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復讐の準備は順調です
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ユイは話をした翌日に念書にサインをして持って来て、改めて謝ってきた。念書のサインの欄にユイのお母さんの名前も並んでいたのには驚いた。わたしは塾に行っていて知らなかったけど、ユイのお母さんはウチに来てわたしのお母さんにも謝罪していったらしい。そして、今後何かあったら相談し合うことを約束したそうだ。
そして、その一週間後にはホノカが念書を書くからわたし達のグループに入れて、と言ってきた。ユイとホノカはすごく仲が良いから、離れていたくないんだろう。後から、ユイがこっちにおいでと誘ったと聞いた。
ホノカが加わったことで、わたし達は2人ずつに別れて話したり遊んだりできるようになり、かなり楽になったと思う。なずなちゃんがユイを受け入れたのは嫌々だったから、三人でいるのが結構気まずかったんだ。
「順調だねぇ」
リゼさんはアイスティーをテーブルに置きながら笑う。塾に通うようになって忙しくても、わたしはちょこちょこ占い館に顔を出していた。リゼさんに会いたいし、話がしたいから。わたしの作戦についても、細かく説明してある。
「そうかな?まだ二人しか取り込めてないよ?」
「いやぁ、最初が一番難しいよ。人数が増えてこっちが平和そうなら加わりたいと思う子も増えると思うよ」
「そっかぁ」
リゼさんがそう言うと、そんな気がしてくる。アイスティーに口をつけると、パッションフルーツの香りが口の中に広がった。あとなんだろう?マンゴー、パイナップル、ライチも入っているかも。
「おいしい」
リゼさんの紅茶はお砂糖を入れなくても飲めるから不思議だ。
「えらいね、『正しいやり方』でやり返すなんて」
「正しいかな?」
わたしはグラスを両手で包み、考えを巡らせる。
わたしは意地悪だ。
カリンが困るって分かってて、そうなるように動いているんだから。
「善悪だけで物事は判断できないよ。やらなきゃやられることもあるし、やり返したいって思う気持ちも間違ってないでしょう?」
「………」
わたしは確信が持てず、黙ってしまう。
「あたしも昔、意地悪されたことあったの」
「えっ!意外」
明るくて優しくて綺麗で、誰からも好かれそうなのに。
「『強調性がなくて、非常識』だからだって」
確かにリゼさんは変わってる。集団にいたら目ざわりだって思う人もいるかも。
でも…
「わたしは、リゼさんがリゼさんらしくしてるのが好き」
リゼさんは目をぱちぱちさせて、微笑む。
「ありがとう。あたしも、鈴奈ちゃんの真面目なとことか優しいとことか、大好き」
「リゼさんは、いじめられてどうしたの?」
「燃やしちゃった」
一瞬、思考停止。
「え?」
「あ、殺してないよ?ヤケドしただけ。相手の子たちが火の魔法で攻撃してこようとしたから、杖の向きを変えたの。そしたらローブに燃え移って~ボアアア~ってなった」
普通に「魔法」という言葉が出てきて気になったけど、話が進まないのでそこには触れない。
「じゃあ、リゼさんは悪くないじゃない」
「んー、でも『やりすぎ』って。『もっと早く相談してくれれば良かったのに』って。怒られた。あと、町を出ることになったよ、あたし的には大歓迎だったけど」
「ええー!」
「燃やしたら、意地悪されなくなった。でも、あたしも悪いってなっちゃった。失ったものも多かったよ、社会的に受け入れられないやり方を取っちゃったから」
社会的に受け入れられない、その言葉をわたしは心の中で繰り返す。
「だから、『やり方が正しい』ことは大切なの」
「うん」
「でも、清廉潔白な人である必要はない。カリンちゃんに意地悪されなかったら、鈴奈ちゃんだってやり返したいなんて思わなかったんだから。嫌われたり、復讐されたりするのはカリンちゃんの行動の結果だよ。鈴奈ちゃんの性格が悪いわけじゃない」
「そっか…」
わたしは、自分の胸の中でモヤモヤした思いが整理されていくのを感じた。思っていたよりも自分の腹黒さを気にしていたみたい。
「人にはいろんな面があるものだよ。そのどの面を向けてもらえるかは、すべてじゃないけど自分次第」
「そうだね…」
リゼさんのくれた言葉、リゼさんの淹れてくれたアイスティー。どちらも、カラカラに乾いたわたしの心と体に染み渡っていった。
そして、その一週間後にはホノカが念書を書くからわたし達のグループに入れて、と言ってきた。ユイとホノカはすごく仲が良いから、離れていたくないんだろう。後から、ユイがこっちにおいでと誘ったと聞いた。
ホノカが加わったことで、わたし達は2人ずつに別れて話したり遊んだりできるようになり、かなり楽になったと思う。なずなちゃんがユイを受け入れたのは嫌々だったから、三人でいるのが結構気まずかったんだ。
「順調だねぇ」
リゼさんはアイスティーをテーブルに置きながら笑う。塾に通うようになって忙しくても、わたしはちょこちょこ占い館に顔を出していた。リゼさんに会いたいし、話がしたいから。わたしの作戦についても、細かく説明してある。
「そうかな?まだ二人しか取り込めてないよ?」
「いやぁ、最初が一番難しいよ。人数が増えてこっちが平和そうなら加わりたいと思う子も増えると思うよ」
「そっかぁ」
リゼさんがそう言うと、そんな気がしてくる。アイスティーに口をつけると、パッションフルーツの香りが口の中に広がった。あとなんだろう?マンゴー、パイナップル、ライチも入っているかも。
「おいしい」
リゼさんの紅茶はお砂糖を入れなくても飲めるから不思議だ。
「えらいね、『正しいやり方』でやり返すなんて」
「正しいかな?」
わたしはグラスを両手で包み、考えを巡らせる。
わたしは意地悪だ。
カリンが困るって分かってて、そうなるように動いているんだから。
「善悪だけで物事は判断できないよ。やらなきゃやられることもあるし、やり返したいって思う気持ちも間違ってないでしょう?」
「………」
わたしは確信が持てず、黙ってしまう。
「あたしも昔、意地悪されたことあったの」
「えっ!意外」
明るくて優しくて綺麗で、誰からも好かれそうなのに。
「『強調性がなくて、非常識』だからだって」
確かにリゼさんは変わってる。集団にいたら目ざわりだって思う人もいるかも。
でも…
「わたしは、リゼさんがリゼさんらしくしてるのが好き」
リゼさんは目をぱちぱちさせて、微笑む。
「ありがとう。あたしも、鈴奈ちゃんの真面目なとことか優しいとことか、大好き」
「リゼさんは、いじめられてどうしたの?」
「燃やしちゃった」
一瞬、思考停止。
「え?」
「あ、殺してないよ?ヤケドしただけ。相手の子たちが火の魔法で攻撃してこようとしたから、杖の向きを変えたの。そしたらローブに燃え移って~ボアアア~ってなった」
普通に「魔法」という言葉が出てきて気になったけど、話が進まないのでそこには触れない。
「じゃあ、リゼさんは悪くないじゃない」
「んー、でも『やりすぎ』って。『もっと早く相談してくれれば良かったのに』って。怒られた。あと、町を出ることになったよ、あたし的には大歓迎だったけど」
「ええー!」
「燃やしたら、意地悪されなくなった。でも、あたしも悪いってなっちゃった。失ったものも多かったよ、社会的に受け入れられないやり方を取っちゃったから」
社会的に受け入れられない、その言葉をわたしは心の中で繰り返す。
「だから、『やり方が正しい』ことは大切なの」
「うん」
「でも、清廉潔白な人である必要はない。カリンちゃんに意地悪されなかったら、鈴奈ちゃんだってやり返したいなんて思わなかったんだから。嫌われたり、復讐されたりするのはカリンちゃんの行動の結果だよ。鈴奈ちゃんの性格が悪いわけじゃない」
「そっか…」
わたしは、自分の胸の中でモヤモヤした思いが整理されていくのを感じた。思っていたよりも自分の腹黒さを気にしていたみたい。
「人にはいろんな面があるものだよ。そのどの面を向けてもらえるかは、すべてじゃないけど自分次第」
「そうだね…」
リゼさんのくれた言葉、リゼさんの淹れてくれたアイスティー。どちらも、カラカラに乾いたわたしの心と体に染み渡っていった。
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