10 / 20
9 焦り- Side 雄大
しおりを挟む
同期の男2人ー山口と辻元ーにはすっかり雄大の気持ちは悟られていて、彼らはずっと応援してくれている。男らしい見た目とは裏腹になかなか行動にうつせない雄大におそらく内心呆れているのだろうとは思うのだが、生温く見守ってくれているのがありがたい。
何しろ雄大にとっては、正真正銘の初恋で、優実を逃してしまうともう他に手に入れたい女が今後現れるとは思えず、どうしても慎重になってしまうのは許してほしい。
ある日山口に、亜紀が拝み倒して優実を合コンに連れて行くらしいという話をされ、自分も誘われたが金曜の夜は彼女とデートに行くから断った、と言われた。
『悪いけど、田中に男が寄ってきても、俺はどうしてもやれないぜ』
と彼が言うので、内心とても焦った。
山口が誘われたなら自分も誘われるかもしれない、むしろ誘われるにはどうしたらいいか、とヤキモキしていたら、ほどなくして亜紀からその合コンに誘われたので、すぐに承諾する。どう考えても亜紀にも優実への気持ちがバレていると思うが、彼女も山口と辻元と同じく、うだつのあがらない自分を優しく見守ってくれているような気がする。
昨日はそれなりに仕事が残っていたので、合コンに駆けつけた時は既に会は始まっていた。亜紀に席を空けておくとは言われていたので、優実の隣に滑り込む。そして彼女の顔を見て、文字通り息がとまった。
美人だということは一目見た時から分かっている。しかし、髪形を変え、化粧をして、可愛らしい服を着たらこんなに変わるものかと、永遠に目を離すことが出来ないかと思ったくらいだ。そしてフラれることを恐れて今まで行動を起こさなかった過去の自分を殴りつけたくなった。
(なんで今日に限ってこんな格好を…!すぐに誰かに盗られてしまうじゃないか…!!)
優実は輝いていた。
そして今までの彼女を知っている身としては、抑制されていた何かが今日は少し薄れかけているのにも気づいた。優実は外見はもちろんだが、内面がとにかく綺麗なのだ。その内側からも光る本物の輝きは誰の目にも眩く映り、出来るならば自分のものにしたいと思うに違いない、そう、雄大のように。
いつものように自分に群がってくる女たちに、最低限の礼儀をもって答える。答えながらも、意識は既に優実へどうやってアプローチするかそればかりに向けられていた。隣に座っている優実のことは、なるべく見ないようにしていた。もう一度真正面から見てしまったら最後、視界から外す自信がなかったからだ。
途中で優実が席を立ったので、もしやと亜紀を見やると、頷かれた。
『優実、帰ったよ。井上もでしょ?』
ああ、やっぱり俺の気持ちはこいつにはバレてるなと思った。そそくさと帰り支度を始めると、何人かに連絡先を交換してほしいと請われて全てそっけなく断ると、すぐさま部屋を飛び出した。すぐに優実に追いつけたらいいなと思いながら。
予想に反して、優実はまだ店内にいた。
それも知らない男と共に。
一目見て2人の距離感から、昔付き合っていた男かな、と思った。今まで感じたことのない薄暗い気持ちが体の中を即座に駆け巡るのがわかった。それは男が当たり前のようにうずくまった優実の頭に手を置いたときに最高潮に達した。2人を引き離したくて、我慢できずに声をかけ、優実を外に連れ出した。
優実の頬には泣いた跡が残り、あの男のために泣いたのかと思うと、胸が苦しくなった。さりげなく帰りの挨拶を告げられたが、家まで送っていくと言い張った。強引だという自覚はあったので、ひかれたらどうしようかと思ったが、優実はすんなりと受け入れてくれた。会話の端で、明日買い物に行こうかな、というので、これ以上綺麗になるのだったら、自分も関わりたい、ずっと見ていたい、そんな気持ちが抑えきれず気づけば一緒に行こうと誘っていた。
承諾してもらえたのが夢のようだ。
すぐに近所に住む翔多に電話をして、車を借りる算段を取り付けた。
彼女とデートに行けないじゃんかと嫌味を言われたが、今までどれだけ迷惑かけてきた、と一言いうと、弟は黙った。しかし、弟に嫌味を言われながらも車を借りた甲斐は十分にあった。優実の私服姿はシンプルなものを着ていてもとてつもなく可愛かった。偶然ペアルックのようだったのもすごく嬉しかった。2人きりでのドライブは居心地がよかったし、モールで彼女の買い物に付き合うのは信じられないくらい楽しかった。通りすがる男たちが優実を見る目は気に入らなかったが、自分が隣にいることに満足した。要は優実といれば何をしても自分は幸せなのだ。
「それか待てるんだったらうちでなんか作ろうか?簡単なのしか作れないけど」
もうすぐ家まで送らなきゃいけない、でもまだまだ離れがたいなと思っていたから、その言葉がとてつもなく嬉しかった。
何しろ雄大にとっては、正真正銘の初恋で、優実を逃してしまうともう他に手に入れたい女が今後現れるとは思えず、どうしても慎重になってしまうのは許してほしい。
ある日山口に、亜紀が拝み倒して優実を合コンに連れて行くらしいという話をされ、自分も誘われたが金曜の夜は彼女とデートに行くから断った、と言われた。
『悪いけど、田中に男が寄ってきても、俺はどうしてもやれないぜ』
と彼が言うので、内心とても焦った。
山口が誘われたなら自分も誘われるかもしれない、むしろ誘われるにはどうしたらいいか、とヤキモキしていたら、ほどなくして亜紀からその合コンに誘われたので、すぐに承諾する。どう考えても亜紀にも優実への気持ちがバレていると思うが、彼女も山口と辻元と同じく、うだつのあがらない自分を優しく見守ってくれているような気がする。
昨日はそれなりに仕事が残っていたので、合コンに駆けつけた時は既に会は始まっていた。亜紀に席を空けておくとは言われていたので、優実の隣に滑り込む。そして彼女の顔を見て、文字通り息がとまった。
美人だということは一目見た時から分かっている。しかし、髪形を変え、化粧をして、可愛らしい服を着たらこんなに変わるものかと、永遠に目を離すことが出来ないかと思ったくらいだ。そしてフラれることを恐れて今まで行動を起こさなかった過去の自分を殴りつけたくなった。
(なんで今日に限ってこんな格好を…!すぐに誰かに盗られてしまうじゃないか…!!)
優実は輝いていた。
そして今までの彼女を知っている身としては、抑制されていた何かが今日は少し薄れかけているのにも気づいた。優実は外見はもちろんだが、内面がとにかく綺麗なのだ。その内側からも光る本物の輝きは誰の目にも眩く映り、出来るならば自分のものにしたいと思うに違いない、そう、雄大のように。
いつものように自分に群がってくる女たちに、最低限の礼儀をもって答える。答えながらも、意識は既に優実へどうやってアプローチするかそればかりに向けられていた。隣に座っている優実のことは、なるべく見ないようにしていた。もう一度真正面から見てしまったら最後、視界から外す自信がなかったからだ。
途中で優実が席を立ったので、もしやと亜紀を見やると、頷かれた。
『優実、帰ったよ。井上もでしょ?』
ああ、やっぱり俺の気持ちはこいつにはバレてるなと思った。そそくさと帰り支度を始めると、何人かに連絡先を交換してほしいと請われて全てそっけなく断ると、すぐさま部屋を飛び出した。すぐに優実に追いつけたらいいなと思いながら。
予想に反して、優実はまだ店内にいた。
それも知らない男と共に。
一目見て2人の距離感から、昔付き合っていた男かな、と思った。今まで感じたことのない薄暗い気持ちが体の中を即座に駆け巡るのがわかった。それは男が当たり前のようにうずくまった優実の頭に手を置いたときに最高潮に達した。2人を引き離したくて、我慢できずに声をかけ、優実を外に連れ出した。
優実の頬には泣いた跡が残り、あの男のために泣いたのかと思うと、胸が苦しくなった。さりげなく帰りの挨拶を告げられたが、家まで送っていくと言い張った。強引だという自覚はあったので、ひかれたらどうしようかと思ったが、優実はすんなりと受け入れてくれた。会話の端で、明日買い物に行こうかな、というので、これ以上綺麗になるのだったら、自分も関わりたい、ずっと見ていたい、そんな気持ちが抑えきれず気づけば一緒に行こうと誘っていた。
承諾してもらえたのが夢のようだ。
すぐに近所に住む翔多に電話をして、車を借りる算段を取り付けた。
彼女とデートに行けないじゃんかと嫌味を言われたが、今までどれだけ迷惑かけてきた、と一言いうと、弟は黙った。しかし、弟に嫌味を言われながらも車を借りた甲斐は十分にあった。優実の私服姿はシンプルなものを着ていてもとてつもなく可愛かった。偶然ペアルックのようだったのもすごく嬉しかった。2人きりでのドライブは居心地がよかったし、モールで彼女の買い物に付き合うのは信じられないくらい楽しかった。通りすがる男たちが優実を見る目は気に入らなかったが、自分が隣にいることに満足した。要は優実といれば何をしても自分は幸せなのだ。
「それか待てるんだったらうちでなんか作ろうか?簡単なのしか作れないけど」
もうすぐ家まで送らなきゃいけない、でもまだまだ離れがたいなと思っていたから、その言葉がとてつもなく嬉しかった。
34
あなたにおすすめの小説
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?
江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。
大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて……
さっくり読める短編です。
異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い
森本イチカ
恋愛
妹じゃなくて、女として見て欲しい。
14歳年下の凛子は幼馴染の優にずっと片想いしていた。
やっと社会人になり、社長である優と少しでも近づけたと思っていた矢先、優がお見合いをしている事を知る凛子。
女としてみて欲しくて迫るが拒まれてーー
★短編ですが長編に変更可能です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる