【完結】占い館のチョコレート

四季苺

文字の大きさ
19 / 38

疾走するなずなちゃんと追随する男子たち

しおりを挟む
「二人とも、一学期お疲れ様!今日はピーチババロアを作ったよ!」 

 終業式しゅうぎょうしきの日、なずなちゃんの家に遊びに行くと、なずなちゃんのお母さんは特別とくべつなデザートを用意してくれていた。うすいクリーム色の大きなリングじょうのババロアには、綺麗きれいにカットされたももあざやかな緑色のミントがたくさんかざられている。 

「うわぁ、美味おいしい」 

「わたし、これ大好きなんだよね」 

 三人で食べながら楽しいおしゃべりをする。なずなちゃんのお母さんとはすっかりけて、もう友達みたいな感じだ。 

「二人とも、作戦さくせん進捗具合しんちょくぐあいはどう?」 

 食べ終わってスプーンを置くと、なずなちゃんのお母さんが尋ねてくる。わたし達は顔を見合わせ、うぅんとうなった。 

「特に変化ないかな?学校に復帰ふっきした日にカリンちゃんに言い返して、それからずっとわたしも鈴奈ちゃんもクラスの女子に無視されてるよ」 

「でもまぁ、わたし達も女子に話しかけることがないから、困らないけどね」 

「聞こえよがしな陰口かげぐちがむかつく」 

「………」 

「あらっ?鈴奈ちゃん、どうして微妙びみょう表情ひょうじょうをしてだまるの?なずな、アナタ何かしてるの?」 

 しまった、なずなちゃんが怒られてしまう。 

「別に。陰口全部に言い返してるだけだけど?」 

「あぁそう」 

 え、いいんだ。 

「ちなみにどんな風に?」 

 なずなちゃんのお母さんは、わたしの方にくるりと体を向けて、そう尋ねた。目がキラキラと輝いている。仕方なく、わたしはなずなちゃんの武勇伝ぶゆうでんの一つをかたった。 

  

 わたし達がそろって無視され始めてすぐ、ユイ、ココ、マキの三人がわたし達のそばまでやってきて悪口を言い始めた。 

「何あの髪型笑えるー」 

「ドーナッツみたい」 

「ポン・デ・藤ヶ丘ふじがおか」 

 キャハハハハハと笑い始めた瞬間しゅんかん、なずなちゃんが大きな音をたてて立ち上がった。 

 ガッターン! 

 椅子いすたおれたけど、わざとだと分かっているわたしはとりあえず見守る。 

「もう一回言ってみなよ」 

「え?私達アナタの話なんかしてませんけどぉ~」 

 ねーっ!と三人はわざとらしく声を合わせる。 

「いや、なずなちゃんの悪口言ってたじゃん。オレ聞いてたわ」 

「僕も。『ポン・デ・藤ヶ丘』とか、わざわざ嫌なこと言ったの聞こえた。なずなちゃん何もしてないのに」 

 わたし達のすぐ側でおしゃべりをしていた春人くんと新くんにそう証言しょうげんされ、女子三人は気まずそうにだまってしまう。なずなちゃんに聞こえるように話すんだから、そりゃ他の子にも聞こえるでしょうよ。わたし達が言い返すようになってから、男子はちょこちょこ手助けをしてくれるようになった。 

「髪型をからかうとか、ホントくだらない。じゃあ自分はなんなわけ?うんこ?」 

 なずなちゃんはマキをビシッと指差ゆびさす。マキは長い髪の毛をぐるぐる巻いて頭のてっぺんでおだんごにしているのだ。 

「たしかにうんこ!」 

「マキぐそじゃん!」 

 下ネタ大好きな男子の心になずなちゃんの言葉がさって、クラスは大盛り上がりだ。わたしも笑いをこらえきれない。誰だ、うまいあだ名をつけたやつは。 

「…ひどい…」 

 マキあらためマキぐそさんは顔を真っ赤にして、ポロポロ涙をこぼし始めた。 

「ひどくないよ。先にマキがなずなちゃんのことを嫌なあだ名で呼んだんでしょ?自分がされて嫌なら、最初から人にもしたらダメ」 

 わたしが説教風せっきょうふうに言い返すと、三人はそそくさとはなれていった。今まで一対複数いったいふくすうで言われっぱなしの人ばかりだったので、反撃はんげきされることにれていないらしい。なずなちゃんはまた「ダッサ」と言い、男子はその日からなずなちゃんをあねさんと呼んでしたうようになった。 

  

「あははははは!」 

 なずなちゃんのお母さんは、その話を聞いて大笑いした。 

「食べ終わってからで良かったね」  

 なずなちゃんはしれっと言う。 

「食べ終わってなかったら、この話しないよ」 

「はぁ…おかしい。男子かわいい…」 

 目じりの涙を人さし指でぬぐいながら、なずなちゃんのお母さんはそう言った。 

「一学期はわたし達二人がターゲットなまま終わったんですけど、この先誰かいじめ対象に変わったとして、わたし達のところに来ますかね?」 

「なずなが怖すぎだもんね」 

「わたしは別にこのままでもいいもん。報復ほうふくできなくても、鈴奈ちゃんと男子たちと残りの小学校生活を乗り切って、中学校では鈴奈ちゃん以外にもとうなお友達を作る!」 

 なずなちゃんは立ち上がってにぎりこぶしを作った。 

「まぁそうだね。わたし達のところにくわわられても嫌だ」 

「えーっ!二人とも日和ひよってない?仕返ししようよ仕返し~!」 

「受験勉強もあるのにストレス増やさないでよ!」 

「まぁ…誰か来たら取り込んでみます」 

 一学期の反省会はんせいかいはこんな風にめくくられ、勉強ばかりの夏休みへと突入とつにゅうしていった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。  大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance! (also @ なろう)

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

処理中です...