【完結】占い館のチョコレート

四季苺

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疾走するなずなちゃんと追随する男子たち

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「二人とも、一学期お疲れ様!今日はピーチババロアを作ったよ!」 

 終業式しゅうぎょうしきの日、なずなちゃんの家に遊びに行くと、なずなちゃんのお母さんは特別とくべつなデザートを用意してくれていた。うすいクリーム色の大きなリングじょうのババロアには、綺麗きれいにカットされたももあざやかな緑色のミントがたくさんかざられている。 

「うわぁ、美味おいしい」 

「わたし、これ大好きなんだよね」 

 三人で食べながら楽しいおしゃべりをする。なずなちゃんのお母さんとはすっかりけて、もう友達みたいな感じだ。 

「二人とも、作戦さくせん進捗具合しんちょくぐあいはどう?」 

 食べ終わってスプーンを置くと、なずなちゃんのお母さんが尋ねてくる。わたし達は顔を見合わせ、うぅんとうなった。 

「特に変化ないかな?学校に復帰ふっきした日にカリンちゃんに言い返して、それからずっとわたしも鈴奈ちゃんもクラスの女子に無視されてるよ」 

「でもまぁ、わたし達も女子に話しかけることがないから、困らないけどね」 

「聞こえよがしな陰口かげぐちがむかつく」 

「………」 

「あらっ?鈴奈ちゃん、どうして微妙びみょう表情ひょうじょうをしてだまるの?なずな、アナタ何かしてるの?」 

 しまった、なずなちゃんが怒られてしまう。 

「別に。陰口全部に言い返してるだけだけど?」 

「あぁそう」 

 え、いいんだ。 

「ちなみにどんな風に?」 

 なずなちゃんのお母さんは、わたしの方にくるりと体を向けて、そう尋ねた。目がキラキラと輝いている。仕方なく、わたしはなずなちゃんの武勇伝ぶゆうでんの一つをかたった。 

  

 わたし達がそろって無視され始めてすぐ、ユイ、ココ、マキの三人がわたし達のそばまでやってきて悪口を言い始めた。 

「何あの髪型笑えるー」 

「ドーナッツみたい」 

「ポン・デ・藤ヶ丘ふじがおか」 

 キャハハハハハと笑い始めた瞬間しゅんかん、なずなちゃんが大きな音をたてて立ち上がった。 

 ガッターン! 

 椅子いすたおれたけど、わざとだと分かっているわたしはとりあえず見守る。 

「もう一回言ってみなよ」 

「え?私達アナタの話なんかしてませんけどぉ~」 

 ねーっ!と三人はわざとらしく声を合わせる。 

「いや、なずなちゃんの悪口言ってたじゃん。オレ聞いてたわ」 

「僕も。『ポン・デ・藤ヶ丘』とか、わざわざ嫌なこと言ったの聞こえた。なずなちゃん何もしてないのに」 

 わたし達のすぐ側でおしゃべりをしていた春人くんと新くんにそう証言しょうげんされ、女子三人は気まずそうにだまってしまう。なずなちゃんに聞こえるように話すんだから、そりゃ他の子にも聞こえるでしょうよ。わたし達が言い返すようになってから、男子はちょこちょこ手助けをしてくれるようになった。 

「髪型をからかうとか、ホントくだらない。じゃあ自分はなんなわけ?うんこ?」 

 なずなちゃんはマキをビシッと指差ゆびさす。マキは長い髪の毛をぐるぐる巻いて頭のてっぺんでおだんごにしているのだ。 

「たしかにうんこ!」 

「マキぐそじゃん!」 

 下ネタ大好きな男子の心になずなちゃんの言葉がさって、クラスは大盛り上がりだ。わたしも笑いをこらえきれない。誰だ、うまいあだ名をつけたやつは。 

「…ひどい…」 

 マキあらためマキぐそさんは顔を真っ赤にして、ポロポロ涙をこぼし始めた。 

「ひどくないよ。先にマキがなずなちゃんのことを嫌なあだ名で呼んだんでしょ?自分がされて嫌なら、最初から人にもしたらダメ」 

 わたしが説教風せっきょうふうに言い返すと、三人はそそくさとはなれていった。今まで一対複数いったいふくすうで言われっぱなしの人ばかりだったので、反撃はんげきされることにれていないらしい。なずなちゃんはまた「ダッサ」と言い、男子はその日からなずなちゃんをあねさんと呼んでしたうようになった。 

  

「あははははは!」 

 なずなちゃんのお母さんは、その話を聞いて大笑いした。 

「食べ終わってからで良かったね」  

 なずなちゃんはしれっと言う。 

「食べ終わってなかったら、この話しないよ」 

「はぁ…おかしい。男子かわいい…」 

 目じりの涙を人さし指でぬぐいながら、なずなちゃんのお母さんはそう言った。 

「一学期はわたし達二人がターゲットなまま終わったんですけど、この先誰かいじめ対象に変わったとして、わたし達のところに来ますかね?」 

「なずなが怖すぎだもんね」 

「わたしは別にこのままでもいいもん。報復ほうふくできなくても、鈴奈ちゃんと男子たちと残りの小学校生活を乗り切って、中学校では鈴奈ちゃん以外にもとうなお友達を作る!」 

 なずなちゃんは立ち上がってにぎりこぶしを作った。 

「まぁそうだね。わたし達のところにくわわられても嫌だ」 

「えーっ!二人とも日和ひよってない?仕返ししようよ仕返し~!」 

「受験勉強もあるのにストレス増やさないでよ!」 

「まぁ…誰か来たら取り込んでみます」 

 一学期の反省会はんせいかいはこんな風にめくくられ、勉強ばかりの夏休みへと突入とつにゅうしていった。 
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