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「エスコートは」
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「お前が変わってしまったってクラウスが大袈裟に騒いでいたけど」
王宮での夜会が開かれる前日、今ではすっかり週1の恒例になったラムスドルフ家でのお茶会でテオが笑った。貴族の慣例に沿って同じ部屋にいるお目付役の辺境の森外れの屋敷でメイド長だったメイドともテオは顔馴染みなので私にとっては誰にも気を遣わなくて発言ができる気楽な空間である。
「お兄様、なんだって?」
兄はもともとあけっぴろげな性格で幼馴染のテオと仲が良いので、なんでも話していると思った方がいい。どうせ褒められているわけではないのは分かっている私の顔は憮然とする。
「私の可愛いユリアーナが6年の間にすっかり逞しくなって、って嘆いてた」
「仕方ないでしょう」
「だから俺が言っただろう、お前は強いから大丈夫だって」
「テオが言ったのってそういう意味と違ったよね」
今やテオは爆笑している。何を言われようともテオの笑顔が好きな私は彼が笑ってくれるのが密かに嬉しい。
「ーーーそれで、明日の夜会に行くんだって?遂にラムスドルフ家の次女が社交界に復帰する日が来たな」
私からは言うつもりはなかったのだが、テオは既に兄に聞いていて私が夜会に行く話を知っていた。とはいえ王宮の王太子関連の夜会であるので王都にいるほとんどの貴族は顔を出すに違いないだろうが。私は頭を抱えた。
「本当は行きたくないのよ、行きたくないんだけどーーどうしてもって事になって」
軽い諍いになった翌朝、私が朝食のために嫌々階下に降りていくと、両親はまるで何事もなかったかのように普段通りに私に接した。母はしれっと今日はドレスを見繕いにいくわよ、6年の間に流行りがすっかり変わってますからね、本当は作りたいんですけれど時間がないので仕方ないけれどもね、と言い、父は苦虫を噛みつぶしたような顔で黙って頷き、私は密かにため息をついた。話はそれで終わったーー残念だけれども両親と分かり合える日は来ないのかもしれない。とにかくそれからお互いに様子を見ながら話す始末で、一定の距離を保ったままだ。至極、貴族らしいと思う。
「エスコートはどうするんだ?クラウスに頼むのか?」
さりげなくテオに聞かれて、私は言葉につまった。
「お兄様は奥様がいらっしゃるしこんな時だけ頼むのは気が引けるから…。だから私はエスコートなしで行こうかと…療養明けということになっているしそこまで注目されないかと思ってる」
「ユーリャのことだから、そう言うと思ったよ」
テオがはっきりと、じゃあ俺がエスコートするからな、と決まったことのように言うので、困った。あれだけ両親に、テオを巻き込まないでください!と強気で言ったのに結局頼むなんてこと、恥ずかしくて出来ない…
「テオ…それが…」
私はテオのことをよく知っている。彼は理由をちゃんと説明しないと、納得せず引き下がらないのだ。なので簡単に、私が感じた怒りのことはなるべく感じさせないように、事実だけを淡々と話した。行きたくないといった夜会に両親に無理に連れて行かれること、以前私がアウグストの婚約者だった時にはただの訪問ですらしばしば断っていたテオに連れて行って貰えばいいと軽く言われてつい反発したことを。だから今更我が家からテオに頼みづらいということを。
聞いているうちにテオの眉間の皴がどんどん深くなっていった。
「ーーユーリャ、ご両親に分かってもらえなくて辛かったな」
(あ…テオだ…)
私は胸の内がぽっと明るくなったのを感じた。
彼は必ずいつも、まずは私が受けた傷に真っすぐに寄り添おうとしてくれる。
「だけど、尚更俺がエスコートする」
テオが迷いのない瞳で決然と告げた。
「ご両親と行くとお前が家を出た瞬間から落ち込むのが見えてるからな、俺を選んだ方がお前のためだぞ?」
「ーーーテオ」
「お前からはどうせご両親に言えないんだろう?だから帰り際に俺から伝えておくことにするから、何も心配するな」
テオがあまりにも優しい笑顔をしているので、全ての憂いを忘れて私もだんだん笑顔になっていったのだった。
王宮での夜会が開かれる前日、今ではすっかり週1の恒例になったラムスドルフ家でのお茶会でテオが笑った。貴族の慣例に沿って同じ部屋にいるお目付役の辺境の森外れの屋敷でメイド長だったメイドともテオは顔馴染みなので私にとっては誰にも気を遣わなくて発言ができる気楽な空間である。
「お兄様、なんだって?」
兄はもともとあけっぴろげな性格で幼馴染のテオと仲が良いので、なんでも話していると思った方がいい。どうせ褒められているわけではないのは分かっている私の顔は憮然とする。
「私の可愛いユリアーナが6年の間にすっかり逞しくなって、って嘆いてた」
「仕方ないでしょう」
「だから俺が言っただろう、お前は強いから大丈夫だって」
「テオが言ったのってそういう意味と違ったよね」
今やテオは爆笑している。何を言われようともテオの笑顔が好きな私は彼が笑ってくれるのが密かに嬉しい。
「ーーーそれで、明日の夜会に行くんだって?遂にラムスドルフ家の次女が社交界に復帰する日が来たな」
私からは言うつもりはなかったのだが、テオは既に兄に聞いていて私が夜会に行く話を知っていた。とはいえ王宮の王太子関連の夜会であるので王都にいるほとんどの貴族は顔を出すに違いないだろうが。私は頭を抱えた。
「本当は行きたくないのよ、行きたくないんだけどーーどうしてもって事になって」
軽い諍いになった翌朝、私が朝食のために嫌々階下に降りていくと、両親はまるで何事もなかったかのように普段通りに私に接した。母はしれっと今日はドレスを見繕いにいくわよ、6年の間に流行りがすっかり変わってますからね、本当は作りたいんですけれど時間がないので仕方ないけれどもね、と言い、父は苦虫を噛みつぶしたような顔で黙って頷き、私は密かにため息をついた。話はそれで終わったーー残念だけれども両親と分かり合える日は来ないのかもしれない。とにかくそれからお互いに様子を見ながら話す始末で、一定の距離を保ったままだ。至極、貴族らしいと思う。
「エスコートはどうするんだ?クラウスに頼むのか?」
さりげなくテオに聞かれて、私は言葉につまった。
「お兄様は奥様がいらっしゃるしこんな時だけ頼むのは気が引けるから…。だから私はエスコートなしで行こうかと…療養明けということになっているしそこまで注目されないかと思ってる」
「ユーリャのことだから、そう言うと思ったよ」
テオがはっきりと、じゃあ俺がエスコートするからな、と決まったことのように言うので、困った。あれだけ両親に、テオを巻き込まないでください!と強気で言ったのに結局頼むなんてこと、恥ずかしくて出来ない…
「テオ…それが…」
私はテオのことをよく知っている。彼は理由をちゃんと説明しないと、納得せず引き下がらないのだ。なので簡単に、私が感じた怒りのことはなるべく感じさせないように、事実だけを淡々と話した。行きたくないといった夜会に両親に無理に連れて行かれること、以前私がアウグストの婚約者だった時にはただの訪問ですらしばしば断っていたテオに連れて行って貰えばいいと軽く言われてつい反発したことを。だから今更我が家からテオに頼みづらいということを。
聞いているうちにテオの眉間の皴がどんどん深くなっていった。
「ーーユーリャ、ご両親に分かってもらえなくて辛かったな」
(あ…テオだ…)
私は胸の内がぽっと明るくなったのを感じた。
彼は必ずいつも、まずは私が受けた傷に真っすぐに寄り添おうとしてくれる。
「だけど、尚更俺がエスコートする」
テオが迷いのない瞳で決然と告げた。
「ご両親と行くとお前が家を出た瞬間から落ち込むのが見えてるからな、俺を選んだ方がお前のためだぞ?」
「ーーーテオ」
「お前からはどうせご両親に言えないんだろう?だから帰り際に俺から伝えておくことにするから、何も心配するな」
テオがあまりにも優しい笑顔をしているので、全ての憂いを忘れて私もだんだん笑顔になっていったのだった。
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