メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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夫婦の絆と子供への思い

剣で槍が討てるか? 3

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「・・・それで失敗して、おめおめと逃げ帰って来た、と言う訳か?」

「申し訳ありません、お師匠様・・・」

 暗闇の中で男が一人跪き、壇上で椅子に腰掛けている老人に対して頭を垂れていたモノの、彼はオーブリーを襲った男であり、“師匠”と呼ばれた老人は黒い礼服に身を包み、胸に公爵の勲章を付けていた。

「お前程の男がな、信じられん・・・」

「はい、私自身も未だに信じられずにおります。それにしてもミラベルにあれ程の剣の使い手が居ようとは・・・」

「あははっ。それって」

 “完全な負け惜しみじゃ~ん?”と二人が話していると、突如として別の方角から甲高い笑い声が聞こえて来る。

 その声は言った、“あんたの完全な負けでしょ?どう見ても・・・”と余裕そうに。

「・・・オイコラ、分を弁えてしゃべれよ?エルミーヌ。お前から先に始末してやっても良いんだぞ?」

「あははっ!!?やれるもんならやってみなよ、セレスタン。その前に私の弓矢の方があんたの胸元を射貫いているってーの!!!」

 “そもそもさ?”とエルミーヌと呼ばれた女性は尚も発破を掛け続けていった、“槍で剣を相手にしている段階で、勝てて当然なんだよねぇ~っ!!?”とそう言って。

「にも関わらず“ターゲットは討てませんでした”、挙げ句に“その剣士にも手も足も出せませんでした”じゃあ負けて来たのと何も変わらないじゃん。バカなんじゃないの?あんた・・・」

「うぐ・・・」

「・・・・・」

 “まあそう言うてやるな・・・”と老人はエルミーヌを窘めた、そして続いて。

「だがな、セレスタン。エルミーヌの言葉も一理ある、今後はもう少し腹を据えて掛かれよ・・・?」

 そう言い終わると二人に“行け”とだけ言い、後は静かに瞑目するモノの、その直後にはもう、セレスタンとエルミーヌの姿はその場には無くて、気配も掻き消えていたのであった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「・・・・・」

「・・・・・」

「なあ、どうするよ?蒼太・・・」

「どうするって言ったって・・・。どうするかな?アンリ・・・」

 アンリの所有する高級ブラックスポーツカーの車内で蒼太は親友兼幼馴染のアンリと例の“闇夜の連続暗殺者”事件に付いての今後の対応を話し合っていた、既に先日、アルベール伯爵から得られた情報に付いては彼と共有する事が出来ており、後は考えを纏めて捜査方針を決定するだけである。

 しかし。

「調べれば調べる分だけ、闇が深いなこの事件・・・」

「ああ。まさか建国の忠臣達の子孫が狙われているとはな・・・」

 蒼太が相槌を打つモノの、あの後。

 ノエルにも協力してもらい、今回の事件で襲われた貴族や金持ち達の関係性を調べていた蒼太達は、共通するある一つの事柄に辿り着いた、それは。

 被害にあった貴族達はいずれもガリア帝国建国に際して何某かの武勲を打ち立てたり、または帝室に対して特別な忠義を表したかどで表彰されたりした者達の子孫である事が解って来たのだ。

 それだけではない、貴族と共に襲われた金持ち達は皆、揃いも揃って襲撃された貴族達と代々深い関係にあった大商会や大企業の頭領一家に血縁のある人間である事も判明したのである。

「それと、これはまだ未確認の情報なんだけど~・・・。例の“カロリング家”には正妻との間に生まれた男子以外にも、跡取りがもう一人いたって言う噂があるの~っ(//∇//)(//∇//)(//∇//)なんでもカロリング家と関係が深かった大商人の一人娘がカール・マルテル・ピピンの妾で、二人の間には秘密裏に産み落とされた子供もいたって言うモノなんだけど~っ( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)」

「・・・・・っ!!!」

「なんですって・・・っ!!?」

「まあでも。これ位のスキャンダルって言うかゴシップは歴史上では良くある事だしぃ~。それに相手は1,500年以上も前の人間なのだから、もう確かめようも無いけどねぇ~っ( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)」

「・・・・・」

「・・・ノエルさん」

 そこまで黙って話を聞いていた蒼太が発言した。

「今まで襲われた貴族と金持ち連中の間で、そう言った男女の関係や親子関係が囁かれていた人って、いますか?」

「そう来るだろうと思ってぇ~っ、実はちゃ~んと調べておきましたぁ~っ(*´▽`*)(*´▽`*)(*´▽`*)」

 “結果はドンピシャだったわ!!?”とノエルがやや興奮気味に伝えて来たのだが、それによると。

「今回襲われた貴族と金持ちの人達は、皆内縁の夫婦関係が噂されていたり、はたまた血縁者の可能性がある人達ばかりだったの~っ(*'▽'*)(*'▽'*)(*'▽'*)」

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・」

「勿論、証拠があってのモノばかりじゃ無いし~。それに親子関係に付いても、ちゃんとしたDNA検査みたいなのを受けた痕跡があるわけじゃ無いから、追い切れなかったモノもあるけどね~?でも顔の容姿とか背格好がそっくりで、尚且つ血液型も一致する人の割合がズバ抜けて多かったのよぉ~っ(*^▽^*)(*^▽^*)(*^▽^*)」

「・・・・・っ。どう言う事だよ、一体!!?」

「敵はこっちのスキャンダルやゴシップにも詳しい人間なのか・・・?」

 “何だか良く解らないけれど”と蒼太が改めて口を開いた、“敵の情報収集能力は、侮れないレベルにある事だけは間違い無いな!!!”とそう述べて。

「しかしな?蒼太よ。いくらなんでも噂話程度で殺されちゃ、シャレにならんぜ?」

「・・・それだけ相手は念には念を入れた、と言う事なんだろう。帝室に敬意を抱く存在を抹殺し尽くす為に、な。少しでも可能性がある人間は潰す、そう言う事だろうよ」

 “ノエルさん”と親友にそこまで応じた蒼太は尚もこのゆるフワピンクな年上フレンドに対しても話を続けた、“もう一つだけ、調べてもらいたい事があるんです”とそう告げて。

「別に構わないけれど~っ( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)今度は何を調べれば良いの~っ(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)」

「・・・奴等の“金の流れ”です、金の事は金に聞くのが一番ですから。特に今回、被害にあった金持ち連中の経営している会社の株式の買い付け状況等を見て下さい。時価総額とかで、大幅に儲けている人間がいたなら教えて欲しいのですけれども」

「おお~っ!!?さっすがソー君、やり手だねぇ~っ∑(OωO; )∑(OωO; )∑(OωO; )解ったわぁ~っ。でもちょっと待っててね?ユーロの市場にアクセスしなくちゃいけないから、時間が掛かるのぉ~っ(;¬_¬)(;¬_¬)(;¬_¬)」

 そう告げるとノエルは電話口の向こうでカタカタと、パソコン上で何某かの操作をし始めるがその間、蒼太とアンリは雑談に耽っていた。

「忠臣ばかりを狙った犯行か・・・。なあ蒼太よ、この事件はやはり“カロリング家の復讐”なんじゃないかと俺は睨んでいるんだがな?ノエルさんのタレコミも、今となっては無視出来ないし・・・」

「正直に言ってその線は捨てきれないな。ただ疑問も残るが何故、奴らは滅ぼされてから1,500年近くも経った今になって活動を再開したんだろうか。その気になれば今までだって、もっと有利なチャンスの場面は幾らでもあった筈なんだぜ?それをなんで今更・・・」

「・・・・・」

 “だがまあ”と蒼太は続けた、“奴らの目的がなんであれ、これ以上の被害や犠牲は何としてでも防がないとまずいぞ?”とそう言って。

「正直に言って・・・。一連の暗殺事件が始まってから忠臣派の貴族達の内、三分の一近くが被害にあってる。当然、金持ち連中も然り、だ。このまま奴等の暗躍を許せばこのガリア帝国の屋台骨は大きく揺らぐ・・・!!!」

「ああ。忠臣達がいなくなれば必然的に、後はこの国の事など目もくれずに、ただひたすら自分の保身と栄達だけを考えて権力闘争に明け暮れる屑共だけしか残らなくなるからな。そうなればこの帝国の未来と評価は地に落ちるぜ?」

 “それもカロリング家の奴等の狙いなんだろうな”等と二人が話し合っていた、その時だった。

「解ったわぁ~っ。ソー君!!!」

 スマートフォンの向こう側でノエルが叫んだ。

「大変よ?ソー君。凄い事が解ったの!!!」

「・・・凄い事って?」

「“ロレーヌ公”って人物、知っているわよね?」

「ロレーヌ公・・・?」

「ああ、それなら!!!」

 “俺が知っているよ!!!”とアンリが再びしゃしゃり出て来るモノの彼はこう言った、貴族関連や陰謀系の話には滅法強くてある意味“頼りになる男”だったのである。

「・・・何者だ?そのロレーヌ公って言うのは」

「今年で御年68歳になる爺さんさ、子供はいないから断絶する事が決まっている家柄だがね?なんでも正妻が一人いたらしいんだが跡継ぎは生まれなかったそうなんだ・・・」

「・・・それで?」

「皇帝陛下が憐れに思って皇孫すめみまの方々の教育係に抜擢しようとした事があったらしいけど、親父達が止めたらしいんだ。“正体不明の家系の者をそんな要職に就けるべきではない”って言ってな?」

「・・・正体不明の家系って言うのは?」

「ああ、実はな?ロレーヌ公の家系は、その出自がハッキリしていないんだ。なんでも“覇王シャルルマーニュ陛下の親衛隊に直卒として従軍し、爵位を授けられた”とかなんとか。要するに一般人の出らしいんだよね、元々は・・・」

「・・・そんな胡散臭い人物を、何故皇帝陛下は皇孫すめみまの方々の教育係等に抜擢しようとなされたのさ?」

「それがロレーヌ公爵は若い頃は槍の名手だったらしくてな?意気溌剌としていて非常に強かったらしいんだが、以前開かれた宮廷の武術大会でくだんのガリウス殿下に敗北してから引退してしまわれたらしい。本人同士の実力差も然る事ながら、やはり槍と大剣では相性が悪かったのかもな・・・」

「・・・そのロレーヌ公爵が、どうかしたんですか?」

 アンリへの質問事項が一区切り着いて後、今度は蒼太は再びノエルに声を掛けた。

「彼は被害にあった主要企業の株を買えるだけ買い漁っているのよ?それも毎回ね。ううん、それだけじゃ無いわ?彼はその株を最終的には合衆国ステイツのモルガン・スタンレー等のメガバンクに次々と売り払っているの。それもかなりの高値でね」

「・・・自分で保有する事はしないのですか?」

「全っ然。全くと言って良いほど株には目もくれていないわ?ただ金は相当に貯め込んでいるみたいね、何に使うんだか知らないけれど~っ( ̄。 ̄;)( ̄。 ̄;)( ̄。 ̄;)」

「・・・・・」

「・・・何だかきな臭いな?蒼太」

「ああ。ロレーヌ公の事はマークした方が良さそうだな、一応本部に伝えておくか・・・」

 そう言って頷き合うと、蒼太達は一度ノエル相手の通話を切って新たに今得た情報を、上層部に報告した。
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