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運命の舵輪編
追憶編5
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外から見た限りでは厳しそうなセイレーンの任務も過酷なモノばかりでは決して無く、またその体制も息が詰まるような堅苦しいモノでも無かった。
組織内には様々な人物(勿論、その正体はセラフィムに通う一般生徒達)がいて、善悪美醜様々な物語が其処此処で展開していた。
・・・だけど。
「どうして、何も教えてはくれないんですか!?」
「もっと俺たちを信用して下さい、ってか情報を下さい。このままじゃまるで道化だ!!」
設立理由や設立理念がそうだから、仕方が無いと言えば仕方が無いがセイレーンは実に秘密の多い組織だった、しかも時折、情報が上役達だけでストップしてしまい、蒼太達一般のファイター達にまで回って来ない事があったのだ。
それは例えば、犯人の特徴や癖、戦法と言った、実際の戦闘に関するモノはさて置き、事件の背景や真相と言った事柄に関してはその傾向が特に顕著だった。
「君達は、事の真相など知る必要は無い」
余りの秘密主義の厳しさに、ある時蒼太達はメリアリアと同じ、女王位の一人である“オリビア・フェデラー”に食って掛かった事があったが難無くあしらわれてしまった、“氷雪の女王”の異名を取る彼女は常に冷静沈着であり、よしんば不測の事態や後輩の実態をその目にした場合でも、およそ激高した姿を見た者は、女王位の中でも皆無だったのだ。
「なまじ情報を知る者が多ければ多いほど、それを秘匿する事は困難になる」
それはとても危うい事だと、オリビアは予見していた、もし将来、諸外国がこのガリアへと侵攻を企てる際に、真っ先に邪魔になるのは自分達のような呪術戦士であり諜報機関でもある。
その二つを兼ね備えているミラベルやセイレーンの底が知れてしまうことは国の安全保障上、何としてでも防がなくてはならなかったのだ。
ましてやセラフィムには敵性国家、とまでは行かないまでも、それでも諸外国の工作員やテロリストが常時潜入している可能性もあって(アルヴィン等のハイウィザード達からも“その可能性は極めて高い”と指摘を受けていた)到底、情報及び諜報能力をそこへ向けて公開するような真似は出来なかったのである。
「・・・私本当は、蒼太をここに入れたくなかった」
「・・・どうして?」
それでも自分達に対しては、事の真相を告げようとしない上層部に対して、ある種のモヤモヤを抱えたまま、蒼太が彼なりに、毎日を懸命に生き抜いていた、ある7月の晴れた土曜日の放課後のこと。
屋外でお弁当を食べながら、蒼太はメリアリアの言葉に耳を傾けていた。
「だって。こんな危険な世界だし。いつ死んじゃうか解らないんだよ!?私、蒼太にはずっと生きていて欲しい、こんな危険な場所になんて、来て欲しくなんて無かったもの!!」
「そんなの、僕だって同じだよ!!メリーを、メリーだけを危険な目になんか、合わせたくない、メリーとずっと一緒にいる!!」
「蒼太・・・」
強い口調で放たれたその言葉を聞いて、メリアリアは思わず涙を浮かべてしまっていた、本当はいけないと知りつつも、堪らなく嬉しくなってしまったのだ。
実際、彼女は上の人間達が蒼太をこの組織に入れようと画策していることを突き止めた際にはただ一人、最後の最後まで反対した。
蒼太は、大切な恋人であり思い人だった、何としても守りたい存在だった、誰が好き好んでそんな人を終わりの無い戦いの世界へと、引きずり込みたいとおもうだろうか。
勿論、彼女にだって葛藤はあった、自分の置かれた境遇の余りの厳しさに、人知れず涙した夜だってあった、それにー。
何かにつけて自分を気遣い、優しくしてくれる少年に、親愛なるパートナーに隠し事をする後ろめたさは正直言って筆舌に尽くし難いモノがあったけれども、それでもメリアリアは黙って耐えた、“自分が我慢さえすればそれでいいんだ”と、涙を拭って堪えたのだ。
それでもー。
時折、どうにも我慢出来なくなってつい少年を求めてしまった時もあった、それも執拗に、激しく、深く、お互いの内、どちらかが気を失うまで永久にー。
それでも蒼太は黙って全てを受け入れてくれていた、嵐のような激情の過ぎ去った後は、いつも優しく頭を撫でてくれていたのだ。
それだけではない、時には蒼太もまた、自らを“これでもか”と言うほどに求めてくれて、何度も何度も果てさせてくれていたのだがそんな日々を繰り返す内に、いつしか綾壁蒼太と言う存在は彼女にとって、自分の全てと言っても良いモノと化していたのである。
組織内には様々な人物(勿論、その正体はセラフィムに通う一般生徒達)がいて、善悪美醜様々な物語が其処此処で展開していた。
・・・だけど。
「どうして、何も教えてはくれないんですか!?」
「もっと俺たちを信用して下さい、ってか情報を下さい。このままじゃまるで道化だ!!」
設立理由や設立理念がそうだから、仕方が無いと言えば仕方が無いがセイレーンは実に秘密の多い組織だった、しかも時折、情報が上役達だけでストップしてしまい、蒼太達一般のファイター達にまで回って来ない事があったのだ。
それは例えば、犯人の特徴や癖、戦法と言った、実際の戦闘に関するモノはさて置き、事件の背景や真相と言った事柄に関してはその傾向が特に顕著だった。
「君達は、事の真相など知る必要は無い」
余りの秘密主義の厳しさに、ある時蒼太達はメリアリアと同じ、女王位の一人である“オリビア・フェデラー”に食って掛かった事があったが難無くあしらわれてしまった、“氷雪の女王”の異名を取る彼女は常に冷静沈着であり、よしんば不測の事態や後輩の実態をその目にした場合でも、およそ激高した姿を見た者は、女王位の中でも皆無だったのだ。
「なまじ情報を知る者が多ければ多いほど、それを秘匿する事は困難になる」
それはとても危うい事だと、オリビアは予見していた、もし将来、諸外国がこのガリアへと侵攻を企てる際に、真っ先に邪魔になるのは自分達のような呪術戦士であり諜報機関でもある。
その二つを兼ね備えているミラベルやセイレーンの底が知れてしまうことは国の安全保障上、何としてでも防がなくてはならなかったのだ。
ましてやセラフィムには敵性国家、とまでは行かないまでも、それでも諸外国の工作員やテロリストが常時潜入している可能性もあって(アルヴィン等のハイウィザード達からも“その可能性は極めて高い”と指摘を受けていた)到底、情報及び諜報能力をそこへ向けて公開するような真似は出来なかったのである。
「・・・私本当は、蒼太をここに入れたくなかった」
「・・・どうして?」
それでも自分達に対しては、事の真相を告げようとしない上層部に対して、ある種のモヤモヤを抱えたまま、蒼太が彼なりに、毎日を懸命に生き抜いていた、ある7月の晴れた土曜日の放課後のこと。
屋外でお弁当を食べながら、蒼太はメリアリアの言葉に耳を傾けていた。
「だって。こんな危険な世界だし。いつ死んじゃうか解らないんだよ!?私、蒼太にはずっと生きていて欲しい、こんな危険な場所になんて、来て欲しくなんて無かったもの!!」
「そんなの、僕だって同じだよ!!メリーを、メリーだけを危険な目になんか、合わせたくない、メリーとずっと一緒にいる!!」
「蒼太・・・」
強い口調で放たれたその言葉を聞いて、メリアリアは思わず涙を浮かべてしまっていた、本当はいけないと知りつつも、堪らなく嬉しくなってしまったのだ。
実際、彼女は上の人間達が蒼太をこの組織に入れようと画策していることを突き止めた際にはただ一人、最後の最後まで反対した。
蒼太は、大切な恋人であり思い人だった、何としても守りたい存在だった、誰が好き好んでそんな人を終わりの無い戦いの世界へと、引きずり込みたいとおもうだろうか。
勿論、彼女にだって葛藤はあった、自分の置かれた境遇の余りの厳しさに、人知れず涙した夜だってあった、それにー。
何かにつけて自分を気遣い、優しくしてくれる少年に、親愛なるパートナーに隠し事をする後ろめたさは正直言って筆舌に尽くし難いモノがあったけれども、それでもメリアリアは黙って耐えた、“自分が我慢さえすればそれでいいんだ”と、涙を拭って堪えたのだ。
それでもー。
時折、どうにも我慢出来なくなってつい少年を求めてしまった時もあった、それも執拗に、激しく、深く、お互いの内、どちらかが気を失うまで永久にー。
それでも蒼太は黙って全てを受け入れてくれていた、嵐のような激情の過ぎ去った後は、いつも優しく頭を撫でてくれていたのだ。
それだけではない、時には蒼太もまた、自らを“これでもか”と言うほどに求めてくれて、何度も何度も果てさせてくれていたのだがそんな日々を繰り返す内に、いつしか綾壁蒼太と言う存在は彼女にとって、自分の全てと言っても良いモノと化していたのである。
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