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23章
149.奪還
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「リン」
「はい?」
なぜかアデルに突然ハグされた。その途端、魔力が身体中を駆け回る感覚がする。暖かくて気持ちがいい。
ちょっとうっとりしていると、イナトが私の腕を取り後ろに隠す。
「何がしたい?」
「魔力補充をしていただけだ。お前らのように下心はない」
腕を組み少しだけ不服そうにするアデルだったが、私を見て優しく笑った。すごく優しい微笑みだ。初めて見たかもしれない。
「魔力量も増え、身体を巡る量も安定しているようだな。誰かさんと違って」
そう言ってイナトに視線を向けた。私も思わずイナトを見たが、あまり知られたくなかったようで目を逸らされてしまった。
一度魔力暴走でも起こしたことがあるようだ。この様子だと話してくれそうもない。
残念だけど、いつか話してくれると嬉しいな――
その後、アデルは研究対象ができたからか、邪魔するなと部屋に閉じこもってしまった。私は血や唾液の提供を免れて安心だ。
ジュ村のワープポイントへと向かう途中、クロノダから手紙が届いた。
イナトがそれをすぐに読み、私を見た。
「次はクロノダに会いましょう。救世主様のために打っていた剣ができたそうですよ」
「じゃあ箱に入ろうか。アデルさんもドアつけてもらったら箱で解決したのにね」
「やめた方がいいと思いますよ。定期的に採取されるかと」
「それは、嫌だな……」
箱へと入りすぐにクロノダを見つける。クロノダが持っていると私用に作ってくれた剣がとても短く小さいものに見えてしまう。
「ほらよ、魔王討伐に間に合ったか?」
「タイミングばっちりですよ! これから魔王城に行くんです」
「ほお、そりゃいい。本当は俺も一緒に行ってやりたいんだがな。それは難しそうだ」
「気にしないでください。お仕事頑張ってくださいね」
おう。と頭を豪快に撫でられ髪がボサボサ。仕事があるからとそのまま戻っていってしまったクロノダを見送った。
髪を整えようと私が手を伸ばす前に、なぜかルーパルドがボサボサの髪を整えてくれた。
「救世主さまの髪は柔らかいですね~」
振り返るとルーパルドは名残惜しそうにしていた。世界を救済したら帰る。というのが引っかかっているのだろうか。多分、自意識過剰ではないだろう。
◇
手に入れた国宝や剣を持って、エンドラスト国へと戻る。
エンドラスト国の民達が、いつの間にやら魔族を大半倒したそうな。
そのおかげか、街で治療に専念している人、怪我をした人、どちらもどこか余裕そうな表情を見せていた。
軽く挨拶をしながら街中をぐるりと回る。誰も悲観的にはなっていない様子。
そこでコーヒーを飲んでいたコウギョクを見つけ、私は声をかけた。
「お疲れ様です。手伝うことってありますか?」
「救世主様! おかえりなさい。暇なくらいですし、ゆっくりしてもらってて良いですよ。魔王は救世主様にしか倒せないですし」
笑顔でそう言うコウギョク。なんだかとてもスッキリした表情に見える。
「魔族は簡単に倒せちゃうし、土地もどんどん返ってくるし……もう救世主様様ですよ」
「喜んでもらえて良かったです」
「魔王倒したら、うちで暮らしませんか? 龍人との子は風邪ほとんど引きませんし丈夫ですよ~」
ニコニコと笑顔で言うコウギョク。
私の勘違いでなければ、遠回しに嫁に来いと発言されている気がする。適当に聞き流すことにしよう。
笑顔で「そうなんですね~」とだけ返し、コウギョクを置いて歩き出す。
コウギョクやその他龍人の告白もどきをスルーしながら、魔族がいなくなった広大な土地を歩く。
死体や血もなく、まるで最初から何もなかったかのような景色だ。
魔族がいた土地のワープポイントを解放していく。
エンドラスト国の人々のおかげで、魔族はすべて追い出し、ワープポイントの解放も終えていた。
「膿をすべて処理できたな。あとは魔王城の場所か」
コンゴウは大剣を地面に突き刺し息を吐いた。そんな細い体でそんな大きな武器を持つのか。
まあ、ゲームならあり得ない話ではないのだけれど。
「まさか誰も魔王城について知らないなんてな……」
困った表情を見せたコンゴウ。魔族を倒す際、一々魔王城がどこにあるのか聞いてくれていたらしい。だが、誰1人として知らないと言い、収穫はなかったのだとか。
「あとは幹部クラスのやつらを探すしかないんだな?」
俄然やる気が出ているロク。モッカが幹部クラスの話をしていたことを思い出す。
コンゴウに聞いたところ、モッカやビラドゥのような見た目の魔族は見ていないと言っていた。きっと幹部クラスの魔族はエンドラスト国にいないのだろう。
どのように魔王城を探すか。私達が悩んでいると、突如、天空に魔王城が現れた。
それはとても大きくて、どの国の王城よりも大きく見える。
「なるほど。見つからないわけだ」
イナトは紙にメモしている。後学のためだろう。
魔王城はゆっくりと下降。木々をへし折りながら陸にゆっくりと降り立った。
私達はすぐに降りていった方向へと駆け足で行き、魔王城の前へ。
「まさかこんなに早く魔王城が引き摺り出されちまうとは」
魔王城の前まで辿り着くと同時に、ビラドゥが出てきた。
隣にはモッカがいて、モッカは辺りを見渡しながらニヤニヤと笑っている。
「魔族全員、エンドラスト国から追い出されてウケる」
だが、笑みはすぐに引っ込め、2人は大きな門を開いて同時に言う。
「魔王城にようこそ。救世主一行」
突然ゲームっぽい演出だな……
「はい?」
なぜかアデルに突然ハグされた。その途端、魔力が身体中を駆け回る感覚がする。暖かくて気持ちがいい。
ちょっとうっとりしていると、イナトが私の腕を取り後ろに隠す。
「何がしたい?」
「魔力補充をしていただけだ。お前らのように下心はない」
腕を組み少しだけ不服そうにするアデルだったが、私を見て優しく笑った。すごく優しい微笑みだ。初めて見たかもしれない。
「魔力量も増え、身体を巡る量も安定しているようだな。誰かさんと違って」
そう言ってイナトに視線を向けた。私も思わずイナトを見たが、あまり知られたくなかったようで目を逸らされてしまった。
一度魔力暴走でも起こしたことがあるようだ。この様子だと話してくれそうもない。
残念だけど、いつか話してくれると嬉しいな――
その後、アデルは研究対象ができたからか、邪魔するなと部屋に閉じこもってしまった。私は血や唾液の提供を免れて安心だ。
ジュ村のワープポイントへと向かう途中、クロノダから手紙が届いた。
イナトがそれをすぐに読み、私を見た。
「次はクロノダに会いましょう。救世主様のために打っていた剣ができたそうですよ」
「じゃあ箱に入ろうか。アデルさんもドアつけてもらったら箱で解決したのにね」
「やめた方がいいと思いますよ。定期的に採取されるかと」
「それは、嫌だな……」
箱へと入りすぐにクロノダを見つける。クロノダが持っていると私用に作ってくれた剣がとても短く小さいものに見えてしまう。
「ほらよ、魔王討伐に間に合ったか?」
「タイミングばっちりですよ! これから魔王城に行くんです」
「ほお、そりゃいい。本当は俺も一緒に行ってやりたいんだがな。それは難しそうだ」
「気にしないでください。お仕事頑張ってくださいね」
おう。と頭を豪快に撫でられ髪がボサボサ。仕事があるからとそのまま戻っていってしまったクロノダを見送った。
髪を整えようと私が手を伸ばす前に、なぜかルーパルドがボサボサの髪を整えてくれた。
「救世主さまの髪は柔らかいですね~」
振り返るとルーパルドは名残惜しそうにしていた。世界を救済したら帰る。というのが引っかかっているのだろうか。多分、自意識過剰ではないだろう。
◇
手に入れた国宝や剣を持って、エンドラスト国へと戻る。
エンドラスト国の民達が、いつの間にやら魔族を大半倒したそうな。
そのおかげか、街で治療に専念している人、怪我をした人、どちらもどこか余裕そうな表情を見せていた。
軽く挨拶をしながら街中をぐるりと回る。誰も悲観的にはなっていない様子。
そこでコーヒーを飲んでいたコウギョクを見つけ、私は声をかけた。
「お疲れ様です。手伝うことってありますか?」
「救世主様! おかえりなさい。暇なくらいですし、ゆっくりしてもらってて良いですよ。魔王は救世主様にしか倒せないですし」
笑顔でそう言うコウギョク。なんだかとてもスッキリした表情に見える。
「魔族は簡単に倒せちゃうし、土地もどんどん返ってくるし……もう救世主様様ですよ」
「喜んでもらえて良かったです」
「魔王倒したら、うちで暮らしませんか? 龍人との子は風邪ほとんど引きませんし丈夫ですよ~」
ニコニコと笑顔で言うコウギョク。
私の勘違いでなければ、遠回しに嫁に来いと発言されている気がする。適当に聞き流すことにしよう。
笑顔で「そうなんですね~」とだけ返し、コウギョクを置いて歩き出す。
コウギョクやその他龍人の告白もどきをスルーしながら、魔族がいなくなった広大な土地を歩く。
死体や血もなく、まるで最初から何もなかったかのような景色だ。
魔族がいた土地のワープポイントを解放していく。
エンドラスト国の人々のおかげで、魔族はすべて追い出し、ワープポイントの解放も終えていた。
「膿をすべて処理できたな。あとは魔王城の場所か」
コンゴウは大剣を地面に突き刺し息を吐いた。そんな細い体でそんな大きな武器を持つのか。
まあ、ゲームならあり得ない話ではないのだけれど。
「まさか誰も魔王城について知らないなんてな……」
困った表情を見せたコンゴウ。魔族を倒す際、一々魔王城がどこにあるのか聞いてくれていたらしい。だが、誰1人として知らないと言い、収穫はなかったのだとか。
「あとは幹部クラスのやつらを探すしかないんだな?」
俄然やる気が出ているロク。モッカが幹部クラスの話をしていたことを思い出す。
コンゴウに聞いたところ、モッカやビラドゥのような見た目の魔族は見ていないと言っていた。きっと幹部クラスの魔族はエンドラスト国にいないのだろう。
どのように魔王城を探すか。私達が悩んでいると、突如、天空に魔王城が現れた。
それはとても大きくて、どの国の王城よりも大きく見える。
「なるほど。見つからないわけだ」
イナトは紙にメモしている。後学のためだろう。
魔王城はゆっくりと下降。木々をへし折りながら陸にゆっくりと降り立った。
私達はすぐに降りていった方向へと駆け足で行き、魔王城の前へ。
「まさかこんなに早く魔王城が引き摺り出されちまうとは」
魔王城の前まで辿り着くと同時に、ビラドゥが出てきた。
隣にはモッカがいて、モッカは辺りを見渡しながらニヤニヤと笑っている。
「魔族全員、エンドラスト国から追い出されてウケる」
だが、笑みはすぐに引っ込め、2人は大きな門を開いて同時に言う。
「魔王城にようこそ。救世主一行」
突然ゲームっぽい演出だな……
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