25 / 34
ろうそく
しおりを挟む
「……体調は大丈夫か?」
「うん、少し疲れてたみたいだけど、結構寝たから。それに、ここ眩しくないし」
くるりとあたりを見回す悠月。凛が診療していたときはろうそくが置かれていたが、今は更に薄布が被せられている。
「あぁ、きつくないか?」
「んー、大丈夫。そこまでじゃないかな。あ、スマホ取ってくれる?」
暗がりで目にあまり強い刺激はないといえど、暗くては見えづらい。スマホは悠月から少し遠いところにあった。
「あぁ、これか」
「ん、ありがと」
スマホを起動し、悠月が最初にやったことは──色の反転だ。白地の画面が黒地に切り替わる。
「……見にくくないのか?」
「こっちの方が、見にくくはならないかな。目にもそんなに負担がない」
「羞明、だったか?」
「お、よく知ってるね。そうだよ」
「……悪かった」
「え?」
暗がりで顔は見えず、ましてや先天性白皮症の悠月は視力が弱い。つまり、今の弦の苦々しげな顔は一切見えない。
「……カラコン、外せなんて言って」
「え、別にいいよ?」
「でも──」
「そんな罪悪感、感じなくていいんだよ? 私にとってはよくあることだし、慣れてるから」
「……いい、のか?」
「…………」
突然、黙りこくった悠月。
「……悠月?」
「──じゃあ、交換条件、する?」
「え?」
「弦が私にしてほしいこと、私が弦にしてほしいこと、それぞれ言うの」
「……俺がしてほしいこと?」
まああるにはあるけどさ。
そう言って弦は姿勢を楽に──若頭らしい正座から、あぐらをかく。
「ちょうど良かった、私もあるんだ。どっちから言う?」
「俺からでいいか?」
「うん。……あ。罪滅ぼしとか考えないでいいからね?」
「あぁ、考えるつもりはない」
「ん、ならいいよ。どうぞ?」
少しの間、ろうそくで照らされた薄暗い部屋が静寂に包まれた。隙間風が吹いたのだろうか、一本のろうそくの炎がふるりと身を震わせる。
「……心変わりも、絶対、しないから。俺と──」
俺と、付き合ってくれないか。
「え……?」
「会った時から、好きだったんだろうと思うけど。その……ケンカした時に、自覚して。俺のせいかなって思ったら」
「っ弦のせいじゃないっ! あれは」
「知ってる。あれは俺のせいでも悠月のせいでもない」
「……う、ん」
「……俺のせいかなって思ったら、絶対助けなきゃ、って思って。あ、あともう一つ」
「ん、何……?」
「あの時、急に明るくして悪かった」
『あれは本当に自己嫌悪した』、そう言った弦。彼があのビルで悠月と会話した時、彼は照明をつけてしまっていた。
「あー……それは、否定しないで受け取っとくね。でももういいよ」
「ほんとに悪かった……それで? 悠月の条件は?」
そして悠月の表情も、弦には見えない。
「……あーぁ、先に言いたかったな」
「なんで?」
「──同じだよ」
また、ろうそくの炎がゆらりとはためく。
「──私と、付き合って欲しかった。でもね」
それは出来ない。
「うん、少し疲れてたみたいだけど、結構寝たから。それに、ここ眩しくないし」
くるりとあたりを見回す悠月。凛が診療していたときはろうそくが置かれていたが、今は更に薄布が被せられている。
「あぁ、きつくないか?」
「んー、大丈夫。そこまでじゃないかな。あ、スマホ取ってくれる?」
暗がりで目にあまり強い刺激はないといえど、暗くては見えづらい。スマホは悠月から少し遠いところにあった。
「あぁ、これか」
「ん、ありがと」
スマホを起動し、悠月が最初にやったことは──色の反転だ。白地の画面が黒地に切り替わる。
「……見にくくないのか?」
「こっちの方が、見にくくはならないかな。目にもそんなに負担がない」
「羞明、だったか?」
「お、よく知ってるね。そうだよ」
「……悪かった」
「え?」
暗がりで顔は見えず、ましてや先天性白皮症の悠月は視力が弱い。つまり、今の弦の苦々しげな顔は一切見えない。
「……カラコン、外せなんて言って」
「え、別にいいよ?」
「でも──」
「そんな罪悪感、感じなくていいんだよ? 私にとってはよくあることだし、慣れてるから」
「……いい、のか?」
「…………」
突然、黙りこくった悠月。
「……悠月?」
「──じゃあ、交換条件、する?」
「え?」
「弦が私にしてほしいこと、私が弦にしてほしいこと、それぞれ言うの」
「……俺がしてほしいこと?」
まああるにはあるけどさ。
そう言って弦は姿勢を楽に──若頭らしい正座から、あぐらをかく。
「ちょうど良かった、私もあるんだ。どっちから言う?」
「俺からでいいか?」
「うん。……あ。罪滅ぼしとか考えないでいいからね?」
「あぁ、考えるつもりはない」
「ん、ならいいよ。どうぞ?」
少しの間、ろうそくで照らされた薄暗い部屋が静寂に包まれた。隙間風が吹いたのだろうか、一本のろうそくの炎がふるりと身を震わせる。
「……心変わりも、絶対、しないから。俺と──」
俺と、付き合ってくれないか。
「え……?」
「会った時から、好きだったんだろうと思うけど。その……ケンカした時に、自覚して。俺のせいかなって思ったら」
「っ弦のせいじゃないっ! あれは」
「知ってる。あれは俺のせいでも悠月のせいでもない」
「……う、ん」
「……俺のせいかなって思ったら、絶対助けなきゃ、って思って。あ、あともう一つ」
「ん、何……?」
「あの時、急に明るくして悪かった」
『あれは本当に自己嫌悪した』、そう言った弦。彼があのビルで悠月と会話した時、彼は照明をつけてしまっていた。
「あー……それは、否定しないで受け取っとくね。でももういいよ」
「ほんとに悪かった……それで? 悠月の条件は?」
そして悠月の表情も、弦には見えない。
「……あーぁ、先に言いたかったな」
「なんで?」
「──同じだよ」
また、ろうそくの炎がゆらりとはためく。
「──私と、付き合って欲しかった。でもね」
それは出来ない。
0
あなたにおすすめの小説
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
貴方だけが私に優しくしてくれた
バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。
そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。
いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。
しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる