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神世への追憶編

超新星と女王位

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 今回のお話は第二章の終盤にあります“蛇の道は蛇”、“初雪のプロポーズ”の二つの物語をお読みになられてから読まれるとより理解が深まろうかと思われます。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ザ、ザーッ。・・・えるか?アルファ、こちらオメガ。繰り返す、こちらオメガ・・・ッ!!!」

「聞こえます、オメガ。こちらアルファ。どうぞ?」

 現世に戻った蒼太達を待ち受けていたモノ、それは連日連夜に渡る激務であり息つく暇すら無かった。

  一応、1週間に1日か2日間は休みがもらえていたが、それ以外は蒼太は勿論、メリアリアもアウロラもオリヴィアも、朝9時から夜の7時~8時まで働き詰めであったのだ。

 この間、メリアリア達は“女王位”としてセイレーンの“女王の間”にて“クイーンズ・カウンシル”を統括したり、はたまたそこに詰めて全体に指示を出したりと司令官としての役割を担っていたが、一方の蒼太はと言えば“遊軍”のような立ち位置にいて各地方の味方の援護や悪友且つ親友であるアンリ達と共同で任務に当たっていたのであった。

 そんな最中。

 緊急の情報が、セイレーン本部にもたらされた、“エイジャックス連合王国”の超秘密組織である王室護衛魔法騎士団“レウルーラ”の誇る最高戦力“超新星”の面々が近々、この“ガリア帝国”に侵入する予定である、と言うのだ。

 しかも今回はその最強各の戦士、“玉泉のマーガレット”が直々に出向いて来ると言う、これがもしも本当の話であるならば事態は非常に深刻であり、彼女達に対抗しうるのはセイレーン、ミラベルを見渡してもメリアリア達“女王位”しか存在し得ない。

「・・・・・」

(拙いことに、なったな・・・!!!)

 その情報を聞かされた時に蒼太は思わず顔をしかめた、女同士、しかも似たような境遇や立ち位置にいる存在同士と言うのは得てして意地の張り合いから壮絶な戦闘に発展し易いモノなのである。

 ましてやメリアリアもアウロラもオリヴィアも、生粋の負けず嫌いと来ている、相手の出方次第ではどうなるか解ったモノでは無かったのであるが、しかし。

(妙だな。なんでこんな時期に、わざわざ王宮直衛騎士団を動かしてくる必要があるんだ・・・?)

 尚も続けて蒼太が思うが、そもそも論的な話として“セイレーンの女王位”も“レウルーラの超新星”も、本来ならば国の中核たる首都圏や王室帝室を守護すると言う、極めて重要な任務を帯びている。

 要するに“防衛の為の戦力”であり“治安維持目的の騎士団”なのであって、間違っても相手の国に潜入させて工作を行わせるような使い方をするべき存在等では決して無かった、それを。

(積極的に用いて来るとは。エイジャックスには特殊秘密機関である“M16”もあるだろうに、一体何故・・・?)

 “それに奴らの目的とはなんだ?”と蒼太は感性を最大に鋭くさせて大いに頭を働かせるが現状、“反ガリア同盟の中心”とでも呼ぶべき“エイジャックス連合王国”、“プロイセン大帝国”、“イワン雷帝国”等の国々の工作戦攻勢はどちらかと言えば頓挫しておりそれぞれに国の内政や防衛に力を入れている時期である。

 こんな時にエイジャックスだけがガリアに対して積極的に打って出て来る、その理由が解らなかった、それもまるで“秘密組織同士で決着を着けさせる”とでも言わんばかりの布陣で、である。

「参ったな。此方には“ゾルデニールの居場所を特定して討ち果たす”と言う、極めて迅速且つ絶対に成し遂げなければならない使命があるのに・・・」

 蒼太がぼやくが、あの後ー。

 エルヴスヘイムから帰還した彼等はその報告の為に先ずは王宮直属の大賢者団ハイ・ウィザードの長であり今回、エルヴスヘイムに行くに当たって裏から手を回してくれた“アルヴィン・ノア”に御礼も兼ねて会合を持ったのであるモノの、蒼太達から事情を聞かされた彼は流石に驚愕の表情を露わにした。

「魔王ゾルデニールだと!!?“レプティリアン”の生まれ変わりか!!!」

「そうです・・・」

 事の顛末を聞かされたアルヴィン・ノアは暫くの間沈黙してしまうモノの、やがて神妙そうな顔付きとなり蒼太達に告げた。

「君達やエルファサリア王の見立ては、恐らくは間違いないだろう。そのアウディミアとか言う者の生い立ちや生き様も、もう少し聞き出したい所であったがこの宇宙に存在していなくなったのだとすれば最早とやかくは言うまい。それよりも・・・」

 “ゾルデニールの方が先決だな!!!”とそう述べて、アルヴィン・ノアは瞑想を始め、瞳を閉じて精神を集中させて行く、やがて。

 暫く経つとゆっくりと双眸を開け放ち、再び口を開いて言った、“北だ”と。

「奴は北に居る、と出たぞ?どうやらまだ実体は無くて、何者かに取り憑いて居る様子だがな・・・」

「・・・“北”とは、具体的にはどの辺りの?」

「そこまでは、解らん。と言うよりも危険な感じがして細かい探査が出来んかった。何しろ相手は邪神とも大魔王とも呼ばれておる存在なのでな、直接的な探査等を行えば恐らくは此方の身元の方が先に割れてしまうであろう・・・」

「・・・・・」

「ただ相手が北か北西にいて、何者かに取り憑いて居る事までは見えたぞ?それもそんなに遠くない距離じゃ・・・!!!」

「・・・・・」

 そこまで告げるとアルヴィン・ノアは“少し疲れた”と言い再び目を瞑って椅子の背もたれに体を預けた、蒼太達はもう一度礼を述べると順次彼の執務室から退出して行ったがその途上でメリアリア達とこの事に付いての話が持ち上がる。

「そんなに遠くない距離で、北か北西と言ったらエイジャックス連合王国か?確かアソコの王室の背後には“ガーター騎士団”がいたな。まさか奴は・・・!!!」

「・・・“ガーター騎士団”?」

「ああ、そうだよメリー」

 メリアリアの言葉に蒼太が頷いてみせた。

「王室の背後にいる騎士団、と言う事は・・・。“ゾルデニール”や“キング・カイザーリン”は王室そのものに取り憑いている訳では無いって事よね?」

「その通りだよメリー。だが考えてみれば頷ける話ではある、何しろ“ガーター騎士団”の団長の地位は非常に高くてエイジャックス国教会の司祭と殆ど同等なんだ。現にエイジャックス王室の代替わりで戴冠式等を執り行う際に、冠を次世代の王の頭に被せたりする役割を担う程でもあるんだよ。要するにその権限も立ち位置も、王よりも上だと言われていて決して表には出て来ないけれども絶大な力を行使できる立場にいる事には違い無いんだ・・・!!!」

「・・・ではやはり“ゾルデニール”や“キング・カイザーリン”はそこに居る、と言う事でしょうか?」

「恐らくね?もともと“ガーター騎士団”と言うのは“テンプル騎士団”がその大本になっている、とされている。彼等の始まりは中世に於いて聖地巡礼の際に“インリィ”、即ち“キリスト教徒”の安全を確保するべく組織された“修道士による戦闘集団”だったんだけれども、それだけじゃ無いんだ」

 続いて口を開いたアウロラの言葉に蒼太が応じる形で話を続けるモノのその“テンプル騎士団”には“キリスト教徒護衛”以外にも二つの重要な任務があった。

 それが“キリストの遺児”と“聖遺物”と呼ばれる宝物の発見、及び奪取であったが彼等はそれがエウロペ世界の何処かに存在していると信じて各地を渡り歩いては情報を収集していった。

 ちなみに“聖遺物”とは“最後の晩餐”に於いてキリスト(本名は“イサヤ”とも“イマヌエル”とも呼ばれている)が使ったとされる、ワインを受け止めた聖杯と、磔刑となった際にキリストの腹部を貫いたとされる“ロンギヌスの槍”、そしてキリストの遺骸を包んだとされる“聖骸布”であるが、テンプル騎士団は当初の目的である“キリスト教徒の聖地巡礼の護衛以外にも“この3点を持って帰る事”及び“キリストの子孫がいるなら探し出して連れ帰れ”と言う命令を時のローマ教皇ウルバヌスから密かに、そして直々に指示され、四方八方に手を尽くしていった。

 当時は“十字軍”による遠征直後でエルサレム近辺にはイスラム教徒の盗賊や追い剥ぎ等が幾度となく出没しており、それらから敬虔なるキリスト教徒を守る目的で創始された“テンプル騎士団”の評判は上々で、そんな訳であったから初めの内はローマ教会も特権を与えて頼みの綱としていたようであるモノの、彼等は中々に商才もあったようで“インリィ”相手に日銭を稼いで貯蓄を続けたり、またイスラム圏の商人とも交易を重ねて行く内に次第に財を為していき、遂には各国の有力者や国王相手に金を貸し付けると言う、現代で言う所の金融業の走りのような事までやりだしたのだ。

 そしてそれがいけなかった、自分達以上の権勢を持ち始めたテンプル騎士団をローマ教会はいつまでも野放しにはしておかなかったのである。

 折しも当時のガリア帝国皇帝の“フィリップ4世”がテンプル騎士団からの借金取り立てに喘ぎ苦しんだ末に、それから逃れる目的でとんでもない流言を流してはあらぬ濡れ衣を彼等に着せ始めたのであるモノの、この事を切っ掛けとしてテンプル騎士団はローマ教会を始め、自分達が金を貸していた領主や国王達から徹底的なる迫害を受ける事となった。

 そしてとうとう最後の騎士団総長“ジャック・ド・モレー”が処刑された事でテンプル騎士団は根絶やしにされ、ここにその歴史は閉じた、筈であったが。

「“根絶やしにされた”とは言ってもね?やっぱり何%かは生き残る人が居るんだよ、彼等の内の大部分は直接的な利害関係が無かったスペイン王を頼って落ち延びていったようなんだ。そしてその内の更に限られたグループがイングランドへと渡り、そこで“ガーター騎士団”を結成した、と言われている。要するに彼等は最初から呪術や儀式、秘密主義的な側面を持ち合わせていた騎士団だった、と言う事さ・・・!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・なるほどそこまでは良く解ったけれども。だがしかし、どうしても解せない点が一つある。最初は敬虔なるキリスト教徒を守る為の者達の集まりだったテンプル騎士団が、何故ゾルデニール等に組するまでに落ちぶれてしまっているのか。その辺りの理由が知りたい」

「・・・元々彼等には“神秘主義”や“選民思想”が色濃く根付いていた、とされている。それは迫害を逃れて“ガーター騎士団”を結成した事でより強化されて行ったんだ、要するに“同族意識”とでも言うべきモノが芽生えたのだろうね。そう言った連中は得てして排他的で容易に他の者達と打ち解けたりはしないモノなんだけど。近代になってからそこに、とある別種の思想集団が合流する事になったらしいんだ。それが“アダム・ヴァイスハウプト”が設立した“ハウシェプスト協会”さ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「ハウシェプスト、協会・・・っ!!?」

「バ、バカな。そんな事が・・・っ!!!」

 自らの説明に対して流石に動揺を隠し得ないメリアリア達花嫁に、蒼太は構わず声を挙げ続ける。

「元々両者は似通っていたんだよ、“貴族文化の一環”として、要するに彼等の“たしなみ”として超高級市民層や特権階級に広まったのは勿論のこと排他的で秘密主義。そして選ばれた者のみが入団する事を許される点、とかね?だけどそれだけじゃあ無いんだよ、実は一連のハウシェプスト協会との戦闘で捕らえられた捕虜達からの話を聞くと、彼等は口を揃えて組織の中枢部、要するに幹部達の事なんだけどそこに名を連ねる為には“火と水の試練”と言う名の儀式を行って“神を受け入れる”、もしくは自身が“神とならねばならない”と言う教義が存在している、と言うんだ・・・!!!」

「・・・“火と水の儀式”?」

「なんなんですか?それは・・・」

「我々にはさっぱり解らない事だらけだが・・・!!!」

「これは別名“蘇りの儀式”とも呼ばれていて要するに自身がキリストと同じ立場に立つ事を意味している、と言うんだよ。まずは火と水の試練、即ち“神の試練”をその身に受けて一旦は己が罪穢れと共に身が滅び去るがその後で神の愛によって復活を遂げて神と一体となる、と言う趣旨のモノなんだって。そしてこれに近い事をガーター騎士団内でも中枢にいる者達は実行していたらしいんだ、要するに両者には共通点があったのさ」

 “だから”と蒼太が尚も続けて言った、“両者が融和する事自体は珍しい事でも何でも無かったんだ”とそう告げて。

「・・・まあ双方の“神”やその目的とする所はまるで違っていたんだけどね?それでも表面上は体系体質が似通っている儀式を持つ二つの組織が合流しても、全く齟齬が無かったんだろう。そうしている内にガーター騎士団は、ハウシェプスト協会の捕虜達の言葉を借りるならば彼等によって内部から“乗っ取られた”のだそうだ。かつては清廉なる神の僕が、今や“ハウシェプスト協会の神”、もっと言ってしまえば“ゾルデニール”を崇める集団へと成り下がってしまった、と言う事らしい」

「・・・・・」

「・・・・・」

「なんという、事なのだ・・・!!!」

 その話を黙って聞いていたオリヴィアが最後に悔しそうに呟いた。

「し、しかしだ。それはそれで少し変ではないか?普通ならば神と大魔王の区別くらいは付きそうなモノだが・・・」

「・・・いいや、オリヴィア。実はそれが意外と難しかったりするんだよ。これは僕の祖国、日本でも昔から言われている事なんだけれどもよく“神からお告げを受けた”って人がいるだろ?それが本当に本物の神様からなのか、それとも低次元のバケモノがその振りをしているのかを判別するのは専門の“サニワ”と呼ばれる人が必要になって来る。彼等に判別してもらって初めてお告げかどうかが解る仕組みとなって居るんだよ」

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「ま、魔物が神に化けている事があると言うのか!!?」

「ああ、連中は時として“神の真似事”をするからね?神が羨ましいのか、はたまたそれだけ人間達をバカにしているのかは定かでは無いけれども・・・。中でも多少の霊感や霊力がある人が一番危ないんだよ。本人になまじっか感知力があるモノだから、変な次元の存在と交信し易くなってしまうんだ。言っておくけれども基本的に神様と言うのは余程の修業を積んだ人じゃないと同調できないからね?凄い高位なレベルの領域に住んでいる訳だから、ちょっとやそっと、スピリチュアルな事柄をかじった位ではそこにまで到達出来ないんだよ。多分ガーター騎士団の団員達も」

 “そうだったと思うよ?”と蒼太は尚も延べ続けるが彼に言わせれば漸くにして霊性に目覚めたばかりの人間程無防備で危険な存在は無く、それはちょうど火薬庫付近で火の点いた松明を振りかざして無邪気に遊んでいるようなモノだと言う。

「対する魔物やバケモノ等からしてみれば“鴨がネギを背負ってやって来た”のと同じ位に喜ぶべき事なんだろうね。何しろ霊的素質に目覚めたばかりの人類程無警戒で脳天気なモノは無いから、向こうからすれば本当に簡単に騙せてしまう。奴等は人間の心と言うモノを知り尽くしているから、余程正義感や心胆が強くて感性が鋭い人物でもなければ、アッという間にその掌の上で転がされてしまうのさ・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「それに奴等はまやかしの術にも長けているからね。さっきも言ったが何の心得も能力も無い人類を脅したり、或いは宥めすかしたりしてちょっと欺く位はお手のものだよ。それを跳ね返せるのはやはり、愛や真心を知っていて尚且つ、ある程度以上の精神的強さを持っている人だけだろうね・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 それを聞いていたメリアリア達はまた押し黙ってしまっていたが、蒼太には解っていた、“この子達ならば大丈夫であろう”と言う事が。

 何故ならば。

 メリアリアもアウロラもオリヴィアも皆、“感性が鋭い上に精神力や正義感が強くて愛や真心を知っている”存在だからであったが、現に彼女達はそれまでの戦闘に於いて“光の力”を発動させて蒼太を何度となく助けてくれていたし、それに先のアウディミアとの決戦でも彼の力を借りたとは言えども立派に“神人化”を果たす事に成功している。

 それだけではない、なによりかによりの理由としてはそもそも、メリアリア達はそれぞれが神の思念エネルギーの顕現したモノである“光輝玉の金剛石”、“蒼水星の青煌石”、そして“銀水晶の黒曜石”と同調していたのであって、その“奇跡の力”とでも言うべき“絶対熱の極意”や“星震魔法”、“パルサー呪文”を十全に使い熟しているのだ。

 しかもその上で自分自身を見失わない謙虚さをも兼ね備えている、問題などあろう筈も無かったのであるモノの、強いて言うならば唯一心配だったのが彼女達がそんな己に対してまだある種の確信と言うか、自信を持てずにいる点であって、そこの所をもう少し突っ込んで鍛錬すれば“神人化”を自在に発動させる事も夢では無いかも知れなかった。

(・・・まあ今のままでも全然問題は無いけどね。何しろ短期間だったとは言えども“神上がり”が出来た、と言う事は。そして神力を思う存分使い熟せている、と言う事はそれ=で“神に認めてもらえている”と言う事に他ならない。彼女達の持つ精神的な強さや素直さ、純朴さや優しさと言った人格や霊格の高さ、完成度が神々の目に止まったんだろう。裏を返せばそうでなければとてもの事、メリーはメリーとして、アウロラはアウロラとして。そしてオリヴィアはオリヴィアとしてそれぞれの家に生まれて来る事は出来なかったに違い無いよ、何しろ神の波長がその身や血筋に溶け込んでいる家系なんだからね)

 そう思うと蒼太は自分もまた、慎まねばならないと気を引き締め直すがとにもかくにも現状では“ゾルデニール”及び“キング・カイザーリン”の居場所に付いても推測の域を出ない以上は迂闊な事は出来なかった。

 ただ彼等がガーター騎士団の只中に入り込んで悪事を為そうとしているのは充分に考えられる事柄である、“今後はこの事に付いての調査もやっていかねばならないな”、等と考えている所に今回の“レウルーラ襲撃”の報が入ったモノだったから、蒼太としてみれは何やら作為的なモノを感じずにはいられなかったのだ。

(・・・拙いな。如何に“風の導き手”とは言えどもまともに戦ったのならば“女王位”達の敵じゃない。それと同等の戦力たる“超新星”をぶつけてこられた場合、僕一人ではとてもの事抗い切れない。下手をすれば殺されてしまうぞ!!!)

 蒼太は思うが以前の戦闘で彼は超新星の主要戦力の一人である“黄昏のルクレール”と矛を交えた事があって、その時は蒼太が圧倒したモノの彼女はまだ、全力を出し切ってはいなかった。

 一方のメリアリアは“青天のエヴァリナ”と呼ばれる少女と対戦したのだが此方も決着は着かずに終わっており、連中の精神的身体的能力の高さが窺えた。

(メリーやアウロラ達とグループを組んで一人ずつを集中的に、そして確実に倒して行くか。そうで無ければ奴等を倒せたとしても此方に掛かって来る労力と犠牲が大き過ぎるし何より、あの連中と1対1で戦うなんてそんな危ない橋をメリーやアウロラ達に渡って欲しくは無い!!!)

 青年がそう考えていた時の事だった、本部から緊急指令がもたらされたのは。

「アルファ。至急本部に戻れ、エイジャックス連合王国に付いての新たな動きがあった!!!」

「・・・それは了解しましたけれども。現任務はどうなるのですか?」

「代わりを行かせる。君はベータ共々本部に戻れ、これは“女王位”からの指示だ。以上!!!」

「・・・・・」

(メリー達からの・・・?)

 その言葉を最後に通信は途切れた、どうやら余り長い間使用する事は傍受される危険性があると判断されたのだろうが、さて。

「・・・・・」

(どうしたものかな?あともう少しで任務は完了出来そうなんだが。しかしまあメリー達からの言葉となれば聞かない訳にはいかないな・・・!!!)

 そう意を決すると蒼太は共に任務に当たっていたアンリと連絡を取って二人で本部に引き上げる事にした、エイジャックスの動向が不透明な今、この場に長居は無用である。

 今は一刻も早くにメリアリア達と合流して事に当たる必要があると、蒼太は迅速に判断を下していたのだ。
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