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20章
123.好意の方向
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デボラが去ってから数分後、イナトは何事もなかったように店内へと戻ってきた。
入店して早々、私が紙袋を持っていることに気づいた。
「それはなんでしょうか」
「デボラから押し付けられた小説」
「……ああ、もう完成してしまったのですね」
イナトへと紙袋を渡すと、すぐに中を確認して苦い顔。
「今回も僕が預かってもよろしいでしょうか」
「いいよ。イナトに没収されたって言い訳できた方がこっちとしても気が楽だし」
私はイナトから本を受け取り、それをイナトの部屋へと場所を指定して箱へと入れる。
「ところで、アクセサリーは決められましたか? 数が少ないので専門店に行きますか?」
「専門店に行こうかな。どうせなら似合うの選びたいし」
「ありがとうございます」
嬉しそうに微笑むイナトはすぐにネェオの店を出て、迷うことなくジュエリーショップへ。
入店してすぐにイナトへと視線が集中する。店内に男性は1人もいない。それもあって、3人の存在感はとても強い。
また、美形揃いということもあり、誰もが手元のアクセサリーよりも3人の顔をまじまじと眺めている。加えて、それを連れている私へは羨望と嫉妬が込められた視線が送られる。
「……3人には外に出ていてもらおうかな」
「それは無理ですよ」
1人にさせたくないイナト。その気持ちはわかる。わかるけれど、私は貴方に1番出ていって欲しいんだが。そんなことを言ってもきっとイナトは動かないだろう。
「じゃあ誰か1人だけ護衛として側におきます。でも、残り2人はどこかで時間を潰しておいてほしい」
「では僕が――」
「ここは俺でしょ。団長だと団長を好きな女性が寄ってきてしまいますからね」
イナトの言葉を遮りルーパルドが名乗り出た。確かに常識もあって、イナトよりかは女性からの視線は痛くない。
そもそもルーパルドは平民出身ということもあり、媚を売ってくる女性はイナトと比べると極端に少ないのだと聞いている。ただ、こういうタイプは密かに恋心を抱いている令嬢がいるはずだ。
でもまあ、イナトより断然マシなのは事実だろう。
「いや、俺だろう。主人の側にいるのが俺の役目だ」
「確かにそうだが、ロクはゲムデース街のどこに何があるのか知らないだろう?」
「知らん。必要か?」
「必要に決まってるだろう。他にもジュエリーショップはある。もしここでも決まらなければ別の店に行くんだぞ」
今回イナトはルーパルドに任せるつもりのようで、ロクが諦めるように仕向けている気がする。もしかしたらロクに何か頼みたい仕事があるのかもしれない。
「じゃあ、ルーパルドに頼もうかな。ロク、イナトの護衛よろしくね」
「……わかった。第2の主人みたいなものだしな」
そうしてイナトとロクを見送った後、アクセサリー探しを開始する。
ルーパルドは先程とは違い、熱心にアクセサリーを眺めている。オシャレなものに興味はあったが、買う暇も身につけて出かける暇もなかったと語る。また、さっきはネェオやあの2人もいたので気恥ずかしくて見ないようにしていたのだとか。
「よし、決めた」
派手さは控えめ。壊れにくい素材。その点に絞ってアクセサリーを決めた。
ルーパルドに念のため大丈夫か聞いたが、シンプルだけどオシャレでいいと思う。と言ってもらえたので購入。
早く合流しようと店を出て通信機を取り出そうとしたところで女性に声をかけられる。
「貴女が救世主?」
「はい、そうですけど」
あまり好意的に見えない雰囲気を漂わせているお年を召した女性。イナトを好きな女性だろうか。それとも逆ハーレム作ってむかつくやつとか思っているタイプだろうか。
「その男を貸していただけなくって?」
「ん? ルーパルドを、ですか?」
「救世主さま、相手しなくていいですよ。ほら、走る!」
「え、ちょっとルーパルド!?」
私の手首を掴み、慌てて走り出すルーパルド。よくわからないが、ルーパルドの知り合いだろうか。
背後からは「逃してはなりません!」とどこから現れたのか渡者らしき影が数人。
「どういうこと? ルーパルド、あの人に何したの!?」
「その説明は後にさせてください! ちょっと失礼」
いきなり横抱きされ一気に速度を上げたルーパルド。走ってる人を軽く抱き上げられるなんて器用すぎるだろう。
ルーパルドは細い道を通り、高い門を軽々越え渡者を引き離していく。イナトが1番俊足だと聞いているが、ルーパルドもかなり足が速い。私を抱えてこれなのだから驚異的だ。
「ちょっと休憩させて」
渡者が見えなくなったところでルーパルドは私を下ろし、息を吐いた。かなり狭い場所だがよくこんな所を見つけたものだ。
ルーパルドは「あっつ」と言いながら額を拭っている。私は持っていたハンカチを渡して自身で拭うように指示する。だが、ルーパルドは「リンに拭いて欲しいなぁ」と地べたに座りながら笑う。狭いのに座ってさらに狭くするのはやめてほしいものだ。
少し屈みルーパルドの汗を拭う。
「ありがと」
「それはいいけど、あの人は誰? どういう関係?」
「浮気したのがバレて詰め寄られてるみたいで、ちょっとグッとくるなぁ」
「ふざけないで。あの人に命でも狙われてるの?」
「俺を愛人にしたがってる婦人ですよ」
「え?」
かなり歳をとっていたように見えたが、まさかルーパルドも卑下していただけでイナト同様、老若男女誰からもモテるタイプなのだろうか。
入店して早々、私が紙袋を持っていることに気づいた。
「それはなんでしょうか」
「デボラから押し付けられた小説」
「……ああ、もう完成してしまったのですね」
イナトへと紙袋を渡すと、すぐに中を確認して苦い顔。
「今回も僕が預かってもよろしいでしょうか」
「いいよ。イナトに没収されたって言い訳できた方がこっちとしても気が楽だし」
私はイナトから本を受け取り、それをイナトの部屋へと場所を指定して箱へと入れる。
「ところで、アクセサリーは決められましたか? 数が少ないので専門店に行きますか?」
「専門店に行こうかな。どうせなら似合うの選びたいし」
「ありがとうございます」
嬉しそうに微笑むイナトはすぐにネェオの店を出て、迷うことなくジュエリーショップへ。
入店してすぐにイナトへと視線が集中する。店内に男性は1人もいない。それもあって、3人の存在感はとても強い。
また、美形揃いということもあり、誰もが手元のアクセサリーよりも3人の顔をまじまじと眺めている。加えて、それを連れている私へは羨望と嫉妬が込められた視線が送られる。
「……3人には外に出ていてもらおうかな」
「それは無理ですよ」
1人にさせたくないイナト。その気持ちはわかる。わかるけれど、私は貴方に1番出ていって欲しいんだが。そんなことを言ってもきっとイナトは動かないだろう。
「じゃあ誰か1人だけ護衛として側におきます。でも、残り2人はどこかで時間を潰しておいてほしい」
「では僕が――」
「ここは俺でしょ。団長だと団長を好きな女性が寄ってきてしまいますからね」
イナトの言葉を遮りルーパルドが名乗り出た。確かに常識もあって、イナトよりかは女性からの視線は痛くない。
そもそもルーパルドは平民出身ということもあり、媚を売ってくる女性はイナトと比べると極端に少ないのだと聞いている。ただ、こういうタイプは密かに恋心を抱いている令嬢がいるはずだ。
でもまあ、イナトより断然マシなのは事実だろう。
「いや、俺だろう。主人の側にいるのが俺の役目だ」
「確かにそうだが、ロクはゲムデース街のどこに何があるのか知らないだろう?」
「知らん。必要か?」
「必要に決まってるだろう。他にもジュエリーショップはある。もしここでも決まらなければ別の店に行くんだぞ」
今回イナトはルーパルドに任せるつもりのようで、ロクが諦めるように仕向けている気がする。もしかしたらロクに何か頼みたい仕事があるのかもしれない。
「じゃあ、ルーパルドに頼もうかな。ロク、イナトの護衛よろしくね」
「……わかった。第2の主人みたいなものだしな」
そうしてイナトとロクを見送った後、アクセサリー探しを開始する。
ルーパルドは先程とは違い、熱心にアクセサリーを眺めている。オシャレなものに興味はあったが、買う暇も身につけて出かける暇もなかったと語る。また、さっきはネェオやあの2人もいたので気恥ずかしくて見ないようにしていたのだとか。
「よし、決めた」
派手さは控えめ。壊れにくい素材。その点に絞ってアクセサリーを決めた。
ルーパルドに念のため大丈夫か聞いたが、シンプルだけどオシャレでいいと思う。と言ってもらえたので購入。
早く合流しようと店を出て通信機を取り出そうとしたところで女性に声をかけられる。
「貴女が救世主?」
「はい、そうですけど」
あまり好意的に見えない雰囲気を漂わせているお年を召した女性。イナトを好きな女性だろうか。それとも逆ハーレム作ってむかつくやつとか思っているタイプだろうか。
「その男を貸していただけなくって?」
「ん? ルーパルドを、ですか?」
「救世主さま、相手しなくていいですよ。ほら、走る!」
「え、ちょっとルーパルド!?」
私の手首を掴み、慌てて走り出すルーパルド。よくわからないが、ルーパルドの知り合いだろうか。
背後からは「逃してはなりません!」とどこから現れたのか渡者らしき影が数人。
「どういうこと? ルーパルド、あの人に何したの!?」
「その説明は後にさせてください! ちょっと失礼」
いきなり横抱きされ一気に速度を上げたルーパルド。走ってる人を軽く抱き上げられるなんて器用すぎるだろう。
ルーパルドは細い道を通り、高い門を軽々越え渡者を引き離していく。イナトが1番俊足だと聞いているが、ルーパルドもかなり足が速い。私を抱えてこれなのだから驚異的だ。
「ちょっと休憩させて」
渡者が見えなくなったところでルーパルドは私を下ろし、息を吐いた。かなり狭い場所だがよくこんな所を見つけたものだ。
ルーパルドは「あっつ」と言いながら額を拭っている。私は持っていたハンカチを渡して自身で拭うように指示する。だが、ルーパルドは「リンに拭いて欲しいなぁ」と地べたに座りながら笑う。狭いのに座ってさらに狭くするのはやめてほしいものだ。
少し屈みルーパルドの汗を拭う。
「ありがと」
「それはいいけど、あの人は誰? どういう関係?」
「浮気したのがバレて詰め寄られてるみたいで、ちょっとグッとくるなぁ」
「ふざけないで。あの人に命でも狙われてるの?」
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「え?」
かなり歳をとっていたように見えたが、まさかルーパルドも卑下していただけでイナト同様、老若男女誰からもモテるタイプなのだろうか。
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