メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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夫婦の絆と子供への思い

神と人と

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 健御雷神たけみかづちのかみから“神人化”の奥義極意を授けられた時。

 蒼太はそのままかなりの数の神威を自らの手で創造していった、確かに基本は健御雷神たけみかづちのかみから教えてもらったのだが、残りの大多数の“それら”は蒼太のオリジナルである、と言って良かった、そんな中でも。

 “神風迅雷”は全てを吹き飛ばす超神力の、まさに一点突破型の砲撃神威でありこれは最強の武神とされた健御雷神たけみかづちのかみも、また最高の剣神である経津主神ふつぬしのかみも修得はおろか、考えつく事も出来得なかった、超圧縮された怒り狂う波動エネルギーの怒濤の奔流であったのだ。

「蒼太、蒼太よ・・・」

「う、うん・・・?」

 ニビルに対する“星砕き”から3ヶ月あまりが経った、ある晩の事である、その日もメリアリアと仲睦まじく同じベッドで眠りに就いていた蒼太の夢枕に三度健御雷神たけみかづちのかみが立ったのであるモノの、前回までと違う点は今度は隣に経津主神ふつぬしのかみを連れて来ていた事と、夢で彼が立っていた場所が星空の美しい、何処ぞの夜の世界であった点だった。

「何度もすまんな、蒼太よ。実はお主の扱う“神威”に付いて、ちょっと相談したい事があるのじゃが・・・」

「・・・・・。なんでしょう、神々様方」

「うむ、実はの。あの“神風迅雷”と言う技、儂らに教えてくれぬか?」

 “どうぞなんでもおっしゃって下さい”、“僕に出来る事ならば何でもさせていただきますから・・・”と2柱の神々を敬愛していた蒼太は夢の中で頭を垂れたところ、帰って来た言葉がそれであった。

「今回の“オオボシカガセオ”の一件、本当に勉強になったよ。そこでな、お主の考え出した神威を“儂らの世界に取り込もう”と言う話になったんじゃ・・・」

「今度の事で、よく解ったわいの。儂らもウカウカとはしておられん、と言う事がじゃ。己自身にもっともっと修業を科して強く立派にあらねばの。その為に力を貸して欲しいのじゃ・・・」

 そう言って奥義の伝授を願う神々に対して蒼太は“大変名誉な事で御座います”、“精一杯務めさせていただきます!!!”と言って2柱の神々に“神風迅雷”と、その超絶パワーアップ版である“龍神天翔”を伝授した。

 その直後に。

 神々はそれぞれに、己のモノとした“神風迅雷”をおもむろに虚空に向かって撃ち放ってみせたがその威力はあまりにも強大かつ凄絶であり過ぎた、なにしろ“神風迅雷”の産みの親たる蒼太が堪え切れない程のエネルギー輻射と力の反動とが一挙に襲い掛かって来て、彼は2度ともその場から遙かな彼方にまで吹き飛ばされてしまったのである。

「・・・・・っ。ふぅ~む、どうじゃな蒼太。儂らの技の出来栄えは?」

「これでもかなり威力や範囲を絞ったんじゃ。忌憚きたん無く意見を言えばええ!!!」

「・・・・・っ、くううぅぅぅっ。はあはあ、はあはあっ!!!み、見事です。健御雷神様、経津主神様」

 神々の御許まで、“瞬間移動術式”たる“縮地”で戻ると荒く息を付きつつも蒼太は応えるモノの、その際。

 星空に目をやると、宇宙空間に於いて大規模な爆発が起きていた、どうやら2柱の神々が撃ち放った“神風迅雷”は一発ずつ、何か別々の天体に命中したらしい。

「か、神様。ひょっとして“星砕き”をなさったのですか・・・?」

「うん?まあ、な。ちょっと威力の程を試してみたかったし、それに・・・」

「“オオボシカガセオ”の、即ち惑星ニビルの眷族が残っていたからの。ソイツらがここに来ようとしていたんじゃな・・・!!!」

「・・・・・っっっ!!!!!」

 “ニビルの意思を継ぐ者がいたって事ですか!!?”と蒼太が叫ぶと神々は黙って頷いて答えた。

「“オオボシカガセオ”め、自分に何かあった場合の報復措置としてこの地球に対して本来の自分の三分の二程度の大きさを誇る、闇の呪力をふんだんに含んでいる極めて硬い組成の小惑星を二つ程用意しておったんじゃな。それを超高速でこの惑星にぶつける算段だったんじゃ・・・」

「儂らも良く使う能力の一種なんじゃが・・・。“御霊分け”と言うのがあるんじゃ、即ち己の分身を作り出す事じゃな。それを“オオボシカガセオ”めもやっておったのじゃよ・・・」

「・・・・・っ!!!」

 “じ、じゃあ・・・”と蒼太は驚愕すると同時に気圧されながら神々に問い質した、“神様はそれを察知したから僕の所へ来られたのですか?”と。

 すると。

「まあ、それもあるがな?それよりなにより儂らの今回の目的はあくまでお主に神威を教わる事だったのでな・・・」

「言うたじゃろうが、“儂らもより強く立派にあらねばならない”と。その為にお主の元を訪ねたんじゃよ・・・」

 健御雷神と経津主神は揃って淡々とそう答えるが、ではもし蒼太が神威の伝授を断ったならどうするつもりだったのであろうか。

「お主が断るとは、最初から思って無かったわいの・・・」

 するとそんな彼の心中を察したかのように、2柱の神々は答えた。

「お主は中々に義理堅いヤツじゃからのう、親交のある存在の言葉はどんなモノであれ重きを為すもんじゃ。だから別段、心配はしていなかった・・・」

「・・・は、はあ。光栄です、神様」

「まあもし断られたならお主に事の真実を告げて、代わりにまた“星砕き”をやってもらおうと思っておった。妻君達の命運も掛かっておるこの状況下ならば、お主なら間違っても“嫌”とは言わなかったじゃろうからの・・・」

「・・・・・」

 そう言われて蒼太はしかし、中々に複雑な気持ちになった、惑星ニビルに対する“星砕き”が成功したのはあれは、確かに蒼太の目利きと機転によるモノではあったがそれよりなにより天照大神の絶対神力と、健御雷神と経津主神の助力と守護、そして愛しき妻達の協力があってこそ成し得たモノだ、と言えたのである。

 だがしかし。

(全く、一体何という底無しのパワーなんだ。神々の力は強過ぎる!!!)

 蒼太が思うが今回、健御雷神と経津主神は自分達のみであの時の蒼太の神威を圧倒的なまでに上回る程の力を発揮している、まさに“次元が違う”とはこの事であろうか。

(いいや、構うもんか。それでこそ目標にする甲斐があると言うモノだ、僕もいつかは必ず“神上がり”を果たしてみせる!!!)

 改めて内心でそう決意した蒼太は神々に向かって聞いてみた。

「あの、神様・・・」

「うん・・・?」

「僕は果たして、“救われた存在”なのでしょうか・・・?」

「・・・・・」

「僕は今は確かに、順風満帆に行っています。だけどここまで来るのは本当に大変だったし、命懸けの連続でした。だけど僕は・・・」

「・・・そうか」

 彼からそこまでの話を聞いた瞬間、2柱の神々は全てを理解していた、蒼太は自らの“弱さ”と“弱い部分”とを知っている、その事に付いてキチンと解っていると感じ取ったのだ。

「神様、僕はね?本当はとても弱い人間なんです。昔から大切な事はみんなメリー達に教えてもらって来たし、それに危ない時はあの子達に守ってもらい、助けられて来ました。そう言った失敗をする度にそれでも“負けるもんか”って思って来ました。“泣いてる場合じゃないんだ”って、“立ち上がって走るんだ”って。自分で自分の尻を叩いて、人生を突っ走って来ました。だけど・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「僕は本当は妻達の前では、間違っても格好なんか付けられない人間なんです、そんな資格は無い人間なんです。だけどそんな事でいじけてはいけないし、それになによりそんな事をすれば却ってメリー達を怒らせて悲しませる事になるのは解っていましたから。だから精一杯に格好付けて威勢良くやって来ました。・・・いつの日にか自分で自分の失敗が許せるようになる日が来るって、心が救われる日が来るって、そう信じて・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「そんな僕の目標であり憧れだったのが神々でした。自分と言う人間を救ってやるのに父や母や、仮に伝説上の人物であっても同じ人間を目指していてはいつまで経ってもダメなんです。目指すべきは神々なんです、・・・例え永遠に手が届かない存在なのだとしても!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「神々は、あなた方は立派だった、偉大だった、素晴らしかった。だって混沌と暴力と悲哀の渦巻くこの現世うつしよに“日本”と言う“確かなる光”を残していってくれたんだもの、愛の真理を刻み付けていかれたんだもの!!!日本を創ったあなた方“八百万の神々”のように、立派に生きて立派に死ぬ。それが僕の夢だったんです」

「・・・ぷっ」

「・・・くっ」

 “わはははははっ!!!”とそれを聞いた2柱の神々は思わず笑い出してしまっていた、それを蒼太は思わず目をパチクリさせて見守っていた。

「ええっ。あの、神様・・・?」

「わはははははっ!!!いや、すまなんだな蒼太よ・・・」

「いやぁ~、久し振りに呵々大笑させてもろうたわい。しかし実に嬉しい事を言ってくれるのぅ・・・」

 “蒼太よ・・・”と一頻り笑った鹿島の神と香取の神は今度は打って変わって優しい笑みを浮かべて蒼太に言った。

「“笑え”と、いつも言っておるじゃろ?笑っておれば良いんじゃお主は!!!」

「近年珍しい位に熱い事を言う男子おのこじゃのう。流石は“大和民族”じゃ!!!」

「・・・“大和民族”?」

 その言葉を聞いた途端に蒼太がピクリと反応した。

「僕の事を、“大和民族”として認めていただけるのですか・・・!!?」

「是非もない!!!」

 それに対してまずは鹿島の神が口を開いて答えた。

「お主は紛れもなく、大和民族じゃよ。ただしそれは日本に生まれたから、では無いんじゃ・・・」

「例え日本人の血を引いていなくとも常に我等と共にあり、我等の志を受け継ぐ者は。そしてなにより“真理の道”を歩む者は皆、等しく“大和民族”としての資格を有しておるんじゃ」

 香取の神が続けるモノの、その言葉は一つ一つが蒼太の胸の中に染み込んで行く。

 日本に生まれたから、純粋な日本人だから、では無くて神々の志を受け継ぐ者、神々と共にある者こそが“真なる大和民族”なのだ、と。

「それにしても蒼太よ、お主は出会った頃からちっとも変わっとらんのう。本当に大した生真面目さと言うか石頭じゃ、のう?香取の神よ・・・」

「全くじゃ、お主今からそんなんではその内禿げるぞ?鹿島の神がいつも言われているであろうが、“笑え”と・・・!!!」

「・・・・・っ!!!」

「笑え、蒼太よ。お主はもっと心を軽くしていつでも明るく笑っておれ・・・」

「それとな?蒼太よ。“神風迅雷”と“龍神天翔”についてなんじゃが、この二つの神威は儂らが預かる・・・」

「・・・・・?」

「この二つの神威の力は、お主ら人間には過ぎたモノよ。これは天界で厳重に管理する故、お主達も勝手に使うでないぞ?」

「正直に言うとな?蒼太よ。この二つの神威の力は“神人化”していても危険なのじゃ、なにしろ強力過ぎる術式の反動で術者の体がボロボロになってしまうからの・・・」

「・・・・・」

 “全ては神の仰せのままに・・・”と頭を垂れる蒼太を見て、漸く安心したのか神々はその場から天界へと帰って行ったが、それから3日程経った、ある日の晩に。

 カッシーニの邸宅でメリアリア達と夕餉を採っていた蒼太の耳元に、ある報告がもたらされた、それによると秒速65000キロの超高速で地球へと向けて接近しつつあった、火星の三分の二程の大きさのある二つの小惑星が、突如として大爆発を起こし破片も残さずに消滅してしまった、と言う。

「・・・・・」

(神々の“星砕き”がなったのだな・・・!!!)

 その事に得心が行った蒼太は胸の内で神々に感謝すると、“せっかく平穏無事に済んだのだからこの世界を満喫しなければ”、“今夜もメリーを目一杯抱き潰さなくちゃな・・・!!!”と愛妻への情熱を密かに滾らせていた。
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