【完結】占い館のチョコレート

四季苺

文字の大きさ
31 / 38

占い館で恋愛相談

しおりを挟む
「クリスマスもじゅくとか、終わってる…」 

「ほんとだよ、青春真せいしゅんま只中ただなかなのに…」 

 塾からの帰り道、新くんとなずなちゃんはブツブツと愚痴ぐちをこぼしていた。チラホラと電飾でんしょくをつけている家やお店があって、あぁそんなシーズンなんだなぁと思った。 

「え?青春って高校生からじゃないの?」 

 そう言うと、二人は眉間みけんにシワをせてわたしを見つめる。 

「どういう定義ていぎ…」 

「もしや恋愛れんあいも高校生から?」 

 ヒソヒソと何か話し合っている。 

「え、なに?」 

 わたしも会話かいわに入ろうと近付ちかづくと、二人は突然とつぜん手をせわしなく動かす。なんか見たことある、あれ、甲子園こえしえん野球やきゅう監督かんとくがやってるやつだ。 

「鈴奈ちゃん、わたし先にかえるね!」 

 突然とつぜんなずなちゃんが走り出す。 

「えっ!なんで!?」 

 いかけようとしたところを新くんに止められた。 

「鈴奈ちゃん、話があるんだ…」 

  

「えー!やるじゃ~ん」 

「ねー!頑張がんばったよね、あらたくん」 

 占い館のテーブルに向かい合って、なずなちゃんとリゼさんはがっていた。 

「ひどい…」 

おこらないでよ、鈴奈ちゃーん」 

 わたしがテーブルにしてむくれていると、なずなちゃんが頭をワシャワシャしてくる。 

「なずなちゃんは知ってたんだ…新くんがわたしをどう思ってるか…昨日告白こくはくするつもりだったのかも…知ってて教えてくれなかったんだ…」 

「人の好きな人、勝手かってに教えちゃったらダメでしょ」 

 じめじめしてるわたしに、リゼさんがズバリと言う。 

「そうかもしれないけど…でもびっくりして困ったし…前もって知っていたらもうちょっと…」 

「え、今まで全然気付ぜんぜんきづかなかったの?ノーアプローチでいきなり告白?」 

 リゼさんがおどろいたような声を出す。すると、突っ伏している後頭部こうとうぶに風を感じた。顔の向きだけ変えてチラリと上を見たら、なずなちゃんがはげしく首を振っている。 

「すっごい、滅茶苦茶めちゃくちゃ、アプローチしてた!」 

 なずなちゃんはリゼさんの耳に口をせて小さな声で言った。 

「聞こえたし…」 

「でも気づかなかったんだ?」 

「だって…わたしのことをそんな風に思う人がいるなんて思わなかったんだもん…そもそも、恋愛は高校生からだし…」 

「え?日本はそうなんだ?」 

「ちがう、ちがう」 

 また風を感じる…。 

「どうしたらいいの…」 

「新くんはなんて?」 

 リゼさんは椅子いすをひいて、わたしの側によって座ってくれた。 

  

 昨日、新くんはわたしにクリスマスプレゼントをくれた。可愛かわいくラッピングされたふくろを開けると、木製もくせい砂時計すなどけいが入っていた。 

「紅茶をれる時に使えると思って」 

 右手を頭の後ろにやりながら、新くんは言った。れた時のくせだって、長い付き合いのわたしは知っている。 

「えっ、ありがとう!ちょうどしかったの!」 

 リゼさんに淹れ方を教わって紅茶にハマったわたしに、冬兄がガラスのティーセットを買ってくれると約束している。茶葉ちゃばはお姉ちゃん、ティーストレーナーはひぃ兄が。卒業そつぎょう入学にゅうがくのおいわいだ。 

 でも、紅茶のらし時間を計る砂時計は誰とも約束やくそくしていない。だから、とってもうれしかった。 

「でも、ごめんわたしなんにも用意よういしてなかった…。今度こんどなにかお返しする」 

「お返しはいいよ、僕があげたかっただけだから。でもお返事へんじは欲しいかな」 

「…え、なんの?」 

  

  

「ワーーー!!!回想終了かいそうしゅうりょう!終・了!!」 

 思い出しただけでずかしい!わたしはテーブルに突っ伏したまま足をジタバタさせる。 

「いや~、甘酸あまずっぱいねぇ。リゼさん話聞くだけで若返わかがえっちゃうわ~」 

「いや、その先をくわしく!」 

 なずなちゃんはわたしの背中をゆさゆさと揺さぶった。

「…好きって言われた。恋愛対象れんあいたいしょうとしてみてって。あと、受験前じゅけんまえにこんなこと言ってごめんって」 

「あ~たしかに。勉強べんきょうの時、気がっちゃうよね」 

「ホントだよ…どうしてくれるの…」 

 なずなちゃんはきゅうだまってしまう。 

「ん?どうしたの?」 

「…あぁ、えっと、言うべきかまよってることがあって…」 

「教えてよ」 

「…うーん、まぁいいか。あのね、鈴奈ちゃん。新くんは翠陵すいりょう杜野宮もりのみや両方受験りょうほうじゅけんするんだって」 

「え?うん、わたし達もそうだよね」 

 本命ほんめいは翠陵だけど、練習とすべり止めのために杜野宮も受ける。 

「そうだけど、新くんは鈴奈ちゃんにフラれたら鈴奈ちゃんとは別の中学に行くって決めてるらしいよ」 

「…えっ…」 

 思わず顔を上げてなずなちゃんを見ると、ちょっと悲しそうな表情ひょうじょうをしていた。冗談じょうだんなんかじゃなく、本当の話なんだ。 

「はー、まぁフラれたら気まずいよね。でも、学校分けるほどかな?」 

 リゼさんは首をかしげる。 

「鈴奈ちゃんのこと、あきらめられないからだって。ことわられたのにずっと鈴奈ちゃんをおもってたら鈴奈ちゃんをこまらせちゃうって言ってた」 

「えぇ…」 

「でもわたしも、鈴奈ちゃんが新くんを好きじゃないなら一緒の中学行かないほうがいいと思うよ?新くんが近くにいたら鈴奈ちゃんは絶対ぜったい、新しい恋ができないもん」 

「それはなんで?」 

 リゼさんが代わりに尋ねてくれる。 

「だって、今だって新くんは自分が鈴奈ちゃんを好きってこと明らかにして周りの男子を牽制けんせいしてるんだよ?中学でも鈴奈ちゃんに言いやからが出ないように阻止そしするに決まってる」 

 そ、そんなことしてたの!? 

 恥ずかしすぎる。 

「わ~、重いね」 

「もう、どうしたらいいの…。新くんを好きかどうかなんてわかんない。ずっと友達だと思ってたんだもん。中学だって、きっと一緒に行けてこれからも楽しくごせるって思ってたのに…恋じゃないならはなれていくなんて、さびしすぎる」 

「じゃあ、そのままそうつたえたら?」 

 リゼさんはさらりとそう言った。 

「え?返事にならないけど、いいの?」 

「うん、いいと思うよ。ようするに、まだめられないからっててっていう返事へんじになるのかな?それで、返事がどうであっても中学を分けるのは寂しいって言ってもいいんじゃない?」 

「新くんを困らせないかな?」 

「それはあたしにはわかんない。でも、ちゃんと思ってることを伝えて話し合うんだよ。恋愛だって、コミュニケーションなんだから」 

「そっか…」 

「うんうん、そうだね。よく考えて決めてあげて。勉強もあるしさ、新くんがいいなら受験が終わってから考えてもいいんじゃない?」 

 なずなちゃんも、リゼさんの意見に賛成みたいだ。 

「それがいいかも…」 

「じゃあ、一応いちおうこの話は一段落ひとだんらくかな?そろそろなずなちゃんの持ってきてくれたケーキ食べようよ~!」 

「あ!そうだね!」 

 今日は一日遅いちにちおくれのクリスマスパーティーをしようと集まったんだった。なずなちゃんのお母さんが作ってくれたいちごたっぷりのケーキに三人で歓声かんせいをあげる。 

美味おいしそう!」 

「あたし、お茶いれてくる!」 

「じゃあ、他のお菓子もならべておくね」 

 美味しそうなお菓子を前にしたら、さっきまでのなやみもどこかへんでいってしまった。もちろん、ちゃんとお返事は頑張がんばるけど、今はただパーティーを楽しんでいたいと思った。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍2冊発売中!
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

【運命】と言われて困っています

桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。 遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。 男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。 あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。 そんな彼が彩花にささやいた。 「やっと会えたね」 初めましてだと思うんだけど? 戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。 彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。 しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。 どういうこと⁉

オバケの謎解きスタンプラリー

綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます! ――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。 小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。 結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。 だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。 知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。 苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。 いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。 「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」 結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか? そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか? 思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

処理中です...