虹色の薔薇が咲く場所は

如月 りん

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2章 セカンドライブ

113話 いかないで

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「高坂くんのお家に電話したらお父様が出てね、1時間くらいしたら迎えに来られるの」
「え、早退ですか?」
「寝不足とストレスで発熱しちゃってね。
まぁ今年受験生だし
焦るのは仕方ないけど。」
「え、でもなんで私に?」
「れ、冷静ね、日比谷さん」 
私の反応に先生はあっけに取られた

「頑なに家には帰りたくない、
自力で寮に帰れます、て言ったんだんだけどはい、いいですよって帰すわけには
いかないのよ。
一応あなたに報告しておこうと思って」
「え、まぁ、そうですけど」
(嫌な予感する。あの父親と一緒にいさせちゃいけない気がする)
「あの、私、さっきから頭痛くて、
早退、したいんですけど」
(蓮を家に帰しちゃいけないって脳が警鐘
を鳴らしている。半分嘘ではない)
「そう?しばらく保健室で休んでいたら
どうかしら」
「あ、えっと」
言い淀んでいるとチャイムが鳴り先生が教室から出てきた。

「そういえば日比谷、今朝から顔色
悪かったよな、早退するなら気をつけて
帰ろよ」 
(先生助け舟ありがとうございます)
と目で伝えたら
(高坂は去年担任になって、三者面談の時不穏な空気を感じたからな)
と返ってきた。
「そう?しばらく保健室で休んでから
帰ったらどう?」 
「ありがとうございます、そうします」
鞄に教科書を入れて普通に教室を出る。

荷物を持って保健室へ行くと先生は
いなかった
(多分職員室だな) 
長椅子に座っていると
「失礼します」
小柄な男子生徒が鞄を持ってきた。
(上履きの色からして先輩だな)
「あの、」
「はい」
先に切り出したのは先輩。

(なんか緊張する)
「荷物、蓮のなんだけど、
ここでいいかな?」
「あ、はい。ありがとうございます」
荷物を置いて保健室を出る先輩に
見られていないが会釈する。

3つあるベットの真ん中がカーテンがされていてゆっくり入る。
すぐ横に椅子があったから腰を下ろす。
(先生、遅いな)
「ん、」
「あ、起きた」
蓮は起きあがろうとしたが目眩がしたのか
顔を歪めて諦めた。
「・・・俺、倒れた?」
「そう聞いてる。早退だって、蓮」
蓮の顔が曇る

「家?」
「多分」
苦しそうな顔が歪む。
どれだけ家に帰りたくないのかと察しが
つく。
汗が顔に張り付いて気持ち悪そうだから
ハンカチを濡らして拭こうと思い席を立つ。
席に戻ると蓮は意識が朦朧としている様子。

濡らしたハンカチを絞り蓮の顔を拭き
拭いた面を内側にして額にのせる。
(遅いな、先生) 
職員室に様子を見に行こうかと思い席を
立とうとしたら
「いかないで」
袖口を掴んで小さな声でそう発した

蓮を見ると顔が赤く目が潤んでいていた。
(なんかかわいいな、
これが母性本能ってものなのかな)
仕方ないな、とは思ったが口には出さず
椅子に座り直すと蓮は目を閉じて、
すぐに寝息が聞こえる。

しばらくして先生が戻ってきた。
「ごめんなさいね、あら、日比谷さん?」
袖をにぎる手をゆっくり離して、カーテン
を開ける。
「日比谷さん、高坂くんのお父様があなたに会いたいって」
「え、」
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