マトリョーシカ少女

天海 時雨

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黒髪黒目:2

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「ただいまー……あれ?」
「どっかデートじゃねぇの?」
「あははっ、そうかもね。悠月、どこ行ったんだろ」
「……なぁ、聞いていいか?」
「ん? 何?」

 なんで、カラコンしてる? 静月のその純粋な疑問は、まっすぐな槍のように、紗凪を貫いた。

「……え?」
「髪もだよな。伸びないし、切ったとも言わない。それに、こんな学校なのに染めてもない。……ウィッグなんだろ?」
「っ、そんなのしてないよ……?」
「嘘つけ。じゃあお前、なんで伸びてない?」
「さ、最近寝れなくて」
「隈もないし化粧してる感じもない」
「…………」
「なんでカラコンしてるんだ?」
「…………」

 黙りこくっていた紗凪が、呟いた。

「……ねぇ、静月は黒でいいよね」
「は?」

 疑問に対する答えはなく、自虐のような笑みが返ってくる。

「……どういうことだよ?」
「黒って言うのはね、一番目立たないんだよ」

 そう紗凪は言った。まるで、自分が存在でもあるかのように。

「……黒じゃない、のか?」
「カラコン、ウィッグ。ぜーんぶ正解。でもこんなに早くバレるなら、意味なかったのかなぁ」
「…………」
「ずーっと目立ってきて、疲れたんだよ。視線と自己嫌悪に。でも偽って暮らしたら慣れたんだ。無関心、無表情の目に、ね?」

 でも慣れすぎたのかな、ばれちゃった。自嘲的に微笑んで、紗凪は言う。

「……紗凪は、ハーフか何かか?」
「……ハーフって通用するかな」
「見てみたい」
「絶対気持ち悪いって言うよ」
「言わない」
「んーまぁ、外国の血は入ってるよ。それがまぁ……ね」
「なんだよ?」
「日本人には見えない、ってこと。日本語は話せるんだけどね」
「……悠月には見せたことがあるのか?」
「ん、そりゃね。……悠月も悠月、だからさ……私より、周りの扱いは酷かったかもね」

「……は?」

 ガラガラっと前触れもなく開いたドアの音と、被さるようにして弦が吐いた言葉。

「……扱いが、酷かった……?」
「あ、弦……うん。私が言っちゃダメだと思うから、秘密ね? ……悠月アルビノ、なんだ……白髪赤目なんだよ」
   
 だからよっぽど心を開かないと、ほんとの自分は見せない。私も、半年ぐらいかかったかなぁ。それに顔立ちが日本って感じしないでしょ? まずそんなに学校来れないし。
 そう口に出した紗凪の、目の前にいる弦の顔は、驚愕と後悔に苛まれていた。
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