辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

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第三章:天空の箱庭と、失われた太陽の民

第七節:決戦、天を喰らう蛇

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​ 成層圏の向こう側、漆黒の宇宙から降りてきたのは、月を模したかのような巨大な円盤状の浮遊要塞『ルナ・エクリプス』だった。
 それは、地上の帝国やギルド連合が足元にも及ばない、超古代のロストテクノロジーの結晶。要塞の周囲には、数千の自動掃討機(ドローン)が群れをなし、天空大陸を蟻の巣でも掃除するかのように見下ろしていた。
​「……地上ノ種子ヨ。汚レ果テタ星ヲ、再ビ管理スベク、我ラガ戻ッタ。全テノ魔力権限ヲ委譲シ、跪クガ良イ」
​ 空全体を震わせる無機質な宣告。それは、数万年前に星を見捨てた「先祖」たちからの、傲慢な帰還報告だった。
​「……管理? 都合のいい時だけ戻ってきて、実った果実を横取りしようなんて。……宇宙(そら)でよっぽど食料に困っていたみたいだね」
​ アルトは、天空大陸の最下層から『浮遊蓮・改』で一気に高度を上げ、宇宙の境界線で要塞と対峙した。
 彼の背後には、世界樹の心核と同期したシエラ、そして新たな力を得たイカロスと有翼人の精鋭たちが、アルトが編み出した「生体宇宙服」を纏って控えている。
​「アルト様。……あの要塞、次元の隙間から魔力を引き出しています。地上の魔法は、あの次元障壁を突破できません!」
​「なら、次元の隙間さえ『根』で埋めてしまおう。……シエラ、地上と海、すべての生命の鼓動を僕に預けてくれ。……これが、庭師としての『最後の奉公』だ」
​ アルトが両手を広げると、彼を中心に、虹色の魔力が爆発的に広がった。
 彼が取り出したのは、世界樹の心核から授かった、透明なクリスタルのような種。
​「――神域超越発芽。万物を飲み込む天蛇(コスモス・アイビー)。……空の果てまで、僕の庭にしてあげるよ」
​ アルトが種を虚空に放つ。
 瞬間、何もない空間から、透明な「蔦」が噴き出した。
 それは物理的な植物ではない。因果律と魔力の流れを直接「土壌」として成長する、概念上の植物。
 蔦は瞬く間に巨大な「蛇」の形を成し、宇宙要塞『ルナ・エクリプス』をその巨体で締め上げ始めた。
​「ナ……何ダト!? 計算外ダ! 次元障壁ガ……『喰ワレテ』イル!? 植物如キガ、高次元エネルギーヲ吸収スルナドト!」
​ 宇宙要塞から放たれた極大の収束レーザーが、蔦を直撃する。
 だが、アルトの植物は燃えるどころか、その破壊エネルギーを「花を咲かせるための養分」に変え、要塞の表面に巨大な『極光の薔薇』を次々と開花させていった。
 薔薇の根は要塞の装甲を突き破り、深部の制御システムを、アルトの神経系へと強制的に上書きしていく。
​「……言っただろう。僕の植物に『攻撃』は効かない。……愛着を持って育てたもの以外、この星には必要ないんだよ」
​「グ……グアァッ! 全システム停止!? 我ラ、天界騎士団ガ……未開ノ庭師ニ……敗レル……トイウノカ……!」
​ アルトの意思と同期した蔦が、要塞の動力炉を優しく包み込んだ。
 爆発は起きなかった。
 ただ、要塞が持っていた膨大なエネルギーが、アルトを通じて世界樹へと還流し、枯れかけていた天空大陸の隅々にまで、温かな生命の息吹となって流れ込んでいったのだ。
​「……終わったよ。……もう、誰もこの星を奪うことはできない」
​ アルトがそう呟くと、天空のさらに高みに、これまで見たこともないような、星そのものを包み込む「緑の結界」が完成した。
 それは、宇宙からの侵略を拒絶し、星の内部で生命が自律して循環し続けるための、最強の「垣根」だった。
​ 宇宙要塞は、もはや武器ではなく、天空大陸に寄り添う「巨大な月夜見の庭」へと作り替えられた。
 
 勝利を確信したシエラが、アルトの元へ駆け寄る。
 だが、アルトは満足げに笑いながら、少しずつその体が「光の粒子」へと変わり始めているのに気づいていた。
​「……アルト様!? その体……どうしたのですか!?」
​「あはは。……ちょっと、この星のシステムと同期しすぎちゃったかな。……シエラ。……庭師の仕事は、ここで一旦おしまいだ」
​ アルトは、泣き出しそうなシエラの頬に、そっと手を添えた。
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