【完結】占い館のチョコレート

四季苺

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勇気の素はカカオじゃない

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 いよいよ試験当日しけんとうじつ。 

 解熱剤げねつざいを飲んでねむったおかげで、わたしの熱は七度五分ななどごぶにまで下がっていた。 

「具合が悪くなったら、すぐ試験監督しけんかんとくに言うのよ」 

 車をりる時、お母さんはそう念押ねんおしした。 

「わかった、でもなるべく頑張がんばる」 

 正門付近せいもんふきんは、人もまばらだった。みんな早めに着いて準備じゅんびしてるんだろう。わたしは体調重視たいちょうじゅうしでゆっくり起きたからギリギリとは言わないがおそめの時間だ。 

 まず、自分の試験会場しけんかいじょうさがさなきゃと、あたりを見回していると聞きれた声がひびいた。 

「おはよう!」 

「なずなちゃん、あらたくん!」 

 荷物にもつもコートもってない身軽みがる格好かっこうで二人が駆ってくる。きっと早くから来てて、もう会場に行った後なんだ。 

「会場こっちだよ、三人とも一緒だった」 

 新くんはさりなくわたしのバッグを持ってくれながら、そう言う。 

「ママが鈴奈ちゃん用にあったかいはちみつレモン作ってくれたから、会場ついたらわたすね!」 

 やばい、またなみだがあふれてきそう。 

「二人とも、ありがと…」 

  

 二人に会場まで連れてってもらい、トイレと筆記用具ひっきようぐの準備をませると、わたしは目をつぶった。 

 なんとか、試験には来られた。あとは頑張るだけだけど…。 

 「とう」のカードの絵が頭によぎる。くずれる外壁がいへきちるかみなりえ上がるほのお。 

いやだ…」 

 つい小声こごえでつぶやいてしまい、あせったら空気をんでしまい、咳込せきこんだ。 

 そうだ、なずなちゃんのお母さんのはちみつレモンもらおう。 

 バッグから水筒すいとうを取り出すと、カツンと音がした。チョコの箱に当たったみたいだ。これは、最後にリゼさんがくれたチョコレート。これまで魔法のチョコレートだと信じていたキラキラの包みのやつじゃなくて、コンビニでもスーパーでもよく見かける赤い箱のチョコレートだ。 

「………」 

 わたしは少しまよってから、箱からひとかけらチョコレートを取り出す。そして、口に入れた。 

 ゆっくりとチョコレートがけて、甘くてなめらかな舌触したざわりが広がっていく間、わたしはこれまでの努力どりょくを思い返していた。 

 猛暑もうしょの中、じゅくまでの坂をのぼった日。半分眠りかけながらすごい量の課題かだいいた日。クリスマスもお正月もなくテキストに向き合った日々…。 

  

 こんなに頑張ったんだから、わたしはきっと大丈夫。 

  

 チョコレートがすっかり溶けてなくなった時に、わたしはそう思えていた。 

 きっと、今までもそうなんだ。頑張ろうとすための力はわたしの中にあった。それを発揮はっきする手助けをリゼさんとリゼさんのチョコレートがしてくれていたんだ。魔法まほうたよっていたわけじゃないんだ。 

 それでも、リゼさんがいないさびしさが変わるわけではないけど…。 

「ケホケホッ」 

 また咳が出てしまって、慌ててはちみつレモンでのどをうるおす。気付くと、なずなちゃんと新くんがチラチラとこっちを見ていた。 

  

 大丈夫。 

  

 わたしには、心配してくれる友達もいる。それに、リゼさんにまた会いたいなら、お給料きゅうりょうをたくさんもらえる職業しょくぎょうかなくちゃ! 
スウェーデンまでの旅費りょひは、きっと安くない。

「試験五分前です。必要ひつようのない物はすべてカバンにしまって下さい」 

 試験監督の声に気をめる。 

  

 さあ、今までの成果せいかを出して、新しい未来みらいひらくんだ! 
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