乙女要素のある死にゲーに転移してしまった件〜帰還エンドのはずが、様子がおかしい〜

勿夏七

文字の大きさ
126 / 196
21章

125.エンドラスト国へ

しおりを挟む
 門に到着し、まず感じたのが寒さ。まだちょっと冷えてる程度ではあるが、国境を越えたらどの程度寒いのだろう。
 
 イナトを見た門番は敬礼する。ここでもやはり顔が知られているようで、スムーズだ。すぐに門を潜り抜け、エンドラスト国に入る。
 白い世界が広がっており、寒さも比べ物にならないくらい寒い。

「これを渡しておきますね」

 赤色をした宝石をイナトから受け取った瞬間、先ほどの寒さが嘘のように暖かい。以前青色の宝石を持たせてもらった時は涼しかった。
 この世界にある宝石は偉大だな。見つけたら絶対回収する。そう私は意気込むのだった。
 
 私はポーチに宝石をしまいこんで雪を踏み締める。
 踏むたびにザクザクと音を立て、足跡が増えていく。ロクはそれを興味津々に眺めている。

「ゲムデース国とスタート国では雪ってあんまり降らないの?」
「降りませんね。もし降っても積もるほどではありません」
「へぇ。そうなんだ」

 一応この世界にも四季があるようだが、日本ほど何か変わるわけもないようだ。春になっても桜のように春に咲く花があるわけでもない。夏だから暑いなんてこともない。
 いつの季節も安定していると言えば良いのだろうが、少し物足りなさを感じる。きっとそれは、私が四季を楽しんでいたからだろう。

「ここで待ちましょう」

 門から少し離れたワープポイントを解放したあと、イナトは立ち止まる。どうやらここで迎えを待つようだ。

「エンドラストはゲムデースよりも凶暴な魔物が多くいます。気を引き締めていきましょう」

 エンドラストは、1番魔族に侵食されている土地らしい。そのため魔物が多く、魔族も横行しているとか。
 だが、こうして国として保っていられるのは、エンドラストの人々が強く、今以上の侵攻を防いでいるからだと言う。
 
「イナト様! ご足労いただきありがとうございます」

 大きめの馬車が到着したかと思えば、中から四角いメガネをかけたイケメンが現れた。和風っぽいような中華っぽいようなそんな服装をしている。
 切れ長の目をしており、髪色は頭のてっぺんは黒く、毛先は赤い。前髪はセンター分けにしており、長い髪はヘアゴムで1つに縛っている。耳はヒスイと同じく尖っている。
 じっと眺めてしまっていたか、イケメンは私を見てお辞儀をした。

「貴女が救世主様ですね。エンドラスト国までご足労いただき感謝いたします。俺はコウギョクです」

 コウギョクと名乗ったイケメンは馬車へ入りやすいようにと台を置きエスコートしてくれる。イナトは何か言いたげだったが、黙ってそれを見守り後に続いた。
 全員が乗り込んだ後、コウギョクも乗り込み王のいる街へ。
 
 到着するまでは、コウギョクが街の見どころやグルメを説明してくれ、エンドラスト街の地図をくれた。
 そして、コウギョクは先程までニコニコしていた表情とは打って変わって真面目な表情を見せた。

「王の姿を見ても驚かないようお願いいたします。見た目の割に意外と繊細なので」
 
 スタート国でも似たようなセリフを聞いたなと思いながら、私は頷いた。きっと子供かかなりをお年の人とかなのだろう。多分。

「あ、あそこにワープポイントが見えます! 行ってきてもいいですか?」
「もちろんです。そちらに寄りましょう」

 ワープポイントを馬車の中にいるまま開放し、改めて街へと進む。

「初めて開放の瞬間を目にしましたが、綺麗ですね」

 開放の時は目潰しくらいに眩しいのだが、コウギョクは目をキラキラとさせ、遠ざかっていくワープポイントを名残惜しそうに眺めていた。

「それにしても、こういっては失礼かもしれませんが……救世主様は華奢でいらっしゃいますね。もっと屈強な方を想像していました」
「俺もそう思っていた」

 コウギョクの話に頷くロク。「ですよね?」ととても嬉しそうに笑っている。

「やっぱり女性はこの世界では戦わないからですか?」
「それが1番ですね。エンドラスト国では、戦う女性がいます。でも、腹筋が割れていたり妙に凛々しい顔立ちだったりと男顔負けな方が多いのです」

 所謂イケ女。エンドラスト国の戦う女性は、女性に好かれるタイプ。ぜひ会ってみたいものだ。

「会ってみたいんですけど、会えますかね?」
「喜ぶと思いますよ。"スタート国とゲムデース国のワープポイントの解放を完遂した強い女"としてこちらの国に伝わっていますし」
「落胆されそうな気がしてきた……」
「大丈夫ですよ。まあ、もしかしたら手合わせして欲しいと頼まれるかもしれませんが」

 血気盛んとまでは言わないらしいが、本当に実力があるのか気になるのは無理もないだろう。
 私の希望ではないが、強い男を引き連れているのは事実だし。全部男に任せてんじゃないか? と思われる可能性も十分ある。

「あ、そろそろ到着しますよ。俺は先に出ますね」

 動いている馬車から降り、コウギョクは街の方へと走っていった。遠くて見えづらいが、門番と話しているようだ。
 近づくにつれ重い門をゆっくりと開かれ、敬礼している姿が見える。

「ようこそ、エンドラスト国へ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

異世界の花嫁?お断りします。

momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。 そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、 知らない人と結婚なんてお断りです。 貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって? 甘ったるい愛を囁いてもダメです。 異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!! 恋愛よりも衣食住。これが大事です! お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑) ・・・えっ?全部ある? 働かなくてもいい? ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です! ***** 目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃) 未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

処理中です...