メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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神世への追憶編

本能と愛情と

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 些か間が開いてしまいまして、誠に申し訳御座いません(閑談休話その2で御座います)。

 本当にごめんなさい、皆様方もう少しだけ私にお休みを下さい(本格始動にはまだもう少し時間が掛かります)。

 尚、今回のお話は“セイレーン編各話”、“花嫁達の覚醒”、“VSレプティリアン戦(デュマ編)”、そして“狂乱のレベッカ”、“許しの刻と報われの空”、“テイク・オフ”、“アンチ・クライスト・オーダーズ”、“人類恐竜化計画”、“心の働き” 、“セイレーンの岐路”等々のお話を見返していただけますとより理解が深まるかも知れません。

                敬具。

          ハイパーキャノン。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ふうぅ・・・っ!!!」

 “時の涙滴”を発動させて凡そ3週間もの間メリアリアと愛欲の逢瀬を重ね続けたその後で、自身もすっかり気をやってしまった蒼太は彼女を抱き締めたまま8時間程度の眠りに就いていたのだが、やがてその長い軛(くびき)から解放されて現(うつつ)へと帰還すると、まだスヤスヤと寝息を立てている愛妻の頭を何度も何度もまるで慈しむかの様にしてソッと撫で上げ、愛撫する。

 “ん、んん・・・。スウスウ・・・”

 メリアリアはそれでもそう言って、僅かながらに反応した以外は相変わらず深い深い無意識下の状態にあって、三千世界を漂っていたのだがしかし、それも無理からぬ事であった。

 何しろ22日間もの間中、強く激しく掻き抱きつつも責め立て続けたのだから、その程度の刺激であっては彼女が目を覚まさない事にも納得が行く、と言うモノであったのである。

 確かに“回復はさせながら”ではあったモノの蒼太と来たら、彼女が熾烈な無限連続多重アクメに陥ってしまっているにも関わらず結合を決して解く事無く、あらゆる体位でただただひたすら交わり続け、絶頂の上から絶頂を重ねさせ続けていたのだから。

 最終的には花嫁は口から多量の気泡を吹き上げ、呻き声を発しつつも失神し尽くしてしまっていったのであったがそんな彼女を更に穿ち続ける事5日の後に、蒼太もまた限界を迎えてメリアリアを抱擁しつつも繋がったままの状態で果ててしまった、と言う次第であったのであるモノの、しかし。

 自らの鍛え抜かれた肉体をフル稼働させつつ愛妻淑女(メリアリア)と愛の契りを交わし続けて来た青年はだから、その若さや絶倫さも加わって回復能力もズバ抜けており、結果彼女よりも先に自我を覚醒させては未だ寝息を立て続けている自身の最愛の花嫁を特注のバスマットレスの上に横たわらせたまま、プライバシー保護の為に曇り地の入っている強化ガラスで出来ていたお風呂場の窓辺に己の肉体を預けながら、ふとある事に付いての考えを巡らせ続けていた。

 それは他でも無い、一ヶ月と1週間前に起きた例の“ヴェルノ村”での一件に付いての事柄だったがあの辺り一帯はかつて蒼太の父母、清十郎と楓が激闘の末に、卑劣な手段でデュマに討ち取られてしまった因縁の地であり、また先日の騒動で“ノリエラ・ラウラ・ド・ハッシェルヴェルグ”と言う新たな知己が出来た、と言う観点からも、蒼太にとっては決して忘れる事の出来ない土地となっていたのだ。

(デュマは死んだ、それも魂のレベルでな。にも関わらずその“呪毒”は生き続けていて村人達を蝕み続けていた・・・!!!)

 “つまりは”と蒼太は尚も思案する、“それだけ強力かつ、邪な思念の籠もったモノだったと言う事だ!!!”と。

(おかしい、単に“死の呪い”を掛けるだけであるのならば単純に“蠱毒”を使えば済むはずなのに。それも西洋、東洋の違いはあれどもデュマ程の実力者を以てすれば術の全容をマスターする事など、造作も無い事の筈なんだ。それなのに・・・)

 “まだある”と蒼太は更に頭を回転させるがそれというのは。

(今回の一件、明らかに“奴等”はわざわざ“蠱毒”を元にした新たな呪いを生み出そうとしていた節がある。一体何が目的だったんだ?もしあの“人々をゾンビに変えてしまう術式”自体が何かのテストケースとして編み出されたモノであるのならば。その突き詰まる所とは、一体・・・)

「う、うん・・・?」

 蒼太があれこれと深い思慮を重ねていると。

 マットレスの上で彼の運命の伴侶にして最愛の妻である“メリアリア・サーラ・デ・カッシーニ”その人が目を覚ますが最初の内こそボーッとした表情を浮かべていた彼女はしかし、すぐに悲しそうな面持ちとなって起き上がり、弱々しくフラつきながらもそれでも確たる自身の意思で夫の元へと近寄ると同時にその肉体へと撓垂(しなだ)れ掛かって来た。

「あなた、あなたぁっ。やだよぅ、一人にしないで・・・!!!」

「・・・ごめん、なんでもないよ」

 まるで青年に縋る様に甘える様にそう言いつつも彼に抱き着き、愛しそうにその顔をペロペロと舐め上げるがこれは彼女が蒼太と二人っきりになった瞬間、彼にだけ見せてくれる姿であり弱さであり、また求愛行動であったのであるモノの、有りの儘(まま)の自分を受け止めては逞しく温かく包み込んでくれたのみならず何度も何度も救ってくれて、挙げ句の果てには自身を芯から女にすると同時にその性(さが)にまでをも目覚めさせて行った張本人でもある、この目の前の幼馴染の青年夫に対してメリアリアは魂の底から真愛(まな)を抱くと同時に完全なまでに心酔してしまっており、それが故に本来は年上の女性にも関わらずにこうした熱烈なまでの純慕を抱く少女の様な、それでいて初心(うぶ)で可憐な乙女の様な態度仕草を、彼女をして自然自然と取らせるに至っていたのだ。

“んむ、んちゅっ。はむ、あむっ。んちゅ、ちゅるっ。じゅるじゅる、じゅぷぷぷっ。ぢゅぞぞぞぞぞぞぞ~っ♪♪♪♪♪ぷふううぅぅぅっ!!?ぷふぅーっ、ぷふぅーっ、ぷふぅーっ。ぷふううぅぅぅ・・・っ❤❤❤んむ、じゅぷっ。ぢゅぞぞぞ、じゅぞぞぞぞぞぞ~っ♪♪♪♪♪レロ、クチュッ。レロレロレロレロ、クチュクチュクチュクチュ~・・・ッ。ちゅ、ちゅぱっ!!!じゅるじゅるじゅるじゅるっ、じゅるるるっ。じゅるるるるるるるるるるるる~っっっ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤”

“んむ、んじゅっ。はむ、あむっ。レロ、クチュッ。レロレロレロレロッ、ぢゅぞぞぞぞぞぞぞっ。じゅるるるるるるっ!!!んむ、クチュッ。ちゅるちゅるっ!!!クチュクチュクチュクチュッ、レロレロレロレロ・・・ッ。ちゅ、ちゅぱっ!!!じゅるじゅるじゅるじゅるっ、ちゅるるるっ。じゅるるるるるるっ!!!!!”

 激しくも切ないキスを交わしたその後で、蒼太に寄り添うようにしてその身を彼の隣にうずくめるとメリアリアは再び夫の横顔を眺めつつ、その頬に頬ずりした。

「一応、今は9月だけれども・・・。メリー、寒くない?大丈夫ならば良いのだけれども・・・!!!」

「ペロペロ、クチュッ。ちゅるっ!!!ぷはあぁぁ・・・っ❤❤❤うふふふっ。うふふふふふふっ!!!大丈夫よ?あなた。汗を掻いたからかしら?ちょっと寒さはあるけれど・・・」

 “ほらっ!!!”とメリアリアは彼に抱き着き言葉を続けた、“こうすれば少しも寒くは無いわ?”とそう言って。

「あなたと一緒にいるとね?心臓がずっとドキドキするの・・・!!!」

「メリー・・・ッ!!!」

 “可愛いっ!!!”と、この最愛の幼馴染妻からの愛の囁きを聞かされた青年夫は堪らなくなって自身も彼女を“グイィッ!!!”と引き寄せては抱き締めるモノの、彼等はいつもこんな感じで時間さえあれば二人っきりとなって夫婦でイチャ付き、お互いを愛でる、と言う事を繰り返していたのである。

「ねぇ、でも・・・。あなた一体、何を考えていたの・・・?」

「う、うん。ヴェルノ村での事なんだけれども・・・」

 蒼太と触れ合う事で漸くにして己が満たされたのだろうメリアリアがそのまま続いて夫が今、何を考えているのかと尋ねてみると彼の口から予想外の言葉が飛び出して来た。

 ヴェルノ村での一件は、メリアリアも一緒に同行した所でもあるし、しかも“時の涙滴”の外の時間ではつい1週間前に戻ってきたばかりであったから(ついでに言えば彼にとっては“因縁の地”でもあった事も手伝って)、まだ花婿が色々と感傷に浸ったり、逡巡(しゅんじゅん)してしまう気持ちも解らないでは無いモノの、しかしだからと言っても彼の地に於ける問題は既に全て解決し、終息した筈である、何故それを今も蒼太が引き摺っているのか、と言うのが彼女としては気になったのだ。

「あの村の事だったなら、あなたがちゃんとやってあげたじゃない?それも村の人々を元に戻してあげただけじゃないわ、事件の裏に潜んでいた真犯人もやっつけたじゃない・・・」

「うん、確かにそれはそうなんだけれども・・・。でもなんだかね?メリー、どうにも胸に引っ掛かるんだよ・・・」

 キョトンとした顔付きと視線を自らに向ける愛妻淑女にそう告げると蒼太は再び上を向き、遠くを見るような目をするモノの確かにメリアリアの言う通りで彼処(あそこ)での問題自体は既にして解決してあった、今回の騒動の首謀者である“ニール・アームストロング”は蒼太達の活躍により無事に逮捕されてその魔術の操り糸は断ち切られ、村人達は全員が、神業である“神徳光恩”によって救われたのであった。

 全体的見地からすれば彼等の容態はずっと軽いモノであり、全員が忽ちの内に復活していったが中には重篤な者もいて精神や肉体がすっかり病み堕ちてしまっていてどす黒かったり、或いは細胞組成がその根幹から変化してゾンビである事を示す紫色に変色してしまっている存在までいる始末であったのである。

 ただし。

(“神徳光恩”はどんなに酷い状態であっても魂のレベルで汚染や異常を完全に浄化復元させて大本の光へと還してあげる事が出来る神威だからね、現に村の人々に死人は出なかったみたいだし。それに宴の席に託(かこつ)けてその後1週間程度、あの村に滞在して経過を見てみた訳なんだけれども誰も心身や意識に爛(ただれ)れや呪いが残っている者は、誰一人としていなかった・・・!!!)

 と蒼太は思いを馳せるが確かに彼の感覚や見立ては当たっていてその事に関するならば最早何の心配も要らなかったのであるモノの彼が気になっていたのはそこでは無くて、どうしてあの手の魔術を“ハウシェプスト協会”の奴等が作り、ばら撒いたのか、と言う事に付いてだったのであった。

(端(はな)からヴェルノ村の人々をゾンビにして操り人形にするつもりだったのか?はたまた何かもっと別の思惑があって、その為の事前準備としてあの呪いが流布されたのか。そのどちらかだろうけれども・・・)

 蒼太が尚も考えるモノの実のところ彼もまた、“ハウシェプスト協会”の真の目的、即ち“人類恐竜化計画”に付いては掴み切れていない、と言うのが実情であったのであるが、それと言うのも。

 それを知っている、とされていた団体である“アンチ・クライスト・オーダーズ”、そしてそこに所属していた構成員の内“アレクセイ・デュマ”、“ガイヤール・デュポン”、“デマーグ・バーグマン”、そして“狂乱のレベッカ”こと“幻惑のエカテリーナ”の主だった四名は彼によって悉(ことごと)く討ち破られていた上に、特にレベッカを除く三名はその持ち合わせている危険性も然(さ)る事乍(ことなが)ら、その下品さと下劣さ、そして何より醜悪さとに我慢がならなくなってしまった蒼太によって、その魂すらも抹殺し尽くされてしまい、消滅させられてしまっていたからであったのだ。

 では唯一残されたレベッカはと言うと此方(こちら)もまるで魂の抜け殻の様な有様と“なり果てて”しまっており、毎日をブツブツと訳の解らない事を呟きつつも過ごしている、と言う状態になってしまっていたのであって、これではとてもの事、“計画の全容”を話してもらう事が全く不可能になってしまったのであった。

(レベッカは、もうダメだろうな。アイツは既にして廃人同様だし・・・。だけど他に知っていそうな存在と言えばやはり諸悪の根源でもある“反逆皇神ゾルデニール”か、はたまたその后であり巫女である“キング・カイザーリン”のみ。だけど・・・)

 蒼太が頭を悩ませるがまさに“ハウシェプスト協会そのもの”とも言えるこの二大巨頭が口を割るとは到底思えず、それになによりかによりの話としてまだ蒼太は彼等に打ち勝った訳でも無ければ捕縛も出来ていないのが実情なのであって、いわば真相の究明は現時点では完全に暗礁に乗り上げてしまった、と言わざるを得ない。

「・・・ひょっとすると」

 するとそこまで追懐していた蒼太がある事を思い付いて口を開いた。

「彼ら“ハウシェプスト協会”と言うのはエネルギー消費率と精神性だけで無く、人間の姿形をも恐竜のそれに退化変貌させよう、としているのかも知れないね・・・」

「ええっ!!?」

 唐突に告げられた夫の言葉に、愛妻淑女(メリアリア)が思わず鋭く反応する。

「どう言う、事なの?あなた。って言うか本当にそんな事が出来るモノなの!!?」

「思い返してみてくれよメリー、ヴェルノ村での出来事を。確かに全体的に見れば大した事は無かったかの様に見えるけれどもそれでも、ごく一部の人々はゾンビ化がかなり進んでいた。あともう一歩遅かったなら本格的にそうなってしまっていた可能性すらあるんだよ?」

 蒼太からもたらされたその言葉に、メリアリアも思わず“うーん・・・”と唸ってしまっていたモノのまさに彼の言う通りであり、中には皮膚や筋肉の組成が変化して全身が変色してしまっている人や、また体は例え無事であっても表情や仕草等が完全にゾンビのそれとなっていた人々がいた事も事実であって、もし“神威”が使えなければ正直、村一つを丸ごと壊滅させなくてはならない羽目に陥る所だったのである。

「それは確かに・・・。だけどあなた、ちょっと信じられないわ?だって人間を恐竜に変えてしまう呪術なんて私、今までに見た事も聞いた事も無いもの!!!」

「それは勿論、僕だってそうさ。だけどね?メリー、こうは考えられないか?確かに今現在は存在していないのかも知れないけれどもこれから先は、どうなるのかは解らないんだ。そう言った類いのモノが作り出されないとは限らない!!!」

 そこまで言い終えると蒼太はまた難しそうな表情を浮かべて俯いてしまうモノの彼はこの時、ハウシェプスト協会が“人類恐竜化計画”の最終到達地点として自分達人間を完全に恐竜に作り変えてしまう呪法、技術を生み出そうとしているのではないか、との疑念を払拭する事が出来ずにいたのだ。

「今回のヴェルノ村での騒動は、その為の準備と言うか実験が目的だったんじゃないのだろうか?とも思えるんだ。そうで無ければハウシェプスト協会ともあろう組織がただ悪戯に魔法の改造や散布を行うとは思えないし、それにもしそうだとしたなら彼等の目的に恐ろしい程に良く合致している気がするんだよ」

「彼等の目的と合致している、って・・・。一体どう言う事なの?あなた・・・」

「良いかい?メリー。彼等“ドラクロワ・カウンシル”、もとい此方の世界では“アンチ・クライスト・オーダーズ”だったけれどもその究極的な目的は一緒の筈なんだ。即ち“神々に対する復讐の完遂”さ、そしてそれは神々が最も愛と心血を注いで造り上げて来た“現生人類”と言う種を堕落させ尽くした時にこそ達成されるモノなんだ。前にも一度、言った事があったけれども神々はね?人間を生み出す際に目一杯の愛情と願いとを込めて自分達の分霊や血肉までをも分け与え、そして己の姿に似せて創造されたそうなんだ。いわば“人間”と言うのは神と言う完成された、最上級の愛の“現し身”であり“写し身”なんだよね?それを堕落させ切る事が出来たら、どうなるか。所詮“愛”などただの幻想に過ぎなかった、と言う事が出来る様になるだろう?そしてそれに変わるモノとして彼らが世の中の万物に“最も確たるモノ”として押し付ける事が出来るのが、“恐竜としての生存本能”なんだ・・・」

「・・・・・?」

「前に神様から聞いた事があるんだけれども、実は古代恐竜達の一部には人類並みの自我と知能を持った、二足歩行の出来る存在がいたそうなんだ。なんでも遥か昔に他の天体から来た人間達が自分達の労働力として生み出したのが彼等なんだそうだけれども、その成れの果てが“レプティリアン”なんだそうだよ?ところが彼等と来たら不平不満だらけで言うことを聞かず、ただただただただ毎日を本能のままに飲み食いし、性欲の赴くままに同族、異種間関係なく交配し続け、そしてあろう事かちょっとした事でも気に入らなければ彼方此方(あちらこちら)で抗争を繰り返していったそうなんだ。“霊性さを取り戻せ”、“愛を持って生きなさい”と言う神々や自分達を作り出した人類の度重なる説得、指導にも耳を貸す事も無くね。当然の事ながら世界の自然環境や生命循環は滅茶苦茶に乱れ、荒廃して行ったんだって。で、それを見かねた神々が“このままでは地球が滅んでしまう”と危惧して、それでもっと上手の神々である“超神”達にお願いして“大禊”と呼ばれる浄化計画を打ち出したんだ・・・」

「オオミソギ?」

「そうさ。それが今から6500万年前に起きた大量絶滅の正体さ」

 そこまで愛妻に説明した蒼太は一息付いて後、更に話を続けて行くモノの、それに因ると地球の神々から相談を受けた超神達、即ち更なる宇宙の深淵に座する高次元の意識体達はその要望を是として当時地球の周囲を飛び交っていた巨大隕石の一つを地表に引き寄せては激突させ、その凄まじい衝撃波と高熱振動で以てそれまで暴虐の限りを尽くしていた“人型恐竜”諸共に、進化の道筋から外れてしまった存在血脈を根刮ぎ一網打尽にした、との事であったのである。

「勿論のこと」

 蒼太は続けた、“その前に心ある人間達やキチンと己を保っていた動植物達を宇宙船に避難させた上でね”とそう言って。

「その結果、時間は掛かったけれども地球は元の静謐を取り戻し、浄化が進んで“生命の揺り籠”としての状態を取り戻した訳なんだけれども、実は問題はここからだった。確かに肉体は滅んだ人型恐竜達だったのだけれどもその魂は残ってしまっていたんだな。さっきも言ったけれどもそれこそが“レプティリアン”と呼ばれている存在さ。だから彼等は神に愛されて創造された人間をあまり好意的な目で見てはいないんだ、憎むべき敵性生物や単なる家畜等はまだ良い方で、酷い場合だと“餌そのもの”としか思っていない節すらあるんだよ」

「餌ですって!!?」

 するとそこまで話を聞いていたメリアリアがガバッと上体を起こして甲高い声で鋭く叫んだ、信じられない話だった、そして信じたくない話でもあった、確かに遙かな古の時代よりこの世に人を喰らって生き延びてきた悪魔や魔物の話は聞いた事があったけれども、今日に至るまでそう言った存在が、のさばり続けていたなんて!!!

「第一酷すぎる話だわ。家畜さん達は勿論だけれど、例え敵対している人や生物だって、その命の灯火を奪うのは、本来ならば心苦しい筈なのに・・・!!!」

 “でも・・・”と少しの間、何事か考えてからメリアリアが尚も続けた、“それじゃあ、彼等は私達の命を・・・!!!”とそう言葉を紡いで。

「なんとも思っていないのだろうね、例えがちょっと悪いけれども勝手に湧いてくるウジ虫か何かだとでも見做しているんだろう・・・」

 “間違っても対等な立場にある、コミュニケーション可能な存在等とは思ってもいないのだろうね”と蒼太がそう言って畳み掛ける。

「話を元に戻すけれども彼等は神々に言ったのだそうだ、“自分達の何がいけなかったのか”と、“何故自分達は滅ぼされなければならなかったのか!!!”と・・・」

「何故って、だって・・・。そんな事をしていたのならば当然じゃない!!!」

「ところが彼等はそう思わなかったんだ、それどころか自分達は被害者であり神々に欺かれた犠牲者だとでも思っているらしくてね。それで何とか復讐をしようとしているみたいなんだ・・・!!!」

「酷いわ、そんなの!!!」

 メリアリアが再び叫んだ。

「神様は何も悪く無いじゃない、悪いのは他人様の忠告にも耳を傾けずに享楽に走って暴走したレプティリアン達じゃない。それなのに・・・!!!」

「元々、恐竜に限らず爬虫類って言うのは我が儘って言うのかな?臆病で狂暴で、だけどとっても気位が高いのさ。それが彼等の進化を周囲の他の生き物達よりも格段に加速させた所以でもあるんだ、“自分よりも大きな生物が怖い”、“でも他の生き物達には負けたくない”、“圧倒したい”、“支配したい”ってね。それが強大化に繋がった一つの要因だったんだけれども・・・。だけどそれは一方では、“他者の話に耳を傾けない”と言う弱点をも併せ持っていたんだ・・・」

 するとそんな愛妻淑女をまるで宥めて落ち着かせるかの様に蒼太が静かな口調で話を続ける。

「彼等は基本的に本能のままに貪り、交わり、寝て果てて行く。それを果てしなく繰り返して行くだけの存在だったんだ。勿論、知能もあるにはあるけどそこには自律や自省の意識は無く、ひたすら自分がやりたいようにやる、と言う事しか入っていないんだよ。そんな彼等がより高い自我を手に入れたならどうなるか、火を見るよりも明らかな事だ」

 “結果として”と蒼太は言葉を紡ぎ続けた、“彼等は本能のままに生き尽くして滅び去って行ったんだよ”と。

「“自分だけがその時、その時良ければ良い”と言う究極な利己肥大が起きてしまった訳なのさ。本能ってのは基本的には生存欲求に根差している訳なんだけれどもそれも度を超すと身勝手さばかりが目立つ結果となってしまう、彼等はそれに振り回される形で自滅の道を辿って行ったんだ・・・」

「自滅の道・・・」

「そうさ。勿論、本能自体はあっても悪いものじゃない。より良く生きて行く為にはね?それに中には確かに歪んで危険なモノもあるけれども本来的な意味で言うのであれば、基本的に欲求と言うのは生きる為に必要があって引き起こされて来るモノだからね?でも、だけど。それだけだとただ単に欲望に走っているに過ぎないんだ、人は欲望だけでは生きては行けない。やっぱり何処かに真心が無いとね・・・」

「そっか・・・」

 するとそんな蒼太の言葉を受けて、メリアリアがポツリと呟いた。

「愛情こそが、人の本質なのね?それが無くなって本能のままに生きる様になってしまったのならばもう、それは獣(けだもの)と変わらない・・・」

「そうさ。だけど彼等はそれを理解できなかった、それどころか気位が高くて本能のままに生きてきた彼等にとってはそれは、即ち“愛によって生きる”と言うのは単なる絵空事にしか映らなかったみたいなんだ。基本的に彼等の社会は“勝った者が正義”、“強いものだけが生き残る事が出来る”社会だからね?そしてそれこそが全てであり精神的な至上命題とされているんだ、だから反対に敗れ去って行った者、死んで行った者に対する積慕や哀愁等と言った、人間の抱くような感情や感傷は余り持てなかった。結果として他人様や目に見えない存在に対する感性、気配りがそれほど働かなくなってしまって行ったんだな。そしてさっきも言ったけれども“自分達がその時、その時生き延びられていたならそれで良い”と言う考え、意志に凝り固まって行ってしまったんだよ・・・」

「・・・・・」

「第一そもそも論として、本能には“思いやり”や“温もり”、“真心”と言ったモノが全く存在していない。あれは単なる肉体の生理的欲求の延長線上に位置しているモノだから当然と言えば当然なのかも知れないけれども、だから間違っても真理や叡智を内包しているモノじゃあ無いんだよ。それがあるのは意識や意志、そして愛情の方なんだ、だからこそ最初、異星人類達が自分達の労働力として“レプティリアンを造りたい”と言った際には神々も随分と反対なされたみたいなんだけれども。結局、彼等は禁忌を犯して“人型恐竜”を誕生させてしまった。だけどもそれは、自分達の様に真心を持っている存在などでは決して無くて、凶暴性剥き出しの高慢ちきな生物に過ぎなかった、と言う訳さ・・・」

「・・・どうして」

 “彼等はそんなにも尊大と言うか、プライドが高いの?”とそこまで話を聞いていたメリアリアが多少の疑問を感じつつも尋ねるモノの、その言葉に対して蒼太が一呼吸、置いてからゆっくりと静かに答え始めた。

「言っただろう?恐竜に限らず爬虫類ってのは基本的には凶暴で我が儘な生き物だと。彼等はその大部分を本能に従って生きているからね、そしてそれは確かに肉体的な進化、即ち“強大化路線”を後押しする結果とはなった。しかし・・・」

「・・・・・」

「一方で他者を常に見下し、圧倒する立場を手に入れた彼等にはもう、“遠慮”と言うモノは存在し得なくなっていったんだ。その為“自分達の好きな様にやる”、“逆らう者は許さない”と言う思考回路が知らず知らずの内に出来上がり、脳ミソに刷り込まれて行ったんだろうね。彼等にとって本能こそが正義であり多分、己そのもの、意志そのものだとでも勘違いしていたのだろう。しかも何が拙(まず)かったかって、当時の地球環境やら彼等の置かれた状況やらが、それでも充分なまでに生きて行けるモノだったからその考え方、感性は一層、強化発展されて行ったに違いないよ」

「・・・そっか」

 そこまで話を聞いていたメリアリアが漸く、納得したかの様に頷いて答えた、“そう言う状況が彼等の高慢さを更に助長させて、結果として神様の声にも耳を傾けられなくなっていった、と言う訳なのね?”と。

「そうさ、彼等としてみれば得意絶頂であっただろうね。自分達こそは生命進化を極めた頂点であり、その本能こそが絶対的なる意志、正義であったと言う訳さ。で、それに従って生きる事こそ“宇宙の法則”に合致している生き方であるとのさばり、また食物連鎖の頂点に立つ身分として他の動植物達をどれだけ犠牲にして彼等から搾取し、貪り食っても進化を極めた自分達に許された当然の権利行為なのだと自負自任すらしていたみたいなんだ。もう王様気取りだったのだろうね、完全に自分達が地球の支配者であるとでも言わんばかりの顔と態度とを取り続けていたらしいんだ・・・。ところが」

 蒼太が続けた、“そんな風にして調子に乗りまくっていた彼等にも遂に鉄槌が下される時がやって来たんだよ、それも本物の正義のね”と。

「直径10キロにも及ぶ巨大隕石が生成されて、そのまま超高速で地球に激突したんだ。結果として恐竜やレプティリアン達を含む、全生命の実に75%が死滅したと伝えられている。ちなみにその痕跡こそが今日、ユカタン半島に存在している“チクシュルーブ・クレーター”さ。それで結局は地球環境は一度完全にリセットされた、その筈だったんだ・・・。だけど」

「・・・その肉体は滅びても、魂は残ってしまった。と?」

「ああ・・・」

 愛妻淑女の言葉に頷きながらも蒼太が更に話を続けた。

「彼等としてみれば自分達の存在が宇宙によって否定された、自分達が間違っていたのだ、等と言う事は絶対に受け入れられなかったのだろう。他の生物達の手前もあるしそれに何より、それまで自分達がやって来た事が実は宇宙の調和と安寧を乱しまくる事だった、等と言う話が出た日には彼等は地球の支配者としての地位を追われる所か、今までにしてきた弱肉強食迫害姦淫等の責任を全て取らなければならなくなる」

 “それに加えてもう一つ”と蒼太がメリアリアに語って聞かせた、“彼等の肥大化した我欲が妄執となり、霊魂のままでこの地球上に漂い続ける動機をより強力に与えてしまったんだ”とそう述べて。

「もう一度好きな様に飲み食いがしたい、もっとセックスを堪能したい、まだまだ惰眠を貪りたい、と言うあまりにも強い欲望が、彼等の成仏を妨げて現世に引き留めてしまったんだ。それでそう言う事も手伝って、自分達の楽しみを邪魔した神々を逆恨みしてはその思いを、願いを踏み潰そうとしている、と言う訳なのさ・・・!!!」

「それこそが“ドラクロワ・カウンシル”、いいえ“アンチ・クライスト・オーダーズ”のやろうとしている事なのね?」

「そうだ。自分達を破滅に追いやった神々の鼻を明かす事、それこそが彼等の復讐の本懐なんだ。愛情や慈しみでは無くてあくまでも本能を中核に据えた、浅ましい欲望のぶつかり合う弱肉強食の世界を作り出す事で彼等はそれを達成しようとしているのさ。しかもその中心となっているのは神々が最も心血を注いで造り上げた人間自身と言う訳だ。“神々の分け御霊”を授かっている人間全体を堕落させ尽くさせて己の本質を完全に見失わせ、ただただただただ本能のままに従って生きる様にする。そうなれば間接的に、“愛の最高の完成形”たる神々でさえも本能には逆らえないのだ、と言う事を証明出来る事となり、そしてそれは=で本能こそが愛情を上回る最上の真理、確たる正義であると言う事を内外に喧伝する事に繋がるだろう?彼等はそれをやろうとしている。そしてここから先はあくまでも僕の予想なんだけれどもその上で新たな肉体を得て復活しようとしているんじゃないかな・・・?」

「・・・・・っ。じゃあ今回の、“ヴェルノ村”の一件は!!?」

「その為の試験、みたいなモノだったんじゃ無いのかな?恐らくね。とにかく彼等はそんな訳で、あの手この手を使って人類を堕落させようと、常に虎視眈々と狙い続けている、と言う訳だ。しかも自分達の狙いを達成させる為には地球上にいる“現生人類”がまだ霊的に未熟で無防備な内に手を打たなければならない事を、彼等は良く知っている。人類が進化して“本物の愛”、“霊なる者”に目覚めた時にはもう、自分達が手も足も出せなくなる事を、彼等は理解しているんだよ」

「人が愛によって進化する存在なのだ、と言う事を徹底的に隠蔽して否定する。そう言う事をずっとずっとやり続けて来た、と言う訳ね?」

「そうだ」

 自身の最愛の花嫁が発したその言葉に、蒼太は力強く頷いて見せた。

「そう言う意味では彼等レプティリアン達は、今回の一連の騒動でどうして自分達がここまで負け続けて来たのか、と言う事を完全には理解しきれていないんだろうね。いいや、もういっそのこと“認めたくない”と思っていると言った方が正しいのかも知れないけれども、いずれにせよ彼等はこの復讐計画を実行に移す事により自分達の復権を狙っている。これは同時に神々に対する“自分達は間違っていない”、“本能こそが最上かつ最強の真理だ!!!”と言う、これまたあくまで彼等自身が言う所の大義名分を叩き付ける事にもなるわけだ・・・」

「彼等が負け続けて来た理由って・・・。“神人化”のこと?」

「うん、勿論それもあるけれど・・・。でもそれだけじゃあ、決して無いよ?よく思い返してみてよ、メリー。君は僕がピンチに陥る度に、いつもいつも神秘的な力を発揮して助けて来てくれていたじゃないか。あれだってそうだよ?要はそれだけ真摯な思いを君は僕に抱いてくれている、と言う事に他ならないんだ。それこそ秘めたる“神の力”をこの世に顕現させるに足り得る程のね?だけどそれを、人の持つ思いの力や真心の大切さを彼等は絶対に認めようとはしない。何故ならばそれを認める、と言う事は彼等にとっての敗北宣言に他ならないんだ。自分達だって恨みだ呪術だと散々にのたまって、超常的な能力を発動させていながらね?まあ、話を元に戻すけれども、だから何が言いたいのかっていうと、いよいよ本腰を入れて僕らを潰しに来るかも知れないって事さ!!!」

「あら、そんなの!!!」

 とメリアリアが改めて蒼太に向き直ってハッキリと告げた、“返り討ちにしてやるわよ!!!”とそう言って。

「人の持つ思いの力、愛の素晴らしさを認めようとしないだなんて非道にも程があるわ?そんなのこっちから出向いて行ってお仕置きをしてやりたい位だわ!!!」

「あっはははははっ。凄いねメリー、流石だよ!!!」

 と、ちょっと強気な態度を前面に押し出してそう言い放つ愛妻淑女に蒼太もまた明るい笑顔で笑い始める。

「まあでも確かにそうだよね?愛を踏み躙ろうとする輩には、何某かの制裁を与えなければならないよね?」

「そうよ、その通りよ!!!」

 メリアリアがそう言って力強い視線を向けて再び強く頷くモノの、蒼太はそんな花嫁の頭をソッと抱き寄せ、コツンと自らの頭部を触れ合わさせた。

「力を合わせて頑張ろう?メリー、君の事は僕が絶対に守ってあげる・・・!!!」

「あなた・・・っ。嬉しいっ!!!」

 そう言うとメリアリアは再び蒼太の唇に自らのそれを重ね合わせた。

(本当はちょっぴり怖いけれど・・・。でもこの人が一緒にいてくれるなら・・・っ!!!)

 その思いと共にメリアリアは再びの、運命の伴侶との激しい接吻と抱擁とに酔いしれていったのである。
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 ちなみに、なのですが。

 今現在の蒼太君とメリアリアちゃん達の世界の時間軸線は結婚式の時点よりも三ヶ月近くが経っています(蒼太君とメリアリアちゃん達の結婚式は6月でした、これは作中でも言及が為されております)。

 ところが彼等はまだ、所謂(いわゆる)“ちゃんとした新婚旅行”には行っておりません(ガリア帝国を取り巻く環境が、それを許さなかったのです)。

 流石に1週間程度の休みはもらえましたがただそれだけであり、9月に入って漸くにして一ヶ月程の纏まった休暇が下される事となったので、“本格的なハネムーンにでも出掛けようか”、と言う話が出ている所で御座います(なので出来れば、なのですけれども久方振りにいちゃラブと言いますか、ドタバタギャグコメディが書けたら良いな、等と考えております)。
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