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発表会を占って
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発表会を前日に控えた夕方、わたしは占い館に来ていた。今回はちゃんと、前もって予約もしてある。お小遣いも持ってきた。
「今日は、何を占ってほしいの?」
リゼさんはタロットカードをシャッフルしながら、わたしに問いかける。
「明日の発表会がうまくいくかどうか知りたい」
「え、どうせ明日になれば分かるよ?お小遣いがもったいなくない?」
「…それ言ったら占いの意味なくない?リゼさん失業しちゃうよ」
「うっかり、うっかり☆」
リゼさんはテヘッと頭をかく。
「なんだか不安で…」
「カリンちゃんが一人で発表をするから?」
「うん、わたしのしたことはやりすぎだったかなって」
リゼさんは少しの間黙ってカードをきる。たぶん、何か考えているんだろう。
「カリンちゃんはさ、『まぜて』って誰かに言ったのかな?」
「えっ、たぶん言ってないと思う」
プライドの高いカリンが頼み事してるところなんて、あんまり見たことがない。
だよねとうなずきながら、リゼさんはカードの束をテーブルに置いた。
「一人で発表するのがイヤだったら、謝ってまぜてもらえるように頼めばいいだけ。そうしたら、まぜてくれる人だっていたかもよ?」
カリンの謝罪は一度も見たことがないかも。
「そうだね…」
「鈴奈ちゃんのしたことは、別に悪いことじゃないよ。もちろん、きっかけにはなっただろうけど、カリンちゃんから離れたのは、それぞれ自分の意思だし、引き留める努力をしなかったのはカリンちゃんなんだから」
「うん…」
フフッとリゼさんは笑う。
「なに?」
「んー、せっかく思い通りに仕返しできるのに、喜んでないんだな~って思って。やっぱり、鈴奈ちゃんは優しいよね」
「優しいとか、自分では分かんない。なずなちゃんが苦しんでた時はカリンに仕返ししたかったの。でも、カリンが一人になっちゃったの見て、嬉しい気持ちにはならなかった…。正直、かわいそうって思っちゃった。甘いかな?」
「んーん、『優しい』って、そのまんまの意味だよ。あたしは、人の気持ちを思いやれる鈴奈ちゃんが大好き」
「ありがとう…。あ、でもだからってカリンを助ける気はないんだけど…」
「うん、もう無理だろうしね」
ペラリとカードを一枚めくりながら、リゼさんは言った。そしてかすかなため息。
「わっ!怖いカード!」
馬に乗った骸骨の絵が目に飛び込んでくる。地面には死体みたいなのもいっぱいだ。
「これは、『死神』のカードだよ」
「え、わたし死ぬの?」
「アハハ!違う違う、怖い見た目のカードだけどね、意味は悪くないよ」
「…これで?」
「死んだら人は生まれ変わるって言われてるでしょ?だから、死は終わりでもあり、始まりでもあるんだ。『死神』のカードの逆位置は」
トン、とリゼさんの細くて長い人差し指がカードに触れる。
「『新しいはじまり』って意味がある」
指は、死神の背景に描かれた朝日を指していた。
「怖いとこばっかり見てたけど、おひさまがのぼってたんだね。」
「フフ、そうなの。だからさ、明日の発表会で今までの関係が終わって、新しいスタートを切ることになるんじゃないかな?」
わたしはうなずき、リゼさんに尋ねる。
「何か、気をつけた方がいいことってある?」
「そうだねぇ、『終わりを迷わずに受け入れること』かな。新しいスタートを切るチャンスを逃さないで」
「…分かった」
わたしは少しずつ不安がこみ上げてくるのを感じた。明日、わたしはちゃんと踊れるかな、とか迎える変化を受け入れられるのかな、とか思って。
「良かったらこれ、明日の朝学校に行く前に食べてね。」
「あ!」
勇気の出る魔法のチョコレート!
「発表も新しいスタートも良いものになりますように」
リゼさんはチョコレートを両手で包んで額の前に掲げると、祈るようにそう言った。
「ありがとう!」
これがあれば、明日頑張れそう。
そう思いながら、わたしは占い館を後にした。
「今日は、何を占ってほしいの?」
リゼさんはタロットカードをシャッフルしながら、わたしに問いかける。
「明日の発表会がうまくいくかどうか知りたい」
「え、どうせ明日になれば分かるよ?お小遣いがもったいなくない?」
「…それ言ったら占いの意味なくない?リゼさん失業しちゃうよ」
「うっかり、うっかり☆」
リゼさんはテヘッと頭をかく。
「なんだか不安で…」
「カリンちゃんが一人で発表をするから?」
「うん、わたしのしたことはやりすぎだったかなって」
リゼさんは少しの間黙ってカードをきる。たぶん、何か考えているんだろう。
「カリンちゃんはさ、『まぜて』って誰かに言ったのかな?」
「えっ、たぶん言ってないと思う」
プライドの高いカリンが頼み事してるところなんて、あんまり見たことがない。
だよねとうなずきながら、リゼさんはカードの束をテーブルに置いた。
「一人で発表するのがイヤだったら、謝ってまぜてもらえるように頼めばいいだけ。そうしたら、まぜてくれる人だっていたかもよ?」
カリンの謝罪は一度も見たことがないかも。
「そうだね…」
「鈴奈ちゃんのしたことは、別に悪いことじゃないよ。もちろん、きっかけにはなっただろうけど、カリンちゃんから離れたのは、それぞれ自分の意思だし、引き留める努力をしなかったのはカリンちゃんなんだから」
「うん…」
フフッとリゼさんは笑う。
「なに?」
「んー、せっかく思い通りに仕返しできるのに、喜んでないんだな~って思って。やっぱり、鈴奈ちゃんは優しいよね」
「優しいとか、自分では分かんない。なずなちゃんが苦しんでた時はカリンに仕返ししたかったの。でも、カリンが一人になっちゃったの見て、嬉しい気持ちにはならなかった…。正直、かわいそうって思っちゃった。甘いかな?」
「んーん、『優しい』って、そのまんまの意味だよ。あたしは、人の気持ちを思いやれる鈴奈ちゃんが大好き」
「ありがとう…。あ、でもだからってカリンを助ける気はないんだけど…」
「うん、もう無理だろうしね」
ペラリとカードを一枚めくりながら、リゼさんは言った。そしてかすかなため息。
「わっ!怖いカード!」
馬に乗った骸骨の絵が目に飛び込んでくる。地面には死体みたいなのもいっぱいだ。
「これは、『死神』のカードだよ」
「え、わたし死ぬの?」
「アハハ!違う違う、怖い見た目のカードだけどね、意味は悪くないよ」
「…これで?」
「死んだら人は生まれ変わるって言われてるでしょ?だから、死は終わりでもあり、始まりでもあるんだ。『死神』のカードの逆位置は」
トン、とリゼさんの細くて長い人差し指がカードに触れる。
「『新しいはじまり』って意味がある」
指は、死神の背景に描かれた朝日を指していた。
「怖いとこばっかり見てたけど、おひさまがのぼってたんだね。」
「フフ、そうなの。だからさ、明日の発表会で今までの関係が終わって、新しいスタートを切ることになるんじゃないかな?」
わたしはうなずき、リゼさんに尋ねる。
「何か、気をつけた方がいいことってある?」
「そうだねぇ、『終わりを迷わずに受け入れること』かな。新しいスタートを切るチャンスを逃さないで」
「…分かった」
わたしは少しずつ不安がこみ上げてくるのを感じた。明日、わたしはちゃんと踊れるかな、とか迎える変化を受け入れられるのかな、とか思って。
「良かったらこれ、明日の朝学校に行く前に食べてね。」
「あ!」
勇気の出る魔法のチョコレート!
「発表も新しいスタートも良いものになりますように」
リゼさんはチョコレートを両手で包んで額の前に掲げると、祈るようにそう言った。
「ありがとう!」
これがあれば、明日頑張れそう。
そう思いながら、わたしは占い館を後にした。
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