【完結】占い館のチョコレート

四季苺

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作戦会議とゆるふわな腹黒

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 なずなちゃんと仲直りをした後、わたしは再びなずなちゃんちにお邪魔じゃまして、二人で作戦会議さくせんかいぎをした。何の作戦って?なずなちゃんが学校にもどっていけるようにするために決まってる。 

「無視されるのってさ、誰に無視されたって悲しいしむかつくけど、全員に無視されるからダメージがすと思うの。だから、いつもわたしと一緒にいてわたしと話せばマシじゃないかな?」 

「うん、鈴奈ちゃんと話せればそれでいい。カリンちゃんとかユイちゃんとか、女子全員もう嫌いだし。…でもいいの?わたしと話すと、鈴奈ちゃんがまた無視されちゃうよ」 

 なずなちゃんはお母さんに渡された温かいタオルで顔をしながらそう答えた。 

「どうせ何してもしなくても、無視される時はされるもん。わたしだって、なずなちゃんと話せればそれでいいよ。あ、あと男子はまだなずなちゃんと仲良くなってない子が多いだけで、なずなちゃんを嫌ってるわけじゃないから。これから一緒に遊んだり話したりする機会きかい作って、仲良くなっていこ」 

「ありがと。鈴奈ちゃんて、男子に人気あるよね」 

「人気ってわけじゃないけど、みんな友達だよ。だから、女子全員に無視されてもまぁ大丈夫だったんだよね」 

「なるほどぉ」 

 分厚ぶあついタオルしにくぐもった声が聞こえてくる。 

「はいはいはいはい、ジュースですよ~。今ね、マドレーヌ作ってるからおやつはちょっとってね!」 

 なずなちゃんのお母さんがった感じで飲み物をはこんできてくれた。おやつ、さっきもいただいたのにいいのかなぁ? 

「ママ~、蒸しタオルもういい?」 

「もうちょっと!タオルがあったかくなくなったらやめていいよ!そしたら、コレとコレとコレを顔にぬるのよ!」 

 テーブルの上に化粧水けしょうすい乳液にゅうえき、ワセリンをくとなずなちゃんのお母さんはキッチンへと戻っていった。 

「カリンはさ、いつもターゲットを一人にしぼるの。誰とも話せないとつらいから」 

「男子は?男子はカリンちゃんの言うこと、別に聞かないよね?」 

「ん~、みんなさ、自分が意地悪されてる時はわたしにすり寄ってくるけど、カリンがわたしをターゲットにすれば平気で無視したり嫌味いやみ言ったりするでしょ?だから、男子はわたし以外の女子をあまりよく思ってないらしいの。もちろん、話しかけられれば話すけど遊んだりはしないみたいね」 

「へぇー、なんか複雑ふくざつ」 

「もうずっとコレが当たり前できちゃったから気にしてなかったけど、説明してみるとたしかに複雑だね。そして、陰険いんけんだわ」 

「あははっ」 

 なずなちゃんはタオルをテーブルの上に置き、オレンジジュースをゴクゴクと飲み始めた。あれだけ泣けば、のどもかわくだろう。わたしもストローに口をつける。美味おいしい。これ、ブラッドオレンジジュースだ。 

「わたしもね、おかしいと思ってはいたの。わたしは次のターゲットにされる危険きけんおかしてでも無視されてる子と話してあげるのに、その子はわたしが無視されてる時には意地悪してくること」 

「うん」 

 なずなちゃんは続きをうながすように、短く返事をした。 

「だから、もう止めるんだ。無視されてる子が話しかけてきたら『アンタわたしのこと最近までいじめてたじゃない』って」 

「おお」 

「あと、近くでヒソヒソ嫌味言われたらいちいち『何!?』ってんでく」 

「えー、それは『べつにぃ?アナタのことなんて話してませんけどぉ~』とか返されるよ」 

 なずなちゃんはつい最近経験さいきんけいけんしたようだ。 

「それは一対複数いったいふくすうだから絶対勝てると思って強気つよきなの。わたしにはなずなちゃんがいるし、なずなちゃんにはわたしがいる。だから、これまで通りにはいかな…」 

「ズゴゴゴゴォ~」 

「…ちょっと!」 

 なずなちゃんがジュースを飲み干した音が静かな部屋にひびいて、笑ってしまった。 

真面目まじめな話をしてるのに!もう!」 

「あははっ、ごめんごめん!やたらのどが渇いて!」 

 しばらく楽しいことにえていたわたし達は、たったこれだけのことなのに笑い転げて数分は立ち直れなかった。 

「はぁ…はぁ…しんど…」 

「さらにのど渇いた…」 

「あらまぁ、楽しそうね」 

 なずなちゃんのお母さんがジュースのおかわりと焼き立てのマドレーヌをトレーにのせてやってきた。バターのいいにおいがする。 

「たくさん食べてね」 

「いただきます。…うわぁ、ふわふわ~おいし~!」 

 手作りの焼き立てマドレーヌってこんなに美味しいんだ。わたしも今度、お菓子にも挑戦ちょうせんしてみようかな?リゼさんにおれいに渡したいな。 

「ねぇねぇ、ちょっとママも話に参加さんかしていい?」 

「ダメ」 

 なずなちゃんはバッサリとる。 

「聞こえちゃったんだけど、これからは二人をいじめた人が無視されてても、助けてあげないのよね?」 

「え、スルー?」 

 なずなちゃんの返事をすべて流して話を進める姿に苦笑いしながら、わたしが代わりに返事をする。 

「そのつもりです。もう、我慢がまんするのはやめたいから…」 

 怒られるかな、となずなちゃんのお母さんの顔をチラ見する。すると、ギラリと光るするどい目がこちらを見据みすえていた。 

「じゃあさじゃあさ、むしろ引き込んでいくのはどう?」 

「え…」 

「始まったよ」 

 なずなちゃんはむぐむぐとマドレーヌを頬張ほおばりながら、そうつぶやいた。 

「きっと、なずなと鈴奈ちゃんが平気そうにしていたら、カリンちゃんは新しく誰かをいじめると思うのよね。そして、その子は恥ずかしげもなく、あなた達の仲間に入れてって言ってくるでしょう」 

「まぁ、そうだろうね」 

 なずなちゃんは興味きょうみなさそうに返事をしながら、二つ目のマドレーヌに手をばす。 

「そしたら、まずは鈴奈ちゃんの言ってた通り、『アンタ、わたし達のこといじめたから話ししたくない』ってっぱねるのよ」 

 なずなちゃんのお母さんの今日の服装ふくそうは、優しいグリーンのギンガムチェックのワンピースに、白いエプロン。髪はゆるくパーマをかけていて、とても可愛らしいのだが…。 

「ママ、目、こわ」 

「あっ、ごめんね鈴奈ちゃん。…つい興奮こうふんしちゃって」 

「いえ…その後、どうすれば良いんですか?」 

「そう、そうしたらね、その子たちはたぶん食い下がってくると思うのよ。『お願い、そっちのグループにまぜて』って」 

 私はうなずく。 

「そうしたら、しぶって渋ってじらしにじらした後…」 

 腹黒はらぐろい…となずなちゃんが小声でつぶやいたので、私はひじ小突こづいた。 

「『もう二度とカリンのグループにもどらないなら良いよ」って言うの」 

「え!!」 

 わたしとなずなちゃんは同時に驚きの声をあげた。 

「…でもそんな約束したって、どうせやぶるんじゃないのぉ?」 

念書ねんしょを書かせるのよ。フォーマットはママが作ってあげるから」 

「もう、マジこわいんですけど」 

「パソコンでですか?」 

 わたしは、なずなちゃんのお母さんが考えていることに思いいたって、尋ねる。 

「そう。気づいたのね、鈴奈ちゃん。この約束を破ったら、保護者ほごしゃが学校で問題に取り上げるって書いとくわ」 

「親が今回のことを知っているってわからせたいんですね」 

 なずなちゃんのお母さんは、コクコクとうなずく。 

「こっち側になる人数がある程度ていど増えれば、カリンちゃんが孤立こりつする可能性かのうせいもあるわ」 

「そんなうまくいく?」 

「だって、一人だけ無視されるのが嫌でみんなカリンちゃんの言うこと聞いてるんでしょう?女子の過半数かはんすうがこっち側にいるのに、わざわざ言いなりになりたい人はそんなにいないんじゃない?根っからいじめが好きとかじゃなければ」 

「うちのクラスの女子はみんな、気が弱くてその時のことしか考えられないタイプなので、そうなるかもしれません。今までずっとカリンの言うことを聞くしかなかったし」 

「えー」 

 なずなちゃんは気が乗らない様子だ。ソファにだらりと体をあずけてほおをふくらませている。 

「もう関わりたくないんだけど、あんな人たち。中学も一緒とか、ゾッとする」 

「それについては、ちょっと考えがあるんだけど、もう少しいろいろ調べてから話をするわね。今はそうね、報復ほうふくするかしないかよ!」 

 なずなちゃんのお母さんの目が再びギラリと光る。 

「ごめんね。うちのゆるふわおばさん腹黒くて」 

「そ、そんなことないよ…。えっと、わたしはやってみたい。もし取り込むのがうまくいかなくても、わたし達にダメージはないんだし、挑戦してもいいと思う」 

余計よけいいじめられるかもしれないじゃーん」 

「そうなったら、今度こそ大人ので・ば・ん♡」 

 なずなちゃんのお母さんは手を組んでゴキゴキと音を鳴らしている。なずなちゃんがいじめられたことを相当怒そうとうおこっているみたいだ。 

 そうだ、わたしも。 

「あのね、わたし今まで何年も意地悪されてきたけど、そういうものだって割り切ってそんなに腹が立たなかったの。でも、今回は許せない。仕返しかえししたいって初めて思った」 

 なずなちゃんの顔を正面しょうめんから見据みすえると、目元も鼻の下も赤く荒れていた。少しせたことにも、今気づいた。 

「自分はいいんだけど、なずなちゃんのことをいじめたのがゆるせない」 

「はぁあっ!!」 

 なずなちゃんのママがぼぉっと泣き出してしまった。なずなちゃんは引いているが、かまわず続ける。 

「だから、やってみたい。いいかな?ウチの親にもちゃんと話して、いざという時には力になってもらうから」 

「…わかった」 

「もう、また泣かないで!せっかく顔を蒸してクリームぬったのに」 

 そう言いながら、わたしも涙があふれてきてしまう。 

「いいの、嬉しいから泣いてるの。わたし、嫌なこと言ったのに、鈴奈ちゃんがそんな風に言ってくれて嬉しいの!」 

「うわーん!ママも嬉しい!鈴奈ちゃんありがとう~!」 

 その後は三人でたくさん泣いた。そして、第二弾だいにだんのマドレーヌが焼けた瞬間に涙を引っ込めてたくさん食べて飲んで、これからのことを話し合った。
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