転生した貴族令嬢は、辺境の森で魔女となる

椎名さえら

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4 This is not YOUR game

「夜会には1人で」

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大衆紙でミセス・ロビンによる次の連載が始まってしばらくした頃、晩餐の時間に父が唐突に次の日曜日に王宮で行われる王太子の婚約者を探す目的の夜会に私を連れていくと言い出した。

「お前もそろそろ社交界に顔を出す頃合いだ」

と彼は言い、母も隣で頷いている。

「気が乗りません」

私ははっきり答えたが、彼らは困ったように2人で顔を見合わせると、堰を切ったかのように声高に私を説得しにかかる。

「王宮でのパーティだから、名だたる貴族たちは全員来るんだぞ。そこでお前が参加しないと噂になるだろうが」

「とりあえず顔だけ出して、しばらく笑顔でそこに立っていてくれたら良いの」

「お前がいつまでも家で伏せってると思われると兄弟姉妹のためにならん」





(ーーーーいい加減にして!!)

私は膝の上に置いた両手をぎゅっと強く握りしめ、両親の説教という名の苦行に耐えた。しかし父が放った心ない一言で私の堪忍袋の尾が切れた。

「お前のことがお気に入りのテオドールにエスコートさせたらどうだ」

自分でも理解不能のどす黒い怒りが腹の奥から湧き上がってきて、私は父を睨んだ。

「ーーーテオドールを巻き込まないでください」

(貴方達に何が分かっているというの…!!)

幼少期はともかく、アウグストの婚約者と決まり厳しい花嫁修行が始まってから、未来の公爵夫人はかくあるべし、を叩き込まれていた私はもちろん両親に対して反抗心を見せたことは一度もなかった。自分が辺境の森近くの屋敷に追いやられると決まった時も、唯々諾々と私は彼らの主張に従ってしまった。それは。私の心のほとんどはその行為によって死んだ。ほんのひとかけら残った心を救ってくれたのはテオだった。そのテオをこんな時だけ利用しようとする、彼を餌に私に言うことを聞かせようとする両親を心底ーーー軽蔑した。

両親は、初めてと言っていいほど反抗した私のことを唖然と見ている。

「ち、父親に対してそんな言葉を使っていいとーーーー」

「夜会には私1人で出ます。それでいいでしょう?ーーー食欲がなくなりましたので、失礼します」

本当は膝の上に乗っていたナプキンを机に叩きつけたいくらい怒り狂っていたが、なんとか自制心をかきあつめて静かにダイニングルームを出た。自分の部屋に戻るとやっと少しだけ冷静になった。辺境の森近くの屋敷からついてきてくれているメイド長がダイニングルームから私を追いかけてきて、もちろん何も言わなかったが労るような視線を投げかけてくれたのだけが心の支えだった。

怒りがやっと鎮まって、夜半過ぎにベッドに入った時、思い出した。

3作目の話で、イケメン公爵嫡男がヒロインに一目惚れをしたのは、そういえば王宮での舞踏会だったな、と。









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