【完結】占い館のチョコレート

四季苺

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わたし達のステージ

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 とうとう発表会がきてしまった。低学年から順番じゅんばんに、合唱がっしょうげき披露ひろうされていく。どこの家も大体家族みんなでに来ているので、田舎いなか無駄むだに広い体育館でも、人でひしめき合っていた。かくいうもフルメンバー参加さんかだ。お父さんが有給休暇ゆうきゅう使つかったり冬兄とうにいがわざわざ帰省きせいするほどの発表でもないんだけど…まぁ、素直すなおうれしい。 

 前の方の座席ざせき児童席じどうせきで、わたし達も自分の発表がない時は観覧かんらんできるスタイルだ。しかも、今日は発表の時にスムーズに移動いどうできるように発表グループ別にすわれるから、なずなちゃん達と一緒。こんなにうれしい気持ちで六年生の発表会をむかえるなんて、思っていなかったなぁ。 

「そろそろ舞台袖ぶたいそで移動いどうしよう」 

 なずなちゃんに声をかけられて、わたしとユイ、ホノカはうなずき、そっとせきを立った。 

  

「次は、六年生女子四人グループによる歌とダンスの発表です」 

 アナウンスを聞いて、心臓しんぞうがバクバクいいはじめた。そんなわたしをはげますように、なずなちゃんが手をってくれる。 

「こーんにーちはー!」 

 なずなちゃんが大きな声で客席きゃくせきに向かって挨拶あいさつをした。ボソボソとこんにちはの声が返ってくると、なずなちゃんは「あれあれ?元気ないなぁ、もう一回!こーんにーちはー!」と言って、マイクを向けた。 

 今度は一際ひときわ元気な「こんにちは」が返ってくる。すごい、本当にアイドルみたいだ。 

「元気なご挨拶ありがとう!わたしはなずな!メンバーは~」 

「ユイだよ!」 

「ホノカ~☆」 

「鈴奈です♪」 

 ここで、全員客席に向かって手をる。正直しょうじきずかしい。でも今日は、発表会のためだけにお母さんが用意よういしてくれた可愛かわい衣装いしょうもあるし、アイドル気分を味わってもいいよね。 

「今日、わたし達は『ファンタジック☆クッキー』を歌います!」 

 ユイが続ける。低学年の子達がわあっと歓喜かんきの声をあげてくれた。流行はやってて知ってる人の多い歌にしたんだよね。 

「知ってる人はもちろん歌っていいよ!そしてそして~、サビのダンスは今から教えるので、ぜひみなさんもやってみてください!すずな、おねが~い」 

 ホノカがわたしに視線しせんおくる。 

「は、はーい!それではサビの振り付けを説明せつめいしまーす」 

「いよっ!!」 

 客席からクソデカボイスがひびわたる。あのオジサンくさい合いの手、絶対冬兄ぜったいとうにいだ…。ちらりと保護者観覧ほごしゃかんらんエリアに目をやると、冬兄がお父さんに頭をはたかれていた。お姉ちゃんとひぃ兄はずかしそうにしていて、お母さんは安定あんてい無表情むひょうじょうだ。 

「おっ!ノリが良いですね~!とっても嬉しいです。鈴奈ちゃんも、ノリノリで教えちゃってください!」 

 なずなちゃんのフォローに助けられ、わたしは打ち合わせ通りに振り付けの説明をする。 

「…みーぎ、ひだりっ、みーぎ、ひだりっ」 

 横ではなずなちゃん達三人もフリをやってくれた。 

「クッキー♪クッキー♪で手をパンパン!」 

 低学年の子達は、嬉しそうにフリを練習してくれている。客席や学年が上の子も結構けっこうみんなやってるなぁ。アイドルのきょくだからおじいちゃん・おじさん・そこそこ年齢ねんれいが上の男子がおどってるの笑える…。あ、校長先生も踊ってた…。 

「これでフリの説明はおしまいです。」 

「みんな、一緒に曲を楽しんでね!」 

 さっとわたし達は横一列よこいちれつに並ぶ。一度ステージが暗転あんてんし、イントロがながれ始めると、パッと照明しょうめいがついた。 

 その瞬間しゅんかんに、四人全員で思いっきりジャンプ! 

 わっ、と会場から声が上がる。 
  

 緊張きんちょうするなぁ。 

 フリも歌もちゃんと覚えてる。だけど、胸がドキドキドキドキ言って、いつ失敗しっぱいするかと気が気でない。占ってもらうのは、「自分の発表がうまくいくか」にすれば良かったかも。 


「えっ、ウソ」 

「なに?」 

 ユイとホノカが何か言ってる。 

「あははっ、すごーい!」 

 ニ人の見ている方へ目をやると、六年生男子はペンライトを振っていた。 

 ラベンダー、スカイブルー、オレンジ、ピンク。 

 わたし達の今日の服の色に、順番に変わっていく。 

「あれどうやってるの?」 

「色チェンジできるペンライトがあるんだよ」 

 あわてるわたしに、なずなちゃんは余裕よゆうだ。 

「あ!先生も!」 

 担任たんにん緒川おがわ先生はペンライト二本をぶんぶん振り回して応援おうえんしてくれていた。 

「先生オタげいすご!」 

 わたしの緊張はすっかりどこかにいってしまった。いつの間にか、歌と踊りを楽しんでいた。 

「いよいよサビだよーっ!みんな、準備じゅんびはいいーっ!?」 

 なずなちゃんが大きな声で客席に呼びかける。低学年の子たちがわくわくで立ち上がるのが見えた。 

となりのお友達にぶつからないように、気をつけてねーっ?」 

 ユイが続く。 

「それじゃあせーのっ」 

「クッキー♪クッキー♪」 

 なんだろう、この不思議ふしぎな感じ。一体感いったいかんって言うのかな?体育館の中のたくさんの人が一緒に歌って踊って、楽しい気分を味わって…。 

最高サイコー!!」 

 なずなちゃんがさけんだ言葉に、わたしは笑ってうなずいた。 

 サビが終わっても、まだ一緒に歌ってくれる人がいたり、保護者席ではスマホをペンライト代わりにして振ってくれたりして、最後まで盛り上がることができた。 

「一緒に踊ってくれてありがとう!」 

 ホノカの声に、はっとする。最後さいごのセリフはわたしだ。 

「この後の発表も、楽しんでいってね!」 

 ペコリとれいをして、おしまい。 

 たくさんの拍手はくしゅとともに、わたし達は舞台袖ぶたいそでに戻っていった。 
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