マトリョーシカ少女

天海 時雨

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闇に消える銀

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「……はああああああぁぁぁぁ」
「わ、悪い……」
「いや、しゃーないわそれは」
「弦の人の良さが裏目に出たか」
「はああああああぁぁぁぁ……」

 遡ること三十分前。弦は、紗凪に悠月とのことを話していた。

「は? 悠月とケンカした?」
「いや、ケンカって言うかなんて言うか」
「話してみ?」


「……要は、悠月のコンタクトが合ってないんじゃないかと思って心配して踏み込み過ぎた、と?」
「お、おう。そういうわけだ……」
「まぁ目押さえて痛がったらそうするな」
「どこに行ったか見当はつくのか?」
「そりゃね。私が探すからいいよ」
「え、でも……」
「ここで弦が出てきたら、余計『悠月』を見れなくなるよ?」
「う……わ、分かった……」


 そして、紗凪が悠月を探し始めた。しかし一向に見つかる気配はなく、悠月が学校に来ることもなく、三週間の時間が過ぎる。

「……な、さ……紗凪っ!」
「えっあっ……うん、なに?」
「大丈夫かよ……ほら、飯」
「あ、ありがと」

 紗凪には少しずつ少しずつ、わからないぐらいに傷が増えていく。手の擦り傷、肘の小さな痣。しかし、それに気づかない静月ではなかった。

「……お前、どこで探してんだよ?」
「悠月がいるところ……いや、来るところは分かってるよ。だからそこを探してる」
「だからどこだよ?」
「……ううん、それは言わない」
「…………」

 お互いが沈黙するなかで、先にそれを破ったのは静月だった。

「……分かった。なんかあったら言えよ?」
「うん、ありがとね」

 少しずつやつれ、疲れの表情が顔に出て来る。そのことを、紗凪自身は気づいていなかった。

「……静月。親父からだ。今日は見回りだとよ」
「……そうか。紗凪も頑張れ、無理はすんなよ」
「うん、頑張る」

 どこを探しているのかも教えてもらえず、手伝うこともできず、ただ疲れていく様を指を咥えて見ているしかできない二人。
 全国の高校生のなかで、一番力を持っているはずの二人が、苦い焦燥感を味わっていた。

「……じゃあな、気をつけて帰れよ?」
「うん、ばいばい」

 五時になってもまだ明るく、蒸し暑い。

「……氷ったら、涼しくなるかな?ふふっ」

 仮面を外したが、ゆるりと口角を上げて微笑む。その笑みは、氷蓮そのものだった。
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