

 だが、挿入への憧れも捨てられない。外でイクよりいいという中イキだって経験してみたい。それならばいっそ、おもちゃで処女を捨ててしまおうと考えたのだ。

「そんな……細井さんはかわいらしい素敵な女性だよ。だからそんなことはダメだよ」

「お世辞を言わせてしまってすみません。でも、自分のことは私がよく分かってますから」

「いや、分かってないよ。だって⋯⋯」

 なにかを言いかけて、福永は下を向いて黙り込んだ。長い沈黙が続き、璃湖は急に不安になった。

 エッチなおもちゃ好きの処女は、やはりパンチが効きすぎていただろうか。

 引かれるのは構わないが、言いふらされるのは困る。福永がそんなことをする人間だとは思っていないが、念を押しておくことに損はない。

 そうだ、福永は璃湖の愛用品たちを嗅ぎまくっていた。あれか彼にとって醜聞になるに違いない。

 それをネタに口止めしてからお引き取りいただこう。そう決めて口を開こうとした瞬間、福永の姿が視界から消えた。

「一生のお願いだ。俺を⋯⋯俺を⋯⋯きみのおもちゃにしてくれ!」

 ガバリと勢いよく土下座した福永に、璃湖は唖然とする。なにを言われたのか理解できず、璃湖は混乱して目を泳がせた。

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