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がんばれる理由
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「暑い…」
「ホント…」
ジリジリと陽射しが照りつける中、わたし達は塾の夏季講習へと向かっていた。
「テキスト、重い…」
「同じく…」
夏休みに入ってからわたし達はほぼ毎日塾に通っていた。本来なら小学四年生から始める受験勉強を小六の夏からスタートしたのだから、仕方がない。遅れを取り戻さなくては。
「ねぇ、模試どうだった?わたしはボロボロ。学校の勉強ができてれば、試験の問題も普通に解けると思ってたのに、全然だったよ」
なずなちゃんはハンドタオルで汗をふきながらそう話す。
「わたしもひどかった。見たことないような問題がたくさんあったよね」
「なんでさぁ、兄弟で時間ズラして家を出発するの?仲悪いの?」
なずなちゃんが文句を言ってるのは、こないだの模試で出た算数の問題。
「あったね、そういう問題」
「あと、なんで容器Aを経由して容器Bへと水を移すの!最初っからBに水入れなよ!」
「…いや、そういう問題だから」
呆れたような声に振り返ると、同じく塾へ向かう新くんがいた。新くんは元々この塾に通っていたそうだ。
「あ、新くん」
「おはよ、暑いね」
なずなちゃんは登校を再開してから男子とも親しくなって、今では新くんとも仲良しだ。
「二人は基礎ができてるし、問題は学校によって傾向が決まってるから、慣れればすぐ解けるようになるよ」
「そうだといいなぁ…」
「ねー鈴奈ちゃん、もう杜野宮で良くない?ランク落とせば受験勉強しなくても済むよ」
「んー」
わたしは歩きながら少し考える。確かに、カリン達と別の中学校に行くためだけなら、難しい翠陵を受験する必要はない。
「わたし、将来お医者さんになりたいから今から頑張っておきたい。医学部は難しいってお姉ちゃん達が言ってたから」
ずっとウダウダしていたけれど、中学受験をすることになって、覚悟を決めた。
「その夢変わってないんだね」
新くんは目を細めてそう言う。覚えててくれたんだ。
「なんでお医者さんになりたいの?」
なずなちゃんは目を丸くしている。そういえば、なずなちゃんにこの話をしたことはなかった。
「わたしね、小学校にあがるくらいまでずっと体が弱かったの。すぐ熱出して、すぐ寝込んでたから体力をつけようにも難しくて…一回、肺炎になってお父さんとお母さんが働いている病院に入院したことがあるんだ。」
「うん、うん」
なずなちゃんは興味深そうに、新くんはもう知っているので静かに話を聞いてくれる。
「ただの肺炎だったんだけど、まだ小さかったから辛くて苦しくて、『わたし死ぬのかな』とか思ったの。でも、お薬と点滴でだんだん良くなって、また元気になれた。…魔法みたいに。そういうことをわたしも誰かにしてあげたいなって思ったの」
角を曲がると、のぼり坂が待っていた。塾までのこの坂が毎回ホントにしんどい。
「こっそりお父さんとお母さんが働いてるところも見に行ったの。二人ともいつも忙しくてあんまり構ってもらえなくて、正直寂しかったんだけど、こんなに大切なお仕事をしてたんだなって思ったら…なんていうか、誇らしかった」
ジリジリと焼けるアスファルトを一歩一歩踏みしめる。
「わたしも、そういう人になりたいの。自分で自分を自慢に思いたい。誰かに誇ってもらいたい。それで、お医者さんになりたいって思ってる。だから、受験も頑張るよ」
「えー、もうすでに誇らしいよ。まだ小学生なのに、そんなに将来のこと考えててさぁ。わたしなんて、まだ何がやりたいかも分からないよ」
「僕も」
「えっ!意外!!」
思わず言葉がこぼれ落ちる。なずなちゃんもコクコクとうなずいていた。
「そう?でもいいんだ。これからたくさん勉強する中で、夢中になれるものを探していこうと思ってるから。いつか選びたい道ができた時に諦めなくて済むように、全力で頑張っておく」
「ん?なんで全力?」
なずなちゃんは首をかしげる。
「行きたい大学とか就きたい職業を見つけても、実力が足りなかったら無理でしょ?まぁそこから頑張るという手もあるけど、大変だし間に合わない可能性もあるよね」
「たしかにぃ~…」
登り坂も中盤に差し掛かってきて、みんな息が切れている。でも、あとちょっとで塾だ。
「だから、僕はまだ出会ってない将来の目標のために頑張っておくよ」
新くんのその言葉の終わりとともに、わたし達は坂道のてっぺんにたどり着いた。塾ももう目前だ。
「着いたぁ~」
わたしとなずなちゃんは笑顔になる。
「地獄はこれからだけどね」
新くんも笑顔でそう言う。
「ちょっとぉ~やなこと言わないでっ!」
今日は夜までひたすら演習。確かにその通りだなと思った。
「ホント…」
ジリジリと陽射しが照りつける中、わたし達は塾の夏季講習へと向かっていた。
「テキスト、重い…」
「同じく…」
夏休みに入ってからわたし達はほぼ毎日塾に通っていた。本来なら小学四年生から始める受験勉強を小六の夏からスタートしたのだから、仕方がない。遅れを取り戻さなくては。
「ねぇ、模試どうだった?わたしはボロボロ。学校の勉強ができてれば、試験の問題も普通に解けると思ってたのに、全然だったよ」
なずなちゃんはハンドタオルで汗をふきながらそう話す。
「わたしもひどかった。見たことないような問題がたくさんあったよね」
「なんでさぁ、兄弟で時間ズラして家を出発するの?仲悪いの?」
なずなちゃんが文句を言ってるのは、こないだの模試で出た算数の問題。
「あったね、そういう問題」
「あと、なんで容器Aを経由して容器Bへと水を移すの!最初っからBに水入れなよ!」
「…いや、そういう問題だから」
呆れたような声に振り返ると、同じく塾へ向かう新くんがいた。新くんは元々この塾に通っていたそうだ。
「あ、新くん」
「おはよ、暑いね」
なずなちゃんは登校を再開してから男子とも親しくなって、今では新くんとも仲良しだ。
「二人は基礎ができてるし、問題は学校によって傾向が決まってるから、慣れればすぐ解けるようになるよ」
「そうだといいなぁ…」
「ねー鈴奈ちゃん、もう杜野宮で良くない?ランク落とせば受験勉強しなくても済むよ」
「んー」
わたしは歩きながら少し考える。確かに、カリン達と別の中学校に行くためだけなら、難しい翠陵を受験する必要はない。
「わたし、将来お医者さんになりたいから今から頑張っておきたい。医学部は難しいってお姉ちゃん達が言ってたから」
ずっとウダウダしていたけれど、中学受験をすることになって、覚悟を決めた。
「その夢変わってないんだね」
新くんは目を細めてそう言う。覚えててくれたんだ。
「なんでお医者さんになりたいの?」
なずなちゃんは目を丸くしている。そういえば、なずなちゃんにこの話をしたことはなかった。
「わたしね、小学校にあがるくらいまでずっと体が弱かったの。すぐ熱出して、すぐ寝込んでたから体力をつけようにも難しくて…一回、肺炎になってお父さんとお母さんが働いている病院に入院したことがあるんだ。」
「うん、うん」
なずなちゃんは興味深そうに、新くんはもう知っているので静かに話を聞いてくれる。
「ただの肺炎だったんだけど、まだ小さかったから辛くて苦しくて、『わたし死ぬのかな』とか思ったの。でも、お薬と点滴でだんだん良くなって、また元気になれた。…魔法みたいに。そういうことをわたしも誰かにしてあげたいなって思ったの」
角を曲がると、のぼり坂が待っていた。塾までのこの坂が毎回ホントにしんどい。
「こっそりお父さんとお母さんが働いてるところも見に行ったの。二人ともいつも忙しくてあんまり構ってもらえなくて、正直寂しかったんだけど、こんなに大切なお仕事をしてたんだなって思ったら…なんていうか、誇らしかった」
ジリジリと焼けるアスファルトを一歩一歩踏みしめる。
「わたしも、そういう人になりたいの。自分で自分を自慢に思いたい。誰かに誇ってもらいたい。それで、お医者さんになりたいって思ってる。だから、受験も頑張るよ」
「えー、もうすでに誇らしいよ。まだ小学生なのに、そんなに将来のこと考えててさぁ。わたしなんて、まだ何がやりたいかも分からないよ」
「僕も」
「えっ!意外!!」
思わず言葉がこぼれ落ちる。なずなちゃんもコクコクとうなずいていた。
「そう?でもいいんだ。これからたくさん勉強する中で、夢中になれるものを探していこうと思ってるから。いつか選びたい道ができた時に諦めなくて済むように、全力で頑張っておく」
「ん?なんで全力?」
なずなちゃんは首をかしげる。
「行きたい大学とか就きたい職業を見つけても、実力が足りなかったら無理でしょ?まぁそこから頑張るという手もあるけど、大変だし間に合わない可能性もあるよね」
「たしかにぃ~…」
登り坂も中盤に差し掛かってきて、みんな息が切れている。でも、あとちょっとで塾だ。
「だから、僕はまだ出会ってない将来の目標のために頑張っておくよ」
新くんのその言葉の終わりとともに、わたし達は坂道のてっぺんにたどり着いた。塾ももう目前だ。
「着いたぁ~」
わたしとなずなちゃんは笑顔になる。
「地獄はこれからだけどね」
新くんも笑顔でそう言う。
「ちょっとぉ~やなこと言わないでっ!」
今日は夜までひたすら演習。確かにその通りだなと思った。
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