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9 焦り- Side 雄大
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同期の男2人ー山口と辻元ーにはすっかり雄大の気持ちは悟られていて、彼らはずっと応援してくれている。男らしい見た目とは裏腹になかなか行動にうつせない雄大におそらく内心呆れているのだろうとは思うのだが、生温く見守ってくれているのがありがたい。
何しろ雄大にとっては、正真正銘の初恋で、優実を逃してしまうともう他に手に入れたい女が今後現れるとは思えず、どうしても慎重になってしまうのは許してほしい。
ある日山口に、亜紀が拝み倒して優実を合コンに連れて行くらしいという話をされ、自分も誘われたが金曜の夜は彼女とデートに行くから断った、と言われた。
『悪いけど、田中に男が寄ってきても、俺はどうしてもやれないぜ』
と彼が言うので、内心とても焦った。
山口が誘われたなら自分も誘われるかもしれない、むしろ誘われるにはどうしたらいいか、とヤキモキしていたら、ほどなくして亜紀からその合コンに誘われたので、すぐに承諾する。どう考えても亜紀にも優実への気持ちがバレていると思うが、彼女も山口と辻元と同じく、うだつのあがらない自分を優しく見守ってくれているような気がする。
昨日はそれなりに仕事が残っていたので、合コンに駆けつけた時は既に会は始まっていた。亜紀に席を空けておくとは言われていたので、優実の隣に滑り込む。そして彼女の顔を見て、文字通り息がとまった。
美人だということは一目見た時から分かっている。しかし、髪形を変え、化粧をして、可愛らしい服を着たらこんなに変わるものかと、永遠に目を離すことが出来ないかと思ったくらいだ。そしてフラれることを恐れて今まで行動を起こさなかった過去の自分を殴りつけたくなった。
(なんで今日に限ってこんな格好を…!すぐに誰かに盗られてしまうじゃないか…!!)
優実は輝いていた。
そして今までの彼女を知っている身としては、抑制されていた何かが今日は少し薄れかけているのにも気づいた。優実は外見はもちろんだが、内面がとにかく綺麗なのだ。その内側からも光る本物の輝きは誰の目にも眩く映り、出来るならば自分のものにしたいと思うに違いない、そう、雄大のように。
いつものように自分に群がってくる女たちに、最低限の礼儀をもって答える。答えながらも、意識は既に優実へどうやってアプローチするかそればかりに向けられていた。隣に座っている優実のことは、なるべく見ないようにしていた。もう一度真正面から見てしまったら最後、視界から外す自信がなかったからだ。
途中で優実が席を立ったので、もしやと亜紀を見やると、頷かれた。
『優実、帰ったよ。井上もでしょ?』
ああ、やっぱり俺の気持ちはこいつにはバレてるなと思った。そそくさと帰り支度を始めると、何人かに連絡先を交換してほしいと請われて全てそっけなく断ると、すぐさま部屋を飛び出した。すぐに優実に追いつけたらいいなと思いながら。
予想に反して、優実はまだ店内にいた。
それも知らない男と共に。
一目見て2人の距離感から、昔付き合っていた男かな、と思った。今まで感じたことのない薄暗い気持ちが体の中を即座に駆け巡るのがわかった。それは男が当たり前のようにうずくまった優実の頭に手を置いたときに最高潮に達した。2人を引き離したくて、我慢できずに声をかけ、優実を外に連れ出した。
優実の頬には泣いた跡が残り、あの男のために泣いたのかと思うと、胸が苦しくなった。さりげなく帰りの挨拶を告げられたが、家まで送っていくと言い張った。強引だという自覚はあったので、ひかれたらどうしようかと思ったが、優実はすんなりと受け入れてくれた。会話の端で、明日買い物に行こうかな、というので、これ以上綺麗になるのだったら、自分も関わりたい、ずっと見ていたい、そんな気持ちが抑えきれず気づけば一緒に行こうと誘っていた。
承諾してもらえたのが夢のようだ。
すぐに近所に住む翔多に電話をして、車を借りる算段を取り付けた。
彼女とデートに行けないじゃんかと嫌味を言われたが、今までどれだけ迷惑かけてきた、と一言いうと、弟は黙った。しかし、弟に嫌味を言われながらも車を借りた甲斐は十分にあった。優実の私服姿はシンプルなものを着ていてもとてつもなく可愛かった。偶然ペアルックのようだったのもすごく嬉しかった。2人きりでのドライブは居心地がよかったし、モールで彼女の買い物に付き合うのは信じられないくらい楽しかった。通りすがる男たちが優実を見る目は気に入らなかったが、自分が隣にいることに満足した。要は優実といれば何をしても自分は幸せなのだ。
「それか待てるんだったらうちでなんか作ろうか?簡単なのしか作れないけど」
もうすぐ家まで送らなきゃいけない、でもまだまだ離れがたいなと思っていたから、その言葉がとてつもなく嬉しかった。
何しろ雄大にとっては、正真正銘の初恋で、優実を逃してしまうともう他に手に入れたい女が今後現れるとは思えず、どうしても慎重になってしまうのは許してほしい。
ある日山口に、亜紀が拝み倒して優実を合コンに連れて行くらしいという話をされ、自分も誘われたが金曜の夜は彼女とデートに行くから断った、と言われた。
『悪いけど、田中に男が寄ってきても、俺はどうしてもやれないぜ』
と彼が言うので、内心とても焦った。
山口が誘われたなら自分も誘われるかもしれない、むしろ誘われるにはどうしたらいいか、とヤキモキしていたら、ほどなくして亜紀からその合コンに誘われたので、すぐに承諾する。どう考えても亜紀にも優実への気持ちがバレていると思うが、彼女も山口と辻元と同じく、うだつのあがらない自分を優しく見守ってくれているような気がする。
昨日はそれなりに仕事が残っていたので、合コンに駆けつけた時は既に会は始まっていた。亜紀に席を空けておくとは言われていたので、優実の隣に滑り込む。そして彼女の顔を見て、文字通り息がとまった。
美人だということは一目見た時から分かっている。しかし、髪形を変え、化粧をして、可愛らしい服を着たらこんなに変わるものかと、永遠に目を離すことが出来ないかと思ったくらいだ。そしてフラれることを恐れて今まで行動を起こさなかった過去の自分を殴りつけたくなった。
(なんで今日に限ってこんな格好を…!すぐに誰かに盗られてしまうじゃないか…!!)
優実は輝いていた。
そして今までの彼女を知っている身としては、抑制されていた何かが今日は少し薄れかけているのにも気づいた。優実は外見はもちろんだが、内面がとにかく綺麗なのだ。その内側からも光る本物の輝きは誰の目にも眩く映り、出来るならば自分のものにしたいと思うに違いない、そう、雄大のように。
いつものように自分に群がってくる女たちに、最低限の礼儀をもって答える。答えながらも、意識は既に優実へどうやってアプローチするかそればかりに向けられていた。隣に座っている優実のことは、なるべく見ないようにしていた。もう一度真正面から見てしまったら最後、視界から外す自信がなかったからだ。
途中で優実が席を立ったので、もしやと亜紀を見やると、頷かれた。
『優実、帰ったよ。井上もでしょ?』
ああ、やっぱり俺の気持ちはこいつにはバレてるなと思った。そそくさと帰り支度を始めると、何人かに連絡先を交換してほしいと請われて全てそっけなく断ると、すぐさま部屋を飛び出した。すぐに優実に追いつけたらいいなと思いながら。
予想に反して、優実はまだ店内にいた。
それも知らない男と共に。
一目見て2人の距離感から、昔付き合っていた男かな、と思った。今まで感じたことのない薄暗い気持ちが体の中を即座に駆け巡るのがわかった。それは男が当たり前のようにうずくまった優実の頭に手を置いたときに最高潮に達した。2人を引き離したくて、我慢できずに声をかけ、優実を外に連れ出した。
優実の頬には泣いた跡が残り、あの男のために泣いたのかと思うと、胸が苦しくなった。さりげなく帰りの挨拶を告げられたが、家まで送っていくと言い張った。強引だという自覚はあったので、ひかれたらどうしようかと思ったが、優実はすんなりと受け入れてくれた。会話の端で、明日買い物に行こうかな、というので、これ以上綺麗になるのだったら、自分も関わりたい、ずっと見ていたい、そんな気持ちが抑えきれず気づけば一緒に行こうと誘っていた。
承諾してもらえたのが夢のようだ。
すぐに近所に住む翔多に電話をして、車を借りる算段を取り付けた。
彼女とデートに行けないじゃんかと嫌味を言われたが、今までどれだけ迷惑かけてきた、と一言いうと、弟は黙った。しかし、弟に嫌味を言われながらも車を借りた甲斐は十分にあった。優実の私服姿はシンプルなものを着ていてもとてつもなく可愛かった。偶然ペアルックのようだったのもすごく嬉しかった。2人きりでのドライブは居心地がよかったし、モールで彼女の買い物に付き合うのは信じられないくらい楽しかった。通りすがる男たちが優実を見る目は気に入らなかったが、自分が隣にいることに満足した。要は優実といれば何をしても自分は幸せなのだ。
「それか待てるんだったらうちでなんか作ろうか?簡単なのしか作れないけど」
もうすぐ家まで送らなきゃいけない、でもまだまだ離れがたいなと思っていたから、その言葉がとてつもなく嬉しかった。
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