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白は罪、黒は救い
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「……それは、できない」
「──なんで、だよ」
「……お願い。私の事、放っておいてくれないかな」
「は?」
一つのろうそくが、とろとろの液体となってしまった。それは一番悠月に近いもので、そのせいか悠月の顔は輪郭程度にしか見えない。
「元々、一人が好きで。入学したときも最初から友達なんか作る気はなかったし、紗凪が学校でも話しかけてくれたことが奇跡だって思ってたの」
「だから何? これ以上友達は作りたくない?」
「そういうわけじゃ、ないんだけど……」
「…………」
二つ、三つ、四つ。少しずつ、ろうそくが消えていく。
「……ごめん。時間が欲しい」
「……分かった」
するりと音を立てて、ふすまを閉めた弦。足音が遠のき、やがて何も聞こえず──最後の、ジュッという音が聞こえた。
「…………」
一人になった悠月を、照らす物はスマートフォンしかなかったが──それも、光が消えた。
突然、ふすまを叩く音がした。
「入るよ。体調はどう?」
「あ、紗凪……大丈夫だよ、ありがとう」
「あーぁ、ろうそく消えちゃったの? つける?」
「や、いいよ。もう寝るし」
「え、まだ七時だよ?」
「最近寝れてなくて……眠いし」
「……ふーん……まあいいや。じゃあね」
「うん、おやすみ」
そして、またふすまが閉まる。
「ったく、今日は喉が渇く日だね……いいよ、話してあげる。あの子泣いてたし」
「……頼む」
閉じたふすまの向こうで紗凪と弦が話す。
「じゃあ部屋おいで──聞かれたくないから」
***
「んー……まぁ、なぁー」
弦の前で唸りながら携帯を見つめ続ける紗凪。
「…………」
「まぁ、ねー……私が勝手に話すのもとは思うけど……話さないとあの子自爆するし……うーん」
「…………」
「んー……どーしよっかなぁー……でもなぁー」
「あー……」
「ん、何?」
「話す話さない、どっちなんだ?」
「んー……じゃあこれから独り言、言うね。あんたは聞かないの」
「あ、あ。分かった」
「……とあるところにー、とっても美しく幼いお姫様がいました」
始まった物語は────。
「お姫様は大変幸せに暮らしていましたが、とある悪い悪い魔法使いによって母親が死んでしまいました。父親は辛うじて生き残ったものの、お姫様を責めました。『お前のせいだ』と」
弦が沈黙する中、紗凪は話し続ける。
「そして母親がいなくなってから何年も経ったある日、お姫様は死の危機に瀕しました。娘への憎しみで精神を病んだ父親にナイフで切りつけられ、無理矢理外へ出されました──ある、夏の暑い日に」
先天性白皮症は、日光の下には出られない。メラニンが少ないため、皮膚ガンなどになってしまう危険性もある。
「たまたま通りかかった通行人によって、死の危機は免れましたが、彼女はすぐに家を出ました。お前はいらないと言った父親の言葉が、心に染みついていたからです」
あくまでも紗凪は、絵本の中の童話のように話す。それはまるで、悪い夢物語のように。
「そしてお姫様は──漆黒に染まってしまいました。夜の世界へ足を踏み入れ、自分から汚れていったのです」
繁華街で暴れ、暴れ。
「お姫様は、ある男に色濃く汚される危機に陥りましたがそれを助けた少女がいました。その少女は、お姫様の死んだ母親の友達の娘──幼なじみでした」
「……紗凪か?」
「んー、そうだねぇ。そしてお姫様が一応通っていた学校は──偶然にも少女と一緒でした」
「それで今に至る、ってわけか」
「そうだねぇ」
「……ありがとう。少し一人にしてくれ」
「ん。おやすみ」
「──なんで、だよ」
「……お願い。私の事、放っておいてくれないかな」
「は?」
一つのろうそくが、とろとろの液体となってしまった。それは一番悠月に近いもので、そのせいか悠月の顔は輪郭程度にしか見えない。
「元々、一人が好きで。入学したときも最初から友達なんか作る気はなかったし、紗凪が学校でも話しかけてくれたことが奇跡だって思ってたの」
「だから何? これ以上友達は作りたくない?」
「そういうわけじゃ、ないんだけど……」
「…………」
二つ、三つ、四つ。少しずつ、ろうそくが消えていく。
「……ごめん。時間が欲しい」
「……分かった」
するりと音を立てて、ふすまを閉めた弦。足音が遠のき、やがて何も聞こえず──最後の、ジュッという音が聞こえた。
「…………」
一人になった悠月を、照らす物はスマートフォンしかなかったが──それも、光が消えた。
突然、ふすまを叩く音がした。
「入るよ。体調はどう?」
「あ、紗凪……大丈夫だよ、ありがとう」
「あーぁ、ろうそく消えちゃったの? つける?」
「や、いいよ。もう寝るし」
「え、まだ七時だよ?」
「最近寝れてなくて……眠いし」
「……ふーん……まあいいや。じゃあね」
「うん、おやすみ」
そして、またふすまが閉まる。
「ったく、今日は喉が渇く日だね……いいよ、話してあげる。あの子泣いてたし」
「……頼む」
閉じたふすまの向こうで紗凪と弦が話す。
「じゃあ部屋おいで──聞かれたくないから」
***
「んー……まぁ、なぁー」
弦の前で唸りながら携帯を見つめ続ける紗凪。
「…………」
「まぁ、ねー……私が勝手に話すのもとは思うけど……話さないとあの子自爆するし……うーん」
「…………」
「んー……どーしよっかなぁー……でもなぁー」
「あー……」
「ん、何?」
「話す話さない、どっちなんだ?」
「んー……じゃあこれから独り言、言うね。あんたは聞かないの」
「あ、あ。分かった」
「……とあるところにー、とっても美しく幼いお姫様がいました」
始まった物語は────。
「お姫様は大変幸せに暮らしていましたが、とある悪い悪い魔法使いによって母親が死んでしまいました。父親は辛うじて生き残ったものの、お姫様を責めました。『お前のせいだ』と」
弦が沈黙する中、紗凪は話し続ける。
「そして母親がいなくなってから何年も経ったある日、お姫様は死の危機に瀕しました。娘への憎しみで精神を病んだ父親にナイフで切りつけられ、無理矢理外へ出されました──ある、夏の暑い日に」
先天性白皮症は、日光の下には出られない。メラニンが少ないため、皮膚ガンなどになってしまう危険性もある。
「たまたま通りかかった通行人によって、死の危機は免れましたが、彼女はすぐに家を出ました。お前はいらないと言った父親の言葉が、心に染みついていたからです」
あくまでも紗凪は、絵本の中の童話のように話す。それはまるで、悪い夢物語のように。
「そしてお姫様は──漆黒に染まってしまいました。夜の世界へ足を踏み入れ、自分から汚れていったのです」
繁華街で暴れ、暴れ。
「お姫様は、ある男に色濃く汚される危機に陥りましたがそれを助けた少女がいました。その少女は、お姫様の死んだ母親の友達の娘──幼なじみでした」
「……紗凪か?」
「んー、そうだねぇ。そしてお姫様が一応通っていた学校は──偶然にも少女と一緒でした」
「それで今に至る、ってわけか」
「そうだねぇ」
「……ありがとう。少し一人にしてくれ」
「ん。おやすみ」
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