メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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神世への追憶編

第二次エルヴスヘイム事件2(ノエルの真心とレアンドロの思い)

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 今回のお話は“蒼太とメリーの日常5”の後書き、及び“テイク・オフ”を見るとより理解が深まるかも知れません。

 また前作の後書きにも掲載させていただいていますが、第二次エルヴスヘイム事件1(シュミータ・エルルとヨベルの年)は“蒼太とメリーの日常シリーズ”、“青き星の祈り姫”、“許しの刻と報われの空”、“テイク・オフ”、“心の働き”、及び“セイレーンの岐路”を読まれてから御覧になられていないと、良く解らないかも知れません(御熟読の方は悪しからず御了承下さい)。

 それから更にもう一つ、読者の皆様方に超重要なお知らせが御座います。

 ノエルちゃんが作中で“チンチンマンマン”とか破廉恥な歌を歌っていますがいい加減、私の人格を疑われるのが嫌で嫌でどうしようも無いので正直に告白致しますとあれは別に私が作り出した訳ではありません、そうでは無くてかつての私の実体験を元に作成したモノであります。

 当時私はとあるスーパーの精肉部門で働かせていただいておりましたが、そこに配属されていた群馬県出身の若手のチーフ(休日には近くのパチスロ店へと足繁く通っていて本人曰く“そっちの方が本業”との事でした・・・)が作業が立て込んで忙しさが増して来ると精神的に壊れてしまうのか、“それゆけ、アン◯ンマン”に出て来る“天◯マン”の様なノリで“チンチンマンマン~♪♪♪”とか歌い出してきたのです(当然、女性社員やアルバイトも周囲には居ましたがそのチーフは流石です、なにせ“コンプライアンス”なんぞなんのその、本人は全く以てお構いなしでした・・・)。

 今ではれっきとしたセクハラ、モラハラ一直線な事例でしたが当時はこれがまかり通っていたのです(私達はこれを“クレイジーモード”とか“NGモード”等と呼んで眉をひそめておりました)。

 それをノエルちゃんにバックアップさせてみたのです、なので別に私が作り出した訳ではありません事を、この場をお借り致しましてキッチリとお断り申し上げさせていただきます。

                 敬具。

           ハイパーキャノン。
ーーーーーーーーーーーーーー
「チンポコチンポコ、チンチンチ~ンッ。ポコチンポコチン、マンマンマンマンッ♪♪♪」

「・・・・・」

「・・・・・っ!!!!!?」

「・・・・・っ!!!!!!」

「いやだから・・・。ノエルさんてばそれを止めろよ、その下品極まりない歌を!!!」

「え、えっ!!?歌ってこの“チンポコリンの歌”の事?」

 キョトンとした顔でそう告げるノエルに対して“そう、それ!!!”と蒼太は叫んだ、“なんちゅー歌を歌っとるんじゃ!!!”と言う心からのツッコミを忘れずに添えて。

「でもソー君だってメリアリアちゃん達とチンマンセックスするんでしょ?この子達の子宮マンコを思いっ切り圧迫してグリグリしたり、突き突きしたりするでショー(´V`)♪(´V`)♪(´V`)♪」

「・・・・・っ!!!!!?」

「・・・・・っ!!!!!!」

「な、な・・・っ!!!!!!」

「余計なお世話ですっっっ!!!!!!!!!」

 ノエルの言葉に恥じらいと戸惑いの面持ちとなるメリアリア達とは対照的に、顔を少し赤くした蒼太がテーブルを“バンッ!!!”と叩いて絶叫した(まあ、実際はそれ以上の事をしている訳であるが・・・)。

「この子達の前でそれ以上、変な事を言わないで下さいノエルさん。あととにかくね、その“チンマン”とか言うの禁止、以後全面的に禁止します!!!」

「えぇ~っ、なんでなんでえぇ~っ!!?チンマンチンマン、してぇよチンマン。マンコにチンポをぶち込んで、ズッコンバッコンやりまくりてぇよおぉぉ~っp(`Д´)qp(`Д´)qp(`Д´)q」

「何を世迷言(よまごいごと)を抜かしてるんだよ、お前は。それにどちらかと言えばお前が突っ込まれる方だろうが!!?ズッコンバッコンやられる方だろーが!!!」

「やん、ソー君たらもうエッチなんだから。突っ込みとツッコミとを掛けているのね?だけど本当にもう、やべぇよ、やべぇよ。堪らねぇよ!!!早く股間にレアンドロの極太注射をぶち込んでもらわないと私、この場でイッちゃうよ。頭がおかしくなっちゃうよおぉぉ~っヽ(`Д´#)ノヽ(`Д´#)ノヽ(`Д´#)ノ」

「何を怒り狂ってるんだ?お前!!!それからもう、安心して良いよ。お前はとっくにおかしくなってるからっ、むしろ頭がイッてるわ。イッてるのはオメーの頭だわ!!!」

「いやーねぇ、ソー君ってば。そんな事言わないで?私、こう見えてもかなり素敵なレディなんですからね?ちょっと“18禁キャラ”的な側面があるだけで・・・!!!」

「素敵なレディが人前で男性器の名前を連呼するな、何考えてるんですか。全くもうっ!!!それに何ですか“18禁キャラ”って、それだとただの破廉恥女でしょーが。活躍の場が狭まりますからせめて“15禁キャラ”位にしとけや!!!」

「あん、もう怒らないで?ソー君たら。でもさでもさ、話はガラッと変わるんだけれども本当に“愛のあるセックス”って気持ち良いよね?前にソー君が言っていた通りだったわぁ~っ。欲望だけのエッチと全然違うの、満足感と言うか、満たされ感が半端ないもの~( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)」

「はぁ~・・・っ。まあ確かに以前も言いましたけれども、愛情がある者同士のセックスって本当にどこまでもどこまでも燃え上がるんですよ。深い場所まで繋がり合えるって言うか・・・」

「うんうん。本当にその通りだったわぁ~っ(*'▽'*)(*'▽'*)(*'▽'*)奥の奥まで繋がり合って、自分の最も深い部分で彼のモノを受け入れた時に本当に確かな愛しさと同時に滅茶苦茶な気持ち良さが芯から無限に染み出して来て、絶え間なく沸き上がって来て。それが子宮から頭の天辺までを劈(つんざ)いて思考が麻痺しちゃうのよねぇ~。後に残るのは彼への、レアンドロへの愛しさと“自分の一番大事な部分が彼の形に変形させられてる、彼の色に染め上げられてる!!!”って言う実感なのよぉ~。あの感覚は本当に何者にも代え難い程に堪らないモノなのよねぇ~っ(//∇//)(//∇//)(//∇//)・・・でも」

 “だからこそ”とそこまで微笑んで談笑していたノエルが不意に寂しそうな、シュンとした表情となって言葉尻を落としつつ、声を発する。

「だからこそ、何とかレアンドロと仲直りしたいの。別にセックスの為だけじゃ無いわ、いつもみたいにレアンドロに隣で微笑んでいて欲しいの、優しくして欲しいの。頭を撫で撫でして欲しいのよぉ~っ(´д`)(´д`)(´д`)」

「・・・・・」

「解るわ、ノエル・・・」

 するとそれまで黙って話を聞いていたメリアリアが神妙な面持ちで頷いて応えた。

「ちょっとぶっ飛んだ所もあるけれど・・・。でもそれでも貴女(あなた)は、貴女(あなた)なりにそれほどまでにレアンドロの事が好きなのよね?他に代わりの利かない程に、それこそ自分の心の一部となってしまう程に。唯一無二の大切なモノなんだわ!!!」

 “私も同じだから解る”とメリアリアはノエルと蒼太を代わる代わる見据えながらそう告げるモノの、するとそんな彼女の言葉を受けてアウロラもオリヴィアもまた、力強く頷いた。

「まだ事情は良くは飲み込めませんが・・・。それでもその“レアンドロ”と言う方がプリンセスにとっては“自身の帰るべき場所”なのだと言う事はなんとなく解りました・・・!!!」

「自分を賭けるに値する程の思い人、と言う事だな?それならば私にも理解できるぞ?何しろ今や最愛の夫がいる身だからな・・・!!!」

 そう言って二人もメリアリアと同様に蒼太を見やるが、するとそれを受けた蒼太が嬉しそうな照れ笑いを浮かべて俯いてしまう。

「ま、まあ取り敢えず・・・。まずはレアンドロに会って話を聞こう、全てはそれからだよ。ってかそんなに好きならノエルさん、もういっその事問答無用で彼の胸の中に飛び込んでしまったら如何です?“貴男(あなた)しかいないの”って自分の気持ちを正直に伝えて謝罪すれば、レアンドロも許してくれるんじゃ無いかな・・・」

「う、うん。あのね・・・?それはやろうと思ってるんだけど・・・( ̄。 ̄;)( ̄。 ̄;)( ̄。 ̄;)」

 とそこまでやや落ち込み気味だったノエルが多少、うわずったような声と顔付きとなって言葉を発した。

「なんていうのかなぁ~、今のレアンドロはそれ位じゃあ心を開いてくれないのよねぇ~。ま、まあ私のしてきた事がそれだけヤバかったってのは、今はもう解っているんだけれども。それでも、なんて言うかさぁ~・・・!!?」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 “メリー”と突然、そこまで話を聞いていた蒼太がメリアリアを見ながら告げて来た。

「レアンドロを、ここに呼んでも良いかい?」

「あなた・・・っ!!!うん、私もそれが良いと思っていたわ。だってノエルはこんなにもレアンドロの事で悩み抜いているんですもの、それだけの思いを彼に持っているんですもの。それを素直に伝えた方が、レアンドロもきっと喜ぶんじゃ無いかしら?」

「・・・解った」

 “有り難う”と言って愛妻淑女(メリアリア)に頭を下げると、続いて蒼太はアウロラとオリヴィアにも同様の事を尋ねて聞いた。

「アウロラもオリヴィアも、それで良いかい?って言うよりも僕としてはそれ以外、解決策は有り得ないと思っているんだよ・・・!!!」

「私もそれで良いと思いますわ、蒼太さんの望むようになさって・・・!!!」

「君の考えは正しいと思うよ?もっと自信を持って行くべきだ!!!」

「私は・・・。ううん、私達は、あなたについて行くからね!!?」

 アウロラとオリヴィア、そして再び口を開いたメリアリアの言葉に背中を押されて蒼太は、ノエルにある提案をした、それは。

「ノエルさん・・・!!!」

「う、うん・・・」

「レアンドロを、ここに呼んで下さい。彼の電話番号は知っているのでしょう?」

「う、うん。知ってはいるんだけれど~・・・」

「「「「・・・・・」」」」

「・・・・・」

「「「「・・・・・」」」」

「・・・・・」

「「「「・・・・・」」」」

「・・・・・」

「「「「・・・・・」」」」

「・・・・・」

「「「「・・・・・」」」」

「・・・・・」

「「「「・・・・・」」」」

「・・・・・」

 “もう・・・!!!”とノエルは言った、“解ったわよおぉ~っ!!!”とそう続けて。

「でも、あの・・・。あのね?もしかしたならレアンドロ、怒って電話に出てくれないかも知れない。ううん、それだけじゃないわ?彼ああ見えても結構、忙しいみたいだから断られるかも知れないわ?そしたらゴメンね・・・(・_・、)(・_・、)(・_・、)」

「・・・・・っ。そうなったらそれはその時の事です、仕方がありません。とにかくまずは電話をしてみて下さい」

 そんなノエルの言葉を聞いた蒼太は目を瞑(つむ)って宙を仰ぎ、何やらブツブツと呪(まじな)いのような言葉を唱えつつもテーブルに指で真言を描くが一頻(ひとしき)り、それが終わると再び眼(まなこ)を開いてノエルに視線を送り、言った。

「レアンドロと元の鞘に収まりたいのでしょう?ならば方法は一つだけです。彼に貴女の本当の思いを、真心を伝えなければ・・・」

 “だけど多分”と蒼太は告げた、“大丈夫だと思いますよ?”とそう言って。

「本当はあんまりやっちゃいけないんですけれども・・・。今彼の中に入って頭の中を覗いてみました、結論から言って貴女(あなた)に対する愛情は全く衰えていません。ただ唐突に物凄い事を告白された為にかなりのショックを受けている様です、ギクシャクしているのは恐らくそれが原因でしょう」

「・・・・・」

「要は彼にとって貴女はそれだけ、清純な女性に思えていたと言う事ですよノエルさん。頑張って下さい!!!」

「ふえぇ・・・?で、でも私エッチだし。チンマンとか言っちゃうし・・・(´;ω;`)(´;ω;`)(´;ω;`)」

「・・・・・」

(なるほど、本人なりに自分自身の在り方について疑問は抱いていたんだな・・・!!!)

 “その気持ちがあるなら大丈夫です!!!”と蒼太は敢えて明るく伝えてみせた、“貴女はレアンドロの事でこんなにも苦しんでいたじゃないですか”と、“思い悩んでいたじゃないですか!!!”とそう続けて。

「つまりそれだけ貴女は真剣にレアンドロの事を思っていたと言う事です、それこそ変態性欲に負けない位にね?凄く純情じゃないですか、それなら上手く行きますって!!!」

「ソ、ソー君・・・!!!」

「さあ、早く電話をして。貴女の真心を彼に伝えてあげて下さい、そうすればきっと上手く行きます・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 “あなた、あなた・・・!!!”とメリアリアがソッと耳打ちした、“予言を使って大丈夫なの?”と。

「それをあんまり使ってしまうとあなた自身に負担が掛かるわ?それに事と次第によっては未来を変えてしまうかも知れないし・・・!!!」

「なあに、平気さメリー・・・!!!」

 すると心配そうな面持ちとなって小声で告げる愛妻淑女(メリアリア)に蒼太がヒソヒソと返した。

「そう簡単に変わってしまうほど、この二人のお互いへの思いは容易いモノでは無いよ。それどころか今や僕と君みたいにちゃんと確立されているんだ、真っ直ぐに相手だけを見てるんだよ。それにノエルさんはああ見えて根は真面目でしっかりしているから少し位、“先読み”を使っても大丈夫だ・・・!!!」

 そう応える傍らで蒼太は尚も感じていた、ノエルのレアンドロへの思いが本当に揺るぎないモノになっているのだと言う事を、先程メリアリアが言っていたように、お互いがお互いにとって真に掛け替えの無いモノになっているのだ、と言う事を。

(さっきレアンドロの事を見た時に、ノエルさんの中にも入らせてもらったけれども・・・。ノエルさんは彼と付き合ってからはもう、本当に“ガールズラブ”の様な事はやっていなかったようだしね、しかも喧嘩をした後でさえも。凄い一途に彼の事だけ考えていたみたいだし、これなら上手く行くだろう・・・)

 “あとはただ、どうやってその思いの丈を彼に伝えきるかだな・・・!!!”と蒼太は思うがこれも今のノエルならば大した問題にはならないだろう、彼女ならばキチンと自身の心の全てをレアンドロへと解き放つ事が可能であろうしよしんばそこで上手くいかなかったとしても、方法はもう一つだけあった。

 多少、時間は掛かるが彼が以前“水子供養”をした時にやったようにやれば良いのだ、あの時は実に一年間程掛かったのだが、今現在の状況を鑑みるに彼女の場合は一ヶ月間祈ればそれで必ず結果は出て来る筈である、つまりは必ず解決出来る事象であったのだ。

「とにかくレアンドロを呼んでみて下さいノエルさん、全ての話はそれからです」

「う、うん。解った・・・」

 蒼太の言葉にそう応えるとノエルは恐る恐るレアンドロのスマートフォンの電話番号を入力して行く。

 その様相からかなり緊張している様が、蒼太達にはハッキリと見て取れたが、さて。

 プルルル、プルルル、プルルル・・・。

 1回、2回、3回と、中々レアンドロは電話に出なかった、それほど忙しいのかそれとも。

「・・・・・」

(20回鳴らしても出なかったら、1回切ろう・・・!!!)

 そう意を決するとノエルは尚も“お願い、出て!!?”と言う思いを胸に抱えたまま、レアンドロを呼び出し続けるモノの、それが17回を超えようとした時。

「・・・もしもし?」

「あ、あ・・・っ!!!」

 聞き慣れた声が聞こえて来て、しかしノエルは思わず“レアンドロ?”と尋ねてしまうが彼に対して電話を掛けていたのだから通常は彼以外が出る道理は無い(第一雰囲気と声で本人と解るが・・・)。

「・・・・・っ。どうしたんだ?ノエル」

「あ、あの。あのね?レアンドロ。私今、あなたとどうしても話がしたいの・・・!!!」

「ちょうど良かった、僕も君に話があるんだ。会って話したい・・・!!!」

「ええっ!!?う、うん・・・!!!」

 “何処に行けば良い?”と電話口の向こうでレアンドロが尋ねるとノエルはいよいよしどろもどろになってしまった、蒼太が見た所どうにも不安に駆られていた彼女はだから、そんな恋人の態度に“もしかしたなら別れ話を切り出されるかも知れない”等と考えてしまっていた様子である、全く先程までのおちゃらけたハイテンションは何処に行ってしまったのであろうか。

「あ、あのぅ。あのね・・・?」

「ここに来る様に言って下さい。場所は“カッシーニ伯爵家”です!!!」

「レアンドロと対峙して、ちゃんと自身の本心を言うのよ?ノエル・・・!!!」

「頑張って下さい、プリンセス!!!」

「私達が付いています、どうか御健勝下さい!!!」

 蒼太と彼の花嫁達に代わる代わる援護され、或いはせっつかれて漸くノエルも腹を決めた。

「場所は“カッシーニ伯爵家”の邸宅よ、そこの3階にある部屋にいるの。お友達と一緒にね、お願いだからとにかくここまで来て。場所は知っているのでしょう?」

「勿論、知っている。近隣諸国の貴族の名前は一通り、頭に入っているからね。でもここからだと少し遠いな、ちょっと時間が掛かるかも・・・!!!」

 “タクシーを使って行くから少し待ってて”、“30分くらいで着くと思うから・・・!!!”とそれだけ言うとレアンドロは直ぐさま電話を切った。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・っ。あ、あははっ。これからここに来るって!!!」

「どうやらそうみたいですね・・・」

「頑張って、ノエル!!!」

 蒼太とメリアリアの言葉にノエルは“う、うん・・・!!!”と頷くと改めて気合いを入れ直し、彼がやって来るのを待った。

 待っている途中で先程、メリアリアの指示した通りにメイド達が御茶菓子と高級紅茶を運んで来た、それを“有り難う”と言って受け取ると。

「もうすぐお客様が来るわ。ここにいるノエルの恋人で“レアンドロ”って言うルクセンブルク人よ?ただ彼も大公家の血脈に連なる人だから、くれぐれも失礼の無い様にね?到着したらこの部屋にお通しして!!!」

「かしこまりました・・・」

 そう言ってメイド達に再び指示を出すとメリアリア達はそのまま用意されたスコーンとティーとを満喫し始めた。

「うん・・・。やっぱりハニーバターと焼いたスコーンの相性は、最高だね!!!」

「本当はブルーベリーソースも付けたかったのだけれど・・・。夕食前だし余りお腹を膨らませてもいけないと思って!!!」

「ウチではアプリコットソースを使うんですよ?甘酸っぱくて美味しいんです!!!」

「ウチはチョコレートソースかな?時折ラズベリーも使うけれども・・・!!!」

「・・・・・」

 一時の談笑を楽しむメリアリア達に対してノエルは微笑みながらも少し硬い表情をしていた、やはり緊張しているのだろう事が容易に伺えるモノの、しかし。

「ノエルさん、頑張って少し食べましょう。腹が減っては戦が出来ません!!!」

「ソー君・・・。う、うん。解ってはいるんだけれども・・・」

「食べてみて?ノエル。ウチのスコーン、美味しいのよ?」

「どうぞお紅茶も冷めない内にお飲み下さい、プリンセス」

「貴女に精を付けてもらわなければ、私達も支え甲斐が無いと言うモノです」

 皆に口々に言われる内に、ノエルも“一口位は良いかな?”等と言う気になってきた、果たして口に運んでみるとー。

「あっ、美味しいっ!!!」

 口の中に小麦粉とバターの風味が広がり、それと同時に天然ハチミツの、癖の無い優しい甘みが舌の上を駆け抜けて行く。

 それは以前、日本にいる時にメリアリア達とお茶会した際に出されたスコーンの風味に何となく似ている気がした、恐らくは近くに数件あったパン屋の内から一番、自身の舌に合うモノを選んで買ってきておいたのであろう。

「はぐ、はぐ・・・。ゴクン、ふうぅぅー・・・っ!!!」

 勢い付いたノエルはそのままスコーンを平らげると返す刀でティーカップにタップリと淹れられていた紅茶を優雅に啜って飲み始めた、上品な香りとコクのある渋みが鼻を突き抜け喉を潤して行く。

「・・・・・」

(流石は伯爵家の娘さんね。普段の立ち振る舞いもそうだけれどもそれだけじゃない。メイド達もテキパキとしているしそれに、今回のお茶と言いスコーンと言い、本当に見事なモノだったわ・・・!!!)

 少し気分の落ち着いて来たノエルは改めて伯爵令嬢としてのメリアリアの完成度、クオリティの高さに内心で感心していたモノの、そうこうしている内に。

「お嬢様・・・」

「・・・・・?」

「レアンドロ様が、御到着なさいました・・・」

「あら、そうなの?それなら此方(こちら)へとお通しして?あと紅茶とスコーンを有り難う。とっても美味しかったわ!!!」

「恐れ入ります・・・」

「恐縮で御座います」

 “悪いんだけれども片付けてくれる?”と、一通り皆が食べ終わり、飲み終わったのを確認したメリアリアがメイド達に礼を言い、後片付けのオーダーを出すと、昔からカッシーニ家に仕えてきて勝手知ったる仲なのであろう彼女達は会釈をしつつも手慣れた手付きで食器類をテーブルから下げて行った。

 やがて彼女達が退出し終わると。

 蒼太が数名の男女の気配を感じて座ったまま僅かに身構えるモノの、すると彼女達とは入れ違いで別のメイドに付き添われている、一人の長身の日に焼けている白人男性が入って来た。

 身長は180cm弱と言った所か、蒼太より僅かに高い程度であるモノの、その肉体は筋肉質でガッシリとしており何某かのスポーツをやっている事が伺える。

(そう言えば・・・。ノエルさんが前に言ってたな、確か小さな頃から“フットボール”をやっているんだったっけ・・・?)

 蒼太が尚も観察を続けるモノの、瞳には眼力はあるがギラついてはおらず、むしろ穏やかな輝きを湛えている、顔も悪くなく俗に言う“スポーツイケメン”に属していると言えるだろう、やや甘めのマスクがいかにも女性人気を博しそうな面持ちをしていた。

「ノエル・・・」

「レアンドロ・・・」

 名前を呼ばれたノエルは立ち上がって同じようにレアンドロの名を呼び返す。

 二人は暫しの間無言で見つめ合うと、ノエルが先ずは動いて見せて、ツカツカと彼氏の前へと歩み寄る。

「レアンドロ、私・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 何事かを言おうとして思わず言葉を詰まらせてしまうノエル、その様子をジッと見詰めるレアンドロが真っ直ぐに彼女の顔を捉えていた。

 更に彼等の背後では蒼太ファミリーが固唾を飲んで二人の様子を見守り続けていたモノの、するとまた、ノエルが何事かを口にしようとしたその時だ。

「あの。レアンドロ、私・・・!!!」

「良いんだ、ノエル・・・!!!」

 レアンドロがその言葉を遮って彼女に近づき、その肩を掴んだ。

「君が同性愛者でも良い、バイセクシャルでも構わない。女の子同士でセックスをしまくっていたとしても、僕はやっぱり君が好きだ。大好きなんだ!!!」

「レ、レアンドロ・・・?」

「僕には君しか居ないんだ、君だけなんだ!!!どうかこれからも一緒にいて欲しいんだ。・・・ダメかい?」

「・・・ほ、本当に良いの?こんな私でも。今まで散々、マンマンセックスをしてきたって言うのに!!?」

「全然、良いよ。それに僕と付き合ってからはしてないんだろ?信じるよ君の事。だってノエルはそう言う所、本当に素直で真面目で純粋だもの!!!」

「・・・・・」

(彼氏の前でも“マンマンセックス”とか言ってたのか、この人は・・・!!!)

 “流石です!!!”と、心の中で蒼太が思わずツッコミを入れる一幕もあったが兎にも角にもこれで二人の仲は修復された挙げ句に試練(と言って良いモノかどうか)を乗り越えたその絆はより一層、確固たるモノとなった訳である。

「・・・・・っ。嬉しいっ!!!」

 ノエルがレアンドロに抱き着き、絶叫した。

「レアンドロ、ああレアンドロッ。私、私も貴男の事が好き、好きっ。大好きっ!!!もう一生離さないから・・・っ(≧Д≦)(≧Д≦)(≧Д≦)」

「ああノエル、なんて可愛いんだ。堪らないよ・・・!!!」

「「「「・・・・・」」」」

(結局は・・・)

 蒼太が小声で呟いた。

(何の心配も要らなかった、と言う訳か・・・!!!)

(ま、まあ。無事に済んで良かったじゃない!!!)

(そうですよ、レアンドロさんもプリンセスもあんなに嬉しそうに抱き合っちゃって・・・!!!)

(見ているこっちが当てられてしまうぞ?全く何なんだ、これは。とんだ茶番に付き合わされた形になったな!!!)

 そんな四人の胸の内等どこ吹く風とでも言うかの様に、二人はいつまでもいつまでも仲睦まじくイチャつき合っていたモノの、それが5分を超えようかと言う時に遂に堪りかねて蒼太達が口を開いた。

「あ、あのねノエルさん。幸せいっぱいの所、申し訳ないのですが・・・。もうそろそろお開きと言いますか、何というか・・・」

「二人っきりの世界に籠もるのは、後にしてもらえないかしら?」

「仲睦まじいのはよろしいのですけれども、そろそろレアンドロさんを私達(わたくしたち)に紹介して下さいな・・・」

「プリンセス、仮にも人前なのですからもっと公序良俗にも気を配っていただかないと困ります!!!」

「あ、あはははははは~っ(^◇^;)(^◇^;)(^◇^;)」

「い、いやごめんなさい皆さん。つい自分達の幸せに浸りきってしまっていて・・・」

 そう言って二人が取り敢えずの謝罪を終えると漸くノエルがレアンドロに蒼太達を紹介してくれた、すると。

「ああ、君達がそうなのか!!?」

「・・・・・?」

「・・・・・」

「え、え・・・?」

「何の事だ?一体全体・・・」

 立ち上がって一応はルクセンブルク大公家の血脈であるレアンドロに立礼を取りつつも歩み寄る蒼太達に対して目をキラキラと輝かせながらも“話はよく聞いているよ!!!”とレアンドロが応じて言った。

「僕達の恋をあれこれ応援してくれていた、と。何でも快楽だけのマンマンセックスに嵌まっていたノエルの目を覚まさせてくれたのだろう?本当に感謝しているよ!!!」

「はぁ・・・っ!!?」

「え、ええ・・・っ!!?」

「レアンドロさん、いま何と・・・?」

「な、何を言っておられるのだ?貴男は・・・!!!」

「ええっ!!?だってノエルが言っていたよ?なんでも欲望丸出しのマンマンセックスは不毛だから止めて、僕との純愛チンマンセックスをするように導いてくれたのだとか、何とか・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・っ。え、ええまあ。物凄く色々と端折(はしょ)ってますけど一応、間違いでは無いです」

 “ただ、あの・・・”と蒼太は言い掛けて止めた、彼も、否、“彼等”(ここで言う彼等とは蒼太を含めた花嫁達全員のグループを言うが・・・)もまたそれまでのノエルとの付き合いで“世の中にはこう言う人種も居るんだ”と言う事がよくよく理解させられてきた訳であり、そこにノエルと同じような人種が一人増えただけの事だった訳である。

 それでも。

「僕達はあくまで切っ掛けを与えただけです、ノエルさんは元々貴男(あなた)に対する確固たる愛情を抱いておられましたから。それを刺激して爆発させる役割を果たしただけですけれども・・・。あの、それはそれとして」

 “失礼ながら”と蒼太は尚もやや追い詰められたかのような愛想笑いを浮かべつつ、一応はレアンドロに礼儀を尽くしてこう尋ねてみた。

「レアンドロさん。貴男(あなた)は自分の言葉遣いに対してなんかこう、思う所は無いですか?」

「?、!?別に無いけど・・・。あと君なら別にタメ口で良いよ?殆ど同い年だろうし、堅苦しいやり方は抜きで行きたいんだ!!!」

「そうか、解った!!!」

 と、そう言われて少しホッとした蒼太は続けて彼にハッキリとこう告げた。

「人前で“チンマンセックス”とか気軽に言うな。一体全体何なんだよ、その破廉恥っぷりと言うか、自堕落っぷりは!!!」

「ええっ!!?一体何がおかしいんだい?この位普通の事だろう?」

「ねっ?ねっ?そうよね?レアンドロ、やっぱり私のダーリンだわ(@^▽^@)(@^▽^@)(@^▽^@)」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 猛然と捲し立てる蒼太に対してレアンドロはキョトンとした表情を浮かべ、それに追随するかのようにノエルは燥ぎながら彼に再び抱き着くモノの、その様子を見ていた三人の蒼太の花嫁達は“ダメだこりゃ”と言った顔付きとなり思わず天を仰いで溜息を付いた。

 “なんてこった”と言うのが大なり小なり彼等の抱いた感想だった、もうこれで確定してしまったのであるモノの、ただでさえ手の掛かる相手であるノエルが二人になってしまったのだ。

「・・・・・っ。はあぁ~っ!!!」

「どうしたんだい?彼は。怒ったと思ったら今度は溜息を吐いたりして・・・」

「ソー君てばこの所、情緒不安定気味なのよ?お医者さんに行った方が良いと思ってるんだけれども、本人は大丈夫だって言うの。ノエル、少し心配・・・!!!」

「・・・・・」

(お前らの頭を心配しろや!!!)

 蒼太はもう、何も言う元気も無かった、ただもう今は一刻も早くにこの二人と別れたかった、このまま事態が進めば本当に、情緒不安定になってしまいかねない程の精神的ストレスである。

「はあぁ~・・・っ!!!ま、まあ何というか。何事も無く済んで良かったですよ、本当に。一時期どうなる事かと思いましたからね!!!」

「そ、そうね。そこだけは本当に良かったわ、取り敢えずホッと出来たしね・・・!!!」

「じ、じゃあ私達(わたくしたち)も用事がある事ですので。今日の所はこの辺りでお開きにしましょうか!!!」

「う、うむ。そうだな、私も自分達の準備をしなくてはいけないし・・・!!!」

「へっ!!?なになに、ソー君達何処かへ行くの?」

「え、ええ。実は・・・」

 とそこまで言い掛けて蒼太は思わずハッとなってしまった、もし万が一にもここで“エルフの国に冒険がてらハネムーンに行くのです”等と言ったらノエルの事だ、“自分達も連れて行け!!!”となるに決まっている、と言う事に彼はすんでのところで気が付いたのである。

「明日から僕達は強化合宿をしに、アルヴの山々に山篭もりに行くのです。ね、皆!!?」

「・・・・・っ!!?」

「え、え・・・っ!!?」

「な、何を・・・!!?」

 そんな夫からの突然の言葉に妻達は思わずキョトンとなり、続いてキョドッてしまうモノの、彼が必死の形相で“ね、ねっ!!?”と言い続けて来るモノだから、最後は“う、うん・・・”と言う形でしどろもどろになりながらも何とか頷いてみせる。

「そっか~、偉いねソー君達は。私達は明日から暫くお休みがいただけたから、もし出来るのならば、なんだけれどもこっそりこの国を抜け出して、ちょっと実家に帰ろうかな、なんて思っていたのよねぇ~( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)」

「そうだね?実家に帰って久し振りに大叔父様や大叔母様に顔を見せないとね?こう言っちゃなんだけれども王侯貴族も楽じゃ無いよ、本当に・・・」

 “肩が凝るんだよなぁ~・・・っ!!!”と言うレアンドロ達を、“取り敢えずは誤魔化せた”と言う安心感から蒼太はホッとした面持ちで眺めていた。

 そこへ。

「蒼太、蒼太は居るかい?」

「元気そうだね?蒼太君!!!」

「婿殿、恙無(つつがな)い様で何よりだ!!!」

「あ、お義父(とう)さん達!!!」

「お父さん!!!」

「お父様!!!」

「父上!!!」

 人の気配を感じた蒼太が部屋の入り口の方を向くと、その直後に3人の壮年の男性陣が姿を現すモノの、一人はこの館の主でメリアリアの実の父親であるダーヴィデ伯爵であり、二人目はアウロラの実父エリオット伯爵、そして三人目はオリヴィアのそれであるアルベール伯爵であったのだ。

 彼等はとある用事があってたまたまここ、カッシーニ邸へと集まっていたのであり、先程までは会合を開いていたのである。

「先程から何やら騒がしいと思っていたが・・・。此方のお二方は何方(どなた)なんだい?」

「はい、実は・・・」

 と蒼太が二人の正体とこれまでの経緯をなるべく正確かつ簡潔に纏めて伝えるモノの、それを聞いた三人は目を丸くしてノエル達に向き合った。

「左様で御座いましたか、プリンセスにプリンス・・・!!!」

「これは挨拶もせずに申し訳御座いません・・・!!!」

「まさか正体を隠してこの国にいらっしゃっておられるとは・・・!!!」

「いえいえ~、よろしいんですのよ?伯爵様方~っ(*´▽`*)(*´▽`*)(*´▽`*)」

「僕達の方こそ、蒼太君やお嬢様方には大変お世話になりまして。いまちょうどその御礼を言っていた所でしたから・・・!!!」

 “そうだったのか!!?”とダーヴィデ達から言葉を掛けられた蒼太に代わってメリアリア達が実父に相対した。

「この人は、蒼太は二人の喧嘩の仲裁をしていたのよ?ちゃんとキューピットの役割を果たしていたもの・・・。もっとも最後の方はもう、本人達が自分達の世界に入り込み過ぎて行っちゃってて私達が出る幕は無かったみたいだったけれども・・・!!!」

「蒼太さんは本当に格好よかったです、キチンと二人の間を取り持ちましたから・・・!!!」

「その責任感にも行動力にも惚れ直していた所です!!!」

「そうか、そうか!!!」

「それは何よりだな!!!」

「他人様の役に立つとは流石は我が婿だ、感心したぞ!!?」

「・・・・・」

 “い、いやそんな事は無いんですけれども・・・っ!!!”とこれまたしどろもどろになりながらも義父達からの賛辞に対して応えた蒼太であったが、人間的に好きだった彼等に褒められる事は内心では悪い気はしない。

「そうだ、プリンセスにプリンス。今日のお食事は如何なされる所存ですかな?」

「もしよろしければ、今夜はちょっとしたパーティーを開こうと思っているのですが、そこにご招待差し上げたい!!!」

「パーティーとは言っても本当に身内だけの極々ささやかなモノ。それも急遽決まったモノですのでそれ程大したおもてなしは出来ませぬが、我等お抱えのコック達が腕によりを掛けます故に、もしよろしければ・・・」

「やったーっo(^o^)oo(^o^)oo(^o^)o」

 ノエルが叫んだ。

「今日はなんてツイてるのかしら!!?レアンドロに許してもらえたと思ったらパーティーに出席させてもらえるなんて!!!」

「此方こそ飛び入りで、服もこんな感じのラフなモノしか無いけれど・・・。それでも大丈夫なんですか?」

「勿論ですよ、プリンセスにプリンス。問題は御座いません!!!」

「では準備が出来次第、使いを呼びにやらせますのでそれまでどうかこの部屋でお待ちを・・・!!!」

「楽しみになさっていて下さい、今日は上質な赤ワインと鴨肉を用意しております故に・・・!!!」

 そう言ってダーヴィデ達は会釈をして蒼太達の居る部屋を辞し、1階へと戻っていった、後に残されたのは狂喜乱舞するメリアリア達花嫁と、それに負けない位に喜び合うノエルとレアンドロの姿であったのだ。

「ちょっと聞いた?小規模だけどパーティーを開くんですって!!?」

「こんな事ならドレスを着てくるべきでした、今からでも間に合うでしょうか!!!」

「私もこんな時位はおめかしして臨みたいモノだな!!!」

「・・・・・」

 そんな彼等の姿を遠目に見ながら。

 蒼太はこんな賑やかな一時が、それこそ本当にささやかだけれども幸せな時間がずっとずっと続けば良いのにと、願って止まなかったのである。
ーーーーーーーーーーーーーー
 蒼太君は通常、戦闘等の非常事態以外でよっぽどの事が無い限り未来視(これを“先読み”等とも言いますが)をしたりはしません(特に他人に対してはやりません)、余りそう言った“予言”をやってしまうと(弱い人の場合は特に)却って未来が変わってしまう場合があるからです(あまり細かい事を気にしない人や強い人ならば大丈夫ですが)。

 しかもそれをやる時には前段階として本人の中に入りこみ、思考や心理、意識の状態を読み解かなくてはならない為にそれなりに疲弊するのです(そう言う事もあって滅多な事ではやらないのです)。

 ですが今回、ノエルちゃんとレアンドロ君の為に蒼太君はそれを敢えて用いました(二人の中に入った挙げ句に“先読み”を使ったんです)、その結果としてノエルちゃんが(普段は年端も行かない女の子に対して不純な考えを致しまくっているにも関わらず)レアンドロ君の事で頭を、心をいっぱいにしていたのを見たのです(それだけレアンドロ君の存在が、彼女の中で大きなウェイトを占めるに至っていたのです、のみならず彼の事で本当に、真剣に思い悩んでいたのです)、それだけではありません、蒼太君は同時にノエルちゃんがレアンドロ君に抱く“ピュアで一途で真面目な気持ち”を改めて感じて再確認したのです、だから“これならば大丈夫だ!!!”との判断を下したのです(色々とぶっ飛んだ所もありますけれども、ノエルちゃんもれっきとした乙女なんですよ。しかもかなりのハイスペックな能力の持ち主でもあります)。

 またノエルちゃんとレアンドロ君は“ある意味”似た者同士でもあります、だからちょっと(と言うよりも大分)御世間様の常識とズレているのです(そこへ持ってきて仲直りできた喜びと安心感が加わってとにかく言動がヤバいと言いますか、普段よりも更に爆発しているのです)。

 そう言う事で御座います。
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