【完結】占い館のチョコレート

四季苺

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劇団カリンに黒い影

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 発表会はっぴょうかいはホノカの言っていた通り、自由にグループを組み自由に内容ないようめて良いと言われた。知らなかったけど、六年生は毎年そうなっているんだとか。 

「鈴奈ちゃんのグループ、アイドルの曲でダンスやるんだって?」 

 発表会の練習れんしゅうてられた授業じゅぎょう前の休み時間に、あらたくんが話しかけてきた。 体育館たいいくかんで、なんとなくグループごとにおしゃべりをしている時だった。

「うん、わたしには似合にあってないけど」 

「そんなことないよ!ぼく、発表会が今から楽しみ」 

「え?新くんアイドル好きだっけ?」 

「………」 

 新くんはしぶい顔をする。後ろからなずなちゃん達のため息も聞こえてきた。何?なんで? 

「まぁいいや。僕はめげない。…知ってる?劇団げきだんカリンが分裂ぶんれつしかけてるらしいよ」 

「え!?」 

 『劇団カリン』という名前が広まっている…。それはさておき、なぜ分裂? 

「鈴奈ちゃん達が四人グループになったから、残りの女子が無視むししてもダメージ少ないじゃない?今までは一人ぼっちにされるからつらかったわけで、話せる相手が三人もいればまぁ充分じゅうぶんだよね」 

「そうだね」 

 無視されて気分は良くないけど、別に今にはじまったことじゃないから慣れてるし。 

嫌味いやみ言ったところで、なずなちゃんが全部返ぜんぶかえちにするから意味ないっていうか、こわくてできない人のが多いし」 

「…なんて?」 

 ポム、となずなちゃんの手が新くんのかたにのる。 

「ひぃ!」 

「なーちゃん、どうどう」 

 わたしはなずなちゃんをなだめる。 

「…えー、それで、カリンちゃんはイライラしてるわけ。大好きないじめができなくて」 

「新しいターゲットえらべばいいじゃん?わたし達以外たちいがいの。今までずっといろんな人に代わる代わる意地悪してきたんでしょ?」  

 なずなちゃんが首をかしげてそう言う。 

「カリンちゃんも、これ以上鈴奈ちゃんのグループに人がうつるのは困るから、新しいターゲットえらびはお休みしてるみたいだよ」 

「じゃあ、あっちのグループも平和へいわなんじゃないの?」 

 ユイとホノカも話に加わってくる。 

「しばらくはそうだったみたいだけどね、発表会練習が始まってから不穏ふおんみたい。カリンちゃんが物顔ものがおってるから」 

「毎年そうじゃん」 

 ユイが苦々にがにがしく言う。 

小道具作こどうぐつくれだの、もっと気持ちをこめて演技えんぎしろだの、カリンが威張いばるのは今に始まったことじゃないよね」 

「うん、れっこよ私たち。鈴奈のグループに移れて平和な今、もう絶対ぜったいやりたくないけど」 

 うんうん、とうなずく女子三人をなずなちゃんがうへぇという表情ひょうじょうで見ている。 

「他の女子たちもそうみたい。鈴奈ちゃんたちがカリングループから離脱りだつしたの見てさ、自分たちも『なんでカリンの言いなりにならなきゃいけないの』って思いはじめたみたい」 

「おっ、こっちに引き込むチャンス?」 

 なずなちゃんはす。 

「いや、三、四人くらいでいくつかグループ作ってるみたいよ。それで、劇団カリンからけて発表するみたい」 

「そしたら、カリンは…」 

「一人で発表かもね」 

「えー、それってアリなの?」 

 ホノカが新くんにたずねる。 

「作文コンクールで入賞にゅうしょうした人が、発表会でその作品読み上げた例があるんだよね。だから、別にダメではない」 

くわしいね」 

「うち、兄いるからね」 

  

 一人で発表。 

 一人でステージに立つ。 

 みんなはグループ発表なのに、特別とくべつ理由りゆうもなく。 

 自分だったら、絶対嫌だ。 

  

「引き込む作戦はうまくいかなかったけど、結果けっかオーライかな?カリンちゃんがぼっちになったんだから」 

「…うん…」 

「も~!鈴奈ちゃん、カリンちゃんのこと心配しんぱいしてるの?」 

 なずなちゃんがガバッときつきながら、非難ひなんめいたこえで言う。 

「…だって、まさか一人で発表なんて…」 

自業自得じごうじとくだよ!自業自得!」 

「ざまあでございますわ!」 

 最近悪役令嬢転生あくやくれいじょうてんせいモノにハマっているなずなちゃんがさけぶ。 

「ちょっ、聞こえる!」 

「わざとでございますわ!」 

「おーっほっほっほ!」 

 三人、いや新くんまで左手をこしにあて、右手のひらを外に向けて口もとにえて高笑たかわらいをし始めた。 

「なんだ、あのグループ」 

げき?」  

「休み時間から熱心ねっしんだな!でも、いったん集まれ~」 

 注目ちゅうもくを集め始めたところで先生がやってきて集合しゅうごうをかけたのでホッとした。チラリと後ろに目をやると、カリンが一人ノロノロとれつくわわってくるのが見えた。 
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