メサイアの灯火

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運命の舵輪編

エルヴスヘイム事件エピローグ

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 自宅のベッドの上で健やかな寝息を立てていた我が子を見た清十郎と楓は思わず蒼太を抱き締めた、彼等からしてみれば急に我が子が消えてしまい、その足取りもようとして知れなかったのだから当たり前と言えば当たり前なのであるが、とにかく心の底から心配で心配で堪らずにおりこの数日間、まともに食事も採れなかったのである、しかも。

 聞けば“エルフの世界へ行っていた”と等と言う、とんでもない答えが返って来るモノだから最初は何を言っているのか二人共理解が出来なかったモノの、しかし両親達の内、母親である楓だけは蒼太の言葉を否定せずに、それでも“うん、うん”と頷いて聞いてくれていた。

「私には、どうにも信じられないがなぁ・・・!!」

「でもあなた、蒼太の持ってきたあの剣は。それにあの子の身体から放たれている祝福の魔法は・・・っ!!」

 蒼太を寝かし付けた後で、両親達は話し合った、その結果、取り敢えずこの事をミラベルの本部に、そしてその背後にいるハイウィザード達に報告して指示を仰ぐことにしたのだがその当時、帝都では子供達が寝ている間にいなくなる、と言う事件が頻発していた。

 その為、その解明に警察やミラベルも躍起になっており、また国の中枢を守るハイウィザード達もまた、その事件の持つ特殊性に着目しており、総力を挙げて情報収集に務めていたのであるが、そこへ相談を持っていくと言うことは当然、我が子のしていた話しを彼等に伝える事になるわけであり、現にそれから僅か二日後に、蒼太は両親共々ミラベルの本部に呼び出しを受ける事となった。

「エルフの世界に、行っていたと言う事だったのだが・・・!!」

「君が言った話が本当ならば、子供達は帰ってくる事になるね・・・?」

「はい、賢者様。必ず、帰ってきます!!」

 自分達の目の前に現れた少年の話しをある者は興味深そうに、またある者は胡散臭い物を見るような瞳で聞き入るモノの、しかしそれから僅か一日後に。

 本当に、彼の言った通りに行方不明になっていた子供達が続々と家族の前へと姿を現すようになり、そのいずれの口からも“ここではない、違う世界に連れて行かれた”、“エルフの世界に行っていたんだ”と言う話しが飛び出し始めたのだ。

 余りに衝撃的なその出来事に、ハイウィザード達はいよいよ本格的な調査に乗り出す事になった、魔法に頼るだけでなく、古文書や歴史書までをも持ち出して当時の各家庭の空間や人物の波動を調べ、それと同時に“平行世界と現実世界”のあり方や関わり方に付いての議論が連日連夜行われた。

 だがしかし、そう言った場においては何より物証が物を言う、結局は綾壁蒼太と言う名の少年が持ち帰って来た、不思議な金属で出来た剣と、そこに込められていた魔法の力から、“間違いは無い”と言う結論へと至って行った。

「信じられん!!」

「エルフの世界等が、本当に実在していたとは・・・!!」

「一体、何故扉が閉じられてしまったのだ?再び開く方法は・・・!!」

 最終的には大賢者である“アルヴィン・ノア”の裁定もあって結局は蒼太が事件を解決した、と言うことでこの話しは終結したモノの、しかし。

 それらが公にされることは遂に無かった、事件の真相は“帝室機密文書保管庫”の中で厳重に管理され、代々の責任者のみに密かに口伝で伝えられて行く事となったのである。

 一方で。

 そんな大人達の狼狽振りを尻目に蒼太は、1週間の休学の後、無事にセラフィムへと復帰する事が出来ていた。

「一体、どこに行ってたの?凄く心配したんだよ!?」

「う、うん。ちょっとね・・・」

 一ヶ月ぶり(メリアリアにとっては10日ぶり)にメリアリアと再会を果たした蒼太は、彼女からの問い掛けに対してしかし、当初は満足に答える事が出来ずについモゴモゴとどもってしまった、両親や周囲の大人達から“事態の究明が進むまでは、第三者に不用意にこの事を告げてくれるな”と彼は何度となく釘を刺されていたのである。

 しかし。

「えっ!?なになに、どうしたの。お姉さんに教えなさい!!」

「えっ!?やだやだ、蒼太っ。何で教えてくれないのっ!?隠し事なんてしないでっ!!」

「蒼太お願い、どうしても教えて?何が起こったか知りたいの!!」

「う、うん・・・」

 不安そうな、それでいて何処か悲しそうな表情で為されるメリアリアの度重なる懇願に、流石の蒼太もタジタジになってしまった、彼女は明らかに変わったと、子供心に蒼太は思った、以前の彼女だったなら。

「うそ、蒼太絶対に何か隠してるっ。そんなこと言うんだったらもう、口をきいてあげないから!!」

 位の事は言ってのけただろう、それなのに。

(なんだろう。なんか最近のメリー、凄(すっご)く女の子っぽくなったな・・・!!)

 それが自分だけに向けられている特別な思いであることを、蒼太はまだ十全に、理解し切れていなかった、この当時の彼はまだ、女心というモノを掴み切れていなかったのである、ただし。

 それを心では感じ取る事は出来ていたから、それが嬉しくて楽しくて、その事も合わさって彼女の見せる態度と仕草とについドキドキとしてしまうモノの、そう思いつつも一方で蒼太はちょっとした困惑も覚えてしまっていた、父親達からは“誰にも言うな”と念を押され、でもメリアリアからは“教えて?”とせがまれているのだ、どちらかを優先させなければならない。

「ねえ、蒼太お願い。教えて・・・」

「う、うん。実は・・・」

 悩み抜いた挙げ句に蒼太はやむを得ず、メリアリアにそれまで起こった事件の一部始終を正直に話すことにした、メリアリアにだったら問題ないだろうと思ったのである。

 ところが。

「蒼太のバカッ、もう口きいてあげない!!」

「え、えっ。どうしてっ!?」

 自分の身に起こった事を、包み隠さず話して聞かせた蒼太に対してしかし、メリアリアはいきなり怒りをぶつけてきた、メリアリアは無念で仕方が無かった、彼氏の一大事に自分が側に居られなかった事が悔しくて堪らなかったし、悲しくてどうしようもなかった、彼の力になってあげたかった、自分も彼と一緒にいて少しでも良いからその苦労を背負ってあげたいと思ったのである、それなのに。

 自分にはそれが出来なかった、そのこと自体も我慢がならなかったのだが何より彼女を激昂させたのが、代わってそれを熟(こな)したのが3人の若い女性エルフ達だったと言う点だ、そうだ、メリアリアはアイリス達に対してハッキリとしたヤキモチを焼いていたのだ。

 いいや、もっと言ってしまえばそれはヤキモチ等という生易しいモノでは決して無かった、完全なる嫉妬であったが考えてみればそれも当然と言えた、何故ならばメリアリアは蒼太と一緒に探検をした事はあっても冒険の旅路へと付いた事など一度も無く、ましてや死線を共に潜り抜けた経験など皆無であった。

 その背中に危険を預けて、剣林弾雨の飛び交う中を、乱立する怒声と殺気の只中を一緒に走破した思い出などは、この時点ではまだ、二人の間に欠片も存在していなかったが、それをアイリス達はやってのけたと言う、自分の知らない蒼太の姿を知っていて、挙げ句に生死の境を共にする、と言う極限を共有したと言うことに対してまだ幼くて精神的にも未熟な所もあったメリアリアはある種の焦燥感を抱いて追い詰められてしまったのだ。

 勿論、それでも蒼太が悪いんじゃない事は頭の中では理解していたし、“戦うこと、殺し合うこと”、それ自体がいけない事なのも知っていた。

 なにより他に、どうしようもなかったのだと言うことも解ってはいたのだがしかし、如何せん肝心の心の方が追い付いて来なかった、メリアリアは蒼太の特別でいたかったし、特別でありたかった、そして蒼太にもそう思っていて欲しかったし、思われているのも解ってはいたけれど、しかし次から次へと溢れ出る、悲しさと寂しさとで心がいっぱいになってしまっていたのだ。

「メリー、お願い。出て来て・・・」

 それは彼女の愛情と独占欲の裏返しであり、まだ子供心に“恋”と言うモノを抱いてしまった彼女の悲痛な叫びであった、たがそれは、彼女自身も気が付く事が出来なかった、結局その日以降、自分の中にある、ドロドロとした正体不明な感情に苛まされたままメリアリアはすっかり塞ぎ込んでしまい、自宅に引き籠もったままで誰とも会おうとしなくなった、そんな彼女の元を。

 その日から蒼太は足繁く通い続けた、話がしたいよ、会いたいよと言って、メリアリアと言葉を交わそうとするのだが中々会ってもらえなかった、彼女は学校にも来ていなかった、だからクラスに行っても会うことが出来なかったのである。

 メリアリアがようやく蒼太を許したのは(というより彼女の気が晴れたのは)それから1週間も経ってからの事だった、彼女は嬉しかった、毎日のように一生懸命自分を訪ねては会おうとしてくれる蒼太の気持ちが心に響き、また会うことが叶わないと知るとその度毎に悲しそうに帰って行くその姿に思わず胸が締め付けられる。

 それに。

 彼女自身も思っていたのだ、“蒼太と会いたい”、“会ってお話がしたい”、“昔のように触れて欲しいし、触れ合っていたい”、とー。

 だから。

「蒼太・・・っ!!」

「メリーッ!!」

 そんな彼女自身の気持ちも相俟って、そう言った蒼太の行動や態度の1つ1つが彼女の気持ちを徐々に氷解させて行き、そして。

 遂に蒼太を自分の部屋へと招き入れたメリアリアはそのまま彼氏に抱き着いて、久方振りとなる熱い抱擁と口付けを交わした。

 口内のスポットと言うスポットを全て軒並み刺激すると溢れ出てきた唾液を啜り、逆に自身のそれを相手の喉元奥深くへと向けて、大量に流し込む。

「ん、んむっ。ちゅる、むちゅっ。じゅるじゅるっ。レロレロ、クチュクチュクチュクチュ・・・ッ!!ちゅ、ちゅぱっ。じゅるじゅる、くちゅくちゅ、ちゅううぅぅぅぅぅっ!!じゅる、じゅる、じゅる、じゅるっ。ちゅぷちゅぷっ、じゅるるるるるるるるるるるる~っっ♪♪♪♪♪」

「ん、ちゅっ。はむっ、んちゅっ。クチュクチュク、レロレロレロレロ・・・ッ。むちゅうぅぅぅっ、ちゅる、ちゅぱっ。じゅるるる、じゅるるるるるるるるっ!!!」

 それが済むと今度は服を脱ぎ捨てて裸になり、蒼太を寝かせて自身が上から跨がるようにする、そうしておいてー。

 その男根に自らの割れ目を押し当てると腰をグイグイッと前後にグラインドさせるようにして、激しいペッティングを開始した。

「はあっ、はあっ!!蒼太っ、蒼太ああぁぁぁっ❤❤❤」

「メリー、メリーッ!!」

 互いに名を呼んで見つめ合い、幸せそうに微笑み合う。

 メリアリアにとっては17日ぶり、そして蒼太にとっては実に1ヶ月と1週間ぶりの逢瀬であり邂逅だった、二人は擦り合いを続けつつも何度も何度もキスを繰り返しては肌と肌とを重ね合う。

 久方振りとなる互いの身体の感覚に、仲直りした直後であった事も手伝って二人はいつも以上に燃えていた、その勢いは徐々に過熱の一途を辿り、少年と少女の身体からは汗がブワッと噴き出して来る。

 やがてー。

「うきゃあああぁぁぁぁぁぁぁっっっ❤❤❤❤❤❤」

「うっあああああっ!!!」

 殆ど同時に二人が叫んで互いにビクビクと痙攣し合う。

 陰茎がビクビクと震えてアソコがキュウキュウと窄まり返り、乳首とクリトリスとが勃起して宙を向いてピンッと勃った。

「・・・・・っっ!!!!!かはあぁぁっ。はあっ、はあっ、はあっ、はあぁぁっ❤❤❤」

「はあはあ、はあはあ・・・っ。ふうぅ・・・っ!!」

 一頻り、身体をつんのめらせて痙攣していたメリアリアだったがやがてその絶頂の衝撃が抜けてグッタリと蒼太の上へと覆い被さって来る。

「はあはあっ、はあぁぁ・・・っ!!蒼太ぁ、好き好き、大好き・・・❤❤❤」

「・・・僕だって大好きだよ、メリー」

 恍惚とした表情で“ずっと一緒にいてね?”と告げるとキスをしてくるメリアリアに自身も口付けで返すと蒼太は、その身体をしっかりと抱き締める。

 汗に塗れた彼女の身体は甘酸っぱい香りで満たされており、熱気を帯びたその体臭が鼻腔を突くと蒼太の意識を痺れさせた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 仲直りしてからと言うもの。

 前にも増してメリアリアは蒼太と行動を、共にするようになっていった、流石に休み時間はともかくとしてもそれ以外の登下校時や昼休み、休日などは何処に行くにも一緒に過ごすようになり、蒼太にはメリアリアが、そしてメリアリアには蒼太がいない日が存在する事が殆どと言って良いくらい無くなって行った。

 勿論、時には用事が入ったり、他の友人達と遊んだりする事もあるにはあったがそんな事は例外であり基本的に、二人は同じ場所で同じ時を過ごすようになっていったのだ。

「・・・でね、その時ドロシーがね」

「ドロシーってあの人でしょ?例の薬師を目指してるって言う・・・」

「そうそう、そのドロシー!!」

 たわいも無い会話の1つ1つも、蒼太と交わすモノになると楽しくて楽しくて仕方が無かった、それに彼の事を考えていると自然と胸が高鳴って気分が踊り、自分がドンドンと高揚して行くのかハッキリと感じられた。

 そうだ、メリアリアはこの時確かに恋をしていたのだ。

 相手はこの2歳年下の幼馴染みの少年であり、そんな彼の声、表情、仕草など、その全てが愛しくて眩しくて、そしてメリアリアはどうしようもない位に途方に暮れるのだ、それに。

(何だろう。最近の蒼太、とっても頼もしい感じがする・・・!!)

 少女が思うがこの所、彼氏の行動や雰囲気に精彩と言うか、何となく積極性が出て来た感じがした、大地を踏み締める足音にさえ力強さが漲っており、全体的に男らしさが醸し出されている。

 判断にも迷いが無くなって思い切りが出て来ており、“何が起きてもどんとこい”と言うような、落ち着きのある堂々さが全身から迸っていた、・・・要するに彼は男としての自覚を得ると同時に自信をも持ち始めてきたのである。

 それに加えてもう一つ、考え方も凄くしっかりとしてきていた事が挙げられるが以前、セラフィム内の共同授業でメリアリアのクラスと蒼太のクラスが一緒に講義を受ける事があったのだがその時、受け持ちの教師から“この世を生きていく為に、必要なモノは何か”と言う問い掛けに対して指名された蒼太は静かに、しかしハッキリと告げたのである、“力”と“優しさ”と“お金”です、と。

「この3つが無いと、世の中生きていく事は出来ないと思います」

「その通りだ、それも1つの真理だな。しかしよく答えを持っていたな蒼太君!!」

 担任が彼を褒め称えるが、その時誰も(つまり年上のクラスであるメリアリアのクラスメイト達ですらもが)正しく答えられなかったその質問に、独自の見解とは言えども一石を投じたのは彼だけだった。

 これには正直、メリアリアも舌を巻いた、彼女はてっきり蒼太の事をだから何も言わないか、強く問われても“優しさです”と答えるだけだろうと思っていたのだ、それなのに。

(蒼太ったら、いつの間にそんな事まで覚えたのかしら?)

 日々しっかりとして行く恋人の変化(と言うより進化)に戸惑いつつも、それでもメリアリアはその全てを受け入れていた、蒼太の自分に対する真心は充分に伝わっていた、彼は芯から自分を大切に思ってくれていて、現にしてくれてもいるのだ、後はそれに自分が答える番だと、メリアリアは確信していた。

「・・・蒼太!!」

「ん?」

 そう告げると突然、メリアリアは飛び付いて、少年をギュッと抱き締めるが何というか格好良くなってきた少年に堪らないモノを覚えて思わず力が入ってしまったのだ、基本的に女性というのは男性の事を、その反応パターンまで含めて“意識の連続体”として見る傾向があり勿論、メリアリアもそうでそれ故、何か隠し事をしていたり、不自然な点があるとたちどころに見抜けるのである。

 ましてやメリアリアの場合は彼に1番近い立ち位置にいたのであり、そしてだからこそ、この幼馴染みの少年の変化を他の誰より早くに察知する事が出来たのだ。

「ねえ蒼太」

「なにさ、メリー」

「今度一緒に冒険しましょうね、絶対だよ!?」

「・・・うん」

 “絶対に!!”と応じたが正直、蒼太は心の中で“もう冒険は懲り懲りだ”と思っていた、エルヴスヘイムで思い知ったが旅とは気楽で平穏なモノでは決して無かった、移動している最中はトイレにだって行けやしないし、あれにもこれにも気を遣わなくてはならなかった。

 何より。

 敵との戦闘は本当に危険なモノだった、容赦なく振り下ろされる剣に斧に鉄槌、突き出される槍に飛来する鏃(やじり)。

 あの最中、マグマのうねる崖の上を、敵の投擲を防ぎつつも潜り抜けていた時に、蒼太は実はメリアリアの事を考えた事があった、彼女がいなくて本当に良かったと思った、もし剣が振り下ろされた先にメリアリアがいたら、鏃の飛んで行く先に、彼女の姿があったなら。

 そう考えると全身の毛が一気に逆立つ思いがした、絶対に嫌だと強く思った、メリアリアを傷付けたくない、危険な思いなどして欲しくはない、いつまでも安らぎの中にいて、優しく微笑んでいて欲しいと、そう思っていたのだ、それなのに。

 メリアリアは冒険がしたいと言う、蒼太からしてみれば逆だった、むしろ自分に冒険を、忘れさせて欲しかった、嫌な事は忘れていたかったし、現にメリアリアを抱いている時は全てを忘れる事が出来た、それはメリアリアもそうだったのだが蒼太もまた同じ事だったのだ。

(はあぁ・・・。メリー、僕の気持ちも考えてくれよ)

 そう思って内心溜息を付く蒼太は、やっぱりまだ女心が理解できていなかった。
ーーーーーーーーーーーーーー
 読者の皆様方、こんばんは。

 いつもいつも“メサイアの灯火”を御覧いただきまして、誠に有難う御座います。

 お陰様で無事に、“エルヴスヘイム編”を完了させる事が出来ました、たくさんのご声援、本当に有難う御座いました。

 この物語は蒼太君がまだ8歳になったばかりの時の話しです、だから成長した、大人の彼とは違っている未成熟なその姿に、もしかしたなら違和感を感じた方もいらっしゃるかも知れません(あんまり活躍できませんでしたしね)。

 でもこれは既定路線でした、即ち“蒼太君をあまり活躍させない”と言う制約を、自分に課した中での物語りだったのです。

 蒼太君は所謂(いわゆる)“天才”ではありません、確かに凄い力や生命力を持ってはいるけれど(それにそう言ったモノを“才能”と呼んで良いかどうか解りませんしね)、基本的に“直向きな人”、“努力の人”なんです。

 だから悩んで苦しみながら、それでも一歩一歩前に進む、と言う彼の姿が書きたかったのです、色々な事で葛藤しつつも、それらを乗り越えて行く、と言う彼の姿が書きたかったのです(単に“彼は努力の人だった”で終わらせるのでは無くて、皆様方にその軌跡を追っていって共有していただきたかったのです)。

 ただそのせいで、色々と反省点も生まれました、まず一つ目が“山無し、谷無し、オチ無し”と言う、“だからなんなの?”と言う話が数話ほど出来てしまった点にあります(読んでいて拍子抜けされてしまった方も、いらっしゃるかも知れません)。

 もう一つ目が(先に挙げた事と共通する部分もあるのですが)各話のインパクトが薄かった事です。

 例えとして挙げるならば、“波動真空呪文”が1番最初に出て来たシーンがそうでした、あれは本来ならば、もっと絶大な威力になるはずだったモノを、無理矢理押さえ付けたんです(勿論、今の蒼太君が使った場合は、相当な威力になります)。

 理由は簡単で、まだ子供の頃からそんなに強力な呪文を使えるのはいくらなんでもおかしいのではないか?と言う思いから出た行動でした(例えばド○クエなんかでもそうですよね?如何に強大な力を秘めていようとも、まだ未熟な少年の内からいきなりバギ○ロスやバ○ムーチョが使えるのは、不自然な感じがする、と思ったのです。長い目で見た時に些か違和感と言うか、“それは違うだろう”と思ったのです)。

 それに呪文を放った後の描写も、もっと凄惨なモノになるはずだったのを止めて、“やられた魔物達はみな、光の粒子となって空へと帰っていった”、と言うことにしたのです(これについては変な世界を生み出して皆様に背負わせたく無かったのと、もう一つが“エルヴスヘイム事件7”の前書きで書かせていただいた理由からです)。

 と、ここまで色々と書かせていただきましたがやっぱり1番の原因は自分の力不足、と言うことに尽きます(だってもし同じ様な制約下で書かれていらっしゃられる方がおられるとして、その方は結果を出せているかも知れません、とするなら一目瞭然です)。

 皆様方には御迷惑をおかけ致しました事を、深くお詫び申し上げます、大変失礼いたしました。

 ただどうしてもこの部分のお話しは、書かざるを得ませんでした、どうして蒼太君が戦士として覚醒したのか、ああ言った大人の男になった原因はなんなのか、と言う伏線を張る為です。

 蒼太君は今回の冒険で、生きていくためには次の3つが必要である事を学びました、即ち“人を思いやる優しさ”と“道を切り開く為の力”、そして“潤沢な資金”です。

 まず第一にお金に付いてですが、確かに食べるには困らなかったモノの、それでも考えながら使わなければいけなかったですし、何より“お金が無いから”と言って当初は頼りの綱だったギルド等からも依頼は受けてもらえずに、街の中で途方に暮れてしまいます。

 また力が無ければ冒頭の、子供のゴブリン達との戦闘で死んでしまっていたでしょうし、そこを運良く切り抜けられたとしても、やはり途中の戦いにおいて帰らぬ人となっていたはずです。

 そしてそんな蒼太君は気を張った状態で、それでもボロボロになりながらも何とか次の街、次の街と旅から旅を続けていく訳ですが、そんな道中にあってもエルフの人達は何も言わずに一人旅する蒼太君を暖かく迎え入れて、ちゃんとした適正価格で(要するに“子供だから”と言って邪険に扱ったりズルをしたりしないで)寝床と食事を提供してくれました。

 それだけではありません、仲間の加入の箇所もそうですが、冒険の最後の方でも彼は結局は、人の“優しさ”とか“勇気”、そして“義侠心”に助けられて、支えられて、そこを契機に突破口を開いて行くのです。

 ちなみにそんな蒼太君はこの後(と言ってもまだ先の話になりますが)、もっともっと極限状態に置かれた、それこそ本格的な命のやり取りを経験するまでになります(それでこの第二章の物語の冒頭に繋がる訳です、つまり逞しい18歳の姿となり、殺意のある“敵”は必ず仕留める、と言うスタンスになるわけです)。

 また蒼太君は序盤から既に、700万円もの大金を持っていますが、これも彼がちゃんと働いて稼いだ金子(きんす)です、ちなみに依頼料は難易度によって変わりますが、最大で100万円近い依頼料を受け取った事もあります。ついでに言いますと、よっぽどの事が無い限り、彼もタダでは依頼を受けたりしません(その辺りは凄いシビアなんです)。

 でもそうじゃないと自分を、そして大切な人(メリアリアちゃん)を守れないんです(人を守る、と言う事はその人の命のみならず、その生活を守る、と言う事にもなりますからね)。

 そう言った事を今回の冒険を通じて蒼太君は少しずつ、悟って行った訳です、で最終的にはエルフの王様からも認められて、叙事詩で詠われるまでになるのです(ちなみにあれにも意味があります。上でチラッと“人を守る”、と言うことに付いて述べさせていただいておりますが、それに対する自分なりの答えです、ある事件に対する自分の思いを込めました)。

 些か長くなってしまいましたが、ここまでお付き合いいきまして誠に有難う御座いました、今後ともどうか、“メサイアの灯火”をよろしくお願い申し上げます。

                  敬具。

            ハイパーキャノン。
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