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ガリア帝国編

ハウシェプストの迷走

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 今回のお話しは、霊能者から聞いた話を元にして作らせていただきました、予め御了承下さいませ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「時空を糺している者を見付けた?」

「左様でございます、メイヨール・・・!!!」

 夜の夜中のそれよりも、漆黒の暗がりの只中においてエカテリーナはメイヨールにやや興奮気味にそう伝えたが、当のメイヨールの反応は些か鈍いモノだった、それというのもー。

 キング・カイザーリンからは続けざまに次々と指令が飛ばされて来るからに他ならなかったのであるモノのその中身は、即ち“彼女”の思惑は一貫しており、要するにいち早く人間達の身も心をも“レプティリアン”に貶めさせて、それを自分達が支配する、その構図を作り出したいのである。

 自らを見失わせた挙げ句に優しさすらも忘れてしまった人類の発するエネルギー波は極めて強力なる“暴走する暴虐の怒濤”そのものとなって、この地球全土を覆うであろう、そうすればもはや“時空の乱れ”は極大を突破して修復は不可能なモノとなり、如何にその“時空を糺す者”が仲間達と力闘したとて手に負えなくなるであろう事は、疑いようの無い事実であった。

 それ故にー。

 カイザーリンとしては先ずは、“人類恐竜化計画”の遂行を何処までも優先していたのであり、そしてその為の布石を着々と打ち続けていたのである。

 ガリア帝国における“結界”を破滅させておき、却って“それら”を構成していた様々なマジックアイテムを用いては人々に呪いを掛けていたのも、彼等がどのような状況下でどれだけの力を掛けた場合に、どのような反応を示すのか、と言った事を確認する為であり、要するに“レプティリアン化”させる場合のデータを集める目的で行われている事だったのだ。

 ガリア帝国をその為の“実験材料”として選んだのは、この国の王室の中にのみは、“自分達”の血が流れていないからであり、今後欧州の覇権を巡って対立して行く関係になるであろう事が、解りすぎる程に良く解っていた為であった。

「結界を乱してガリア帝国の帝室の力をそげ落とさせよ、しかる後に騒乱を中心部分で連続して引き起こさせて、国力を傾けさせるのだ。人間共の帝室に対する敬意と尊攘の念を打ち砕け!!さすればかの国は我々のモノとなる・・・!!」

「御意に御座います、カイザーリン・・・」

 そう頷いたデュマはたがら、時空を糺す者がいるとして、ソイツが今すぐ抹殺しなければならない程に強大なる力を付けていたのならば、話は別だったのであるが目下の所はあくまでもカイザーリンの意志に沿うような、組織運用を心掛けねばならなかったのである。

 ただしー。

「その者の名は、何という?」

「はい、“ソウタ・アヤカベ”と申します。コイツは“ガイア・マキナ”において彼方の“アンチ・クライスト・オーダーズ”であった“ドラクロワ・カウンシル”を壊滅に追いやり、私達の計画を阻んだヤツです、メイヨール!!」

「ふむ・・・?」

 それを聞いたデュマは瞳を閉じて何事かを静かに瞑想していたモノの、やがてカッと目を見開いてエカテリーナの名を呼んだ。

「エカテリーナ・・・」

「はい、メイヨール・・・」

「此奴を始末出来るか・・・?」

「ではやはり、コイツこそが・・・!!」

「それは、解らん!!」

 とやや興奮気味に話すエカテリーナに対してメイヨールは先手を打って発言を封じたが、確かにこの男、気になる事は気になる、用心しておくにしくはない。

「此奴が“時空を糺す者”かどうかは、まだ解らぬ。此奴の未来がよく見えぬのだ・・・!!」

「そんなっ。メイヨールの魔力をもってしても・・・!?」

「静かにせい・・・!!」

 デュマは今度は些かウンザリしたかのように申し添えた、“お前は燥ぎ過ぎる”とそう言って。

「しかし此奴が来てからと言うモノ、我等の計画や魔力が悉(ことごと)く、打ち破られておるのは事実だ、そうなのであろう?エカテリーナ・・・」

「はい、メイヨール。間違いありません!!」

「では行くが良い、止めはせぬし手立てはお前に任せる」

 “ただし”とデュマは釘を刺しておいたのだった、“今現在において、カイザーリンの意向は人類恐竜化計画にある事を忘れるな?”と。

「組織に無用な痛手を負わせるな。そうでなければ私とて、お前を庇い切れなくなる・・・!!」

「・・・・・」

「それだけは、心得ておけよ?エカテリーナ・・・」

「了解しました、メイヨール・・・」

 そう言うとエカテリーナはデュマの元を後にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今後暫くは4人一組で行動を共にしたい?プライベートを含めてか!!?」

「そうです、オリヴィア・・・」

 一方で。

 エカテリーナとの遭遇を果たした数日後に、“女王会議(クイーンズ・カウンシル)”の定例会議に招聘された蒼太は開口一番そう訴えたが彼からしてみればエカテリーナの、即ちレベッカの考えている事は手に取るように解ると言うモノだったのだ。

 あの時、アイツが此方に襲撃を掛けて来なかったのは偏に周囲に人目が有りすぎた為と、彼我の戦力差が開いていたからに他ならないと、彼は分析していたのであり、そしてそれは大筋において当たっていた、エカテリーナは“このままここで戦ったのではまずい”と判断したからあの場から撤退しただけであって、別段戦意が無かった訳では決して無かったのである。

 とするならば。

 ヤツが次にどのような方法に出て来るのか、と言う事については大凡の事が推卒出来ると言うモノだった、此方が1人でいる時を狙うか、或いは散々に消耗した所を寄って集って嬲り殺しにするか、どちらかであろう。

(メリー達“女王位”達と、“幹部クラス”とでは、殆ど互角か女王位の方がやや優勢である、と思う。ましてやレベッカは一度、向こうのメリーに痛い目に遭わされている訳だから、間違っても真面に向かっては来ない筈だ。恐らくは何らかの策謀を用いて来るだろうが、さて・・・!!!)

 蒼太は思案を巡らせるモノの、こうなった以上は敵に反撃の時間を与えない事が肝要である、今までに得た情報からヤツらのアジトを暴き出して突入し、レベッカ以下主立った者達を、何とか捕縛したい所である。

 特にレベッカにはメリアリアに謎のマジックアイテムを使用して前身の波長を変化させ、異国の少女の姿にした前歴がある上に、それでも足りずに彼女に更なる危害を加える事を目論む等その腹黒さを遺憾なく発揮しては蒼太の大事な女性(ひと)に対して非道な行いを邁進して来た人物でもある、それを思った時に蒼太は、憎しみの余りに腹の虫が治まらなくなってしまっていたのだが、しかし。

(僕もメリーの事で頭に血が上っていたから・・・。ついレベッカに対して過剰に反応してしまったかも知れないな、もう少し冷静になるべきだったかも・・・!!!)

 “だけど!!”と蒼太は頭(かぶり)を振った、“どうしても怒りを抑えきる事が出来なかったんだ”と、自分自身にそう告げて。

 だってそうでは無いか、メリアリアはただただひたすら一途なまでに純情であり、恐ろしい程に可愛らしい女性(ひと)である、ちょっと気の強い所をもあるけれど、性格だって真っ直ぐで明るくて、とっても優しい女の子なのである、そしてなにより。

 蒼太の最愛の妻なのであったがそんな彼女に手を出したのだけは、やはりどうあっても許されるモノでは決して無く、現に蒼太もレベッカに対する余りにも怒りと腹立たしさに、それらの想念を受け流し切る事が出来なかった、あの場で飛び掛からないようにする事が精一杯であったのだ。

「・・・・・」

(流石に何の関係も無い一般人を、巻き添えには出来ない。それだけはだから避けたけれども・・・。本当だったらぶちのめしてもぶちのめしても、まだ足りない位だっ、レベッカの奴めっっっ!!!!!)

 それに、と蒼太は思うがもう1人の仇である“アレクセイ・デュマ”の動向も気に掛かるのであり、今この瞬間にも奴らが次の作戦の準備をしているかも知れない、等と思うと尚のこと、こんな所でグズグズと、手を拱いている訳には行かないのであり、そう考えると自分の行動はむしろ、正解だったのでは無いか?と言う気さえして来るモノの、しかし。

(危ない、危ない・・・っ!!!)

 蒼太は思った、仮に今回の判断が正しかったからと言っても、それは“結果論”に過ぎないのであって、自分達が最初から最後までの事を見越して行った訳では決して無いのであり、その辺りはやはり、褒められるべき事では間違っても無かった、むしろ冷静さを欠いてしまった分、向こうにも正しい情報を与えてしまい、自分と言う存在がいる事を知らせてしまったのは些か以上にいただけない事態を招いてしまった、と言わざるを得ない。

 結果として蒼太達はだから、今後はプライベートを含めても4人一組で行動する事を余儀なくされてしまったのであり、これは大きな戦略的後退と言えた、とは言え。

(まあ、どちらにしても。・・・早かれ遅かれ、こうなってはいただろうな、むしろ今回は自分達の知っている所で向こうと接触している分、相手の反応が手に取るように解るのが嬉しい。とするとやはり、此処までは間違ってはいなかったんだ、問題はここからだぞ!!?)

 蒼太は思わず身の引き締まる思いがしたが、先ずは今現在の自分達の置かれている状況を、皆で共有しなくてはならない、蒼太は順を追って説明を開始した。

 先日、街を散策していたら敵の幹部、“エカテリーナ”と遭遇した事、彼女は戦意が旺盛だったが劣勢を悟ってその場は引いた事、今後は恐らく、此方を用心深く、かつ執拗に付け狙って来るであろう事、等をである。

「レベッカは、と言うよりも、他の幹部達も“そう言う奴ら”の方が多いんだけれども。残忍残虐で自分勝手、横暴で凄い狡猾な性格、性質をしている。真面に戦って来る奴らなんて、まず居ないと思った方が良い」

 ただし、と蒼太は付け加えた、“プライドだけは以上に高くて仲間割ればかりしているんだ”、とそう告げて。

「彼等には基本的に“仲間意識”や“人としての温もり”等と言うモノは皆無である、と言って良い。ただただひたすら利用し、利用され、用済みになれば始末される。その繰り返しで組織は運営されている」

「・・・・・」

「・・・・・」

「信じられないな・・・」

 アデールやジョセフィーヌ達が口々に話し合うモノの、彼女達としてみれば“義侠心”や“優しさ”、“思いやり”も何も無いのに、どうやって組織を維持、運営する事が出来ているのかが皆目見当が付かなかった。

「信じられんな。一体全体、どうやって・・・」

「“恐怖”と“欲望”だよ、アデール・・・」

 蒼太が話を続けるモノの、彼等の行動原理の根本にあるのは須くがこの二つのみであり、それらによって彼等は成り立っている、と言うのだ。

「いくら浅はかな連中とは言えどもなぁ・・・!!」

「そんなバカな事が本当にあるのか?こんな身近な事例でそんな事等は・・・」

「いいや、事実なんだよエマ、クレモンス・・・!!!」

 そう言って蒼太は尚も言葉を紡いで行くモノの、それによると幹部達の中には自らの私利私欲を満たすために、悪魔、所謂(いわゆる)“デーモン”との間に取り引きをする者すらもいる、と言う話であって当然、そう言った連中は己の魂をその生贄に捧げる事になるわけなのである。

 即ちそうまでしても自身の欲望を満たしたいと考えている訳であって、それはつまり根本からの利己的思考に染め上げられている者達である、と言う事を示しているのだ。

「彼等はだから、自分達の欲望を満たすためならば何でもするさ、何しろ魂すらをも捧げてでもそう言う事に充てようとする連中なんだから。もっとも後に残るのは死んだ後の恐怖しか無いけどね、だって魂が食い殺されてしまうんだもの、死んだら完全にそれっきりだよ。もう輪廻の輪の中に戻って生まれ変わる、と言う事が出来なくなってしまうんだから・・・!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・っ!!!」

「ただしそんな中でも、“死んだ後も生き続ける方法”が無いわけでは無いんだよ、その一つが“魔”と一体となる、と言うやり方なんだけれども、これは文字通りに魔物と一つとなる事で死んだ後も己の意識が無くならないようにするのだそうだ、魔物に取り込まれて“残留思念”となってその意識の中を漂うのだと、そう言う話を聞いた事がある」

 “もっとも”と蒼太は続けた、“魔物自体が永遠に不滅の存在等では、間違っても無いけどね”とそう告げて。

「奴らは基本的に、“時”が来たなら順々に始末される運命が待っているだけの存在だから、間違ってもいつまでもいつまでも在り続けられる訳では無いのさ。だけれどもそれまでは、少なくとも生き延びる事が出来る、そしてその為には“魔”に気に入られなくてはならないんだ。だから彼等は上からの命令には忠実に従うのさ、取り込んでもらうために、認めてもらえるように一喜一憂しながらね・・・」

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!!」

「何という愚かな話なのだ!!!」

 “魔物と一つになる等と!!”とオリヴィアが吐き捨てるようにそう告げた、“なんと悍(おぞ)ましい事なのだろうか!!?”とそう言って。

「第一、それでは。君の話が本当ならば、それは・・・っ!!!」

「そうですよ、オリヴィア」

 蒼太が頷きながら話を進めた、“一つになる、等と体の良い言葉を使ってはいるが、要はするに最終的には食い殺されて、魔物の一部になる、と言う事です”とそう告げて。

「信じられない。そんな事をして本当に、幸せになれるとでも思っているのか?幸せが手に入るとでも思っているのだろうか、どうして“おかしい”と思わないのか!!!」

「まさにその通りです、悪魔崇拝のような事をしている人と言うのはだから、知らず知らずの内に化け物にその身や魂を捧げている、と言っても良い。ところが知っていてやっている場合はともかく、そうじゃない場合は本人は気が付かない事が多いんですよ、自分が何をやっているのか、と言う事を、全然解っていないでやっている、なんて人もたまにいますけど」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・どういうことだ?」

「世の中にはいるんですよ、自分の愛しい人を、と言ってもこの場合なんかは例えば、主に妻や花嫁、恋人なんかをですけれどもわざと魔物に寝取らせたり、捧げたりなんかして喜んでいるような人々が。またはそう言う本を読んで悦に浸っている人だとか、ね。悪魔崇拝以外の何物でも無いじゃないですか、そう言うものって。でも本人達は全く以てその事に気が付かないんです、それが何を意味するのか、と言う事にね。で、こう言うのが常態化、重症化して行くと本物の魔物に寄生されて行くんですよ、何故なら歪んだ快楽や破滅的なエクスタシーと言うのは彼等の最も大好物たるモノの一つですから。要するにそう言うのが大好きな人、と言うのは魔物から見た場合、何もせずとも自分の元にせっせと食事を運んできてくれる存在、と言う事になるのです」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「魔物がそう言う連中に取り憑くと、どうするか。一番最初にまずはその人の耳を塞ぐんだそうです。人間と言うのは“自浄能力”や“気付きの力”と言うのがあります。何かに興じている時にそれでも、ある一定の限界を超えると“自分は一体、何をやっているんだろう”ですとか“このままで良いのかな?”等と考える時ってあるじゃないですか、あの力を奪うんだそうです。要するに“自分は異常である”と気付かせる能力を奪わせると同時に人の話に耳を傾けなくさせるそうです。そうして次に正常な感覚を麻痺させます、“こんな事をしていてはいけない”だとか“このままじゃダメになっちゃう”と言った感性をぶち壊しにしてむしろ逆に“このままでも良いんだ”と思わせるそうなんですが、それをやられてしまうともう、一般人には手の打ちようがありません。他の人が、と言ってもこの場合、何も友人知人からだけではありません、守護霊なんかの高次元的な存在も含まれますが、そうした人々の導き、話に耳を傾けなくなって行くのだそうです、そうして魔物が作り出した幻惑と混沌の世界の中で、いつまでも何処までも破滅的なエクスタシーにどっぷり浸っては奴らにエネルギーを注ぎ込み、用が無くなればポイ捨てか、貪り喰われるかのどちらかです。まあ彼等もバカじゃありませんから、寄生先の宿主にまだ利用価値が残っている場合は始末したりはしません、徹底的なまでに利用しようとするそうですから」

「そう言えば、何度も見たわね」

 メリアリアが口を開いた、“日本にいた時に、あなたにくっ付いて何度か除霊や妖魔退散の儀式を行ったけれども、確かに取り憑かれている人って言うのは浄化や除霊をしようとする此方に対して凄い抵抗を示す場合があったわね”と。

「まああれは本人が苦しんでいる、と言うよりも、取り憑いている連中が抵抗している、と言った方が良いんだけどね。とにかく取り憑かれている人って言うのはだから、そう言う話を聞かされると堪らなく不機嫌になるんだよ、あれは取り憑いている奴らが主に引き起こしている現象なんだけれども、取り憑かれている側も取り憑かれている側で、それが長く続いているとその分だけ侵蝕がどんどん酷くなってしまって行くんだ、そうなるとどうなるのか、と言うとその状態が普通であったり、いっそ心地良くなってしまっている場合すら出て来てしまうそうなんだよ、だから、こっちが救ってやろうとしても“余計な事”に写るんだな。まあ、憑きものが落ちればすぐに元の自分に戻るから、問題は全くないんだけどね?」

「確かに皆、除霊を終えたり妖魔を退散させたりした後は、何事も無かったかのように“あー、すっきりした!!”だとか“何を考えていたんだろう、俺は・・・!?”とか言ってたりしたもんね!!?」

「そうそう。取り憑かれている側の人々も、よっぽどの事がない限りかは自分自身の霊魂までもがやられている訳ではないからね、特に人間の魂には“神の領域”の部分があって、そこだけは絶対に汚されないようになっているんだ、だから取り憑いている奴を引っ剥がえしてやれば、立ち所に“本当の自分自身”を取り戻すんだよ、すぐに復活出来るんだけど。だからこそ、と言うべきか、やっぱり問題なのは取り憑いている側なのさ、自分が取り憑いている事がバレると引っ剥がえされる事を、連中も知っているからね。だから宿主に凄く嫌な気分を引き起こさせて怒り狂わせたり反発させたりしては、その場をぶち壊しにするんだそうだよ」

「・・・・・」

「・・・・・」

 “確かに”とオリヴィアが告げた、“悪魔払いの儀式の最中に、そう言うのはよく見る風景だな”と。

「さっきも言わせていただきましたけれども、人間には既にして“神”が宿っているのです、それは即ち“永遠にして不滅の光”が宿っている事を意味するんです。その事さえ忘れなければ、悪魔なんぞに魂をくれてやる人間なんて、出て来ないと思うんですがね?」

「なるほどな。しかしそれは良いとしても、魔物に悪魔(デーモン)か。連中にとって人間(われわれ)は何処まで行っても“餌”と言う訳か、しかも散々にエネルギーを取り込んだ後は貪り食うまでするとはな。とんでもなく胸糞の悪い話だ!!」

「しかし彼等はそこまでしてでもこの世の中が欲しいのでしょうね。しかも魔物を遥かに超えた悪魔、“デーモン”の力を借りてでもそれを成し遂げようとするなんてのは・・・!!!」

 蒼太は思うが兎にも角にも先ずはレベッカの所在とその目的とを突き止める事が先決である、そうでなければ話が何一つとして先へは進まなくなってしまったのだから、他にどうしようないと言えばどうしようもない、と言えるがしかし、これは願っても無い大チャンスだと、蒼太は密かに決意を固めた。

 レベッカを打ち破って例のマジックアイテムの謎を聞き出して解明し、メリアリアに掛けられている呪(まじな)いを正しく取り除いてやれれば、彼女は完全に元の女王位としての自分を取り戻す事が出来るのである、今までは向こうの狙いが定かでは無かった事もあり、事件が起きてからその都度その都度出動する羽目に陥ってしまっていたから、それを余り大っぴらには出来なかったが今回の事で恐らく、レベッカは此方を本格的に狙って来るであろう事は明らかあるから、今度は組織をあげてアイツを討伐する事が出来るようになった、と言う訳であったのだ。

(しかし。この前見たレベッカは、流石に“ガイア・マキナ”にいた頃とは潜在的な力がまた別物となっていた、姿形が一緒だったのは、時空魔法でも使ったからなんだろうけれども。何か内部には全く別の力が宿ったような・・・!!!)

 “油断は絶対に出来ないな”と思いを新たにした蒼太は、メリアリアを含む全員に改めて言い渡した、曰く。

「メリー、アウロラ、オリヴィア。エマ、クレモンス、アンナ、アデール、ジョセフィーヌ。皆聞いて欲しい・・・!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「メリー達はこの前、出会ったから解るとは思うけれども・・・。アイツらの力は基本的にはこの前戦った、“カインの子供達”と呼ばれる精鋭者集団とほぼ同じか、それよりもやや劣る程度である、と思ってもらって構わない」

 “ただし”と蒼太は付け加えた、“潜在的パワーに何某かの伸び代があるように感じられる”と。

「・・・・・」

「・・・・・?」

「つまりは、その・・・。どういう事だ?」

「何か、“秘密の力”を隠し持っているんじゃないかって事。だから油断は絶対にするなって事だよ」

「なんだ、そう言う事か!!」

「それならば全く心配はするな、蒼太よ!!」

「そうだ。我々はそこまで自信過剰ではないからね・・・!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 “大丈夫よ!!!”と頷くメリアリアを始めとした女王位達を目の渡りにして蒼太は“そうだね”と頷くと、安堵したように優しく微笑んだ、“頼もしい!!”と理由も無くそう思った、彼女達ならばどんな敵が相手であっても必ずや打ち破ってくれるだろう、蒼太はそう、確信するに至っていた。

「勿論、僕も全力を尽くすよ。皆、どうかよろしくね?」

 蒼太の言葉にその場にいた全員は深く頷くと、改めて彼等“ハウシェプスト協会”との戦いに備えて静かに闘志を燃やしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
 エカテリーナ=レベッカ。

 ガイヤール・デュポン。

 デマーグ・バーグマン。

 この三人は皆、“アンチ・クライスト・オーダーズ”の幹部で“レプティリアン”です(その正体は恐竜の悪霊なのです←実体化も出来ます、そして蒼太君の感じた“潜在的な力の伸び代”と言うのはまさにその事を指しています)。

 で、その実力は如何ほどかと言いますと、蒼太君が言っていた通りのレベルでしかありません(ただしレプティリアン化した場合は元のレベルよりもかなり強くはなりますが、それでも“神人化”した蒼太君や“絶対熱”を操るメリアリアちゃんの敵ではありません)、何故かと言うとコイツらは幹部とは言えども所詮、デュマの“使い魔”に過ぎないからなのです(だから今の、“神の力”に目覚めた蒼太君ならば楽勝です)。

 ただしデュマだけは別格であり、コイツは本当に強いです(今の蒼太君でも勝てるかどうか解りません)←流石に“キング・カイザーリン”達の片腕だけの事はあるのです。

 で、キング・カイザーリンは(その夫である“反逆皇帝ゾルデニール”共々)、もう皆様は御存知かと思われますが“邪神”と呼ばれる存在です、そしてコイツらを抹殺する為には此方も“神の力”を使わなくてはならないのです←それも、連中よりも上手の神々の力、所謂(いわゆる)“超神”と呼ばれる神々の力をです、蒼太君頑張れ!!
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