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二人組が二組
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「でね、一応仲間呼んだんだけど」
「ほんと紗凪優しすぎ。あたしだったら殺しちゃいそう」
「......こらこら、優しく優しく」
「だって何回もでしょ? あたししつこいのはちょ──」
トントン、と教室の扉から音が鳴った。
「何.....? 校長?」
突如鳴り響いたノックの音。
それは、運命を変える歯車が大きく鳴った音だった。
「誰かいる?」
響いた声は何かを隠していると言わんばかりに軽げだ。
「誰?」
「藍咲静月と弦だ。ここに入ってもいいか?」
「その必要があると納得するとでも? 他を当たってくんない? あいにく優しくないから」
何故かもわからず、「入っていい」というような二人ではない。しかしそれ以前に、紗凪にはもう一つの「理由」があった。
「(こいつらは、悠月には……)」
「大分殺気かましてるね、千堂さん? でもさぁ、入るぐらいいいでしょ。ね、佐奈田さん」
「っ!?」
「……そういうあんたは弦って奴ね?」
「あ、覚えてくれたんだー」
「嫌な奴ほど覚えるわよ」
「どうもありがとうございますー。でも君はまだ知らないでしょー?」
「分かってるわよ?」
あんたがこうやって────、ミシリ、バキン、ドアが鳴る。
「押し入ろうとすることもね?」
ドガッと、音が鳴った。崩れ落ちたドアの向こうに現れた藍咲弦を、回し蹴りしたのはもちろん紗凪。
「さっきからイラついてたんだよねー。上にいるとか。俺の嫌いな人種?」
「同族嫌悪ってやつじゃない?生憎私も同感だわ?」
連続して蹴ったり、殴って躱して、その繰り返し。
「ねぇ悠月? 大丈夫?」
「え、うん。むしろ面白いくらい。ねえ参戦していい?」
「……今のあんたは駄目」
「えぇー、来なよユツキちゃん?その方が面白そう」
ピン、と音がした気がした。
「黙れ。殺すぞ……?」
「あ、本性出した?」
「言っとくけど、ちょっとムリだわ」
「……?なに──」
びりびりびりっ、と何かが裂ける音。
「昨日みたいに優しくは出来なさそう。グロくしちゃったらごめんね悠月。でもさ、こんな奴に悠月の名前、呼ばせたくないからさー」
「……銃刀法違反じゃない?」
紗凪が手で弄び、弦の制服を袈裟斬りにしたものはナイフ。
「いっつも持ち歩いてんのよ。あんたみたいのに絡まれるの、よくあるから」
「ふつーに可愛いのに性格悪いじゃん。意外と早く振られそう」
「想像はご自由にどうぞ?事実は小説よりも奇なり、って──」
「ごめんね紗凪。あたしも無理。そろそろうざくなってきちゃった。若頭殺して逮捕される前に自殺するから、こいつのこと殺っていい?」
先程放っていた殺気より、比べ物にならないほどの冷気。そしてそれには「自虐」が混じっている。
「弦、落ち着け。ここで争っても無駄──」
「あんたはどうでもいいのよ静月サン。あぁ心配しなくていいからねぇ? 貴方は殺さないからさぁ」
「……悠月」
「ん? 何、紗凪。参戦させてくれる気になった?」
「……ごめん、起きたら謝る」
悠月の後頭部に最小の衝撃を与え、昏倒させた紗凪。その目鼻立ちの通った涼やかな顔には、罪悪感が浮かんでいた。
「っう……」
「……悠月、駄目だよ。だからごめんね?」
「ほんと性格悪い。失神させるなんてね?」
「知らないで言うのはやめて。こっちだってホントはやりたくないわ」
「…………」
「入っていいわよ。この子が眠った今、断る理由は特にないもの」
「あぁ、恩に切る」
「……で、なんで断ったの?俺らが入る事」
「悠月がああなると思ったの。私があんたとケンカするのは、目に見えてたし」
「……思いながらそうしたのか?」
「実際してみたかったからよ」
「……で、居ていいのか?」
「別にいいんじゃない。悠月とケンカしないならいいけど。私の条件はそれだけ」
「そ、そうか」
先程までとは打って変わって、挑発するような口調から、淡々と事実を述べるような口調に変わった。そんな紗凪の「変化」を察知したのか、
「……多重人格か?」
「そんなんじゃないわよ、どっちも私。ケンカするときは違うだけ」
「じゃあこの子も?……えっと、佐奈田さん」
天色のクッションを枕に悠月は寝ている。
「今更さん付けしなくていいでしょ。……そうだよ、悠月は特にね」
「……お前は」
「何? 静月」
「俺は、お前を知ってるのか……?」
「さぁね、会ったことがあるんじゃない。少なくとも私は覚えてない」
「違う、そういうことじゃなく」
過去に会ったわけでもなく、さりとて記憶喪失なわけでもない。濃い霞がかったような記憶の片鱗が、静月の脳を掠めていた。
「……いや、なんでもない。それより、佐奈田は大丈夫か?」
「そんなに強くやってない。あぁ、あと弦。制服は弁償しないから」
「別にいいよ、こんなダサいの。俺だって着たくなかったし」
「ならいーや。組長さんに謝っといて」
「……うちの親なら豪快に笑いそうだ」
「あ、そうなの。いいねそーゆーの。で、あんたらはなんでここに?」
炭酸水を飲みながら、紗凪が言った。
「さぼり場所が欲しかったが、迷って、女に聞くのも面倒臭く、近くで人の気配がしたから声を掛けた」
「な、なるほど……それで今に至るの。」
「ああ。そういえば、名前は?」
「千堂 紗凪。えっと、こっちは佐奈田 悠月」
「改めて、藍咲 静月と、藍咲 弦だ」
紗凪の心には、自覚できないほどの予感がしていた。本能的に、感じていたのだ。
自分は、多分ずっとこの人と関わってく──そんな予感が。
「ほんと紗凪優しすぎ。あたしだったら殺しちゃいそう」
「......こらこら、優しく優しく」
「だって何回もでしょ? あたししつこいのはちょ──」
トントン、と教室の扉から音が鳴った。
「何.....? 校長?」
突如鳴り響いたノックの音。
それは、運命を変える歯車が大きく鳴った音だった。
「誰かいる?」
響いた声は何かを隠していると言わんばかりに軽げだ。
「誰?」
「藍咲静月と弦だ。ここに入ってもいいか?」
「その必要があると納得するとでも? 他を当たってくんない? あいにく優しくないから」
何故かもわからず、「入っていい」というような二人ではない。しかしそれ以前に、紗凪にはもう一つの「理由」があった。
「(こいつらは、悠月には……)」
「大分殺気かましてるね、千堂さん? でもさぁ、入るぐらいいいでしょ。ね、佐奈田さん」
「っ!?」
「……そういうあんたは弦って奴ね?」
「あ、覚えてくれたんだー」
「嫌な奴ほど覚えるわよ」
「どうもありがとうございますー。でも君はまだ知らないでしょー?」
「分かってるわよ?」
あんたがこうやって────、ミシリ、バキン、ドアが鳴る。
「押し入ろうとすることもね?」
ドガッと、音が鳴った。崩れ落ちたドアの向こうに現れた藍咲弦を、回し蹴りしたのはもちろん紗凪。
「さっきからイラついてたんだよねー。上にいるとか。俺の嫌いな人種?」
「同族嫌悪ってやつじゃない?生憎私も同感だわ?」
連続して蹴ったり、殴って躱して、その繰り返し。
「ねぇ悠月? 大丈夫?」
「え、うん。むしろ面白いくらい。ねえ参戦していい?」
「……今のあんたは駄目」
「えぇー、来なよユツキちゃん?その方が面白そう」
ピン、と音がした気がした。
「黙れ。殺すぞ……?」
「あ、本性出した?」
「言っとくけど、ちょっとムリだわ」
「……?なに──」
びりびりびりっ、と何かが裂ける音。
「昨日みたいに優しくは出来なさそう。グロくしちゃったらごめんね悠月。でもさ、こんな奴に悠月の名前、呼ばせたくないからさー」
「……銃刀法違反じゃない?」
紗凪が手で弄び、弦の制服を袈裟斬りにしたものはナイフ。
「いっつも持ち歩いてんのよ。あんたみたいのに絡まれるの、よくあるから」
「ふつーに可愛いのに性格悪いじゃん。意外と早く振られそう」
「想像はご自由にどうぞ?事実は小説よりも奇なり、って──」
「ごめんね紗凪。あたしも無理。そろそろうざくなってきちゃった。若頭殺して逮捕される前に自殺するから、こいつのこと殺っていい?」
先程放っていた殺気より、比べ物にならないほどの冷気。そしてそれには「自虐」が混じっている。
「弦、落ち着け。ここで争っても無駄──」
「あんたはどうでもいいのよ静月サン。あぁ心配しなくていいからねぇ? 貴方は殺さないからさぁ」
「……悠月」
「ん? 何、紗凪。参戦させてくれる気になった?」
「……ごめん、起きたら謝る」
悠月の後頭部に最小の衝撃を与え、昏倒させた紗凪。その目鼻立ちの通った涼やかな顔には、罪悪感が浮かんでいた。
「っう……」
「……悠月、駄目だよ。だからごめんね?」
「ほんと性格悪い。失神させるなんてね?」
「知らないで言うのはやめて。こっちだってホントはやりたくないわ」
「…………」
「入っていいわよ。この子が眠った今、断る理由は特にないもの」
「あぁ、恩に切る」
「……で、なんで断ったの?俺らが入る事」
「悠月がああなると思ったの。私があんたとケンカするのは、目に見えてたし」
「……思いながらそうしたのか?」
「実際してみたかったからよ」
「……で、居ていいのか?」
「別にいいんじゃない。悠月とケンカしないならいいけど。私の条件はそれだけ」
「そ、そうか」
先程までとは打って変わって、挑発するような口調から、淡々と事実を述べるような口調に変わった。そんな紗凪の「変化」を察知したのか、
「……多重人格か?」
「そんなんじゃないわよ、どっちも私。ケンカするときは違うだけ」
「じゃあこの子も?……えっと、佐奈田さん」
天色のクッションを枕に悠月は寝ている。
「今更さん付けしなくていいでしょ。……そうだよ、悠月は特にね」
「……お前は」
「何? 静月」
「俺は、お前を知ってるのか……?」
「さぁね、会ったことがあるんじゃない。少なくとも私は覚えてない」
「違う、そういうことじゃなく」
過去に会ったわけでもなく、さりとて記憶喪失なわけでもない。濃い霞がかったような記憶の片鱗が、静月の脳を掠めていた。
「……いや、なんでもない。それより、佐奈田は大丈夫か?」
「そんなに強くやってない。あぁ、あと弦。制服は弁償しないから」
「別にいいよ、こんなダサいの。俺だって着たくなかったし」
「ならいーや。組長さんに謝っといて」
「……うちの親なら豪快に笑いそうだ」
「あ、そうなの。いいねそーゆーの。で、あんたらはなんでここに?」
炭酸水を飲みながら、紗凪が言った。
「さぼり場所が欲しかったが、迷って、女に聞くのも面倒臭く、近くで人の気配がしたから声を掛けた」
「な、なるほど……それで今に至るの。」
「ああ。そういえば、名前は?」
「千堂 紗凪。えっと、こっちは佐奈田 悠月」
「改めて、藍咲 静月と、藍咲 弦だ」
紗凪の心には、自覚できないほどの予感がしていた。本能的に、感じていたのだ。
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