お節介な私が学園を支配する悪役令嬢になるまで〜ただし婚約破棄されるところからスタート

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婚約破棄を喜ぶ

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婚約破棄を周囲にも聞こえるように高らかに宣言された。

どうしてここまで自分が正義であると信じられるのか不思議でならない。

まぁ、今回の場合は周囲の反応を見るに、何故か私よりもラルフが正しいと思っている人がほとんどのようだが…

しかし、婚約破棄とは都合が良い。

正直に言えば私も、ラルフが日頃から正義の名のもとに、くだらないちょっかいをかけてくることに辟易としていたところだ。

家同士が取り決めた婚約ということもあって、女の私からそれをなかった事にするのは不可能であった。

だが男性であるラルフから婚約破棄されるなら話は別だ。

今後の私の婚約者探しには難航するだろうが、こんな勘違いヤロウと婚約破棄できるなら願ってもない機会だ。

「ラルフ様。婚約破棄とはご冗談でしょう。そのような戯言は撤回してください」

そう言って、今度は意図的に蔑んだ態度で高圧的に告げる。

「撤回するものか!お前などとの婚約は破棄だ!」

何故かびびって一歩引いたラルフから、しっかりと言質をとる。

「分かりました。それではラルフ様のお父様にはちゃんと言っておいてくださいね。ラルフ様自身から婚約破棄を申し出たことを。そしてアナスタシアはそれを止めようとしたことを」

両腕を組み堂々と鋭い目つきをラルフに向けて宣言する。

「ふんっ!わざわざ言われなくてもお父様に言っておくわ!お前が婚約破棄しないで欲しいと縋り付いてきたとな!」

どう見ても小物の捨てセリフのような言い方をして、言いたいことを言い終わったラルフはこの場を去る。

ようやく厄介者が消えたことに清正した私は、顔面蒼白になったアイリーンに向き直り気楽に声をかける。

「ごめんなさいね、こんなくだらない茶番に付き合わせることになって」

私が声をかけても口をパクパクと動かすだけでなかなか話出さないアイリーン。

「どうしたの?大丈夫かしら?」

何故か瞳に涙を浮かべ始めたアイリーンがようやく声を出す。

「申し訳ありません!申し訳ありません!申し訳ありません!」

何度も何度も頭を下げて私に謝ってくる。

「私のせいでアナスタシア様の婚約を破棄させる事になるなんて…!」

「良いのよ気にしなくて?むしろ婚約破棄されて喜んでいるぐらいなんだから」

いくら私がそう言ってもアイリーンは一向に謝ることをやめてくれない。

しょうがないので両手でアイリーンの両頬を包み込んで頭を下げるのを強制的にやめさせる。

不安そうな顔をしているこの子を安心させるように優しく笑いかける。

「本当に大丈夫だから。良いから食事を続けましょ?早く食べないと午後の講義に間に合わなくなるでしょ」

そう言ってあげると、アイリーンはようやく謝るのやめてくれた。

両頬から手を離して食事にもどる前に声をかけておく。

「でもありがとうね?私のことを心配してくれて、とても嬉しかったわ」

そうしてアイリーンに笑いかけてから席に座る。

表情も先ほどよりもマシになった彼女も席に座り、再びまだまだ未熟な食事マナーを披露されながら昼食を済ませた。
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