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23章
151.戦闘
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モッカが風を起こし、ビラドゥが盗んだらしいロケット型ペンダント。
だが、もうこれでこの2人の魔族も簡単に倒せるだろう。
「げっ、皆顔怖いよ~?」
ストレスフルなパーティーは、すぐにトドメを刺さず、痛ぶるだけ痛ぶって戦闘不能まで追い詰めたのだった――
一度魔王城の外へと出て、モッカとビラドゥを龍人に引き渡した。
ちなみに他の幹部達もすでに引渡し済みだ。
「さて、片付きましたね」
「いや~、ペンダントの力を持ってしても強いのかと思って焦りましたね」
2人が話していると、コウギョクが細長い箱を持ってやってきた。
「イナト様、頼まれていた国宝をお持ちしました」
イナトがコウギョクから受け取った箱の中身は聖剣だ。
これで魔王を斬り伏せることができるのだそう。と言ってもただ斬りつければいいわけではない。魔王が弱ったところを聖剣の指示通り剣を振ることで封印――実質的な死を送ることができる設定らしい。ちょっと面倒くさい仕様だな……。
「まさか幹部やられても、部屋に引きこもってるなんてな」
ロクはそう言ったが、ゲーム仕様のままなら仕方ない。魔王は外に出ることはないし、自分の仲間がやられても助けに来ることなんてしない。それが普通だ。まあ、そんなところだけゲーム仕様なんて違和感しかないのだが。
それとも離れられない理由でもあるのだろうか。
「もう魔王倒しに行く?」
「長引かせる理由もありませんしね。魔王討伐前にやっておきたいことがあれば、今のうちにお願いします」
「私は特にないよ。だって魔王倒した後も国宝返したりとかあるし、皆にも帰る前に挨拶したいしね」
私は魔王討伐後に何をして帰るかをシミュレーションをする。すると、隣でルーパルドはしょんぼりとしている。
「……本当に帰っちゃうんですか?」
「最初ほど絶対帰る! てほどではないよ。でもせめて見納めはしたいし。まあ、そこら辺は神様に聞いてみないとだけど」
帰れるのか帰れないのか。もし帰れるとして、またこちらの世界に戻ってこられるのか。それらをわかっていないと私もどうしようもない。
「それでは行きましょうか。魔族弱体はかなり役に立ちましたが、魔王弱体は未知数です」
「また取られるとか辞めてくださいね、救世主さま」
「ルーパルド、言い方! 小さな水晶だし、バッグの奥の方に入れておけば大丈夫だと……思いたい」
「俺が持っておこうか?」
「それで機能しなくなっても困るし、やめとこ」
魔王と戦う前だと言うのに結構ゆるっとしてるなぁ。
◇
「ついに来たか、救世主。待ち侘びたぞ」
玉座にどっかりと座り、禍々しいオーラを放つ魔王。以前会った時よりも強そうに感じる。
まさかこちらが強くなれば相手も強くなる仕様なんて言わないよね?
「やっぱり、倒さないとダメですか」
「なんだ、怖じ気づいたか? 俺の嫁になるのならお前の言うとおりにしてやってもいいぞ」
「それは嫌です」
「ふふ、それでこそ俺の救世主」
勝手にご満悦になっている魔王。
オジーの話であれば、思い込みの激しいただの妄想癖男になってしまうのだが……。
「オジーという男に、過去の救世主とお前は恋仲じゃなかったと聞いている。変な妄想はしない方がいいぞ」
なんでストレートで言っちゃったの、ロク。
イナトもルーパルドもまかさ本人に言うとは思っていなかったのだろう、目を見開いている。
「オジー? あいつは人間で、すでに死んでいるはずだろう?」
「いや、それが――」
洞窟の話をすると、心当たりがあったようで魔王は口を大きく開け、ポカンとしている。
その後ぶつぶつと何か言い始めた後、大きく息を吐いた。
「もういい。その話はいい。やり合おうではないか。とことん、な」
さきほどまで呆けていたはずの魔王は、それを感じさせない強そうな表情へと切り替えた。
器用だ。
その後、魔王と何度も剣を交えた。最初は剣が吹き飛ばされたり火力の高い魔法に当たって即死。なんてことがザラだった。私だけではあるが、次第に避けるのが上手くなっていき、また仲間のサポートができるほどになってきた。
それでも死は重ねられ、私だけ精神的に疲弊していった。
目が覚めると、また魔王城の前に立っていた。行きましょうかと言うイナトに、少しだけ休憩させて欲しいと頼み、その場に座り込む。
体は元気だ。しかし、どうしても頭が魔王の動きをすぐに処理してくれない。
「……大丈夫か」
「ごめん、もうちょっと待ってね」
ロクは私の隣に座り、じっと私の顔を覗き込む。私はできるだけ笑顔で返して深呼吸を1つ。
「やはり魔王の力が絶大なのでしょうか。僕も記憶を持ったまま戻れたら良かったのですが……」
すでに私が何度も死に戻っていることは皆知っている。オジーが死に戻りのメリットを伝えてくれているおかげで、以前より厳しく叱られることも無くなった。まあ、今でも心配そうにはしているが。
「あ、そうだ。どんな攻撃かあったとか、そういうの共有して良い? 頭の整理も兼ねて」
「良いと思います。そうすれば俺達も少しは救世主さまの負担を減らせるでしょうし」
3人に魔王の動きや癖を伝え、その時にどのように動くかも一緒に話した。
そんなことをしていると、一通の伝書紙が届く。イナトは「ナルからです」と私に言った後、封を開けた。
「かなり死んでるみたいだけど大丈夫か、という内容ですね」
「これは、なんて返すのが正解なんだろう」
「苦戦しているのは事実ですしね~」
とりあえず「魔王と戦ってるからしょうがない」とだけ送っておいたのだった。
だが、もうこれでこの2人の魔族も簡単に倒せるだろう。
「げっ、皆顔怖いよ~?」
ストレスフルなパーティーは、すぐにトドメを刺さず、痛ぶるだけ痛ぶって戦闘不能まで追い詰めたのだった――
一度魔王城の外へと出て、モッカとビラドゥを龍人に引き渡した。
ちなみに他の幹部達もすでに引渡し済みだ。
「さて、片付きましたね」
「いや~、ペンダントの力を持ってしても強いのかと思って焦りましたね」
2人が話していると、コウギョクが細長い箱を持ってやってきた。
「イナト様、頼まれていた国宝をお持ちしました」
イナトがコウギョクから受け取った箱の中身は聖剣だ。
これで魔王を斬り伏せることができるのだそう。と言ってもただ斬りつければいいわけではない。魔王が弱ったところを聖剣の指示通り剣を振ることで封印――実質的な死を送ることができる設定らしい。ちょっと面倒くさい仕様だな……。
「まさか幹部やられても、部屋に引きこもってるなんてな」
ロクはそう言ったが、ゲーム仕様のままなら仕方ない。魔王は外に出ることはないし、自分の仲間がやられても助けに来ることなんてしない。それが普通だ。まあ、そんなところだけゲーム仕様なんて違和感しかないのだが。
それとも離れられない理由でもあるのだろうか。
「もう魔王倒しに行く?」
「長引かせる理由もありませんしね。魔王討伐前にやっておきたいことがあれば、今のうちにお願いします」
「私は特にないよ。だって魔王倒した後も国宝返したりとかあるし、皆にも帰る前に挨拶したいしね」
私は魔王討伐後に何をして帰るかをシミュレーションをする。すると、隣でルーパルドはしょんぼりとしている。
「……本当に帰っちゃうんですか?」
「最初ほど絶対帰る! てほどではないよ。でもせめて見納めはしたいし。まあ、そこら辺は神様に聞いてみないとだけど」
帰れるのか帰れないのか。もし帰れるとして、またこちらの世界に戻ってこられるのか。それらをわかっていないと私もどうしようもない。
「それでは行きましょうか。魔族弱体はかなり役に立ちましたが、魔王弱体は未知数です」
「また取られるとか辞めてくださいね、救世主さま」
「ルーパルド、言い方! 小さな水晶だし、バッグの奥の方に入れておけば大丈夫だと……思いたい」
「俺が持っておこうか?」
「それで機能しなくなっても困るし、やめとこ」
魔王と戦う前だと言うのに結構ゆるっとしてるなぁ。
◇
「ついに来たか、救世主。待ち侘びたぞ」
玉座にどっかりと座り、禍々しいオーラを放つ魔王。以前会った時よりも強そうに感じる。
まさかこちらが強くなれば相手も強くなる仕様なんて言わないよね?
「やっぱり、倒さないとダメですか」
「なんだ、怖じ気づいたか? 俺の嫁になるのならお前の言うとおりにしてやってもいいぞ」
「それは嫌です」
「ふふ、それでこそ俺の救世主」
勝手にご満悦になっている魔王。
オジーの話であれば、思い込みの激しいただの妄想癖男になってしまうのだが……。
「オジーという男に、過去の救世主とお前は恋仲じゃなかったと聞いている。変な妄想はしない方がいいぞ」
なんでストレートで言っちゃったの、ロク。
イナトもルーパルドもまかさ本人に言うとは思っていなかったのだろう、目を見開いている。
「オジー? あいつは人間で、すでに死んでいるはずだろう?」
「いや、それが――」
洞窟の話をすると、心当たりがあったようで魔王は口を大きく開け、ポカンとしている。
その後ぶつぶつと何か言い始めた後、大きく息を吐いた。
「もういい。その話はいい。やり合おうではないか。とことん、な」
さきほどまで呆けていたはずの魔王は、それを感じさせない強そうな表情へと切り替えた。
器用だ。
その後、魔王と何度も剣を交えた。最初は剣が吹き飛ばされたり火力の高い魔法に当たって即死。なんてことがザラだった。私だけではあるが、次第に避けるのが上手くなっていき、また仲間のサポートができるほどになってきた。
それでも死は重ねられ、私だけ精神的に疲弊していった。
目が覚めると、また魔王城の前に立っていた。行きましょうかと言うイナトに、少しだけ休憩させて欲しいと頼み、その場に座り込む。
体は元気だ。しかし、どうしても頭が魔王の動きをすぐに処理してくれない。
「……大丈夫か」
「ごめん、もうちょっと待ってね」
ロクは私の隣に座り、じっと私の顔を覗き込む。私はできるだけ笑顔で返して深呼吸を1つ。
「やはり魔王の力が絶大なのでしょうか。僕も記憶を持ったまま戻れたら良かったのですが……」
すでに私が何度も死に戻っていることは皆知っている。オジーが死に戻りのメリットを伝えてくれているおかげで、以前より厳しく叱られることも無くなった。まあ、今でも心配そうにはしているが。
「あ、そうだ。どんな攻撃かあったとか、そういうの共有して良い? 頭の整理も兼ねて」
「良いと思います。そうすれば俺達も少しは救世主さまの負担を減らせるでしょうし」
3人に魔王の動きや癖を伝え、その時にどのように動くかも一緒に話した。
そんなことをしていると、一通の伝書紙が届く。イナトは「ナルからです」と私に言った後、封を開けた。
「かなり死んでるみたいだけど大丈夫か、という内容ですね」
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