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本編
3. 会話
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買い物を終えて街から帰ってくると家では面白い光景が繰り広げられていた。
男が庭で薪を割っていた。
回復する度に艶が増していく黒髪が風に揺れ、汗が喉を伝っていく姿はなかなかに艶かしいが、大分絵面が滑稽だ。薪割り、下手。
上手く割れずに斧を突き刺してはガンガン叩いている。阿呆か。
「何してるの?」
「……体が鈍る。それに、薪が足りなくなっているようだった」
成る程。そういえばそうだったかもしれない。調薬の鍋くらいにしか使わないからそんなにすぐ減るものでもないし、すっかり確認するのを忘れていた。
「薪割り、したことないんだ」
「……ああ」
本当か。見た目は三十代くらいのいい大人だというのに。筋肉だって元々はそれなりについていただろうしなやかな身体をしているというのに。
けれど恥じることなく肯定するのは好ましい。
「力が入らない」
「そりゃあ、体のど真ん中にまだ穴が開いてるようなものだし」
けど少しは動いた方がいいか。
庭の柵にちょこんと跳んで腰かけると男は怪訝そうにこちらを見てきた。
「その角度じゃ割れないよ。木目に沿って綺麗に落ちれば重さで割れるから、力はいらない」
「……わかった」
男はふっと軽く斧を持ち上げ、重力に任せて振り下ろした。
ぱかっと割れた薪に驚いているのが可笑しくて、笑ってしまった。
「ね?」
それから楽しくなったようだ。
溜め込んでおいた木は大抵斧の餌食になり、日が沈む頃には男はちゃんと腰から体重を乗せて遠心力を使うという技を身につけていた。ちょうどいいこれからは頼むことにしよう。
男がぶっ倒れないか眺めていた私は、そういえばこれが初めての会話らしい会話だったということに気がついた。
男が庭で薪を割っていた。
回復する度に艶が増していく黒髪が風に揺れ、汗が喉を伝っていく姿はなかなかに艶かしいが、大分絵面が滑稽だ。薪割り、下手。
上手く割れずに斧を突き刺してはガンガン叩いている。阿呆か。
「何してるの?」
「……体が鈍る。それに、薪が足りなくなっているようだった」
成る程。そういえばそうだったかもしれない。調薬の鍋くらいにしか使わないからそんなにすぐ減るものでもないし、すっかり確認するのを忘れていた。
「薪割り、したことないんだ」
「……ああ」
本当か。見た目は三十代くらいのいい大人だというのに。筋肉だって元々はそれなりについていただろうしなやかな身体をしているというのに。
けれど恥じることなく肯定するのは好ましい。
「力が入らない」
「そりゃあ、体のど真ん中にまだ穴が開いてるようなものだし」
けど少しは動いた方がいいか。
庭の柵にちょこんと跳んで腰かけると男は怪訝そうにこちらを見てきた。
「その角度じゃ割れないよ。木目に沿って綺麗に落ちれば重さで割れるから、力はいらない」
「……わかった」
男はふっと軽く斧を持ち上げ、重力に任せて振り下ろした。
ぱかっと割れた薪に驚いているのが可笑しくて、笑ってしまった。
「ね?」
それから楽しくなったようだ。
溜め込んでおいた木は大抵斧の餌食になり、日が沈む頃には男はちゃんと腰から体重を乗せて遠心力を使うという技を身につけていた。ちょうどいいこれからは頼むことにしよう。
男がぶっ倒れないか眺めていた私は、そういえばこれが初めての会話らしい会話だったということに気がついた。
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